【第1回】REITは比較的堅調 東北地方太平洋沖地震の被害は限定的 - Jリート コラム

投稿日:2018/06/27 最終更新日:2023/03/31
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Jリート [ 専門家インタビュー アナリスト石澤氏に聞く ]

【第1回】

REITは比較的堅調 東北地方太平洋沖地震の被害は限定的

3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震は、不動産を組み入れて運用しているREIT(不動産投資信託)に、どのような影響を及ぼしたのでしょうか。東北地方では津波によって、首都圏では地盤の液状化によって、建物などに大きな被害が生じました。今回の震災がREITに及ぼした影響を、みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏に伺いました。

今回の震災は、REITのマーケットにどのような影響を及ぼしていますか?

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みずほ証券チーフ不動産
アナリスト石澤卓志氏

石澤氏:

実は、思ったほど大きな影響は出ませんでした。東証REIT指数の推移を見ると、地震が起こった3月11日は取引所の取引終了間際だったので、東証REIT指数の下げ幅は、前日比で11ポイント程度のマイナス。当然、週明け以降はある程度の影響が出て、3月15日までに155ポイント程度の下げとなりましたが、その後はまた戻してきています。4月28日時点で、ほぼ震災前の水準に回復しました(図表1)。

つまり、東北地方太平洋沖地震がREIT市場に及ぼした影響は、比較的、軽微だったと考えることができます。

REITの運用各社は、地震発生直後から、ファンドに組み入れられている物件の被害状況を公表していましたが、REITの投資対象となっている物件については、建物被害が軽微でした。高層ビルについても、東北6県で使用不能になるほど大きなダメージを受けたものはゼロです。仙台中心部にある仙台フォーラスという建物のシースルー・エレベーターのガラスが落ちるなどの破損はかなりありましたが、建物が倒壊した事例はありませんでした。

図表1
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浦安市などでは液状化現象が発生し、住居が大きく傾いてしまったというケースもありました。REITのなかには、居住用物件を組み入れて運用しているファンドもありますが、この手のレジデンス型REITには、何か影響は生じていませんか?

石澤氏:

これも特に大きな問題はありませんでした。確かに、浦安などでは戸建て住宅を中心にして、液状化現象で建物が大きく傾くなどさまざまな被害が発生しています。

しかし、高層マンションなどの場合、驚くほど被害が少なかった。これは、地盤改良をしっかり行っていた例が多かったからと考えられます。大手デベロッパーでは、高層マンションを建てるに際して、地下10メートルまで地盤管理を行っている例もありますので、敷地内での液状化はありませんでした。

とはいえ、デベロッパーによる差が生じたのも事実です。なかには地盤の整備が不十分だったためか、建物の被害が生じたケースもありました。こうしたデベロッパーによる違いは、いずれ住民の方の口コミなどによっても広がってくると思います。

また、同じマンションでも、賃貸か分譲かによって、市況の違いが生じてきています。不動産を持つリスクを感じて購入に二の足を踏む人が大分増えました。そのため、分譲マンションを購入するという動きが落ち込んでおり、短期的に市況の悪化につながっています。その一方で、安全な建物を選んで移転したいというニーズが強まったため、賃貸マンションの市場は好調のようです。

このように、居住用物件について今回の震災の影響を見ると、地盤管理という点で戸建てよりはマンションの優位性が見直されると同時に、市況面では、同じマンションでも賃貸マンションの方が、より影響度合は小さかったということが言えます。レジデンス型のREITは、基本的に賃貸マンションの組み入れですから、より被害は小さかったということになるでしょう。

東北地方の物件を組み入れていたREITはなかったのですか?

石澤氏:

17法人のREITが東北地方の物件を組み入れていました。投資していた物件数では、仙台市内に42物件、仙台以外の東北地方に5物件となっています。

ただ、その被害額自体は、それほど大きなものではありません。

もっとも被害額が大きかったのは、「日本リテールファンド投資法人」で、仙台市内の商業施設を組み入れていたのですが、全体の補修費用等の概算は6億6,800万円ほどですから、若干、配当が減ることはあると思いますが、ファンドの運営自体に大きな影響が生じるほどではないでしょう。

