約定は注文が成立することで、受渡日は代金の支払いや証券の引き渡しがおこなわれる日を意味しており、証券取引においては、多くの場合約定日と受渡日は別の日となっています。また、市場環境の変化や注文内容によっては、注文をしても約定されないケースがあることも、あらかじめおさえておきましょう。
この記事では約定や約定日・受渡日の違いや、株の取引の仕組みについて説明していきます。
約定、受渡日とは?
約定とは、株や投資信託をはじめとした有価証券や、FXなどで売買の取引が成立することを意味します。また、受渡日とは、約定した取引に従って、実際に証券の引き渡しと金銭支払いがおこなわれる日です。
株やFXでは、注文したからといって直ちに約定になるわけではありません。例えば、証券取引所で売買される株は「買い」なら売り手、「売り」なら買い手と、注文にこたえてくれる相手の投資家が出たときに、始めて約定されます。
このように、注文と約定は異なるものであることをおさえておきましょう。
約定日と受渡日の違い
約定した日を約定日といいますが、多くの証券において、受渡日は約定日よりも後の日付になります。株の場合は、通常は約定日の2営業日後が受渡日です。例えば、月曜日に約定した場合は、受渡日は水曜となります。
もし、金曜日に約定したときは、土曜日・日曜日を挟んで、翌週の火曜日が受渡日です。 なお、投資信託の場合は、銘柄によって受渡日が異なるため、売買を始める前に目論見書などで受渡日の条件をあらかじめ確認しましょう。
受渡日から、注文した株や投資信託を保有することになるので、配当金やNISA口座での非課税枠は約定日ではなく、受渡日で考える必要があることに注意が必要です。
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なぜ約定しないのか?3つのケースで解説
注文を入れたからといって必ず約定するわけではありません。株の売買において適切な取引相手がいない場合や、投資信託において基準価額が急騰して購入代金が不足した場合、FXにおいて極端に為替レートが変動する場合などには、取引が不成立となり約定しないケースがあります。
では、ここからは、株、投資信託、FXそれぞれの約定しない原因をみていきましょう。
株の場合
株では、証券取引所に取引相手がいなければ、注文しても約定に至らないケースが考えられます。
例えば、極端な例として、売り注文が取引所に一つも出ていないときには、どんな買い注文を出しても約定には至りません。 売り注文が入っているときは、購入価格を指定しない「成行注文」であれば直ちに約定されます。
一方で、約定する希望株価を指定する「指値注文」の場合は、指定した株価以下での売り注文か、売りの成行注文が入らない限り、やはり約定に至りません。
投資信託の場合
投資信託では、基準価額が上昇した結果、購入代金が不足した場合には約定に至りません。投資信託は、自分の売買に適用される基準価額がわからないまま注文を出します。銘柄によって異なりますが、最速でも注文した日の夜間、銘柄によっては翌営業日以降に決定する基準価額を適用するためです。
そのため、注文した時点の基準価額では口座に充分な現金が入金されているようにみえても、注文後に基準価額が大きく上昇し、購入代金が不足する場合があります。
FXの場合
FXは、急激な為替レートの変動があったときに、本来約定されるはずの為替レートであるにもかかわらず、約定に至らないケースがあります。FX業者により判断は異なりますが、急激な為替レートの変動を理由に、正常な売買が困難であると判断されると、約定されず取引不成立となる場合があるのです。
また、FX業者によっては一定の「スリッページ」が発生する場合に、約定を成立させないよう設定することができます。この設定をした場合は、本来約定に至るはずの為替レートに達しても、スリッページが大きい状況下では約定されません。
FX約定のスリッページとは?
