投信フォーカス 取り戻せない「海外源泉徴収税」の実態を知る - 注目の投信 - 投資信託

投稿日:2018/06/27 最終更新日:2022/10/25
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投資信託 [ 注目の投信 ]

投信フォーカス

取り戻せない「海外源泉徴収税」の実態を知る

——海外投資は定着したが、外国株式やREITの配当金、債券利息などインカムゲインにかかる現地源泉徴収税率の実態はあまり知られていない。G20加盟国に日本からおよび外国籍投信を通じて投資した場合について調査。

投信市場では海外資産投資が定着。外貨建て資産の組み入れ比率は全体の5割強。海外資産のインカムゲイン、特に株式やREITの配当金には投資国で源泉課税徴収され、原則取り戻せないので、実質的な配当利回りは低下。ケイマンなど外国籍投信経由のファンド・オブ・ファンズでは実質配当利回りがさらに低下。国際税制上のコストとしての認識が必要。

※以下、税率はすべて2010年12月末時点。今後、税率の変更はあり得る。

国内の投信市場では海外資産を組み入れて運用するスタイルが定着した。投資信託協会が毎月公表する投資信託概況によると、2010年12月末時点では追加型株式投信全体の純資産総額合計(約51兆円)のうち、約27兆円(53%)を外貨建ての資産の組み入れに充てていた(注1)。10年前には2割程度だった外貨建て資産比率は5年ほど前に5割を超し、この5年間は円高・円安の変動や投資対象資産の内容の変遷によらず、外貨建て資産比率(年末値)は全体の5割強で推移している。

(注1)追加型株式投信は公募投信全体の資産規模の4分の3を占める(2010年12月末時点)中心的存在。追加型“株式”投信といっても、株式のみで運用するのではなく、投資対象は株式、債券、商品、REITなど様々。株式投信の“株式”は、投資家損益に対する税金の扱いが異なる公社債投信と対比する意味での税制上の区分。

株式、REITや債券を組み入れて運用する投信では、その値上がり益や為替益のキャピタルゲインのみならず、配当金や利息収入などのインカムゲインも投資家収益に加わり、基準価額に上乗せとなる。ただし、国際税制上の制約条件として、海外投資国でのインカムゲイン(注2)に対しては、非課税の場合を除き、投資国で源泉課税徴収される。このため、実質的な配当金や利息収入は目減りする。国債の利息収入は多くが非課税だが、株式やREITの配当金のほとんどは課税される。

(注2)源泉税が徴収されるのは海外インカムゲインに対して。キャピタルゲイン税がかかる例は、ほとんどない。例外的に、例えばインドでは株式や債券の売買実現益に対して15%のキャピタルゲイン税がかかる。

国内の公募株式投信が日本株や国内REIT、国内債券に投資した場合、その組入銘柄の配当金や利息収入に対してはファンド段階では非課税であり、この配当金や利息収入を原資にしたファンドの分配金や売買益は課税対象(現在、税率は10%)となっている。

これに対し、海外株式や海外REITの配当金に対しては、ファンド段階でも課税されることが多く、その場合は課税前ではなく課税後の目減りした配当金が収益としてファンドの基準価額に加わる。配当金を原資にしたファンドの分配金や売買益は国内で課税されるので、いわゆる配当金に対する海外と国内での“二重課税”は国際税務上、避けられない(注3)。

(注3)2009年末までは、このファンド段階での海外源泉徴収税について、ファンド決算時に分配金を出す場合に限って、その大部分を外国税額控除という仕組みで取り戻すことが可能だった。2010年からはファンドの普通分配金が特定口座での損益通算対象に加わったことに伴い、ファンド決算時の外国税額控除が適用できなくなり、海外配当金に対する二重課税は原則免れなくなった。

