JEPIはJ.P.モルガン・アセット・マネジメント社が運用する、アクティブETFの1つです。S&P500の関連銘柄を中心とした株式と、ELNで構成されています。
JEPIの運用目標は、値上がり益を維持しつつ、インカムゲインも確保すること。カバードコール戦略を活用して、オプション・プレミアムからの収益も投資家に分配しています。毎月分配型である点、アクティブETFとしては低コストである点も特徴です。
JEPIの基本情報
まずは、JEPIの基本情報について解説していきます。
JEPIとは?
JEPIとはJ.P.モルガン・アセット・マネジメント社が運用する、高配当ETFの1つです。2020年5月21日に設定されたETFで、株式アクティブETFの中で、世界第1位(2023年4月30日時点)の運用残高を誇ります。
(2023年9月25日時点)
正式名称 | JPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカム・ETF |
運用会社 | J.P.モルガン・アセット・マネジメント社 |
運用方法 | アクティブ運用 |
基準価額 | 54.13米ドル |
純資産額 | 292億6400万米ドル |
直近の分配金利回り(税込) | 7.49% |
経費率 | 0.35% |
JEPIはアクティブ運用のETFとして、米国株式の人気指数であるS&P500に関連する銘柄を中心に構成されています。運用の目的は、キャピタルゲイン(値上がり収益)とインカムゲイン(分配利益)の両立。ボラティリティー(価格変動)を抑制し、投資リスクの低減も追求しています。
(注)アクティブETFとは?
「アクティブETF」とは、指数以上の高いリターンを目指し、積極的(アクティブ)に運用するETFのことです。対照的に「パッシブETF」は、株価指数等の動きに連動した運用をします。
アクティブETF (アクティブ運用) |
パッシブETF (インデックス運用) |
|
運用方針 | 指数を上回るリターンを目指しファンドマネジャーが運用する | 特定の指数に連動する |
指数との連動 | なし | あり |
銘柄選びの柔軟性 | 高い 自由に構成する |
低い 連動する指数の構成銘柄と同様 |
運用コスト | 中程度 | 低い |
JEPIの主要構成銘柄
JEPIの主要構成銘柄は次のとおりです。資金の約8割を、S&P500採用銘柄を中心とした株式に投資し、2割を上限にエクイティ・リンク・ノート(ELN)と呼ばれる仕組み債に投資しています。
(2023年9月25日時点)
銘柄 | 構成比率(%) |
アマゾン・ドットコム | 1.61 |
マスターカード | 1.56 |
アドビ | 1.56 |
マイクロソフト | 1.55 |
プログレッシブ | 1.55 |
アッヴィ | 1.51 |
コムキャスト | 1.50 |
アクセンチュア | 1.46 |
ビザ | 1.44 |
インテュイット | 1.42 |
JEPIの分配金について
つづいてJEPIの分配金について解説します。
JEPIの分配金はいつもらえる?
JEPIの分配金の支払い頻度は毎月です(※)。株式の配当金とオプション・プレミアム(後述)から収益をあげ、それらを原資として投資家へ分配を行っています。
分配金の支払いのタイミングはETFによって異なり、毎月以外に、年1回・2回・4回のパターンがあります。年2回または4回の支払いが一般的です。毎月分配型のJEPIを「給与感覚で毎月分配金が得られる」と好む投資家もいます。
(※)毎月分配を確約するものではありません。
JEPIの分配金の仕組み
JEPIの収益は「インカムとキャピタルの二刀流」と言われています。インカムゲイン(配当金とオプションプレミアムからの収益)とキャピタルゲイン(値上がり益)の、双方が期待できるという意味です。ここでは、分配金に絞って仕組みを解説します。
一般的にETFの分配金とは、組入れ銘柄から得られる収益(配当金)からコストを除いて投資家に支払うもののことを言います。
JEPIではそれに加えて、コールオプションの売り益も活用し分配金としている点が特徴です。コールオプションについては、後ほど詳しく説明します。一般的なETFとは異なり、2つの手法で分配金を確保し、高い水準での分配利益を目指しています。
JEPIの利回り推移
以下は、2020年の設定以降のJEPIの分配金推移を表すグラフです。
直近3年間で最も分配金が高かった月は2022年7月で、1株あたり0.62102米ドルの分配がありました。逆に最安値だったのが2021年8月で0.25719米ドルでした。上下幅はありますが、毎月およそ0.4米ドル程度の分配で推移していることが分かります。
具体的にどの程度の分配金利益があったのでしょうか。2021年末のJEPIの基準価額(1株当たりの価格)は63.19米ドルでした。そして2022年の1株あたりの分配額の合計は、6.3614米ドルでした。したがって、2022年初から2022年末まで10株(88,466円)のJEPIを保有していた場合、1年間で8,905円の分配金が得られたという試算になります(1ドル140円として計算)。
