【第6回】三菱UFJ投信 指標の開発に独自の切り口で挑みETFの多様なニーズを掘り起こす 東証ETF

投稿日:2022/05/09 最終更新日:2022/11/01
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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ なるほど!ETF・ETN ]

【第6回】

ETFプロバイダーに聞く——三菱UFJ投信

指標の開発に独自の切り口で挑みETFの多様なニーズを掘り起こす 「MAXIS S&P三菱系企業群上場投信」

三菱UFJ投信 商品企画部長 代田秀雄氏
三菱UFJ投信
商品企画部長 代田秀雄氏

統一ブランド「MAXIS」の名の下に、現在、4本の日本株のETFをラインナップする三菱UFJ投信。その中でも昨年7月に上場した「MAXIS S&P 三菱系企業群上場投信」は、企業グループの株式ETFという市場への独自の視点で注目を集めている。同時にETF市場の活性化に不可欠な「指標の多様化」の先導役としても期待されている。同社商品企画部長の代田秀雄氏に、このETF商品の特徴と同社のETF戦略について話を聞きました。

−日本初の「企業グループのETF」というチャレンジ
「当社のETF戦略は、まずはお客様に身近な日本株における商品の充実です。TOPIX コア30、日経225、TOPIXと商品を揃えた次のステップは、市場に対する独自の切り口をいかに打ち出し、新たなお客様ニーズを拾い上げるか。その答えのひとつが日本初、世界でもまだ希な企業グループ株のETFでした」
三菱UFJ投信の代田秀雄商品企画部長は、「MAXIS S&P 三菱系企業群上場投信」の設立の経緯をそう語る。この商品は、同社とS&P社が共同で開発した「S&P企業グループ指数-三菱系企業群-」との連動を目指すユニークなETFだ。三菱グループは、日本を代表する企業グループのひとつであり、それぞれの企業が各分野で大きな存在感をもつ。
同社もまた三菱の名を冠する金融機関であるが、代田氏はETFの対象として三菱グループを選んだ大きな理由に「業種の幅広さ」を挙げた。基準価額の値動きが特定の企業の株価に大きく影響されれば、ETFが本来もつべき分散効果が得られない。その点、三菱グループは製造業、建設業、金融・保険、不動産など業種のバランスに優れ、内需・外需の両面で強みも持つ。
「将来的には他の企業グループのETFも前向きに考えていますが、新しい指標をお客様に問うという意味で、第1弾としてふさわしいと企業群だと位置づけています」(代田氏)
ちなみにこの指標はS&P社が算出しているが、ホームページ等でオフィシャルに情報が開示されている三菱広報委員会に加入する企業を「一般に三菱グループに属すると認識されている企業」として銘柄選定のベースにしている。リバランスは年1回。S&P社がこれまで行った銘柄の組み替えは三菱マテリアルと三菱電線工業の企業合併による調整に止まる。「ETFである以上、そして商品名に三菱という名を使う承諾をグループから頂いた以上は、指標が恣意的であってはなりません」と代田氏も語る。
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出所:三菱UFJ投信
−新興国での需要が期待される製造業や資源・エネルギー事業が充実
三菱UFJ投信 商品企画部長 代田秀雄氏
ETFの上場は昨年7月であるが、企業グループ指数は2001年4月を起点として計算されている。以来、ほとんどの期間で日経225やTOPIXと連動した動きをとりながら、両者を上回るパフォーマンスを挙げている。「日本株のインデックス商品に関心があり、従来の商品を上回る成果を期待される方に注目していただきたい」と同社が語るゆえんだ。
特に2005年後半から2006年前半はその傾向が顕著であり、代田氏は「マーケットのテーマとして、新興国と資源がクローズアップされた時期と重なる」と分析する。三菱グループは、国内に事業基盤を置きながらも、アジアをはじめとする新興国の成長で恩恵を受ける輸出関連の製造業、資源・エネルギー分野に注力する企業が数多い。安定感や信頼性などのイメージで語られることもある三菱グループ企業が、今後の世界経済の成長ストーリーに対応するべくダイナミックな海外展開を行っていることは、見逃されがちな重要なポイントだ。