FXにおける「スリッページ」とは、指値注文の為替レートと約定したレートの差を意味します。為替レートが大きく変動する状況では、指値で指定した為替レートに達して約定したとしても、指定したレートと約定レートがずれるスリッページが発生することがあるのです。
スリッページは指定した為替レートより有利なレートで約定する場合もあれば、不利なレートで約定する場合もあり、投資家の損益にブレが生じる原因となります。
約定の仕組みについて
証券取引所における株の売買には、大きく分けて以下の2種類の取引方法が存在します。
- 板寄せ方式
- ザラバ方式
ここからはそれぞれの取引方法をみていきましょう。
板寄せ方式
板寄せ方式は、取引時間の始まりを意味する「寄付き」と終わりを意味する「引け」においておこなわれる取引方法です。次の3つが成り立つように取引を約定させ、約定価格を定めます。
条件1:成行注文は全て約定させる
条件2:約定価格より高い買い注文と、低い売り注文は全て約定させる
条件3:約定価格上の買い注文と売り注文、いずれか片方は全て約定させる。
尚、前場の寄付きの板寄せ価格がその日の株価の「始値」で、後場引けの板寄せ価格が「終値」です。
ここからは板寄せ方式について、図を使用してさらに詳しく説明していきます。
上の図は取引開始前の状況です。売り注文について安い価格から、買い注文について高い価格から注文数量を加算し、それぞれの価格までの累計注文数量を計算。そのうえで、売り注文と買い注文の累計が逆転する価格を算出します。図の例においては、500円・501円で逆転するため、このどちらかが約定価格です。
ここでは仮に、500円が約定価格と仮定して考えていきましょう。まず、売り・買い双方の成行注文を約定していきますと、図の場合は売り注文が200株残ります。
続いて、残った売りの成行注文200株と500円より低い売り注文600株の計800株と、500円より高い買い注文の計800株を約定。これにより500円未満の売り注文と、500円より高い買い注文がなくなります。これで先ほど示した条件1と条件2が成立します。
最後に、500円にある売り注文・買い注文をみると、図の例では400株しかない売り注文の方が少ない状態です。そこで、売り注文40株と買い注文400株を約定したら、買い注文の600株が残る形に。これにより条件3が成立するので、この時の板寄せ方式による約定価格は500円となります。
ザラバ方式
ザラバ方式は寄付きや引け以外の取引時間中におこなわれる取引方法です。こちらも図を使って注文ごとの約定価格をみていきましょう。
まず①のように成行買いの注文を200株入れた場合。売り注文のうち最も低い価格である②の501円の2,000株の指値注文のうち、早いタイミングに注文されていた200株分が約定に至ります。
続いて③のように498円で1,000株売り注文がなされた場合を考えてみましょう。この場合、まず最初に最も高い買いの指値注文である500円の600株が約定されます。498円の400株の売り注文が残った状態なので、次に高い499円の800株の買い注文のうち、早いタイミングから注文されていた400株を約定させます。
約定のタイミングについて
大前提として、約定は証券取引所が空いている時間しかおこなわれません。そして、取引時間中の約定は以下二つの原則にしたがっておこなわれます。
- 価格優先の原則
- 時間優先の原則
ここからは取引可能な時間と以上二つの原則をみていきましょう。
取引可能な時間
取引可能な時間は証券取引所ごとに決まっています。例えば、東京証券取引所の場合は、9時から取引が開始され、15時に終了します。また、11時30分から12時30分はお昼休みです。お昼休み前の9時から11時30分を「前場」、お昼休み後の12時30分から15時を「後場」と呼びます。
また、平日の月曜日から金曜日に取引がおこなわれる一方で、土日祝日と年末年始の12月31日から1月3日は取引がおこなわれません。
取引時の2つの原則
証券取引所での取引は価格優先の原則と時間優先の原則という二つの原則にしたがって約定されていきます。先ほど紹介した板寄せの取引もザラバの取引も、この二つの原則に従って約定され、約定価格が決まっているのです。
価格優先の原則
価格優先の原則とは、買いであれば高い価格の注文、売りであれば安い価格の注文から優先的に約定させていくということです。
