生命保険(死亡保険)とは何のための備えか
生命保険とはヒトを対象にした保険で、被保険者である方が死亡した場合、受取人が保険金を受け取ることができる保険です。万が一のときに備えての保障を受けられるのが大きなメリットです。
生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、全年齢層の世帯加入率は88.7%となっています。実に10世帯のうち9世帯近くが加入している計算になります。
一方、貯蓄型の保険をすぐに解約してしまったりインフレになると不利なのが最大のデメリットです。
生命保険は、自分に万が一があり亡くなってしまった時に備える仕組みです。
生活をしていくためにはもちろんお金が必要です。一家の大黒柱が亡くなってしまったら、遺された配偶者や子どもは生活をするのが困難になってしまいます。そのために保険料を支払い、万が一があったときに金銭的な保障を受けられるようにする仕組みが生命保険なのです。
生命保険(死亡保険)の背景と原則
生命保険は相互扶助の考えに基づいて運営されています。相互扶助とは社会や組織を交差している方がお互いに助け合うこと。
保険に加入している方が保険料を支払い、亡くなった場合にその保険金を支払うことで、遺された遺族がその後の生活に困らないための仕組みとして成り立っているのです。
そもそも生命保険の起こりは中世ヨーロッパにまでさかのぼります。
当時の諸都市では商工業者の間で結成された各種の職津別組合、ギルドが存在していました。商人ギルドや手工業ギルドなど職種によって分かれており、製品の品質や規格、価格が厳しくギルド内で統率されて品質の維持が図られていました。販売や営業、雇用や職業教育も独占的な権利を有していたと言われています。
組合員の冠婚葬祭費用を相互扶助するためにお金を集めたのが生命保険の原型です。
現在に近い生命保険になったのは17世紀のイギリスで、牧師たちの間で万が一の事があった際に遺族に生活資金を支払うために保険料を出し合ったそう。
しかし、当時の保険は不備があり全員一律の保険料だったために、高齢者が増えると死亡保障が払われなくなり成り立たなくなりました。
これを解決したのが数学者のエドモンド・ハレー。ハレー彗星の軌道計算を行い「76年後に回帰する」と予言した科学者ですが、終身年金に関する論文も発表しています。住民の死亡記録から統計解析を行い、各年齢の死亡率や平均余命などを関数化した生命表を作りました。
この生命表をベースに現在の生命保険も設計が成されています。
1762年にはイギリスで世界初の生命保険会社が設立され、日本では福沢諭吉が紹介したことで明治14年、1881年に有限明治生命保険会社(現在の明治安田生命)が設立されています。
生命保険(死亡保険)の加入の目的
多くの方が入っている生命保険。加入の理由は多くありますが……。
生命保険文化センターによる「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、トップは「医療費や入院費のため」です。そして、「万が一のときの家族の生活保障のため」「万が一のときの葬式代のため」「老後の生活資金のため」などの理由が続きます。
「貯蓄のため」や「子供の教育・結婚資金のため」など資産を貯める目的で生命保険に入っている方、「相続および相続税の支払いを考えて」や「税金が安くなるので」など節税を目的にして加入している方もそれなりに見受けられます。
生命保険(死亡保険)の必要性とは?どんな人が必要?
死亡保険は、万が一のときに、遺された家族が生活に困窮することのないように備えるものですので、生命保険が必要な方は、家族がある方で自身が亡くなった時にまとまった金額を準備したいと考える方です。
遺された家族がどのように生活していくのかを考えるところからスタートすると良いでしょう。
生命保険(死亡保険)不要派の意見とは?
