VYMはETF(上場投資信託)の1つで、多様な米国高配当株から構成されています。VYMを保有することで、高い分配金利回りを期待することができます。
また、分散投資によるリスク回避、低い信託報酬による運用コスト低減が見込めるため、長期的に運用する資産として適しています。 本記事では、VYMの分配金利回りや、VYMで分配金を受け取るメリット、VYM投資におすすめの証券会社について解説します。
VYMの分配金とは?
まずVYMの概要や、分配金の仕組みについて解説します。
VYMの概要
VYMとは、米国の大型株に投資するETF(上場投資信託)の1つです。正式名称は「バンガード米国高配当株式ETF(Vanguard High Dividend Yield ETF)」といい、米国のバンガード社が2006年から提供しています。バンガード社は、世界最大の投資信託会社の一つとして知られており、手数料の低さや、長期的な投資戦略で評価されています。
VYMは「FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス」という指数に連動するよう設計されています。この指数は米国株式市場の高分配金利回りの銘柄を対象としており、高い分配金利回りをあげることがVYMの目標です。VYMの株価は、市場の動向に応じて変動しますが、構成銘柄は安定した配当金の支払いが期待できる銘柄のため、投資家に人気があります。
また、バンガード社は、世界最大の投資信託会社の一つとして知られており、手数料の低さや、長期的な投資戦略で評価されています。
VYMの上位10位の銘柄は以下のとおりです。誰でも一度は目にしたことのあるような有名企業が名を連ねており、安定した分配が見込めます。これらの企業はそれぞれの業界をリードしており、経済や株価の変動にも比較的強いことが特徴となっています。
銘柄 | 構成比率(%) |
JPモルガン・チェース | 3.30 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | 3.11 |
エクソン・モービル | 3.11 |
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) | 2.63 |
ブロードコム | 2.62 |
ホーム・デポ | 2.42 |
シェブロン | 2.02 |
メルク・アンド・カンパニー | 1.94 |
アッヴィ | 1.89 |
ペプシコ | 1.85 |
参考元:Vanguard VYM Vanguard High Dividend Yield ETF
構成銘柄は年1回入れ替えられ、その際に銘柄数が増減することがあります。さらに、銘柄ごとの構成比率の変更は毎月です。これによって、投資家は常に最適化されたポートフォリオの恩恵を受けることができ、株価の変動や市場動向に対応できます。
また、VYMのセクター構成は以下のとおりです。金融やヘルスケア、公益事業まで幅広く分散していることが分かります。なお、日常必需品やヘルスケアなどは、比較的社会情勢に影響されづらく値崩れのリスクが少ないというのが一般的な意見です。そのため、安定した分配金が見込めるセクター構成といえるでしょう。
セクター | 構成比率(%) |
金融 | 20.20 |
生活必需品 | 13.10 |
ヘルスケア | 12.40 |
資本財・サービス | 12.20 |
エネルギー | 10.50 |
一般消費財・サービス | 9.20 |
テクノロジー | 7.70 |
公益事業 | 7.60 |
通信事業 | 4.70 |
素材 | 2.40 |
VYMの分配金が支払われる仕組み
VYMの分配金の支払いは、VYMを構成する銘柄からの配当収入をもとにしています。 各銘柄から得た収益(配当や利子等)はVYM(バンガード社)に集められ、そこからコスト(信託報酬、運営費用等)を差し引いた全額が投資家に支払われます。これがVYMの分配金の仕組みです。
この分配金は、現金で受け取ることも再投資することもできます。現金で受け取る場合、定期的に収入を得ることができるため、生活費やその他の支出に回すことができるというメリットがあります。一方分配金を再投資する場合は、複利効果や、長期的には投資金額の増加や、さらなる値上がり益を享受できる可能性があるなど、ポートフォリオの成長に寄与します。