つづいてJEPIの基準価額の推移です。50米ドル付近から63米ドル超まで、上下動しながら推移しています。
こちらは、S&P500に連動するETFのVOO(バンガード・S&P500 ETF)と、JEPIのトータルリターンを比較したものです。JEPI(青)は-6.35%から+7.51%の間を上下しています。一見すると、JEPIとVOO(オレンジ)は同様の動きを示しているように見えますが、JEPIの方がボラティリティー(価格変動)の低い動きをしています。一般的にはボラティリティが低い方が、リスクの少ない運用が可能です。なお、3年トータルリターンは10.47%(2023年9月25日時点)となっています。
参考元:Google Finance JPMorgan Equity Premium Income ETF
参考元:Bloomberg JEPI:US
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JEPIで分配金をもらうメリット
JEPIで分配金をもらうメリットは、利回りが高いこと、収益分配が毎月あること、経費率が安いこと、そして、カバードコール戦略が活用できることです。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
アクティブETFならではの高い利回り
JEPIを保有するメリットは、アクティブ運用ならではの高利回りにあります。高い利回り目標を実現するポイントは以下の点です。
高い利回りを実現するポイント
-
J.P.モルガン・アセット・マネジメント社の実績と経験に基づいた運用
-
S&P500の組入れ銘柄を中心とした高リターン銘柄で構成されている
-
オプション・プレミアムと配当益の2種からなるインカムゲイン(分配収益)
J.P.モルガン・アセット・マネジメント社は、トータルリターンの内訳として、配当収益で約2%、オプション・プレミアム(後述)で約5~7%を目指しています(2022年8月末時点)。それに加え、値上がり益によるキャピタルゲインも期待できると謳っています。
ここでJEPIとVOO(バンガード・S&P500 ETF)、VYM(バンガード・米国高配当株式ETF)の3銘柄について、2021年から2023年9月現在までの年ごとの総収益を比較しました。いずれの年でも、JEPI(緑)がVOO(青)とVYM(グレー)を抑え、最も収益を上げていることが分かります。
また、配当利回りは2022年8月末時点で11.7%で、S&P500指数の約7.1倍であるとJ.P.モルガンは謳っています。
JEPIの強みは、値上がりによる収益と分配金(配当収益とオプション・プレミアム)の両立を目指している点です。ただし、2020年設定の銘柄であり、過去のデータが少ない分予測が難しいという側面もあります。市場動向をみながら少額から投資を計画しましょう。
毎月の収益分配
分配金が毎月支払われる点も、JEPIのメリットでしょう。支払いタイミングが毎月くるため、分配金を給与のように生活費の一部に充てることも可能です。
また、分配間隔が細かいため、分配日ごとのリターンが予測しやすく心理的ストレスが抑えられることも魅力です。たとえば年1回の分配頻度だと、銘柄購入から分配金支払いまでの間に大きな値動きを迎え、焦燥感を抱えながら分配日を待ち続ける可能性があります。
毎月定期的に分配金を受け取ることができる点は、投資戦略を組み立てる上で大きなメリットとなるでしょう。ただし、現時点で毎月分配型の銘柄は2024年からの新NISAでは対象外の見込み(2023年6月21日時点)です。ご注意ください。
参考元:日本経済新聞
経費率が安い
JEPIの経費率は0.35%です。一般的にアクティブ商品は、インデックス商品に比べて経費率が高くなります。そのため、先ほど比較したインデックスETFのVOOの経費率0.03%や、VYMの0.06%と比較すると割高になります。
一方、他のアクティブETFの経費率を挙げると、MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信は0.38%、NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信は0.69%です。JEPIはアクティブETFの中では、低コストで運用できるといえます。
効果的にリターンをあげるためにも、経費率を考慮して銘柄選びをしたいですね。
参考元:Bloomberg VOO:US
参考元:Bloomberg VYM:US
参考元:Bloomberg 2085:JP
参考元:野村アセットマネジメント
カバードコール戦略の活用
JEPIはカバードコール戦略を活用し、コールオプションの売却益を得ることで、相場に関わらずインカムゲインを維持することを目指しています。
(注)コールオプションとは?