例えば三菱商事は、鉄、石炭、天然ガスなど各種の資源・エネルギー権益を世界各地で保有する。鉄鋼原料となる原料炭のうち、高品位の強粘炭のシェアは世界トップクラス。同社が権益を持つLNG(液化天然ガス)、原料炭、銅なども、新興国市場で中長期的な需要拡大が見込まれる。また2010年4月には、31%の権利を持つ豪州最大級の一般炭鉱山・クレアモント炭鉱が操業を開始した。
需要が高まる資源や工業製品を新興国に運ぶのは船舶だ。日本郵船は世界トップ級の海運会社であり、特に自動車船に強みを持つ。船舶の需要増と運賃価格の上昇による利益成長に期待がかかる。また2009年12月に鉱山資源の世界大手リオ・ティントと20年にもわたる長期の輸送用契約を締結し、今後も関係強化される見通しだ。
インフラ投資の拡大がプラスにはたらく企業では、鉄道の省エネ化のカギとなる「インバータ制御装置」に強みをもつ三菱電機がある。同社はインド・バンガロールメトロや中国・北京地下鉄8号線などの大型受注が相次ぎ、アジア各地の鉄道網整備の動きはさらなる追い風だ。また三菱重工は現在、仏・アレバとの提携で世界トップ3の一角を占める原子力発電プラントなど、エネルギー・環境関連分野が収益源の大きな柱となっている。国産旅客機MRJを開発中の航空・宇宙分野も強みだ。このように、日本人に馴染みの深い企業が、高い技術力を背景に新興国でも活躍している。
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出所:三菱UFJ投信
−投資家の多様なニーズをフォローするETFへ
三菱UFJ投信 商品企画部長 代田秀雄氏
今年3月、「MAXIS S&P 三菱系企業群上場投信」は、純資産総額が新規設定時の30億円台から約540億円へと急増した。報道によればグループ各社が持ち合い株式として保有していた100〜200億円規模の株式をETFの設定に活用したといわれる。「日本の株式投資の主体を機関投資家から個人投資家へといかにバトンを渡すかという、社会的な課題の中でのひとつの表れだと思っています」(代田氏)。市場での存在感の高まりと共に出来高も増え、証券会社各社からの注目も高まった。
「一般論として投信とは異なるETFのメリットは、流動性の高さ。それと指値注文できるといった、ターゲット・バイイングができる機動力だと思います。ただしこの商品に関しては、中長期的な成長をイメージする中で、ある程度長く保有されるお客様が多いと思います。ご本人やご家族が三菱グループにお勤めのグループに親近感をもたれている方のみならず、幅広い投資家の方々にフィットする商品だと思います」(代田氏)
三菱UFJ投信のETFブランド「MAXIS」は、MAX(最大)とAXIS(中心軸)という2つの言葉から生まれた造語であり、「個人投資家の資産運用の中心軸となり、最大、最良のベネフィットを提供する」という理念が込められている。ETFでは後発となる同社は、信託報酬の低さや、売買単位の小ささなどで利便性をアピールしてきた。また同社には国内外のインデックスファンドを揃えたネット投信ブランド「eMAXIS」があり、こちらはノーロード(無手数料)で購入ができる。例えば投資信託を毎月積み立てで購入し、まとまった資金でETFを購入するといった、互いのメリットを生かした併用も提案している。
「ETFの社会的な認知を高め、お客様にもっとご活用いただくためには、資産運用に関わるニーズを全方位でフォローできる商品を提供するぐらいの気概が必要です。ETFはパッシブなインデックス商品ですから、我々が追求すべきことは市場をいかに切り出し、指標をカスタマイズして選択肢を広げるか。新たな魅力を感じていただける商品を、今後も開発していきたいと思います」(代田氏)


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