分配金がもらえるタイミング
VYMの分配金は、四半期ごとの決算に分配されます。具体的には3月、6月、9月、12月の年4回定期的に、投資家のもとに分配されます。 VYMの過去の分配履歴によると、直近4回の支払日は2022年9月22日、12月22日、2023年3月23日、6月23日。このデータをもとに見ると、年によって異なるものの、おおむね決算月の下旬に支払われていることが分かります。
VYMの分配を受けるには、権利を確定させる必要がある点に注意しましょう。つまり、権利付最終日(決算日の2営業日前)の時点で、ETFを買付しておく必要があるということです。なお、分配金は決算日から約40日後に支払われます。 VYMへの投資戦略を練る場合は、四半期ごとの分配金のタイミングと権利確定日を理解しておきましょう。
VYMの分配金利回り
投資をする際1番気になるのが、利回りではないでしょうか。ここでは分配金利回りの概要や計算方法、VYMの直近5年間の利回りの推移をみていきます。
VYMの分配金利回りとは
分配金利回りとは、ETFの価格に対する1年間の分配金の割合を示すものです。1年間にVYMから受けた分配金の額を、VYMの基準価額で割ることで求められます。分配金利回りは、投資の収益性を評価するための1つの指標です。
そのため、分配金利回りを知ることで、投資の収益性をある程度予測することが可能となります。投資商品を購入する際は、それぞれの銘柄の分配金利回りを比較し検討しましょう。
利回りの計算方法
分配金利回りは、1年間に受けた分配金を、ある時点の価格(基準価額)で割って算出します。以下の式で計算することができます。
分配金利回り(%)= 年間分配金額 ÷ 基準価額 × 100
具体的に計算してみましょう。1年間にVYMから受け取った分配金が年間400円で、VYMの基準価額が10,000円の場合、計算式は以下のとおりです。
分配金利回り(%)= 400円 ÷ 10,000円 × 100 = 4(%)
分配金利回りから将来のリターンを予測することができます。例えばVYMを20万円分購入し、分配金利回りが3%だった場合、分配金の見込み額(税込)は1年間で約6,000円(20万円×3%)となります。VYMの分配は年4回のため、1,500円が3ヶ月ごとに分配される計算です。
ただし、VYMは確実な分配を約束するものではありません。余裕のある運用を行いましょう。
VYMの直近5年間の利回りの変化
VYMは高配当株に重点を置いており、分配金利回りは平均よりも高い傾向にあります。VYMの直近5年間の利回りは以下のとおりです。
年 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
分配金利回り(%) | 3.01 | 3.92 | 3.49 | 3.69 | 3.02 |
参考元:Vanguard
いずれの年も3%以上の分配金利回りを記録しており、安定した水準を保っていることが分かります。 あわせてVYMの評価額の推移を見てみましょう。
5年前の2018年、VYMの評価額は90ドル弱でした。それが2020年のコロナショックで一気に60ドル台まで下落しました。しかしそこから順調な回復を見せ、2023年現在では100ドル台をキープしていることが表されています。これは米国の景気回復や好調な株式市場を反映しています。
以上のことから直近5年間において、VYMは利回り・評価額ともに堅調なパフォーマンスを発揮していることが分かります。
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VYMで分配金を受け取るメリット
分配金を目的とした場合、VYMを選ぶメリットは主に3点あります。VYMで分配金を受け取るメリット
-
高い分配金利回り
- 構成銘柄数が多くリスク分散が可能
-
信託報酬が安い
それでは、一つ一つ解説していきます。
高い分配金利回り
VYMを保有することで、高い分配金利回りを受けられる可能性があります。なぜなら、 VYMは高配当を特徴とする米国の株式を中心に構成されているためです。
