投信フォーカス 分配金の注意点「特別分配金」の実態を調査、2011年7月末- 注目の投信 - 投資信託

投稿日:2013/06/27 最終更新日:2022/11/08
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分配金の注意点「特別分配金」の実態を調査、2011年7月末

——特別分配は元本の払い戻し。分配金に占める特別分配の割合は購入時に左右され、購入時が3年前の平均は89%、2年半前:10%、1年前:35%。急落後の分配金受取は回復局面での複利上昇効果を薄める要因に。

「分配金=普通分配金+特別分配金」。普通分配は課税対象で、特別分配は非課税。個別元本と分配金および分配金支払い後基準価額の関係で決まる。個別元本は特別分配額だけ減額する。特別分配が多いということは運用収益が低迷、悪化していることを意味。

投信の販売にあたり、投信が払い出す収益分配金に関する投資家への説明が順次強化される。その中のキーワードの一つが「特別分配」だ。目論見書や販売用資料で、図解によりその意味が明示される。

特別分配の“特別”に一種、スペシャルな収益を想起するとしたら、それは勘違いだ。特別分配は普通分配と対比した投信用語であり、分配金を普通分配金と特別分配金に区別したにすぎない。つまり、分配金は普通分配金と特別分配金を合わせたもので「分配金=普通分配金+特別分配金」の関係にある。普通分配金も特別分配金もその支払い原資はすべて基準価額の中にあり、基準価額の外から補充される何かスペシャルなものではない。特別分配が多く出るということは、傾向的に、投資元本に比べ足元の基準価額が低いことを意味するため、運用収益が芳しくないことを示す。

特別分配が普通分配と異なり“特殊”なのは、特別分配が投資家の個別元本の一部払い戻しにあたり、税制上では非課税の扱いになる点だ。一方、普通分配は個別元本を上回る運用収益を基にした分配金であり、課税対象になる。特別分配は元本の払い戻しでも、元本に対して支払った販売手数料やその間の運用経費(信託報酬)までは返還されない。特別分配が出ると、その分だけ投資家の個別元本と呼ぶ購入元本は減額する。特別分配は非課税のため、損益通算の対象外となる(普通分配は損益通算の対象)。

特別分配の意味合いを勘違いしやすい背景には、同じファンドの同じ分配金でも、保有者によって、特別分配か普通分配かが違ってくる点が挙げられる。同じファンドの分配金および時価に当たる基準価額は投資家によらず一緒なのに対し、個々の投資家の購入価格(個別元本)は投資時期によって異なり、同じ分配金が、ある投資家には普通分配となっても、別の投資家では特別分配になる場合がある。分配金が特別分配か普通分配かは、分配金支払い前の個別元本と分配金支払い後の基準価額の大小関係および、分配額により変わってくる。

この関係を例示すると、次のようになる。例えば、ファンドを10000円で購入した場合、当初の個別元本は購入価格の10000円になる。このファンドについて、(1)1000円の分配金が出て、同時に分配金支払い後の基準価額が9500円となった場合、基準価額(9500円)が個別元本(10000円)に比べ下がった分の500円が特別分配となり、分配金(1000円)のうち残り500円が普通分配となる。この時、個別元本は10000円から特別分配の500円だけ下がり、9500円に減額する。

(2)同じケースで、分配金支払い後の基準価額が8500円となった場合には、基準価額は個別元本に比べ、分配金の1000円を超して下がったので、分配金1000円すべてが特別分配となり、普通分配金は0円。個別元本は特別分配の1000円だけ下がり、9000円となる。

(3)反対に分配金支払い後の基準価額が、個別元本を上回った場合には特別分配は無く、分配金はすべて普通分配になる。同じケースで、分配金支払い後の基準価額が10500円の時、普通分配金は1000円で、特別分配は0円。特別分配が出ていないので、個別元本は10000円で変わらない。

「特別分配度=分配金に占める特別分配金の割合」を調査。3年前に購入した場合は平均で3年間の分配金の約9割が特別分配金。2年半前購入時には平均約10%、1年前購入時は約35%。基準価額がいったん大幅下落すると特別分配が続きやすく、その後の回復局面での上昇効果を逃すことに。

実際に、現在運用中のファンド(国内籍の追加型株式投信、ETFやブルベア型ファンドなどは除く)について、2011年7月末までの3年間、2年半、および1年間に支払った分配金のうち、特別分配金になった割合を「特別分配度」として調べてみた。集計対象は分配金を出したファンドのみ。それぞれ、3年前の2008年7月末、2年半前の2009年1月末、1年前の2010年7月末の基準価額で購入し、分配金は再投資せず、現金で受け取ったとする。この場合、当初の個別元本はそれぞれ3年前、2年半前の1年前の基準価額となる。3年前はリーマン・ショックによる投信市場大幅下落の直前、2年半はその後の投信市場全体の回復局面にあたる。

そうすると、1年前に購入した場合は全ファンド(1500本弱)の単純平均で特別分配度は約35%、2年半前に購入した場合(対象ファンド数は1100本強)は約10%、3年前に購入した場合(対象ファンド数1000本強)には約89%となった。このように、特別分配度はファンド購入後の基準価額が下落したのか、上昇基調をたどったかによって変化する性格のものだ。