コールオプションとは「株式を事前に定められた価格で購入する権利」のことをいいます。このコールオプションを手に入れるためには、買い手は売り手(運用会社等)に対価を払う必要があります。この対価を「オプション・プレミアム」といいます。
カバードコール戦略とは、原資産(株式など)を保有しつつ、コールオプションを売って対価(オプション・プレミアム)を得る戦略です。カバードコール戦略を行うと、原資産の変動に関わらずオプション・プレミアムで一定の収益をあげることができます。一方、原資産の値上がりがあっても事前の取り決め額で売却しなければならないため、上昇局面での収益は少なくなるというデメリットがあります。
メリット | 原資産の下落局面でも、オプション・プレミアムによる収益が期待できる) |
デメリット | 原資産の値上がり時では、通常より収益が少なくなる |
特徴 | 下落局面に強い一方、値上がり時の収益が低めになる |
JEPIのトータルリターンは、基準価額の値上がり益、各銘柄からの配当益、コールオプション売却の収益の3階建てです。
おすすめの証券会社
JEPIへの投資が気になった場合は、運用を行う証券会社もあわせてチェックしましょう。JEPI運用におすすめの証券会社は次の5社です。
楽天証券
楽天証券は楽天グループの企業の1つで、楽天グループとのサービス連携が強みです。楽天証券では、取引や商品の保有により楽天ポイントが貯まります。ポイントは1ポイント1円で投資に活用することが可能です。
取り扱い商品の多様性も楽天証券の魅力の1つです。特にETF・株式の取り扱いは、海外ETFが390銘柄(2022年1月17日時点)、米国株式が4,816銘柄(2023年9月25日時点)と、幅広く提供しています。
楽天証券は、投資コストの削減に取り組んでいます。特定の海外ETF15銘柄(2023年9月25日時点)の取引では買付手数料が無料となっており、運用コストを抑えることが可能です(JEPIは対象外)。
さらに2023年10月からは、国内株式取引の手数料無料化、米国株等の取引手数料のポイントバックプログラムがスタートします。2024年の新NISAにおける、米国株・海外ETFの売買手数料の無料化も見逃せません。
取引はWebとスマホアプリの両方から可能で、どちらもユーザビリティに配慮した使いやすい仕様になっています。
SBI証券
SBI証券はSBIグループの1企業です。三井住友銀行や住信SBIネット銀行等の銀行サービス、三井住友系の多彩なクレジットカードなど、様々な関連サービスとの提携を背景に投資サービスを提供しています。
2023年9月30日から国内株式の売買手数料が無料化され、2024年の新NISA導入に伴い、米国株や海外ETFの取引手数料も無料となることが注目されています。
モバイルサービス「Olive」は、関連サービスの利便性を向上させました。スマホアプリを通じて、SBI証券、三井住友銀行、三井住友系カードのサービスをまとめて管理できます。また、Vポイント等のポイントも、アプリで一括して把握できるようになりました。
ポイントサービスも多様で見逃せません。SBI証券では、取引や保有資産に応じて、VポイントやTポイント、Pontaポイント、dポイント、JALマイルから選んでポイントを獲得できます。また、VポイントまたはTポイント、Pontaポイントでポイント投資することもできます。
取り扱い銘柄数も多く、外国株式が5,400銘柄(2023年8月4日時点)、海外ETFが417銘柄(2023年9月25日時点)と多様なラインナップが強みです。
auカブコム証券
auカブコム証券は、低コストでの投資を可能としています。手数料無料の「フリーETF」プログラムを提供中。日本株、外国株、国内債・外国債関連のETFの売買手数料が無料です(ただしJEPIは対象外・2023年9月25日時点)。
さらに、auカブコム証券の強みはリスク管理にあります。「自動売買」のパイオニアとして知られる同証券は、自動売買発注方式のバリエーションで主要ネット証券の中でトップクラスを誇ります。また、直接の電話対応を求める顧客向けには、「お客様サポートセンター」や電話で取引や照会ができる「自動音声応答サービス」も提供中です。
auユーザーなら知っておきたいのが、auIDとの連携サービス。これにより、ポイント獲得や取引手数料の割引といった特典をうけることができます。
マネックス証券
マネックス証券は、低い取引手数料が魅力の証券会社です。特に、「米国ETF買い放題プログラム」と銘打つサービスでは、特定のETFの現物取引買付手数料(税抜)を全額キャッシュバックしています(JEPIは対象外・2023年9月25日時点)。
運用アドバイスを望む方には、「マネックスアドバイザー」がおすすめです。このサービスを活用すると、専門家のサポートのもと、2,000種類以上の投資プランから自分に合った低コストのプランを選択できます。
また、マネックス証券の取扱銘柄数は業界最多水準です。米国株・中国株の銘柄は6,000以上(2023年9月25日時点)がラインナップされており、米国株ETFは381銘柄(2023年9月25日時点)を取り揃えています。
DMM.com証券
DMM証券は、業界最安値水準の手数料を強みとしており、低コストでの取引が可能です。取引内容や年齢によって、手数料が定められています。
特に、国内株式の現物取引手数料は税込55円からとコスト軽減に努めています。さらに25歳以下の場合は実質0円(全額キャッシュバック)という驚異的なコストパフォーマンスを持っています。また、国内信用取引や米国株式取引も手数料が0円という点が魅力的です。ただし、米国株式取引には別途為替スプレッドが適用されます。(いずれも2023年9月25日時点)
DMM.com証券は「投資を始めたい」と思ったときに、すぐ始められることが特徴です。スマートフォンを使った本人確認で、最短で申込みの翌日の口座開設が完了します。
また、DMM.com証券では米国ETFの取扱いが充実しており、287銘柄(2023年9月25日時点)の米国ETFを取り扱っています。
まとめ
JEPIはカバードコール戦略を活用した、キャピタルゲインとインカムゲインを両立するETFです。ボラティリティを低く抑え、オプション・プレミアムによる収益を確保するなど、値下がり局面でも一定のリターンをもたらすよう設計されています。アクティブETFの中ではコストが低い点も特徴です。
毎月分配型であるため、分配金を毎月の出費の一部にあててもよいかもしれません。比較的新しい銘柄で長期の運用データがないため、ポートフォリオの一部に組み込むなど少額から始めてみるとよいでしょう。
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