日銀が金融緩和政策として、ETF(上場投資信託)の買い入れを開始して6年を迎えます。金融緩和はデフレ脱却が目的ですが、依然として目標となるインフレ率2%には達していないのが現状です。そのため、新たに2016年8月にはETF買い入れ額の倍増、9月にはTOPIX(東証株価指数)連動型のETF買い入れ比率の上昇を決定しましたが、これらの買い入れがどのような結果をもたらすのかを検証していきます。
日銀のETF買い入れの目的とメリット・デメリット
ETF買い入れは、国債の購入や金利の引き下げにつぐ、金融市場への資金供給を目的として行われる金融緩和策のひとつです。
ETFの買い入れが行われると、そのETFを構成する現物株の株価が上昇します。また、株価が下落局面となった場合にも、日銀の買い支えの予測から下落幅は限られたものとなり、景気への悪影響を防ぐことにもなります。金融緩和政策の目標はインフレ率2%到達ですが、仮にインフレが過剰に進んでしまった場合にはETFを売却することにより通貨供給量を下げることもでき、金融市場のコントロールも可能です。
ETFの買い入れによって株価は上昇しますが、一方で本来の企業の収益や価値が評価されるという株式の本来の意味を失うことになります。企業の業績と株価が連動せず、経営上の問題点の認識が遅れる可能性があることが問題です。
また、買い入れたETFをどのタイミングで売却するのか、いわゆる緩和出口政策が明言されていません。仮に日銀がETFの売りに転じた場合、株価の大幅な下落が起こり、経済に打撃を与えることも十分に考えられます。
ETF買い入れの推移と結果
日銀は2010年12月より年間1兆円規模のETFの買い入れを開始しました。その後2014年には年間3兆円に、2015年には新たな「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」(通称設備ETF)のETF購入枠を年間3,000億円設けました。そして、2016年7月の政策会合では、約3兆円増加した6兆円の買い入れが決定され、8月4日には従来の350億前後であった一回あたりの買い入れ額のほぼ倍となる、707億円の買い入れを実際に行い、以降そのペースを維持しています。結果、9月末現在では累計買い入れ額が10兆円を超えました。
日銀のETF買い入れの基準は明らかにされていません。前場でTOPIX下落が観測された場合に、後場で買い入れが発動しているという説が有力ですが、現在では下落していない場合にも買い入れ実績がみられます。
日銀のETF買い入れが行われた日の株価は必ずしも上昇に転じているわけではありません。しかし、日銀の買い支えがあるという安心感から大きな下落を防ぐ結果となり、長期的にみた場合には株価の底上げに成功しています。
ETF買い入れの今後の市場への影響
2016年9月20・21日で行われた日銀金融政策会合では、ETF買い入れの対象について、TOPIX連動型を約4割から7割に増加すると決定されました。TOPIX連動型では、従来の日経平均株価連動型のETFと異なり、時価総額の大きい銘柄の割合の株価が上がりやすくなります。より買い入れの市場反応効果が大きくなると同時に幅広い銘柄が値を上げるため、個人投資家も利益を得やすい状況となるのです。
実際にこの買い入れ構成の変更が発表された21日にはTOPIXは日経平均の1.9%を上回る2.7%上昇となり、株式売買額の増加、株価の上昇をもたらしました。また、今後の値動きとしては、日経平均寄与率の高い銘柄で企業実態と乖離した株価であったものが、適正な価格へと収束すること、新たにETFに組み入れられることとなった、銘柄の株価が上昇するといった新しい流れが予測されるでしょう。現在のところ、日銀の一定額のETF購入は確実なため、全体としては株式への投資リスクは低いものとなります。ただし、出口戦略によっては株価は大きく下落することもあるので注意が必要です。
日銀のETF購入は株価の上昇や下支えをもたらします。しかし、適切でない株価を生み出す可能性もあり、一定のリスクがある金融政策です。ただし目先では市場へのプラス影響は大きく、今後の日本株への投資価値を高めることとなります。
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