エコノミスト豊島逸夫氏に聞く「投資家の意識変化と金投資への関心の高まり」 東証ETF

投稿日:2018/06/27 最終更新日:2022/08/05
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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第41回】

エコノミスト豊島逸夫氏に聞く

「投資家の意識変化と金投資への関心の高まり」

かつて「金投資」というと、どことなく怪しげなイメージが先に立ちました。それが今はどうでしょう。金投資のセミナーに若い女性が詰めかけるようになりました。今、金に対する関心が、非常に高まっています。どうして今、金なのか。元スイス銀行チューリッヒとニューヨークで外国為替貴金属トレーダーとして働き、現在、豊島逸夫事務所の代表を務めていらっしゃる豊島逸夫さんに話を伺いました。
金投資に対する関心がかなり広まってきたようですね。
豊島氏
 
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豊島逸夫事務所代表
豊島逸夫氏
 
かつて私のセミナーに集まってくださった方というのは、50〜60代の男性というのが相場だったのですが、最近は大分様子が変わってきました。というのも、20代後半から30代の女性が非常に増えてきたのです。
また、5年ほど前に金のセミナーを開くということになると、トイレの数が多い会場を探す必要がありました。理由は、お客様の多くがご高齢の方ばかりだったからです。それが、最近は授乳室のある会場が必要だ、ということになっています。これも、やはり女性の金投資に対する関心が高まってきていることを示す、好例ともいえるでしょう。
では、どうして若い女性の間で金投資がブームになっているのでしょうか。以前、丸の内のOLを集めたセミナーがありました。この時の参加者アンケートによると、8割が老後について「不安」だと答えていました。自分は恐らく結婚しない。そもそも男は頼りにならない。だから老後はきっとおひとり様だろう。年金はまず期待できない。今のお給料がどこまで増えるのかも分からない。このように、金銭的な不安感が非常に強いのです。
ただ、金銭的な不安感が強いから、運用に関しても保守的なのかというと、実はそうでもない。自分の老後を真剣に考えているということは、要するに30年後、40年後のお金を考えているのと同じです。手元にあるこの10万円を、預貯金に預けて30年間運用した場合、それで何が買えるのかということを考えると、「預貯金じゃないよね」ということになる。10年物定期預金の利率が年0.1%ということは、10万円を30年間運用して得られる利息は、3,044円に過ぎません。何も買えないでしょう。
だから、何か預貯金以外のもので運用しなければという意識が非常に高い。で、今は株式、外貨、国債など、さまざまな投資対象を勉強中であり、そのひとつとして金にも興味を示しているということなのです。
金に投資している女性が増えているということですか?
豊島氏
セミナーに参加されている若い女性の場合は、まず勉強してみようという意識が強いようですね。漠然と「金もありかな」と思っていても、なかなか「金は怪しい」というイメージが払しょくできない。そういう方が、金投資って実際にはどうなのかということを確認するために、セミナーなどに参加されています。
まあ、28歳前後の女性が参加者ですから、時間はたくさんある。今から60歳まで運用したとしても、32年もありますからね。60歳を過ぎてからだと、1年間勉強をして・・・・・・などと言っている時間的な余裕はありませんが、28歳なら、これから1年間勉強に費やしたとしても、まだまだ時間的な余裕があります。だから、金に投資するにしても、株式や債券に投資するにしても、まずは勉強することでしょう。今、私のセミナーにいらっしゃる若い女性には、とにかく勉強することと教えています。
これに加えて、女性の場合は特に「金」に対する親和性が高いようです。特に純金積立は「等価交換」といって、積み立てた分量に応じてゴールドジュエリーに交換することができます。純金積立を扱っている会社の中には、そのために立派なジュエリーカタログを作っているところもあるくらいです。これが女性の気持ちをくすぐる面があるのは事実でしょうね。
金投資にもさまざまな方法がありますが、どれが人気なのですか?
豊島氏
 
