【2023年4月から】出産育児一時金が42万から50万に増額!いつから?何が変わるのか?

投稿日:2023/02/20 最終更新日:2024/09/26
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[4月19日更新]
出産は病気やケガには含まれないため、基本的に保険制度の適用対象外となり、出産に伴う費用は全額自己負担になります。そこで、これから出産を考えている女性や夫婦に知っておいてほしいのが出産育児一時金です。

出産育児一時金とは、子どもを出産したとき公的医療保険制度から受け取ることができる健康保険の給付の一時金です。2022年12月7日に岸田文雄首相から出産育児一時金の増額が発表され、2023年4月1日に改正案が施行されました。

この記事では、どれだけ出産育児一時金が増えるのか、一時金が増額することでどのような影響があるのかをまとめました。

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

ファイナンシャルプランナー

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。保有資格は「2級フィナンシャル・プランニング技能士」「日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト」。資産形成に関するセミナー講師や執筆活動も積極的に行っているほか、株式投資の基礎や資産形成、ライフプランニング、資金計画などのアドバイスを得意とする。

2023年4月から出産育児一時金が42万から50万へ増額

2022年12月7日、岸田文雄首相は「出産育児一時金」の増額を発表しました。これまで1人あたりの支給額は42万円でしたが、50万円程度まで引き上げられられ、8万円増額されます。

補助金額の増額を盛り込んだ改正案は2023年1月下旬に公布、4月1日に施行されました。「異次元の少子化対策」等の一環で、子育て世帯の経済支援対策として実施されます。

近年は日本全国で出産費用が増加しており、子育て世帯の負担が大きくなっています。2021年度の平均出産費用は約47万円(※1)で、東京都などの首都圏については50万円を超えています。

岸田首相は「こどもまんなか社会」へ向けた改革(※2)を徹底していくと述べており、「こどもに関する取組・政策」を日本社会の中心に据えるとしています。今回の施策は、高騰していく出産費用が今までの出産育児一時金の額を超えている現状に配慮し、子育て世帯への経済的支援を積極的に行うためのものとなっています。

出産育児一時金の申請方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】出産育児一時金の受取条件と申請方法を解説!転職しても手続きできる?

※1 厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について」(2ページ)
※2 内閣府「特集 こども政策の新たな展開|令和4年版子供・若者白書(全体版)」(3 こども政策の新たな推進体制に関する基本方針)

出産育児一時金、どのくらい増える?

出産育児一時金は42万円から50万円にまで増額されました。厚生労働省の社会保障審議会で了承され、施行に至った政策になります。

引き上げは2009年以来で、一時金の増加額が8万円と過去最大の上げ幅となります。先に説明した通り、近年の出産費用等の増加を配慮しての金額と考えられます。

出産育児一時金の受け取り方については、直接支払制度や受取代理制度が利用できます。直接支払制度は、健康保険制度から出産時に利用した医療機関等へ直接一時金が支払われる制度です。受取代理制度は、対象の医療機関等が被保険者に代わって一時金を受け取る制度です。

また、これらのような制度を利用しない支給申請方法もあります。利用する医療機関等によっても受け取り方法が変わる場合があるため、ご自身の状況にあった受け取り方を確認しておきましょう。

【関連記事】出産育児一時金の直接支払制度とは?申請の手続きから、メリット・デメリットまで解説

そもそも出産育児一時金は、(国民)健康保険の給付内容の1つです。出産手当金や傷病手当金などと同じ部類に入ります。そのため、出産育児一時金を受け取るには公的医療保険の被保険者または被扶養者である必要があります。

  出産育児一時金をもらえる条件  

  1. 公的医療保険の被保険者または被扶養者
  2. 妊娠4カ月以上で出産をした方(早産、死産、流産、人工妊娠中絶を含む)

また、病院側が産科医療補償制度に加入してない場合などでも支給額が変わってくるので、医療機関等の状況や今後の正式発表を確認するようにしましょう。

出産育児一時金、いつから増える?

