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山崎養世氏が語る「先進国経済の没落と新興国経済の未来」 - 著名人インタビュー - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF
投稿日:2018/06/27
最終更新日:2022/08/05
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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]
【第9回】
山崎養世氏が語る
「先進国経済の没落と新興国経済の未来」
- なかなか回復軌道に乗らない先進国経済。リーマンショックの傷跡は深く、景気対策と称して国債を増発したツケが回り、ソブリンリスクが高まっています。対して、中国やインドなどの新興国は、リーマンショックからの立ち直りも早く、特に中国は今も2桁成長が続いています。先進国経済に依存せずとも、新興国経済は自立的な発展段階に入ったとするディカップリング論は、やはり正しいのでしょうか。株式会社成長戦略総合研究所理事長で、最近「ジャパン・ショック〜国債暴落から始まる世界恐慌」(祥伝社新書2010年10月)を著した山崎養世氏に、今後の先進国、新興国の行方についてうかがいました。
- 中国を中心として新興国経済は堅調に発展していますが、一方で米国をはじめとする先進国経済は低迷が続いています。長い目で見て、今の先進諸国と新興国との経済的な逆転現象は起こるのでしょうか。
- 山崎氏
-
(株)成長戦略総合研究所
理事長山崎養世氏 - 2008年6月に出版した「次のグローバル・バブルが始まった」(朝日新聞出版)の中で述べたように、私は先進国と新興国のディカップリングが進むと考えています。これからの時代、米欧日は長期低成長時代に入りますが、新興国はいろいろな面で成長が続くでしょう。
- ひとことで「新興国」といっても、大きく2つの概念があります。
- ひとつは「復活大国」です。新興国という言い方自体、私は不適切だと考えています。中国にしてもインドにしても、かつては超大国でした。それが復活しつつあるということです。つまり我々は、200年くらい前の世界、つまり、中国とインドだけで世界経済の半分くらいの規模を占めていた時代に戻ろうとしている。その意味では、非常に自立反発の強い動きだと思います。
- もうひとつは「資源大国」。エネルギーや食糧、水などを武器にして、これからの発展が期待できる国ですが、これはさらに2つに分かれます。
- ひとつは「先進国型資源大国」。別な言い方をすると「資源大国人口小国」で、カナダやオーストラリアやノルウェーなどがここに含まれます。また、資源大国かつ新興工業国家がブラジルであり、資源大国資産大国がサウジアラビアやアブダビ、などがカテゴライズされます。このように、一言で「新興国」といっても、このようにきちっとカテゴライズして見ていく必要があります。
- こうしたカテゴライズをするなかで注目したいのは、ここで何が起こるのかというと、先進国金融資産対資源などの実物資産の価格革命です。この価格革命が起こるなかで、先進諸国と新興国の経済的な勢力図が、大きく変わる可能性があります。
- 先進国金融資産対実物資産の価格革命は、具体的にどういう現象を世界経済にもたらすのでしょうか?