リーマン・ショック後に大幅下落した3年間では、分配金の大半が元本の払い戻しの特別分配となったことが分かる。ファンドを投資対象別に分けて集計しても、特別分配度の平均は、国内債券ファンドや円ヘッジ型の外債ファンドが31%にとどまった以外、軒並み90%程度以上となり、毎月分配型ファンドの特別分配度は平均9割を超した。

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残高の大きなファンドについて特別分配度を一覧表示しても、3年間での特別分配度の高さが鮮明となる。例えば、運用資産規模最大の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」(国際投信投資顧問)では、3年間の分配金1250円のすべてが特別分配金となり特別分配度は100%。1年前に購入した場合は分配金420円のうち特別分配度83.3%の350円が特別分配金。2年半前に購入した場合の特別分配度は51.5%に下がった。

純資産残高2位の「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」(大和住銀投信投資顧問)では、1年間の特別分配度は分配金1200円に対し12.8%、2年半前に購入購すると分配金3000円に対して特別分配度は0%だったが、3年間では分配金3600円の100%が特別分配金となった。

特別分配金は毎月分配型ファンドのみではなく、日経平均連動型など分配金が少額の日本株ファンドでも発生する。「インデックスファンド225」(日興アセットマネジメント)の場合、1年間の分配金20円の95%が特別分配、3年間の分配金60円の100%が特別分配金だった。一方、2年半の特別分配度は分配金60円に対し0%だった。

特別分配を出すと、その分だけ、個別元本は当初の個別元本から減額していく。例えば、表の7月末の個別元本は当初の個別元本から特別分配分だけ下がった額になっている。これに関し、現時点の個別元本を基にした収益率を、普通分配金に対する源泉課税率は10%として、次のように定義する。

現在の個別元本ベースの収益率(%)= [(現在の基準価額+普通分配金×0.9)−(現在の個別元本)] ÷(現在の個別元本)×100

この個別元本ベースの収益率と対比して、ファンドの運用成績を示すのに一般に使われる騰落率(課税前分配金を分配金支払い後の基準価額で再投資して計算)を比較してみる。表では、海外REITファンドなど、基準価額に対して分配金の割合が大きくなったファンドでの個別元本ベースの収益率が、課税前分配金再投資ベースの騰落率を10%以上下回ったケースが目に付く。リーマン・ショックで急落した後の戻り局面での分配金に対する再投資複利効果が薄まったためだ。

また、3年前に投資した場合の多くは、足元の基準価額が特別分配で減額となった個別元本をなお下回っている。これは投資家が損失を抱えていることを意味し、基準価額が個別元本を超えて上昇しない限り、今後支払われる分配金も元本の払い戻しである特別分配になりやすい。

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特別分配になるかどうかは、投資タイミングが左右。「収益分配金の案内」通知で特別分配や個別元本の確認が大切。分配金再投資でも個別元本は特別分配分の減額。

投資家は、特別分配が元本の払い戻しに過ぎず、投資タイミングにも大きく依存することを理解することが重要となる。特に高額分配ファンドでは特別分配額も膨らみがちになる。ファンドを購入した保有者には通常、ファンドの分配金支払い毎に販売会社から「収益分配金の案内」が届く。この通知書には、普通分配金、特別分配金および個別元本の最新値が明記されているので、しっかり確認することが大切となる。

投資家が分配金を現金で受け取るのではなく、自動再投資するコースを選択した場合、支払い分配金を分配落ち後の基準価額で、一般に無手数料で再投資する。分配金再投資の際もいったん支払われた分配金を再投資する仕組みとなるので、普通分配金は課税後の分配金(現在は10%課税)が再投資に回り、特別分配金は非課税として再投資される。この時、個別元本に関しては、分配金を受け取らず自動再投資にしても、特別分配金が出た場合は、個別元本が特別分配金の額だけ減額する(普通分配金では個別元本は変わらない)。ただ、分配金を再投資に充てた分だけ口数が増えるので、個別元本はファンドを一部買い増した場合と同様に、購入時の基準価額と購入口数で平均調整される。

仮に、当初投資額(販売手数料控除後)を100万円(1万口あたり基準価額1万円×100万口)として、自動再投資を選択したとする。投資から3年間経ち、この間の分配金がすべて特別分配だった場合、当初の個別元本は1万円だが、3年後の個別元本は特別分配に応じて減額し、そのうえで分配金再投資によって保有口数が増え、個別元本も平均調整される。通常、個別元本は1万円以下になるが、口数は100万口以上になる。ただし、個別元本に口数を掛け合わせた投資額は当初の100万円に一致し(再投資口数などの端数計算により、計算誤差の範囲で完全一致しない場合がある)、分配金がすべて特別分配となった場合の分配金再投資では、実質的な投資元本に変化はない。

個別元本は平均購入単価と概念的に同じ意味を持つ。この点に関し、特別分配によらず、投資家がファンドを買い増すことで個別元本を下げるのを意図し、個別元本に対する収益率を上げることを狙う投資手法がある。その代表例が、毎月など定期的に一定金額ずつ、同じファンドを購入する「ドルコスト平均法(積立投資)」だ。基準価額が安くなった時点でより多くの口数を購入することができ、反対に基準価額が高い時の購入口数が少なくなるので、個別元本(平均購入単価)の上昇を抑えながら、口数を増やす仕組みとなる。

 
執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2011年08月25日)
 

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