「生命保険が必要ない」という方もいます。
例えば、「十分な貯蓄がある方」。生命保険に加入しなくても貯蓄を残すことで生活が成り立つならば必要ないでしょう。「将来結婚の予定もなく一人で生きていく」という方も必要ないでしょう。
例え、亡くなったとしても経済的に困る家族や親族はいなければ生命保険は必要ありません。
また、現在「独身で扶養家族が居ない方」も生命保険は必要ないかもしれません。
仮に万が一亡くなってしまっても、独身で扶養している家族が居なければ困る方が居ないからです。
自身のお葬式代となる200~300万円の預貯金があれば十分に賄うことができるはずです。
金融資産としての生命保険(死亡保険)
生命保険に加入する目的は「万が一の事態への備え」ですが、貯蓄性も兼ね備えた金融資産として考えることもできます。例えば、終身保険は契約から一定の年数が経過してから解約をすれば定期預金よりも有利な金利でリターンを得ることができます。日本は長年ゼロ金利政策を行っており、現在の銀行預金の金利は非常に低い状態が続いています。
生命保険に加入することで、亡くなることへのリスクの備えとともに将来への貯蓄として考えるのも一つのポイントでしょう。また、生命保険の支払いは一定の金額までは相続時において非課税となる「保険料の控除」枠があります。相続時の税負担を軽減させるために加入する人もいるのです。
生命保険(死亡保険)の加入率
生命保険の加入率についても抑えておきましょう。2016年の生命保険文化センター「生活保障に関する調査」のデータを見ると、生命保険の加入率は増加傾向にあります。
2016年の調査では男性が80%台、女性は2004年の調査では70%台だったのが80%を超えています。
多くの方が何かしらの生命保険に加入していることが伺えます。
性別・年代別の加入率
生命保険の加入率を性別や年代別でも見ていきましょう。
性別による差は20代から60代まで比べてみてもあまり見受けられません。
一方で、年代別の加入率が上がるのが30代になってから。20代では男性60.8%であるのが30代では85.5%にまで上がっています。現在の平均初婚年齢は30歳と言われており、この年代に入ると家庭を持つ方が増えるのが大きな理由です。子どもが学校教育を受けている期間の40代~50代も80%後半台と高めに推移していますが、60代になると加入率は少し下がっていきます。
ライフステージ別の加入率
ライフステージ別で生命保険の加入率も比べてみましょう。
未婚の方は保険の加入率は60%台ですが、結婚すると80%台後半になります。子どもが産まれ小学校、中学校、高校に進むにつれて加入率は90%台となっています。家族が増えたら、自身に万が一があったときに備えて生命保険に入っていることが窺えます。
世帯年収別の加入率
世帯年収によっても生命保険の加入率は変わってきます。
年収300万円未満の加入率は62.9%となっていますが、300~500万円は85.5%と上がっています。年収500万円以上を超えると加入率は90%を超えていきます。年収1000万円以上の実に95.4%の方が生命保険に加入しています。
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生命保険(死亡保険)が必要な場合とは?
ケースで考える
生命保険が必要な場合をケースで考えていきましょう。
怪我や病気で入院した場合
生命保険が必要な場合は病気や怪我で入院したときです。病気や怪我で医療機関を受診した時には当然費用がかかります。生命保険の医療特約や医療保険を利用すれば保障を受けることができます。
◆自己負担額には限度がある
仮に病気や怪我で入院して治療を受けた場合、どのぐらい費用はかかるのでしょうか。一般的なサラリーマンの場合、公的医療保険である健康保険に加入しているので自己負担の割合には3割です。かかった医療費の3割を負担する形ですが、自己負担には限度があります。
入院時の食事代、個室や少人数の病室を選んだ際の差額のベット代、先進的な治療を受けた際の治療費なども自己負担になります。また病院までの交通費や入院時の日用品のお金なども自己負担です。これらの自己負担分の金額も生命保険の医療特約を使えば減らすことができます。
◆高額療養費制度
公的な医療保険には高額医療費制度があります。自己負担額が3割といっても治療費がかさんだ場合にはなかなか負担が大きいもの。ひと月にかかった医療費の自己負担額の上限を設けるために高額医療費制度があります。月収が28万~50万円程度の一般的な年収の方の場合、8万円程度が自己負担金額になります。ただし、こちらも先進医療にかかる費用や、個室にした際の差額ベッド代などは対象になりません。それに関しては生命保険の医療特約を使い備えることができます。
怪我や病気で働けなくなった場合
病気や怪我で働けなくなった時にも生命保険の医療特約で備えることができます。
◆「傷病手当金」を受け取ることができる
そもそも健康保険制度には傷病手当金という制度があります。これは、病気や怪我で働けなくなった時に健康保険が代わって最長1年6か月に渡って給与の3分の2を支払ってくれる制度です。
病気や怪我で働けない状態になったとしても公的な医療保険によって保障がなされます。
◆「傷病手当金」の注意点
しかし、傷病手当金にも注意点があります。それは、傷病手当金は健康保険の制度であるということ。自営業者が加入している国民健康保険には傷病手当金はありません。自営業を営んでいる方は病気や怪我で働けなくなくなるリスクを見越して、生命保険の医療特約に入っておくと良いでしょう。
また、傷病手当金を受け取れる一般的なサラリーマンでも給与の3分の2なので、収入が減ることは間違いありません。収入のダウンに備えるには生命保険の医療特約が心強い存在になるはずです。
世帯主が亡くなった場合
世帯主が亡くなった際にも生命保険は必要になります。世帯主が亡くなった場合について解説します。
◆「遺族年金」が利用できる
仮に世帯主が亡くなってしまった際には、社会保障で「遺族年金」という保障がなされます。亡くなった方の職業や家族構成によってもその金額は変わりますが、遺された家族が妻と子ども二人と想定すると月に10万円前後で年間約120万円程度が目安となっています。
勤務先によっては死亡退職金や弔慰金がでるケースもあります。ただし、遺族年金は恒久的な制度ではありません。遺された家族の年齢状況などに応じて金額が変わっていくことを覚えておきましょう。
◆必要保障額はどのくらい?
