追加証拠金(追証)とは
信用取引では、取引を始めるにあたって現金や株式等を担保として証券会社に預ける必要があります。追加証拠金とは代用有価証券が値下がりしたり、信用取引をしている銘柄に含み損が生じたりした場合、委託保証金が必要な額を下回った時には不足分の保証金が追加で必要になります。その証拠金のことを追加証拠金と言います。また、略称で「追証(おいしょう)」と呼ばれることもあります。
追加証拠金はどんな取引で発生する可能性がある?
投資金を目一杯使って投資を行っていると、追加証拠金が発生しそうなときに支払う余裕がなくなり追加証拠金が発生しますが、一体どんな時に追加証拠金が発生するのでしょうか。
現物では発生しない
現物取引とは、自身が持っている金融資産を用いて株式を売買する取引です。その際は、誰からもお金を借りることなく取引を行うので、追加証拠金は発生しません。
主に信用取引で発生する
追証とは信用取引やFX、商品先物取引といった証拠金取引において発生します。ここでは、信用取引について説明します。信用取引とは、証券会社からお金や株式を借りることで手持ち資金以上の取引が可能になる取引です。現物取引では買った株を売って利益を得る仕組みですが、 信用取引では資金を借りられるだけでなく、証券会社が保有している株を借りる事もできるので株を売り、後で買うという通常と逆の取引も可能です。このため株価が下がる場面でも利益を出すことができます。
信用取引にも一般信用取引と制度信用取引があります。違いとしては、取引所のルールによって返済の期限や貸料の金額 が決められているか否かという点です。
信用取引を行う際は、信用を供与してくれる証券会社に担保として差し入れる現金や株式が必要となります。その担保を「委託保証金」と言います。信用取引の始めは最低30万円の保証金および約定する合計代金の30%以上必要となることに注意しましょう。
【この記事もおすすめ】 >>信用取引にかかる規制とは?規制の種類とリスクについてわかりやすく解説! >>信用取引のメリット・注意点について徹底解説! |
追加証拠金はどんな場合に発生する?
委託保証金が必要な額を下回った時は一体どれくらいの保証金が必要なのか、実際に追加証拠金の発生する場合はどんな時か紹介します。
最低保証金の金額を下回った時
追加証拠金が発生する条件が2つあり、この2つを両方満たさないと追加証拠金が発生していします。
1つ目は、手数料、金利、貸株料等を加味して、最低30万円の保証金が必要であることです。30万円の保証金を下回ってしまうとどんな金額で取引を行っていても追加証拠金が発生してしまいます。
2つ目は、決められた委託保証金維持率を下回ってしまった時です。信用取引の委託保証金には最低維持率が定められています。証券会社で信用取引をする場合に、建玉を維持するために必要な委託保証金の割合のことです。このことを「委託保証金維持率」ともいいます。この割合は各証券会社ごとに設定されており、これを下回ると追証が必要となってきます。
追証が必要となるケース
先ほどの説明を実際に追証が必要となるケースを例を用いて紹介します。当初(左側)は、買建玉の評価額が450万円、委託保証金が150万円でしたので、委託保証金率は約33.3%(=150万円÷450万円×100)でした。
ところが買い建玉が45万円値下がりする(右側)と、値下がり分(評価損)が委託保証金から差し引かれます。この状態での委託保証金の評価額は105万円(=150万円-45万円)となります。このときの維持率は約23.3%(=105万円÷450万円×100)となり、ある証券会社の委託保証金維持率が25%だった場合、基準を下回るので追証が発生してしまいます。
主なネット証券会社の保証金最低維持率
主なネット証券会社の有価証券は以下の表のようになっています。
松井証券 20% LINE証券 25% SBI証券 20% 楽天証券 20% |
各々の証券会社によって保証金最低維持率は異なるので確認してみましょう。
追加証拠金の確認方法
追加証拠金の確認は基本的にネット証券を使用しているのであれば、口座情報のところで追証の通知が来ているはずなので個人口座のページにログインして追加証拠金が発生しているかどうか状況確認を行いましょう。
追加証拠金を解消するには?