出産育児一時金の50万円への増額は、2023年4月1日から始まりました。2023年4月に「こども家庭庁」が発足したこと、都市部を中心に出産費用の増加傾向が続いていること等を踏まえての施策と考えられます。

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出産育児一時金の増額によるメリット・デメリット

出産育児一時金が増えることは、これから出産を考えている世帯にとっては良いニュースです。ただし、財源の問題も当然あるため、メリット・デメリットが発生し、出産育児世帯以外の様々な人や機関にも影響が出る可能性があります。

特に大きな変化として、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度からも、一定の財源を出産育児一時金に拠出する仕組みが導入予定となりました。当初、出産育児一時金は75歳以上の後期高齢者の負担は求めない仕組みでしたが、その前提を大きく覆す変更になっています。

支給額が増加することで財源が必要となるため、税金の増額などによる家計への影響も考えられます。例えば、所得の高い家庭では、一時金の増額により税金負担が増える可能性があります。

また、実際には出産に伴う費用は人や場所によってもかなり差が生じます。2020年度時点で、地域間で最大の差がある東京都と佐賀県では、出産費用平均に約20万円の違いがあります。加えて、正常分娩かそうでないか、帝王切開を行うかどうかなどでも大きく変わってきます。

しかし、出産育児一時金は現在のところ全国一律、出産方法にかかわらず同一の金額となっているため、このような現状については今後議論になる可能性があります。

出産費用をどのくらいカバーできる?

42万円から50万円まで出産育児一時金が増えることにより、今まで一時金で不足していた部分の費用をかなり補えるようになります。もちろん状況により異なりますが、正常分娩で、かつ東京のような都市圏での出産でなければすべてカバーできる場合も多くなります。

厚生労働省の調査によれば、一般的に出産には以下のような項目の費用(直接支払制度の専用請求書記載項目)がかかります(※1)。

出産にかかる費用

出産にかかる費用

この結果を見てもわかる通り、平成24年(2012年)度から令和3年(2021年)度の間でも出産にかかわる費用は平均で6万円程度増加しています。出産育児一時金が50万円になれば、かなりの割合をカバーできます。

同調査によれば、医療機関で受けられるサービスで妊産婦が最も優先するのが「病室の環境」となっています。今回の一時金の増額により、妊産婦の方が望むサービスを受けられる可能性も高くなるかもしれません。

ただし、出産費用は正常分娩の場合でも年1%程度の割合で増加しつつあり、今後も増額が見込まれます。また、金額は全国の平均で、東京都は最も高く553,021円、佐賀県が最も低く351,774円(いずれも2020年度時点)となっています(※2)。

都道府県別出産費用

都道府県別出産費用

2023年4月1日から出産育児一時金は50万円に引き上げられましたが、この金額以上に出産費用がかかる場合には自己負担となることに変わりはありません。出産育児一時金の増額とともに、出産費用をおさえる施策や、一律同一金額の増加となることの是非なども今後の課題として挙げられるかもしれません。

※1:厚生労働省「第155回社会保障審議会医療保険部会 資料1-2出産育児一時金について」(8ページ)
※2:厚生労働省「第152回社会保障審議会医療保険部会 資料5出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について」(6ページ)

病院側の便乗値上げは?

上述の通り、出産の費用自体は年々増加しています。出産費用は当面は引き続き年1%程度増加していくことが想定されており、費用を小さくするには抜本的な改革が必要になりそうです。

今回の出産育児一時金制度の補助金額が大幅に上がったことにより、出産にかかる費用(上で説明した表の入院費や分娩料など)が大きくなることも考えられます。

今回の出産育児一時金の増額は病院側も値上げがしやすいタイミングになっていると考えられますので、病院選びをする際にも十分検討するようにしてください。

実際に、この増額を受け、出産費用を引き上げる医療機関もあり、「便乗値上げ」ではという声が相次いでいます。

病院選びで迷う場合には、自治体の相談窓口などの活用をおすすめします。例えば、大阪市では「患者ほっとライン」を設けており、助言や他の相談窓口の紹介を行ってくれます(原則、医療内容のトラブルについても助言を行っていますが、医療機関との調査や交渉は行っていません)。利用できる窓口については、お住まいの地域ごとに確認をしてみてください。