- 山崎氏
- 世界経済は今、プラザ合意体制の崩壊プロセスにあります。プラザ合意というのは、言うなれば皆で米国国債を買いましょうという運動でした。それがリーマンショック後の財政支出によって、国債に対する信用が後退しています。日本国債も同じです。日本国債が暴落する「ジャパンショック」に見舞われるのも、時間の問題でしょう。
- なぜ先進国の国債が暴落するのか。それは、ファンダメンタルズ以上に国債価格が上昇しているからです。先進国は今、超金融緩和政策が取られているため、長期金利が大きく低下しています。つまり、国債の価格は暴騰しています。その行き過ぎた価格上昇の修正が起こり、一方で、そこから逃避した資金が、実物資産に向かうというのが、これからの大きな流れです。
- そして、国債のなかでも最も暴落率が高いのは、恐らく日本国債です。政府債務でいうと1000兆円を超えており、ファンダメンタルズ面が極めて悪化しているにも関らず、国債価格は過去最高値に張り付いています。それだけに、一旦下落が始まると、暴落状態に陥る恐れがあるのです。国債バブルの崩壊です。
- リーマンショックを生んだのは、プラザ合意以降、25年間にわたって続いた低金利とオフバランスシートによる信用拡張です。
- 低金利が生じた背景は、工業生産が先進国から中国などの低賃金・低コスト国に移ったからです。これによって工業製品価格が上がりにくくなりました。一次産品価格が上昇しているにも関らず、工業製品価格が下がっている。すると、世界標準の物価水準が下がってしまう。これがデフレを産み、超低金利を可能にしました。
- 加えて、金融部門では、BIS基準から逃れるために証券化やオフバランス取引が活発に行われ、空前の信用創造が行われました。これを一番推進したのがアメリカです。
- 今後、このように野放図に拡大した信用が収縮していきます。そうなれば、空前の信用創造を最も急進的に拡大していったアメリカ経済は、大打撃を被ることになります。
- その一方、中国やASEAN諸国、インドなど世界的に、都市化や工業化が進み、都市人口が農村人口を上回るとともに、工業化によって工業製品価格が下がりました。これが何を引き起こすかというと、資源・エネルギー、食糧、水に対する爆発的な需要拡大です。
- ところが、穀物在庫は10年前の2分の1しかありませんし、石油やウランなどの資源については近い将来、枯渇が迫っていますから、需給関係が逼迫し、ただでさえ価格は上昇しやすくなっています。
- だからこそ、クリーンテックと呼ばれる環境エネルギー技術が注目されるわけですが、これを推進させるためには、素材革命や技術革命、製造業革命が必要です。これらはいずれもリアルエコノミーにおける大変革になるのですが、残念ながらアメリカは、ITや金融などのバーチャルエコノミーには強くても、リアルエコノミーの大変革を捉えきれていません。したがって、アメリカ経済の成長力は弱まってしまう。その一方で、中国やインドなどの復活大国では、これからさらに都市化・工業化が進んでいきますから、しばらく高度成長が続きます。こうしたなかで、先進諸国と新興国の経済力は、徐々に逆転していくでしょう。
- 環境技術というと、日本はかなり高度なものを持っていると思うのですが、それでも低成長は続くのでしょうか。
- 山崎氏
- 日本の問題点は、確かに日本企業は技術を持っているのですが、既存商品や技術の海外展開ばかり考えていて、新しい環境技術で国内経済を発展させようと考えていないことです。これから国内経済を環境型に変えていくこと自体が最大のビジネスチャンスなのですが、日本の企業は、日本国内にはビジネスチャンスがないと考えています。これは米国も似たようなところがあります。外の方が手っ取り早く稼げるからです。
- たとえば自動車産業は、いかに数多くの自動車を製造し、海外に売り込むかということばかりを考えているようですが、将来、電気自動車が普及して、価格が50万円以下になったら、もはや自動車を作ること自体には、それほど収益メリットを見出すことができなくなります。パソコンが、それ自体に価値を持ちえた時代から、いかにそれを使って便利な世の中にできるかというソリューションに価値を見出す時代へと変わっていったように、すべての産業において同じ現象が起こっていきます。
- つまり、自動車を作って売り、収益を得るというのではなく、電気自動車を核として、新しい交通インフラや情報インフラを組み合わせ、新しい国土の在り方をデザインしていく。そういう視点を持つことが、国家間の生存競争が激しくなるなかで、日本という国が生き延びていくための必須条件になるはずなのですが、そこに政府も企業も気づいていません。だから、日本も米国も今後は低成長を余儀なくされてしまうのです。
- つまり、ますますディカップリングが進んでいくということですか?
