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ファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子氏が語る「ETFという投資商品の魅力」- 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF
投稿日:2013/06/27
最終更新日:2022/11/08
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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]
【第14回】
ファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子氏が語る
「ETFという投資商品の魅力」
- 投資信託でありながら、株式と同じように売買できるETF。ローコストで売買できること、商品性がシンプルであることなど、個人投資家にとってさまざまなメリットがあります。今回はファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんに、ETFを用いた資産運用術について話を伺いました。
- 個人投資家にとって、ETFはどんなメリットがあるのでしょうか。
- 竹川氏
-
ファイナンシャル・ジャーナリスト
竹川美奈子氏 - まず、何といってもコストが安いことです。通常の投資信託は、購入する際に、購入代金の2%が手数料として取られるだけでなく、ファンドを保有している間も、年0.7〜1.5%程度の信託報酬が徴収されます。
- これに対してETFの場合、売買に際しては株式の売買委託手数料が適用されますが、ネット証券を使えば委託手数料はかなり割安になりますし、何よりも信託報酬率が年0.2%前後と非常に割安です。
- したがってETFは、長期保有、短期売買のいずれにも対応できる便利なツールといえます。
- 長期保有する際の最大のネックは、信託報酬という保有コストです。信託報酬が割高だと、それだけ運用成績を押し下げる要因になります。年1.5%の信託報酬が取られる投資信託と、年0.2%で済むETFとでは、仮に両者が同じ運用リターンが得られたとしても、投資家が受け取ることのできる収益には、大きな格差が生じてきます。それは、運用期間が長くなるほど、顕著です。したがって、信託報酬の安いETFは、長期保有に最適と考えることができます。
- その一方で、売買にかかる手数料が安いので、短期売買をしたい人にも適しています。それは、コストが安いというだけでなく、取引価格がリアルタイムで形成されているからです。
- 非上場型投資信託だと、その日の取引が終わった時点で基準価額が算出され、その基準価額でしか追加設定・解約ができませんが、ETFの場合は、その時の取引価格で自由に売買できます。
- このように、長期保有にも、短期売買にも対応できる投資商品というのは、ETFならではのメリットともいえるでしょう。
- ETFといってもさまざまな種類があります。どういう観点で銘柄を選べば良いのでしょうか。
- 竹川氏
- まず、自分が今、持っている資産をきちっと整理してみることが大切です。いろいろな方の資産内容を拝見する機会があるのですが、共通するのは、結構、同じ資産クラスに偏ったポートフォリオを持っていることです。たとえば、国内株式なら国内株式ばかり、外国債券なら外国債券ばかりというように、特定の資産クラスにばかり投資している傾向があるのです。特に、自分の好みで投資する資産を選ぶと、このように、特定の資産クラスに偏ったポートフォリオになりがちです。
- 当然、特定の資産クラスにばかり偏ったポートフォリオは、望ましくありません。そのような状況になることを防ぐためには、新しいファンドなどを購入する前に、一度、自分がどのような資産を持っているのかをチェックし、足りないと思われるものを付け加えていくようにします。特に、年配の方のなかには、日本株の比率が高いケースが多いので、外国の株式や債券などに投資するETFを加えれば、バランス良くポートフォリオを組むことができます。
- 資産運用の第一段階、とりわけ長期投資を前提にするのであれば、バランスの良いポートフォリオを、コアに持つことが大切ですから、日本株に偏っているのであれば、これに外国株式や外国債券のETFを組み合わせる、外国債券ばかりに偏っているのであれば、これに国内株式や外国株式のETFを組み合わせるというように、全体のバランスを取ることが大切です。また、東証株価指数など、同じ株価指数なのに複数のETFが上場されているものもあり、何を基準にして選べば良いのかという点で迷ってしまうケースもあります。この場合は、資産残高と信託報酬率、出来高、乖離率などを参考にして、決めれば良いでしょう。資産が大きく、信託報酬率が低い、そして出来高が多く、取引価格と基準価額との間の乖離が小さい、という銘柄を選ぶと安心です。
- ETFを用いて分散したポートフォリオを組む場合、どういう比率で、何を組み合わせれば良いのでしょうか。
- 竹川氏
- 年齢やライフスタイル、資産状況などによって、負うことのできるリスクは変わってきますから、一概に、何を何パーセントとは言えうことはできないのですが、資産形成層であれば、株式と債券の比率は7対3程度。そのうち株式は日本、先進国、新興国を4対4対2程度、債券は日本と先進国を半々で持つというイメージです。具体的には、国内株式はTOPIX、外国株式にはMSCIコクサイインデックスとMSCIエマージング・マーケット・インデックス、外国債券はシティグループ世界国債インデックスに、それぞれ連動するETFを購入し、これに国内債券の代替として、円建てのMMFを組み合わせれば良いでしょう。