例えば、公募株式投信が日本から米国株に投資した場合は、日本と米国の間では租税条約が結ばれているので、米国株配当金に対する源泉徴収課税率は軽減税率の10%が適用される。仮にファンド組入米国株の予想平均配当利回りを5%とすると、実質的な配当利回りは4.5%(=5%x90%)に下がる。米国株に投資する場合でも、外国籍投信を介し、ケイマンやルクセンブルグなど一般にタックスヘイブンと呼ばれ、米国との間で租税条約を結んでいない国から投資すると、10%の軽減税率は適用されず、源泉徴収課税率は30%にアップする。同じ例の場合、実質的な配当利回りは3.5%(=5%x70%)に低下する。

このように、源泉徴収課税率は、日本から直接投資するのか、それともファンド・オブ・ファンズ形態での外国籍投信を通じてなのかで異なる。さらに投資国の違いや投資対象が株式、債券なのか、REITなのかなどによっても変わってくる。

海外資産で運用するファンドでは、日本に比べ配当金が高いことや債券利息が高利回りとなっている点を特色として標榜するファンドが少なくないが、源泉徴収課税率次第では、実質的な配当利回や債券利回りが目減りする場合がある。海外投資にあたっては、源泉徴収課税率の実態を認識しておくことが重要となる。ファンドの月次運用レポート(マンスリーレポート)には組入株式の配当利回りの平均値や組入債券の直接利回りの平均値など、インカムゲインの利回りに関係する数値が記載されているが、この数値は通常、源泉課税徴収前の値となっている。

今回、G20メンバー国(注4)の株式と債券(国債と社債などに区分)、REITに日本から投資した場合、およびケイマンなどの外国籍投信を通じて投資した場合のインカムゲインに対する源泉徴収課税率の実態を調査してみた。

(注4)世界主要20ヵ国・地域首脳会議(サミット)の加盟国。議長国などの臨時参加国は除く。G20加盟国のGDP(国内総生産)は世界全体の9割程度を占めるとされる。源泉徴収課税率を調査した投資国は20ヵ国のうちEU(欧州連合)を除く19ヵ国。

G20メンバー国では国債利息は大半が非課税だが、インドネシアのように新興国では源泉徴収課税される場合も。海外株式やREITの配当金は大半が課税され、外国籍を通じたファンド・オブ・ファンズ形態では源泉徴収課税率がアップする。

表は、G20メンバー国に対して、インカムゲインの源泉徴収課税率を調べた結果。税率は概値の場合があり、今後、変更となる可能性がある。

日本から直接投資した場合、株式配当金に対しては、英国や南アフリカなどの非課税を除き、10%から20%程度(19ヵ国単純平均は8.3%)の源泉税が徴収される。REITの配当金も、ほとんどが株式配当金同様の課税率で源泉徴収される。国債の利息収入については大半が非課税だが、インドの10%やインドネシアの20%など新興国では源泉徴収される。米国のハイイールド債券の社債利息収入は非課税となっている。

こうした結果、日本から直接投資する場合、先進国株価指数として代表的な「MSCIコクサイ・インデックス」では組入銘柄の配当金に対し現在、概算で平均10%程度の源泉徴収税がかかると推計される。新興国株価指数の「MSCIエマージング・インデックス」や海外REIT指数「S&P先進国REITインデックス(除く日本)」の配当金に対しても概算で平均10%程度の現地源泉税が徴収される。ただし、推計概算値は組入株式個々の配当利回りの水準次第で変わりうる。

同様に日本からの直接投資では、先進国債券指数の「シティグループ世界国債インデックス(除く日本)」の利息収入に対してはほぼ0%、新興国債券指数の「JPモルガンGBI−EMグローバル・ダイバーシファイド」の利息収入に対しては概算で平均5%程度の源泉徴収税が発生すると推計される。

一方、同じ投資先でもケイマンなどの外国籍投信を経由した場合は源泉徴収課税率が跳ね上がるケースが目に付く。例えば、米国と豪州の株式およびREIT配当金に対しては30%となる。このため、通貨選択型ファンドのように、外国籍投信を通じたファンド・オブ・ファンズ形態で海外REITや海外株に投資する場合は、実質的な配当利回りが日本から直接投資する場合に比べ下がる場合が多い。

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執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2011年03月03日)

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