デイトレーダーと言われるように、株式投資では短期売買を行う投資家が大勢います。一方、投資信託は長期保有が原則と言われます。J−REITは「投資法人」という形態をとっており、いわば株式と投資信託の中間的な仕組みともいえます。では、J−REITは長期保有と短期売買のいずれが合うのでしょうか。
「J−REITに投資する場合って、やっぱり長く持たなければいけないのかしら」と不動さん。今年に入ってからJ−REITの売買価格が上昇しているため、目先で利益確定をしたいと考える投資家も増えています。
「日本ビルファンド投資法人の売買価格って、2013年1月9日の安値が88万2,000円。それが11月末には120万4,000円で、一時は150万円台に乗せたこともあったじゃない。これだけ値上がりしたら十分だと売りに回る人も出てきますよね」。
その通りですが、J−REITの良さは値上がり益もさることながら、やはり上場株式に比べて、全般的に高い分配金が得られる点にあります。現在、上場されている43銘柄のうち、分配金の高い銘柄だと、利回りベースで見た場合、5%超のリターンが得られます。もし、この分配金利回りが維持されれば、10年で50%の分配金が得られる計算になります。ということは、購入時に比べて売買価格が半分になったとしても、その値下がり損は分配金でカバーできます。
「でも、分配金ってある程度、変動しますよね。今は高いとしても、それが将来にわたって続く保証はないのでは?」
確かに、分配金の額は一定ではありません。J−REITの場合、組み入れている不動産物件から得られる賃貸料が分配金の原資になりますから、投資している不動産の空室率が上昇したり、あるいは金利水準が上昇して借入コストなどが上がったりすると、分配金の額にも影響が及びます。したがって、過去の分配金の推移をチェックして、どの程度の範囲で分配金の額が増減したのかをチェックする必要はあるでしょう。
しかし、それでもJ−REITの分配金利回りは、上場株式の配当利回りや、国債利回りに比べて有利なので、この低金利時代に利回りベースで投資できる、数少ない投資商品になっているのも事実です。
「「もし長期投資するとしたら、どういう投資家に向いているのかしら」
J−REITは、非常に幅広い資産運用ニーズを満たせる商品です。相対的に有利な分配金収入を獲得するという点で言えば、退職に際してJ−REITを資産の一部に組み入れておき、個人年金代わりに分配金を受け取っていくという運用方法が考えられます。
また、長期投資というと、やはりある程度、年齢層の若い人も視野に入ってきますが、そういう人にとってはインフレリスクのヘッジという点で、J−REITへの投資が注目されます。インフレになれば不動産価格が上昇するので、J−REITの価値も上がっていきます。長期的に、インフレから資産を守るという点で、J−REITは魅力的な投資対象になるのです。
今後の日本経済を考えると、年2%という物価上昇がいよいよ実現に向けて動きだしました。デフレ経済からインフレ経済への切り替えが必要になるのは、資産運用も同じです。そのなかで、最も注目される投資商品のひとつが、J−REITなのです。
掲載日:2014年1月31日