- ポートフォリオを組む場合の考え方としては、コア・サテライト投資という考え方があります。コアとは、今申し上げたように、ベースとなるポートフォリオのことで、基本的に長期保有する部分のことです。これに対してサテライトとは、もう少しリスクを取ってより大きなリターンを狙う、あるいは値動きの異なる資産を組み入れてより分散効果を高めるためのものです。この、コア部分とサテライト部分の比率については、コア部分を全体の7〜8割程度に、残りの2〜3割をサテライト部分の投資に充てるというのが、基本形になります。
- サテライト部分については、たとえばインドやブラジルなど、特定の新興国の株価指数に連動するETFや、コモディティのETFなどを組み合わせるといった方法が考えられます。あるいは国内株式でも、特定業種の値上がりが期待できるような場合は、業種別株価指数に連動するETFがありますから、それを組み合わせても良いでしょう。
- コア部分については長期保有が前提になるということですが、これは何もせずに保有し続けておけば良いのでしょうか。
- 竹川氏
- 基本的に長期保有ではありますが、何もせずに放置しておけば良いというものではありません。やはり、一定期間ごとにリバランスをすることが大切です。
- 複数資産に分散投資した場合、運用期間がある程度経過すると、全体のバランスが崩れてきます。それは、値上がりする資産クラスもあれば、値下がりする資産クラスもあるからです。そこで、再びバランス取りを行うのがリバランスです。たとえば、日本株式に100、海外株式に100を投資したとします。その後、日本株が値上がりして120、海外株式は値下がりして80になった場合、日本株の値上がり分に相当する20を売却し、その資金で海外株式を買い足します。そうすることで、再び両者の比率を、100と100にするのです。
- もちろん、リバランスは頻繁に行う必要はありませんが、少なくとも1年に1回くらいは保有資産の評価額をきちっとチェックして、その時の損益状況に応じて、リバランスを行うことが大切です。
- 銘柄を選ぶ場合、出来高や乖離率をチェックするということですが、これはなぜですか?
- 竹川氏
- ETFのメリットのひとつは、いつでも市場を通じて自由に売買できるということです。このメリットを重視するのであれば、やはり出来高は大切です。ETFの出来高を個別銘柄ごとに見ていくと、たとえば業種別などは、全く出来高がない日があるものがあります。市場での出来高がないと、取引時間中に売買したくても、出来ないことになりますから、やはり出来高は重要です。出来高がほとんどない銘柄は、むしろ取引の対象からはずしても良いでしょう。
- あと乖離率というのは、日々の取引価格が、基準価額に対して、どのくらい離れているのかを意味しています。ETFは、2つの価格を持っています。取引価格は、市場で形成されている価格のことで、これは売り手と買い手の需給バランスによって形成されます。個人投資家がETFを売買する際の価格は、これになります。
- もうひとつの価格は「基準価額」と呼ばれるもので、これはファンドに組み入れられている資産の時価総額を、受益権口数1口あたりに引き直したものです。つまり、そのファンドの資産価値を示しています。市場では、その資産価値と同程度の価格で売買が行われるはずですが、需給要因で基準価額よりも高く売買(プレミアム)されたり、逆に安く売買されたりすることがあります。通常は裁定が働くので、それほど大きく乖離することはありませんが、取引が殺到したような場合には大きな乖離が生じることもあります。
- 保有コストの低さがETFのメリットなのですから、資産価値よりも割高な状態のときに購入するのは得策とはいえません。したがって、銘柄を選ぶ際には、できるだけ乖離率の小さなものを選ぶ必要があります。ちなみに東証に上場されているETFの場合、日々の乖離率はサイトで確認することができます。
- 個人投資家のETFに対する関心度は上がってきていますか?
- 竹川氏
- まだ絶対金額という面では、個人のETFに対するプレゼンスは、それほど高いとはいえません。ただ、ひところに比べると、個人のインデックスファンドやETFに対する関心度合は、かなり高まってきたといえるでしょう。
- 特に、20代から40代の人たちは、年金問題なども含めて、自分のこれからの人生設計に不安を抱いており、資産形成に対するニーズは、徐々に高まってきています。ただ、資産形成をしなくてはという気持ちはあっても、どのような手段があるのか分からないという人が多いのが現状です。
- こうした資産形成層と呼ばれる人たちは、仕事をしつつ、資産運用も行わなければなりません。仕事と資産運用の両立となると、株式のデイトレードやFXは難しい面がありますから、ETFをはじめとする投資信託で運用することになります。その意味では、今後ETFなどが伸びていく余地は大きいといえるでしょう。
- 掲載日:2011年月02月08日
- 竹川美奈子(たけかわ みなこ)氏プロフィール
LIFE MAP,LLC代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト
- 出版社や新聞社などを経て独立。1999年フィナンシャル・プランナー資格取得。書籍やマネー関連の雑誌、新聞などで幅広く取材・執筆活動を展開する一方、投資信託やETF(上場投信)、企業のマネープランセミナーの講師などを務める。個人投資家の立場から金融商品・サービスの研究・分析を行うとともに、自らも投信積み立てや401Kなどを実践中。近著に『投資信託にだまされるな! 2010年最新投信対応版』(ダイヤモンド社)、『3000万円をつくる投資信託術』(朝日新書)などがある。