直近5年間のVYMの分配金利回りは3%超をキープしているとお伝えしました。一方、株式会社東京証券取引所の調査によると、分配金のあるETFの平均利回りは2.15%(2019年3月29日時点)です。
また、2006年から運用を開始したVYMは、深刻な経済危機、例えばリーマンショックやコロナショックを経験しながらも、長期的には順調に価格が伸びています。具体的には、運用開始時から現在までの間に2倍以上の成長を達成しています。
これらのことより、VYMは一般的なETFと比べ、高い分配金利回りが期待できます。特に、米国株式市場において、バンガード社のVYMは安定したリターンを提供することで知られています。さらに、過去の市場ショックを経ても価格の推移が良好であることは、投資家にとって大きな魅力です。VYMの分配金は年間にわたって安定しており、堅実なリターンを求める投資家にとって有効な選択肢となっています。
参考元:株式会社東京証券取引所 分配金に着目したETF投資のご紹介
構成銘柄数が多くリスク分散が可能
VYMを保有することで、投資におけるリスクを分散することができます。 「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉のとおり、リスク回避のために分散投資することは投資の鉄則です。
異なる値動きをする銘柄・セクターを保有していると、特定の銘柄が暴落しても多数の投資先があるため、影響を最小限に抑えられます。このリスク分散の効果は、米国の大型株式市場で特に顕著です。 VYMは462銘柄と多くの銘柄から構成されています。また、セクターの面でも、金融、生活必需品、エネルギー、公益事業など構成ジャンルは多様です。そのため、VYMを保有することは市場の変動に対するポートフォリオの感応度を抑え、リスク分散に寄与すると考えられます。
信託報酬が安い
VYMは信託報酬が低いことも魅力的です。信託報酬とは、投資信託を運用してもらうための経費として、投資家が運用会社に支払うものです。VYMの信託報酬(経費率)は0.06%(2023年2月27日時点)。VYMに100万円投資した場合をシミュレーションすると、信託報酬は600円となります。信託報酬率は稀に変更されることがあるため、最新の情報を定期的に確認する必要があります。
一方、VYMとよく比較されるSPYDの信託報酬は0.07%(2023年9月12日時点)、HDVの信託報酬は0.08%(2023年9月12日)です。 このことより、他のETFや投資信託に比べて信託報酬が低いことが分かります。
信託報酬を抑えることで運用コストの削減となり、その分収益を確保できます。
VYM投資におすすめの証券会社
VYMを購入するには証券会社の口座開設が必要です。ここではVYM投資におすすめの証券会社を5社紹介します。
楽天証券
楽天証券は、楽天グループの様々なサービスと提携しているのが特徴です。金融商品の取引実績や保有額に応じて楽天ポイントが貯まり、ポイントを投資に使うことも可能です。
また、米国株式や投資信託へのポイント投資で、楽天市場でのポイント加算率がアップするプログラム(SPU)もあります。 楽天証券の海外ETF取り扱い本数は390銘柄(2022年1月17日時点)。幅広いラインナップから銘柄を選択できます。
また、海外ETFのうち楽天証券指定の15銘柄(2023年9月13日時点)は、買付手数料が無料となっています(VYMは対象外)。 取引は公式サイト・専用アプリ(iSPEED)の両方から可能で、どちらの媒体もユーザーの使いやすさを意識して設計されています。
その他のサービスは以下のとおりです。
- 自動的に米国株式・ETFを積立できるサービス(米株積立)
- 楽天銀行との連携により預金の金利が優遇されるプログラム
- 証券口座保有者はマネー本が無料で読むことができる
以上より、楽天証券は楽天グループのサービスを活用したい方、ポイントを効率よく貯めたい方におすすめの証券会社です。
SBI証券
SBIはSBIグループが運営する証券会社です。住信SBIネット銀行やSBI新生銀行のほか、三井住友銀行、三井住友カード等と提携しています。
SBI証券には、金融商品の購入や保有残高に応じてポイントを獲得できるプログラムがあります。提携ポイントが豊富で、Tポイント、Pontaポイント、 Vポイント、dポイント、JALマイルの中から貯めるポイントを選ぶことが可能。