また、2022年1月1日以降に生まれた子どもから産科医療補償制度の対象が広範になり、分娩機関が支払う掛金が1万6千円から1万2千円に変更(※3)となっていました。今回の変更に伴い、産科医療補償制度の掛金が再度見直される可能性もあります。

※3:厚生労働省「産科医療補償制度について

増額分は高齢者が負担

今回の出産育児一時金の増額では、後期高齢者医療の保険料に上乗せする形で、一時金の3.5%の財源の拠出を75歳以上の方々へ求めることになりました。これは、2024年度と2025年度における割合であり、それ以降は随時改定される予定です。2024年4月の保険料からの上乗せとなります。

負担内容に関して、急激な負担増加を避けるため、いったん一時金の財源の半分が後期高齢者の負担対象額に設定されることとなりました。その対象額のうちの7%が後期高齢者医療保険から拠出されます。よって、一時金全体から見ると後期高齢者の負担割合は3.5%となります。

もともと出産育児一時金は74歳未満の現役世代で補う仕組みでしたが、この仕組みを根本から変更することになり、75歳以上の高齢者にも負担を求める形に変更になりました。

出産育児一時金の支給件数・支給額(2019年度)は以下の通りになっています。(※4)

組合 支給件数(万件) 支給額(億円) 財源構成
健康保険組合 30 1,247 保険料(10/10)
協会けんぽ 39 1,630 保険料(10/10)
共済組合 12 501 保険料(10/10)
市町村国保 9 359 保険料(1/3)
地方交付税(2/3)
国保組合 2 91 保険料(3/4相当)
国庫補助(1/4相当)
合計 91 3,827  

ここから、支給額(一時金に対する拠出金額)を3,800億円と仮定し、その3.5%が後期高齢者の負担分だとすると、「3,800 × 0.0035 ≒ 133億円」になります。

よって、約133億円を後期高齢者医療の保険料で補うことが考えられます。ただし、これはあくまで予想の額であり、正式な金額はまだ発表されていません。

2023年3月16日には、出産育児一時金の財源にあてるため、75歳以上の医療保険料を所得に応じて引き上げることを盛り込んだ健康保険法などの改正案が、衆議院本会議で審議入りしました。

厚生労働省は、2024年4月に後期高齢者医療保険料の上限額を年間66万円から80万円に引き上げる方針を示していましたが、与党からの批判を受けて、2025年度までの2年をかけて段階的に引き上げる方針で調整に入りました。

これらを考えると、2025年には1人あたり平均で年間保険料が5,000円程度増える見込みです。この保険料は所得に応じて支払う額が異なるため、所得が低い人は負担が増えないように配慮される見通しとなっています。

厚生労働省によると、医療保険料の引き上げは年金収入が年153万円を超える人が対象となり、75歳以上の約4割が該当するとのことです。今後の影響も鑑み、自身や家族の保険料などを確認しておくとよいでしょう。

※4:厚生労働省「第155回社会保障審議会医療保険部会 資料1-2出産育児一時金について」(2ページ)

出産育児一時金の支給条件・申請方法は?