仮に亡くなった場合の必要な保障額を考えておくと、どの程度金額を準備しておけばいいのかが見えてきます。必要保障額の目安は、遺族の支出と遺族の収入によって見えてきます。
支出になるのは生活費や子供の学費、住居費用や葬儀費用、相続税です。収入は遺族年金と老齢基礎年金、企業による保障と貯金や株や不動産などの資産、加えて配偶者の収入です。遺族年金や企業による保障を考え見て、足りない部分に関しては生命保険で準備することを考えてみてはいかがでしょうか。
年代・ライフステージで考える
生命保険が必要になるケースについて、年代やライフステージ別に考えてみましょう。
独身・新社会人の方
独身の方は「まだ養う家族も居ないし、保険金の受取人も居ないから……」という理由で生命保険を検討しないことも多いでしょう。万が一の事態でも遺される家族はいないので生命保険は必須ではありません。
また新社会人になったばかりの方は「収入が少なく毎月保険料を支払うのが不安」という方もいるでしょう。
しかしながら、生命保険は一般的に加入時の年齢が若ければその分保険料が安いという特徴があります。若いうちに加入して保険料をおさえておくことも可能です。終身保険に入ることでベースとなる保障を受けられるのは有効な手立てです。
結婚した方
結婚すると、お互いに万が一に備えて夫婦ともに一定の死亡保険を準備するとリスクに備えられます。その保障額は配偶者の働く状況によっても変わってくるので夫婦でしっかりと話し合うことが必要です。
子育て世代の方
子どもが生まれると生命保険がより重要性を増してきます。その生活や教育を考えたときにまとまった保障が必要になります。特に子どもがまだ小さいと母もフルタイムで働くのはなかなか難しい場合は生活費への保障を厚くするとリスクに備えられます。掛け捨ての定期保険や収入保障保険に加入することによって効果的に備えることができます。
また、子育て世代はローンを組んで住宅を購入する方も多いでしょう。ローンを組んで住宅を購入した場合は原則的に団体信用生命保険に加入することになります。団体信用生命保険は、ローンを組んだ方が万が一亡くなってしまった場合に備えるもので、ローンが完済されます。
住宅ローンを組んで団体信用生命保険に入った方は亡くなった場合で住む家を家族に残すことができるので生命保険で準備する保障を少し減額することも考えられるでしょう。
高齢のご両親がいらっしゃる方
子育てが落ち着く40代~50代以降になっていくと、今度は両親が高齢になり経済的な支えも必要になっています。また、自身の老後の資金に備える必要も出てきます。そこで、終身保険や養老保険に加入することで準備できます。
また、高齢の両親を支えるために新たに自身が死亡保険に加入することも検討に入るはずです。
リタイア目前、あるいはリタイア後の方
リタイヤ目前やリタイア後の方は一家の大黒柱としての役割は終えていますので、多額の死亡保障は必要なくなりますから、保障を見直す段階に入っていくでしょう。自身の葬儀費用を保険で準備しておくために一時払い終身保険や養老保険に入るのも手です。
また、配偶者や子どもへの相続を考える場合には、一生涯保障がなされる終身保険で準備をするのも手です。生命保険は一定金額は相続税がかからない控除の枠が設定されていますから、相続するだけの貯蓄がある方には遺される家族の状況も踏まえて終身保険などに加入を検討するのがよいでしょう。
生命保険(死亡保険)の非課税枠とは?
生命保険の受取人が複数人いた場合にも非課税枠は適用されます。法定相続人1人につき500万円の非課税枠が認められているので、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人である場合、1,500万円(=500万円×3人)までの生命保険金は非課税となります。
まとめ
自身のライフステージや家族の年齢などに応じて必要な生命保険は変わってきます。自身の年齢や家族の状況をしっかりと確認して、自身にあった生命保険を検討していきましょう。
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