また、ポイントを投資に使うこともでき、投資先によって、Tポイント、Pontaポイント、Vポイントの中から選べます。 商品ラインナップは業界トップクラスで、外国株式は5400(2023年8月4日時点)、外国ETFは417(2023年9月13日時点)の銘柄を取り扱っています。
その他のサービスは以下のとおりです。
- 保有している米国株ETFや米国株を貸付けし、金利が得られる(米国貸株サービス)
- 米国株・ETFを自動で定期買付できる(米国株式・ETF定期買付サービス)
- AIのロボアドバイザーによる自動運用が可能(ROBOPRO)
SBI証券は、提携ポイントプログラムを豊富な選択肢から選びたい方にとって、おすすめの証券会社といえます。
auカブコム証券
auカブコム証券は三菱UFJフィナンシャル・グループの証券会社です。 auカブコム証券は手数料無料サービスが充実しています。「フリーETF」と銘打ち、日本株ETF、外国株ETFなど多数のETFの売買手数料を無料としています。そのうち外国株ETFは、19(2023年9月13日時点)の銘柄が売買手数料無料です(VYMは対象外)。
また、「リスク管理追求型サービス」に注力している点もポイントです。auカブコム証券は「自動売買」の先駆者であり、特許取得のサービスなど、多様な自動売買発注方式を提供しています。
その他の特徴は以下のとおりです。
- Pontaポイントを貯めることができ、貯めたポイントは投資に使える auIDの登録や、auの契約によりポイントが貯まる
- auユーザーがIDを連携させると、国内現物株式手数料等が1%割引になる
auカブコム証券は、auユーザーにとって特にお得な証券会社です。
マネックス証券
マネックス証券は分析や取引に役立つツールを豊富にそろえています。米国株取引の専用アプリ「トレードステーション米国株」では、ニーズに合わせた様々な注文方法を備えています。スマホ上での取引がしやすいため、時間や場所に関わらずETFや株をトレードできるのが強みです。
日本株の銘柄分析用ツールの「マネックス銘柄スカウター」も、2017年のサービス提供以降、顧客から好評を得ているツールです。10期以上の長期推移や、3ヶ月に区切った詳細なデータまで、投資初心者から上級者まで活用できます。
また、マネックス証券は外国株のラインナップが際立っています。外国株(米国・中国)の取引銘柄数は6000超(2023年9月13日時点)。米国株ETFだけでも382(2023年9月13日時点)の銘柄を取り揃えています。 「米国ETF買い放題プログラム」では、ETF現物取引買付手数料(税抜)が全額キャッシュバックされます。
主要な米国ETFの17銘柄(2023年9月13日時点)が対象です(VYMは対象外)。
DMM証券
DMM証券の最大の強みは、手数料が業界最安値水準に抑えられている点です。具体的な取引手数料を以下に示します(2023年9月13日時点)。
- 米国株式の取引手数料:0円
- 25歳以下の方・国内株式取引手数料(現物取引):実質0円(全額キャッシュバック)
- 国内株式取引手数料(現物取引):税込55円~
- 国内株式取引手数料(信用取引):0円~
また、口座開設申込みから取引開始までの期間が短いのも特徴。スマートフォンの申込みにより、最短で申込み当日からの取引が可能です。 取り扱うETFの銘柄は豊富で、米国のETFは287銘柄(2023年9月16日時点)を取り扱っています。
まとめ:VYMは高い分配金利回りを目指したETF
VYMは高配当の米国株から構成されている、高い分配金利回りを目標としたETFです。投資家のもとには年4回分配金が分配されます。
VYMを保有するメリットは、高い分配金利回りが期待できること、リスク分散ができること、運用コストが抑えられることの3点。
直近5年間での分配金利回りは3%超と、平均より高い水準を保っており、長期的な運用に適していると考えられます。 これらVYMの特徴を理解した上で、自分に合った投資戦略を組むことが大切です。
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