投資信託 [ Jリート abc ]
【第5回】
J-REIT投資と債券投資
J-REITへ投資する際、多くの人は分配金を定期的に受け取ることに魅力を感じるようです。その点から考えると、毎年決まった時期に利息を受け取ることができる利付債券への投資も同様でしょう。外債ファンドなども人気があります。資産を保有することで安定的・継続的に受け取ることのできる現金収入のことをインカムゲインといいますが、インカムゲインが期待できることは似ていても、資産によって特徴が異なります。ここでは、J-REITと利付債券を比べ、その違いを整理してみます。
投資目的はインカムゲイン
そもそも、J-REITの投資口(株式会社の株式に相当)が資本性の資金(エクイティ)であるのに対して、債券は発行体への貸し付け(デット)という性格を持つために、両者の性質は大きく異なります。
J-REITの収益の源泉は、収益不動産から得られる賃料収入やその売却益です。よって、投資に対するインカムゲインは、どの程度の収益が上がったかという実績を受けて決算毎に変動し、常に一定というわけではありません。しかし、J-REITの収益の柱である賃料収入は、景気の良し悪しやそれに伴う空室率の変動などで変わることはあるものの、少なくても2〜3年固定されているのが一般的。短期間に大きくぶれることは少ないため、比較的安定的なインカムゲインを期待できます。
利付債券は、国や地方公共団体、民間企業などが資金を集める為に発行する一種の「借用証書」。例えば国債を購入するということは、国へお金を貸すことを意味し、それによって得られるのは、貸し付けの対価としての利息です。中でも固定利付債券は、発行時に利率が決まるため、発行体が破たんしない限り、約束された金額をインカムゲインとして得ることができるのが魅力です。
インフレに強いJ‐REIT、弱い債券
J‐REITの投資口の特徴のひとつとして、「インフレに強い」ことがあげられます。インフレになると不動産の価値は上昇し、それに伴って賃料も上がると考えられるからです。価値の高まった不動産を売却したり、賃料収入が増えたり、といったことで、インカムゲインは増加します。もちろん、保有している投資口の価格も上がるでしょう。不動産のオーナーは、インフレ時に有利なのです。
それに対して、債券は「インフレに弱い」という性格を持っています。特に固定利付債券は、利息があらかじめ決められているため、インフレでお金の価値が下がれば、受け取る利息の実質的な購買力も目減りしてしまいます。また、債券の額面金額についても、インフレが進めば、償還時での実質的価値は目減りすることになるでしょう。逆にいえば、J‐REITに逆風が吹くと考えられるデフレ時には、固定利付債券の魅力が増すことになります。
組み合わせで自分に合った定期収入を!
両者とも、一種類の銘柄を保有するだけでも定期的な収入を期待できます。さらに、分配金や利息の支払時期が異なる複数のREITや利付債券を、工夫して組み合わせることで、例えば各月や四半期ごとなど、自分に都合のよい時期にインカムゲインを得ることが可能となります。
自分で組み合わせを考えるのはちょっと難しい、個別の銘柄のリスクをできるだけ避けたいというのであれば、投資信託を利用するというのもひとつの手段でしょう。いわゆるREITファンドや債券ファンドを利用すれば、投資対象の分散が可能になるうえ、個別銘柄を自分で管理する煩わしさもありません。労せずして毎月の分配金を受け取ることができます。
投資の際は、資産の性格の違いにも着目することも忘れずに。例えば、インフレ・デフレの動向に対してJ‐REITとは異なる値動きをするとものを組み合わせる工夫をするなどで、資産全体の投資リスクを抑える効果が期待できます。