出産育児一時金の支給条件はこちらです。

  出産育児一時金の支給条件  

  1. 妊娠4ヵ月(85日)以上の出産であること。
  2. 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)があること。
  3. 資格喪失後(退職日の翌日)から6ヵ月以内の出産であること。

対象期間中であれば、正常分娩のほか、帝王切開、流産、早産、死産、人工妊娠中絶も含まれます。受給するためには申請書に必要事項を記入して、出産翌日から2年以内に申請します。

具体的な手続方法は保険者により異なるため、被保険者や被扶養者の場合は加入している健康保険組合(または協会けんぽ、共済組合など)に、国民健康保険に加入している場合は各市区町村の窓口に問い合わせましょう。 

出産育児一時金を利用すると大幅に費用が軽減されるので、負担を減らすために申請しておくことがおすすめです。

産休を取得する場合、また、退職や転職をするといった場合も事前に支給条件の確認をしておくと安心です。一時金の受取方法についても、3つ(直接支払制度、受取代理制度、事後申告)のうちどれがよいか出産前に決めておきましょう。詳しくは、下記の記事を参照してください。 

【関連記事】出産育児一時金の受取条件と申請方法を解説!

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まとめ:出産育児一時金増額にむけての変化

2023年4月から出産育児一時金が50万円に増える予定ですので、これから出産を考えている人にとっては良いニュースです。また、出産一時金とは別に、2023年1月から1人あたり10万円の「出産準備金」の制度も始まりました。子育て世帯へ向け、新たに変更・創設されていく様々な子育て支援策に注目が高まります。

一方で、「出産費用は年々増加している」「居住地によって格差がある」「一律同一金額だが、出産費用には差がある」といった問題は引き続き残るため、これらを是正していく必要が出てくると考えられます。

今回は、後期高齢医療保険へ財源の3.5%の負担を求めるといった変更がなされます。少子化対策の一環で、現役世代の子育て支援の考えに基づいた変更と考えられます。

出産育児一時金の増額とともに、出産費用を減らす抜本的な改革も求められるでしょう。

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よくある質問

Q

出産育児一時金と出産手当の違いは何ですか?

A

出産手当金は、出産のために仕事を休み、十分な給料を受けられない場合に、出産前の42日間(多胎妊娠の場合は98日間)、出産後の56日間のうちで休んだ日数分の金額が支給される仕組みです。

一方、出産育児一時金は生活を助成するための手当なので、医療費控除の計算で差し引かなくてよい点が異なります。医療費控除を受けると、医療費が一部返ってくる可能性があります。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

【関連記事】医療費控除で妊婦・出産費用はいくら戻ってくる?計算方法や申請について

Q

出産育児一時金の医療機関等への直接支払制度のデメリットは?

A

直接支払制度ではその分の費用を自分で支払う必要がないため、クレジットカード支払いにすることでためられるはずのポイントが付かないということがデメリットの一つです。また、直接支払制度は、医療機関側の事務負担が掛かるため、中には数万円の手数料を請求される場合があるので注意が必要です。

【関連記事】出産育児一時金の直接支払制度とは?申請の手続きから、メリット・デメリットまで解説

Q

出産育児一時金の増額に伴い、高齢者の負担はどのくらい増加しますか?

A

こちらはまだ正式な発表はされていませんが、現時点の試算では平均で年に約5,000円程度あがることが予想されています。厚生労働省によると、医療保険料の引き上げの対象には75歳以上の人(後期高齢者)の約4割が該当するとのことです。ただし、所得が低い人は保険料が変わらないよう配慮される予定です。

詳細は「高齢者の負担額」を参照

Q

出産育児一時金のあまりはどうすればいいですか?

A

医療機関などの窓口での自己負担額は、出産育児一時金の額を超過した分のみとなります。 基本的にこの制度では、出産後に一時金の申請をする必要はありませんが、出産費用が出産育児一時金の50万円を下回ったときには、差額分を健康保険組合に請求申請する必要があります。

【関連記事】出産育児一時金の直接支払制度とは?申請の手続きから、メリット・デメリットまで解説

Q

出産費用が上がっているのはどうしてですか?

A

所得水準、医療水準、物価水準が上がると出産費用も上がっていく傾向にあります。特に所得水準との相関が高く、所得が上がれば出産費用も上がりやすくなります。

詳しくは「2023年4月から出産育児一時金が42万から50万へ増額」を参照

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