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まず、冒頭で申し上げた若い女性の場合ですが、純金積立を利用される方が多いですね。先ほど申し上げたように、ゴールドジュエリーと等価交換できることに加えて、毎月数千円という少額資金で積み立てられる手軽さが受けているのでしょう。
それ以外で金に投資している人は、2つのタイプに分かれます。
第一のタイプは、株式投資やFXで損を被り、手負いの状態になった投資家。このタイプは現物しか買いません。もちろん、先物取引なんてとんでもない。積極的にキャピタルゲインを狙うような投資にはもう関心を示さず、もっぱら資産保全のひとつとして金に投資しているのです。
第二のタイプは、株式投資やFXなどで過去、大きな損失を被った経験を持っているのに、リスクを取るのが好きなタイプです。ただ、リスクを取るのが好きでも、先物取引には行きません。レバレッジを掛けて投資をすることのリスクは、骨身に染みているのでしょう。では、何で金に投資するのかというと、金ETFがメインになります。コストも安いので、売買しやすいということです。
これでお分かりいただけると思いますが、今や先物取引で金に投資しようという投資家は、だいぶ減りました。前述したように、金投資に関心を示す層が広がり、世界的にも金取引は増えているのにも関わらず、東京工業品取引所で売買されている金先物取引の売買高は減少傾向をたどっています。今、金に投資している人は、純金積立を中心とした現物取引か、金ETFのいずれかを選んでいるということになります。
金に投資することで得られる効用は何ですか?
豊島氏
金に投資することの最大のメリットは、何といってもリスク分散にあります。金はラストリゾートと言われるように、さまざまな資産にとって最後の拠り所になります。株式や債券、あるいは紙幣といったペーパー資産は、それらの発行体の信用力が低下すると、価値そのものが大きく落ち込みますが、金の場合、発行体の信用力は関係ありません。つまり、金融危機などに強いのです。
加えて、株価が急落した時、金価格は上昇する傾向が見られます。つまり、株式のポートフォリオを持っている投資家にとって、資産の一部で金を保有するのは、リスクヘッジになるのです。
私の知り合いに株式の長期投資家がいますが、彼は常にこのように言っています。
「金を持っていると、株式の銘柄選びに余裕ができる」。
どういう意味が分かりますか?保有株式の株価が大幅に下落すると、多くの人は被った損失の大きさに圧倒されてしまい、冷静な状況判断が下せなくなります。でも、金を持っていれば、株価は下がっても金価格が上昇するため、損失が相殺されます。その分、損失額が小さくなるため、気持ちにゆとりができるのです。したがって、株式のポートフォリオを保有している投資家は、資産の一部で金を持つようにした方が良いでしょう。金を加えておけば、適度にリスク分散の利いたポートフォリオになります。
勉強をする場合、どういう方法がお勧めですか?
豊島氏
金価格というのは、ある意味、小宇宙的なところがあります。どういうことかというと、世の中のさまざまな現象、出来事を反映して価格が形成されているのです。中東情勢、米国のFOMCの動向、欧州危機、バーナンキFRB議長など要人の発言内容、さらには世界の株式市場、債券市場の動向なども織り込みます。まさに、世の中のありとあらゆることを織り込んで、金価格は動いているのです。
ですから、まずは国際情勢などに敏感になることです。テレビをつけて、漠然と国際ニュースなどを見るのではなく、ひとつひとつのニュースの意味を考えてみるのです。単に価格のあてっこをするのではなく、国際情勢を学ぶこと。
次に、虫の目、魚の目、鳥の目という3つの目を持つようにすることも大事です。
虫の目というのは、リアルタイムの価格動向を見る目。言い換えると、市場参加者の需給動向が価格に及ぼす影響を指しています。
魚の目はマーケットの潮流を見る目のこと。日々の需給バランスがひとつの流れ(トレンド)を形成していきます。今は上昇トレンドにあるのか、それとも下降トレンドにあるのかを見る目を養いましょう。
そして最後に鳥の目ですが、これは鳥が上空から大地を俯瞰する目ということで、要は金の歴史を知るという意味です。
国際情勢を勉強するとともに、こうした3つの目をバランス良く持つこと。それが金に限らず、投資を始める際に学ぶべき基本ともいえるでしょう。
ところで、人によってはなかなか国際情勢を学ぶといっても、真剣味が出て来ないという方もいらっしゃると思います。そういう方は月3,000円でも結構ですから、純金積立を始めてみることです。少額資金でも、自分のお財布の中身が影響されるということになれば、真剣に国際ニュースを見聞きするようになります。その意味では、まず純金積立を始めてしまうというのも、上達の近道といえるでしょう。
最後に、これからの金価格はどうなるかを教えてください。
豊島氏
半年後というような短期の方向がどうなるのかは、我々プロでも正直わかりません。というのも、投機筋の動き次第で、上がりもすれば、下がりもするからです。
でも、5年後の金価格がどうなるのかという点については、結構、確度の高いことを言えると思います。ずばり、5年持つことができるなら、海外金価格は1トロイオンス=2,000ドル以上、国内金価格は1グラム=6,000円。これがメドになると思います。つまり、今よりも値上がりするということです。
金価格が5年後にかけて値上がりする根拠は3つあります。
第一に金の生産量。金は金鉱石1トンにつき3グラムしか採れません。現在、地表にある金鉱石はほぼ掘り尽くしてしまい、あとは海底を1,000メートル掘ってやっと採れるという状況です。それには、莫大な生産コストがかかりますから、その分、金価格は上昇せざるを得ません。
第二に需要サイドの動き。年間2,800トンの金が生産されていますが、その6割を中国とインドが買っています。長期的にインド、中国の経済は更に伸びるでしょうから、金に対する需要はますます高まるでしょう。これも、金価格の押し上げ要因になります。
そして第三の理由ですが、マネタリーベースが世界的に拡大していること。つまり、流通しているお金がどんどん増えているのです。米国と日本の量的金融緩和に加え、今後は欧州も本格的な量的金融緩和を実施してきます。さらに中国も利下げに踏み切るでしょうから、ますます金にとっては追い風が吹いてくるでしょう。
以上の理由から、金価格は長い目で見て上昇すると考えています。
掲載日:2012年月10月25日
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豊島逸夫(としま いつお)氏プロフィール
default alt アール・ビー・エス証券会社東京支店 リサーチ・ジャパン・チーフエコノミスト
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。
9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。
三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属。外国為替貴金属ディーラー。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもつ。
金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場でポジショントークにとらわれず金市場、国際金融、マクロ経済動向について解説する。今年9月に最新著「不安を生き抜く、金読本」(日経マネームック)を女性向けとして出版。

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監修者:菅原 良介
編集者:K-ZONE money編集部

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