必要な手続きは自分が開設している口座の種類や近年の損益状況によって変わってきますが、多くの税申告関連の手続きが不要になります。この記事では年末調整や確定申告などをおさらいした上で、つみたてNISA利用者において手続きが不要になる背景、つみたてNISAにおける損益通算の可否などについて紹介していきます。
確定申告・年末調整・所得控除とは?何をすればいいの?
確定申告、年末調整はいずれも、その年発生した所得を整理し、支払う税額を明確にするために毎年行われるものです。所得控除はこれらの手続きにより確定する、額面収入から差し引かれる金額項目を意味します。まずはそれぞれの意味合いや手続きについて見ていきましょう。
確定申告とは?
普段あまり意識することはありませんが、所得には主に次のような種類があります。
会社員や公務員などで月収を得て働いている場合、その収入は「給与所得」となります。もし得ている収入が給与所得だけならば、年収が高いなど一部の例外を除いて、次に紹介する年末調整のみで税関連の申告は完了するので、確定申告は必須ではない人がほとんどです。一方で個人事業主や経営者、ふるさと納税をおこなった人などは、確定申告が必須になります。確定申告において経費などを適切に報告することで、所得額を圧縮し節税することが可能です。
また、有価証券で投資を行っている人の場合、公社債の金利収入であれば「利子所得」、株の配当、投信の分配金は「配当所得」、株や投信の売買によるキャピタルゲイン(価格収益)があれば「譲渡所得」といった形で給与所得以外の収入が発生することになります。証券口座の種類や、損益の状況によっては、確定申告で所得額を確定させることが必要、もしくはそうした方が望ましいケースがあります。
一般の会社員・公務員や収入のない専業主婦の中には確定申告をしたことがない人も多いでしょう。書き方などをあらかじめ確認しておいて、不備がないように注意する必要があります。
年末調整とは?
給与所得を得ている人は、毎月の給与から「源泉徴収」という形で自動的に税金が差し引かれています。これは給与所得者がいちいち確定申告をせずに済むように税対応を簡略化する目的で運営されている仕組みです。
しかし、源泉徴収額は厳密にその年支払うべき税額を天引きできるわけではなく、特に控除額や住宅ローン保有者に一定期間適用される住宅ローン減税などは、所得者から申請がなければ国税庁は把握のしようがありません。すでにその年源泉徴収で支払ってしまった税額を、次に紹介する所得控除や一部減税も加味して、実際の支払額に調整するための手続きを「年末調整」といいます。
そのため年末調整では、家族構成の状況の確認や、その年に支払った保険料、住宅ローンの状況などの確認を行うのです。
所得控除とは?
所得控除とは、所定の事情を踏まえて、国が税額の前提となる所得額を決める際に、実際の収入から差し引く金額のことを指します。所得控除項目は多数あり、例えば全ての所得者が控除を受ける基礎控除、配偶者がいて配偶者の収入がないもしくは低い時に適用される配偶者控除・配偶者特別控除、保険料の支払額を控除する生命保険料控除や地震保険料控除などがあります。
基礎控除以外のほとんどの所得控除額は、納税者の申告がなければ確定できません。給与所得者の場合、多くの控除項目は年末調整によって確定できます。給与以外の所得がある人や、医療費控除など一部の控除項目がある人は、確定申告を行って控除額を確定しなければなりません。
つみたてNISAに確定申告は必要?
有価証券で投資を行っている人は、給与所得以外の収入が発生するため、本来は確定申告が必要です。しかしながら、現代の証券口座には、給与所得のように源泉徴収ありの口座もあるため、実際の確定申告の要否は状況によって異なります。具体的な口座の種類は次の通りです。
通常の有価証券運用をしている人の場合は、一般口座もしくは特定口座(源泉徴収なし)の場合は確定申告が必須で、特定口座(源泉徴収あり)は必須ではなくなります。一方で、NISAやつみたてNISA口座については、そもそも投資収益が非課税になる口座であるため、確定申告は必要ありません。
それぞれの口座と確定申告の要否の背景について、さらに詳しく見ていきましょう。
一般口座・特定口座(源泉徴収なし)は確定申告が必要
一般口座とは、投資家本人が年間取引報告書という、その年の売買や損益の状況をまとめた書類を作成した上で確定申告にて税額を確定する口座です。現在では一般口座でなければ取引が難しい未公開株を売買する人でない限り、あまりメリットのない口座タイプです。
特定口座は、証券会社が年間取引報告書を作成してくれる口座です。特定口座には「源泉徴収なし」と「源泉徴収あり」の2種類があります。そのうち、源泉徴収なしの口座の場合、税額が控除されないため、自分で確定申告をしなければなりません。譲渡所得については年間20万円以下に収まる場合所得税の納付が不要になりますが、源泉徴収により不要な納税部分が自動的に収められるのを防ぐ目的で、あえて特定口座(源泉徴収なし)を選択する人もいます。
NISA口座・特定口座(源泉徴収あり)は確定申告が不要
特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座は確定申告が不要です。まず、源泉徴収ありの特定口座では、証券投資に際して発生する税金が自動的に天引きされるので、投資家が何もせずとも納税が完了する仕組みとなっていることから確定申告が不要です。ただし、後半で紹介する損益通算を受けるためには、確定申告をした方が良いケースもあります。「しなければならない」わけではないものの「したほうがいい場合もある」と覚えておきましょう。
一方でNISA口座については、そもそも配当や売買益に課税されないのがNISA口座の基本的な特徴であるため、NISA口座による損益を国税庁は把握する必要がありません。そのため、NISA口座も確定申告が不要です。なお、NISA口座については初めから課税されていないため損益通算の対象外です。従って、NISA口座については例外なく確定申告が不要であると抑えておいてください。
確定申告が必要・不要な口座をまとめ
確定申告の要否や、それぞれの講座のメリット・デメリットをまとめると次のようになります。
それぞれの口座のポイントをまとめると、一般口座は未公開株を売買する時以外にメリットは少なく、確定申告及び年間報告書の手間が発生するというデメリットがあります。また、特定口座(源泉徴収なし)は年間報告書を作成する手間がない一方で、確定申告については必須というデメリットが存在します。一方で譲渡所得が1年間20万円以下の時に税金を多く支払うのを防ぐことができます。
特定口座(源泉徴収あり)は年間報告書・確定申告ともに不要で手間がかかりません。ただし、譲渡所得が20万円に満たない時にも税金が自動的に源泉徴収される点に注意しましょう。その場合は確定申告をする事で多く天引きされた分のお金を受け取ることが可能です。最後にNISA口座は配当所得、譲渡所得共に課税されないので、確定申告は例外なく不要です。
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つみたてNISAに年末調整は必要?