- 山崎氏
- このように、日本や米国では低成長が続く一方、中国やインドでは都市化・工業化が進むなかで、まだ成長余地がありますから、ディカップリングは進むでしょう。
- もう一点、ディカップリングが進むと考える理由としては、中国もインドも、リーマンショックによる金融システム自体への影響がほとんどなかったのです。というのも、彼らは基本的に金融鎖国を敷いていたからです。金融システム自体が外資に依存していなかったことが、幸いしたと考えられます。
- 確かに、輸出が減ったという面はありますが、少なくとも金融面においては、国内経済と国際経済が遮断されていました。貿易によってお金がたくさん入ってきますし、海外からの資金は直接投資が中心でしたから、国内で金詰りに陥ることがなかったのです。その結果、海外金融資本に依存せずに済んだがゆえに、リーマンショックに対して、国内経済はほとんど無傷で済んでいるのです。これも、ディカップリングが進むと考える大きな理由です。
- 今後、グローバルマネーはどういう方向に動いていくのでしょうか。
- 山崎氏
- 前述したように、日本国債は今後、暴落するでしょうから、その先に見えるのは円安です。そして、それとともに資源高が進むでしょう。こういうなかで、どのような資産を持つのが安全なのか、ということを熟考する必要があります。
- やはり、実物資産の価格が上昇するということを考えると、これから最も持っていて安心できる資産は、資源大国・人口小国の資産、具体的に国名を挙げると、カナダやオーストラリア、あるいは、資源大国・工業大国であればブラジルということになるでしょうし、中国やインドの成長余地もまだ大きいと思います。
- ポイントは、これらの国の何に投資するかということですが、国が今後も成長していくというのであれば、一番効率が良いのは不動産です。それから株式、債券の順になります。ただ、中国やインドの不動産がすぐに買えるかというと、それはなかなか難しいので、これらを組み入れて運用するETFが登場すれば、それは非常に人気化するのではないでしょうか。また、不動産と同じ実物資産という点では、金の投資妙味もまだ高いのではないでしょうか。
- 今後、先進諸国の資産が大きく下落すれば、特に実物資産の価値は高まりますから、昔から言われるように、資産三分法の観点から、不動産などの実物資産、株式、債券の順に投資していくと良いでしょう。なかでもETFは、預貯金などと違って金融機関破綻のリスクを受けずに済みますから、先行きの見通しが不透明な時代だけに、個人投資家にとっては有効な投資手段になると思います。
- 掲載日:2010年月11月18日
- 山崎 養世(やまざき やすよ)氏プロフィール
- 1958年生まれ。福岡市出身。
東京大学経済学部卒、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士号(MBA)取得。
大和証券を経て、米ゴールドマン・サックス本社パートナー、ゴールドマン・サックス投信株式会社社長等を歴任。国際金融や年金運用、外国企業の日本進出をアドバイスし成功に導く。
2002年にゴールドマン・サックスを退社、シンクタンク山崎養世事務所を設立、「高速道路無料化」、「田園からの産業革命」、「太陽経済」、「郵政と年金の改革」、インド・中国とのパートナーシップ等を提案。2009年10月総務省顧問に就任(2010年10月退任)。
2003年衆議院総選挙において、「高速道路無料化」及び「郵政資金の中小企業への活用」が民主党のマニフェストに採用される。
民主党が政権を獲得した場合(次の内閣)の国土交通大臣に指名される。
現在、金融、財政、国際経済問題等に関する調査・研究及び提言活動を行うとともに、日本コアパートナー株式会社代表取締役社長及び株式会社成長戦略総合研究所理事長として業務に当たる。日本コアパートナー及び太陽経済の会は電気自動車の充電インフラサービスの実証事業(資源エネルギー庁公募事業)など多くの次世代型事業に参画している。
【主な編著書】
「投資信託革命」(共著 日本経済新聞社 1998年12月)
「日本列島快走論」(NHK出版 2003年9月)
「大逆転の時代」(祥伝社 2004年10月)
「勝つ力」(ダイヤモンド社 2004年12月)
「米中経済同盟を知らない日本人」(徳間書店 2007年2月)
「道路問題を解く」(ダイヤモンド社 2008年3月)
「大逆転の時代」(文庫)(講談社2008年6月)
「次のグローバル・バブルが始まった!」(朝日新聞出版 2008年7月)
「日本「復活」の最終シナリオ〜「太陽経済」を主導せよ!」(朝日新聞出版 2009年2月)
「『環東京湾構想』〜新たな成長と人間本来の生き方のために」(共著 朝日新聞出版 2009年9月)
「高速道路無料化〜新しい日本のつくり方」(朝日新聞出版 2009年11月)
「勝つ力」(文春文庫 2010年2月)
「ジャパン・ショック〜国債暴落から始まる世界恐慌」(祥伝社新書2010年10月)
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編集者:K-ZONE money編集部