その他のREITが組み入れている物件の補修費用を見ると、「日本ロジスティックスファンド投資法人」が6億1,800万円、「ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人」が7,100万円、「アドバンス・レジデンス投資法人」が5,000万円、「産業ファンド投資法人」が1,700万円で、それ以外のREITは、特に補修費用を公表していません。つまり、REITの運営自体には、大きな影響は生じていません(図表2)。

現在、REITに組み入れられている物件を見ると、75%は東京圏に集中しています。具体的には、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県といった1都3県で、このうち千代田区、中央区、港区という都心3区の物件だけで30%を占めています。地方都市の景気が悪いということから、多くのREITが東京圏の物件を中心にポートフォリオを組んでおり、被災地に近い場所の物件が少なかったことも幸いしました。

図表2
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とはいえ、東京圏内に集中していることのリスクはあるのでは?

石澤氏:

東京以外の大都市圏でREITに組み入れることのできる物件がある場所ということになると、他には関西圏、九州圏では福岡などということになります。

このうち福岡については、他の地域に比べて地盤が強く、地震に強い土地と評価されていますから、地震リスクという点では、相対的に低く、その意味では投資先としての魅力もあるのですが、経済規模という点ではどうしても東京圏に一歩譲らざるをえません。

次に大阪を中心とした関西圏ですが、地震リスクという点で考えると、東京に比べて安全性が高いと言い切れないのが辛いところです。

というのも、埋立地は大阪も広いので、液状化現象の影響ということを考えると、大阪にもリスクはありますし、さらに今回の福島第一原発のような事故が起こるリスクを考えると、関西は東京に比べて原発依存度が高いという事実があります。

確かに、今回の震災によって、外資系企業のみならず、国内企業の一部でも、東京に本社機能を置いておくことのリスクが議論されているようですが、完全に東京から他の地域に本社機能を移転させるという話までは出ていないようです。あくまでも、本社機能の一部を移転させる、あるいは本社機能を複数地域に分散させるという話ですから、東京のオフィス物件に大きなダメージが及ぶほどのことではありません。

また、外資系企業が東京から撤退という話もありますが、いずれも一時避難であって、完全に東京から撤退するという話は、今のところ出ていません。そもそも、アジア地域で見た場合、東京の相対的な安心度は高いのです。韓国は北朝鮮リスクが無視できませんし、タイは政情がまだ不安定、シンガポールはマーケット規模が小さいということで、地震以外の問題も含めて優位性を比較した場合、東京をはずすことはできない。したがって、外資系企業といえども、東京からの完全撤退はないと考えています。

REITの市場動向は?

石澤氏:

東証REIT指数を見ると、確かに震災直後は大きく下落しましたが、その後は徐々に回復基調にあります。これは、特に外資系ファンドや投信の買いが旺盛だったからです。また4月以降は、国内金融機関が新年度入りで新しい運用をスタートさせる時期でもありますから、需給面でも改善の兆しが見えてくると思います。

特に国内金融機関は、かねてから、REITへの投資意欲を高めていました。現時点では、まだ不動産投資のリスクに対する警戒感がありますから、REITにとっても厳しい局面ですが、それも徐々に改善されていくでしょう。

ただ、REITのなかでも、物色されるもの、そうではないものとの差は、今後も続きます。外資系ファンドがREITへの投資意欲を高めているといっても、彼らが投資するのは、時価総額が大きな上位REITが中心です。したがって当面、物色の対象も上位REITに限られます。

とはいえ、実際に投資をして本当に旨味があるのは、中堅REITです。配当利回りが5%以上の銘柄もありますし、今後、国内金融機関のREIT投資が活発になれば、中堅REITの評価が上昇する可能性があるからです。

また、日本銀行がREITの買い入れ額を、震災後に500億円から1000億円に倍増させたことも、マーケットを押し上げる要因になるでしょう。

図表3
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REIT投資のリスク要因は?

石澤氏:

大きな余震があると、不動産投資のイメージ低下を招きます。加えて原発問題が長引くと、すべての投資に関して様子見ムードが強まりますから、やはりREITにとってもマイナス要因になります。REITの市場環境は徐々に回復していますが、景気動向を含むリスク要因については、しばらく注視していきたいと思います。

 
インタビュー:Fanet MoneyLife 2011年04月20日(掲載日:2011年07月06日)

プロフィール : 石澤卓志 いしざわ たかし
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。


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