つみたてNISAは確定申告だけでなく、年末調整も不要です。社員や公務員の人はもちろんですが、労務担当者も社内や事務所内の問い合わせなどにスムーズに応えられるよう、覚えておきましょう。
つみたてNISAに年末調整は不要!
年末調整は、確定申告と同様に課税額の前提となる所得を明らかにするために行われるプロセスです。従って、所得に対して課税されないつみたてNISAでは調整が不要になります。
そもそも会社員や公務員の場合、ほとんどの社員が年末調整を行いますが、その際につみたてNISAの損益に対する報告は必要ありません。積立NISAもNISA口座同様、積み立て投資で得た利益は非課税となるためです。不必要な個人情報を外に漏らす必要はないので、気をつけましょう。なお、つみたてNISAだけでなく一般NISAやジュニアNISAなど、他のNISAも同様の理由で年末調整は不要です。
従業員がつみたてNISAをしている場合、労務担当者がすべきこと
年末調整が不要なので、労務担当者についても作業として、対応すべきことは特にありません。ただし、年末調整や確定申告について所属している社員や公務員などから問い合わせを受ける可能性は想定されます。
その時は、NISAについては年末調整・確定申告ともに必要がないこと、他の所得があるなど別に確定申告が必要な要件があって確定申告する場合にも、NISA口座の損益に対する申告は不要であることなど、正しい情報を伝えてください。
つみたてNISAは損益通算の対象になる?
複数のNISAではない通常の証券口座を保有している時には損益通算により実際に支払う税額を調整することが可能になります。一方で、つみたてNISAについては、損益通算の対象とならないことに注意しましょう。
損益通算とは?
損益通算とは、複数の証券口座を保有しているときに、正しい損益を算出したうえで、税額を決める仕組みのことです。
例えば、次のように二つの証券口座を保有していて、それぞれの損益が出ているとします。この場合、1のように双方が課税口座の場合は、損益通算が可能になります。口座Aだけでは一見課税されてしまうように見えますが、AとBの損益を合計すると10万円の損失となります。税金は利益が出なければ課税されないため、このケースでは所得税は発生しません。なお、課税口座同士の損益通算を行う時には、例え全ての口座が源泉徴収ありの特定口座だったとしても、確定申告をして通算の配当所得や譲渡所得を明確にする必要があります。
つみたてNISAは損益通算の対象にならない
つみたてNISAは、そもそもが非課税のため損益通算が適応されません。上の図の2の例では口座Aの利益だけが課税対象となり、非課税のNISA口座の損失は加味されないため、このケースでは10万円の利益に対して所得税が課税されます。このように課税口座で利益が出ていてNISA口座で損失がある場合、損益通算ができないため、両方とも課税口座であるときより納税額が大きくなるケースがあるので、注意しましょう。
まとめ
課税口座における証券投資においては、確定申告や年末調整による得た資産や所得の正確な申告が求められます。これらの手続きは、配当所得や譲渡所得といった投資によって発生する所得を明らかにするために必要な手続きです。ただし、源泉徴収ありの口座にすることで、手間を省くことも可能です。
非課税のつみたてNISA口座の場合は、いずれの作業も不要です。手間がかからない点ではメリットですが、課税口座との損益通算ができないため、かえって納税額が膨らむケースもあることには注意しましょう。
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よくある質問
Q | つみたてNISAをしている場合、控除をうけることはできるのか? |
A | つみたてNISAの所得に対しては控除が受けられません。そもそもNISAの収益は所得として認識されないためです。一方で、専業主婦などではなく、他に給与所得など他に所得がある時には、それらの所得に対しては通常のルール通り各控除が適用されます。 |
Q | つみたてNISAの所得扱いは? |
A | 「所得」を所得税の課税対象と考えるのであれば、つみたてNISAによる収益は非課税のため、どの所得項目にも該当しません。 |
Q | つみたてNISAの確定申告方法は? |
A | つみたてNISAで得た利益に対する確定申告は例外なく不要です。もし他の要件で確定申告をする時にも、つみたてNISAの利益については盛り込む必要はありません。 |