例えば、1,010円の買い注文と、1,000円の買い注文が入っていた場合は「より高くても買いたい」という意思が示されている1,010円の買い注文を先に約定します。 逆に990円の売り注文と1,000円の売り注文がある場合は、「安くてもいいから売りたい」という注文である990円の注文が優先的に約定されるわけです。
時間優先の原則
時間優先の原則とは同じ価格の注文の場合に、早いタイミングで入った注文から優先的に約定させていくことです。なお、注文タイミングが同時とみなされた場合には、この原則は適用されません。
まとめ
今回は約定や約定日・受渡日の違いや、約定の仕組みについて紹介しました。注文と約定、受渡はそれぞれ異なる概念で、多くの証券売買では約定日よりあとに受渡日が到来します。混同すると購入代金が支払われるタイミングや、取引が成立・不成立を勘違いする恐れがありますので、それぞれの違いをしっかりと抑えておきましょう。
また、株の売買をする人は、約定の仕組みや、約定が可能な時間、約定における二つの原則を覚えておけば、誤った注文をしたり、的外れな注文をしてなかなか約定されなかったりといった事態を防ぐことが可能です。
ミスなく円滑な証券売買やFX取引をおこなうために、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
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よくある質問
Q | 株の注文は夜間や休日でもできますか? |
A | 東京証券所の取引時間は平日の日中に限定されているため、取引時間外の夜間や休日には取引ができません。 一方で、証券会社によっては、時間外の株の注文を受け付けています。例えば、楽天証券では証券取引所が開いている時間以外でも、次の時間には日本株の注文が可能です。
また、PTS(私設取引システム)という仕組みを介して、平日夜間に取引ができる証券会社もあります。楽天証券の例を紹介すると、平日の8:20~16:00、17:00~23:59にPTSでの注文を受けつけており、売買相手が見つかれば東証の取引時間外でも約定が可能です。 |
Q | 株式投資では株の購入以外でどのような費用が発生しますか? |
A | 株の売買においては、株自体の売買代金以外に、証券会社に支払う取引手数料が発生します。手数料の水準は証券会社によってさまざまで、例えばSMBC日興証券では約定代金の最大1.265%(ただし、最低5,500円)の委託手数料がかかりますです。 また、楽天証券では約定代金ごとに定額となっていて、現物取引の場合、約定代金5万円までは55円、10万円までは99円と約定代金が大きくなるごとに、取引手数料が高くなっていく仕組みとなっています。1日の約定代金が50万円までの場合は取引手数料が無料である松井証券のように、条件付きで取引手数料が無料になる証券会社もあります。 その他、一部の証券会社では口座を保有していると口座維持手数料がかかる場合も。例えば、大和証券では、条件によっては年間1,650円の口座維持手数料が発生します。ただし、大半の証券会社では口座維持手数料は無料になっているので、口座開設をする証券会社をうまく選べば、口座維持手数料を払わずに株の売買が可能です。 このように自身の運用方法に合った証券口座を選ぶことで、投資にかかる費用を低く抑えられます。 |
Q | 株式投資はどのくらいの資金から始めるのがいいですか? |
A | 数千円程度の定額から始めることもできるので、自分の余裕資金に応じて投資額を決めるのがよいでしょう。株式は原則としては、100株ごとの単元で購入する決まりとなっています。すなわち、株価の100倍に取引手数料を加えた金額が最低限必要な投資額となり、この場合は銘柄の株価によるものの、おおむね数万円〜数十万円程度の資金が必要です。 しかし、証券会社それぞれが独自に実施している、るいとう(株式累積投資)や少額投資の仕組みを活用すれば、より少ない投資金額でも株投資を始められます。るいとうは毎月特定の株を積み立て投資する仕組みです。積立額は単元に満たなくても問題なく、おおむね1万円程度から始めることが可能です。 また、少額投資は単元未満の単位での売買に対応した制度です。具体的なサービスは証券会社により異なりますが、例えばSBI証券では、単元未満の株を「S株」と名づけて売買に対応しています。SBI証券の場合は1株単位で売買可能で、かつ買付手数料が無料のため、購入する各銘柄の株価がそのまま最低投資金額となります。 このように証券会社によっては少額から投資を始められるサービスもあるため、注意深く情報収集を行い、自身の資産に合わせて投資額を検討しましょう。 |