追加証拠金を解消するには、2つの方法があります。1つ目は追加証拠金入金期日までに、追証金額を入金して保証金維持率を30%まで回復することです。これを満たせば強制決済されずに建玉を維持できます。
2つ目は、信用取引している一部の建玉を決済する(反対売買する)方法です。返済した額の30%が追証金額から差し引かれ、追証の一部または全額が解消されます。
ただし反対売買によって決済益が発生した場合でも、その決済益は追加保証金から控除されないのでご注意ください。
\ 楽天証券の口座開設はこちら /
追加証拠金を払わないとどうなる?
追加証拠金が出てしまった場合、必ず委託保証金維持率以上の金額の不足分を証券口座に入金しないといけません。もし、その警告を無視して支払いを怠ったり、株価が上昇して委託保証金維持率以上の評価金額になった場合はどうなるでしょうか。
追加証拠金は自然に解消されない
追加証拠金が発生してしまったら、自然には解消されません。つまり、発生した翌日に株価が値上がりして評価額が委託保証金維持率を保ったとしても、追証が発生した時点で、原則としてなんらかの入金が必要となってしまいます。
期限を過ぎると強制決済される
追加証拠金を入金せずに追加証拠金の期限を過ぎてしまうと、投資家の同意を取らずに証券会社の判断により建玉の解消や代用有価証券の売却などがおこなわれる措置(強制決済)が行われます。信用取引の場合、建玉の返済期限は6か月が原則となっています。
そのため、期限までに適切な措置を取らないと、最悪の場合は全建玉が決済されてしまい大幅な損失が確定します。その際、手数料も通常通り請求されてしまいます。なお、強制決済により発生した損益は当然投資家に帰属します。余計な手数料を払わないためにも、追証の期限は必ず確認しておきましょう。
ちなみに追加保証金の解消期限は、追証の発生日から「翌営業日〜翌々営業日まで」であることが多いようです。これも証券会社によって異なるので、要確認です。
なお、強制決済のあとも不足金がある場合、その不足額分を充当するよう証券会社から求められます。
追加証拠金の発生を防ぐには?
追加証拠金は発生しないように資産管理するのが信用取引をする上での基本です。では、追加証拠金が起きないようにするには事前にどのような対策を行えばいいのか解説します。
保証金限度枠にゆとりをもった取引をする
1番基本的な対策方法としては多めに委託保証金(建玉の買付余力)を入れておくことです。多めに委託保証金を入れておくことで、追加保証金が請求されるようなギリギリの事態になることを回避でき、日々余力を持ってトレードすることができます。
また、保証金にはできるだけ多めに現金を入れておくことも有効でしょう。代用有価証券を入れてしまうとそれらの含み損も考慮しないといけなくなり、考えることが多くなり複雑になってしまいます。
加えて、現物株を担保にした場合、株価が下落した際に追証ラインを割ってしまう可能性が高くなります。最初は安定性を考え、ある程度現金を入れておくことが大切です。
損切りのタイミングを考える
信用取引は最大、保証金の約3倍の取引をすることができます。そのため、通常の取引より多くのリスクを伴います。リスクヘッジを行い損切りのルールを設け、無理ない運用を心掛けましょう。
相場を常にチェック出来ない場合などは損切りに役立つ「価格が上昇し、指定した値段以上になれば買い」「価格が下落し、指定した値段以下になれば売り」という逆指値注文という注文方法もあるので活用していきましょう。損切りについての記事もあるのでそちらをご参照ください。
信用取引は、現物取引に比べて投資の際のリスクが高くなります。委託保証維持率に注意を払いながら、レバレッジの調整や銘柄注文等、色々なことを考えて資産運用を行わなければなりません。
そのため、投資初心者の方は特に、FX等のリスクの高い短期運用ではなく、無理をしない金額の範囲で投資信託を含めた長期の現物運用から始めましょう。
まとめ
国内の信用取引は委託保証金の約3倍までの取引ができるため、株価等の変動により、売買益が多く得られるリターンが大きい分、委託保証金の額を上回る損失が生じる恐れがあります。特に信用取引が初めての方は資産を多めに入れておく、銘柄、マーケット情報等を確認するなどして追加証拠金を発生させないリスク管理を徹底して行いましょう。リスクヘッジを行い、無理ない資産運用を心掛けましょう。それでもなお追加証拠金が発生してしまった場合は、自身のポートフォリオを再度確認しながら期限内に追加証拠金の解消手続きを行い確実に入金する事をお勧めします。
\ 楽天証券の口座開設はこちら /