つみたてNISAで元本割れするとどうなる?確率と対策について紹介

投稿日:2022/11/29 最終更新日:2024/08/29
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つみたてNISAでも投資資金より資産の評価額が小さくなる元本割れを引き起こすリスクはあります。元本割れのまま売却してしまうとつみたてNISAの非課税の恩恵を受けられなくなるので、安易に売却して 後悔しないよう注意しましょう。

長期で運用したり、低リスク・低コストの銘柄で運用することで、つみたてNISAによる元本割れのリスクをおさえることが可能です。

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

証券アナリスト

Finatext サービスディレクター・アナリスト。日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当する傍ら、アナリストとしても活動。グループで展開するコミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターなども務め、国内メディアへの寄稿も行う。

つみたてNISAは元本割れのリスクがある

つみたてNISAは利益に対して非課税になるメリットがありますが、投資である以上必ず利益が得られるとは限りません。市場の暴落などにより元本割れを引き起こすこともあります。ここではまず、資産運用における元本割れの意味合いと借金との違いなどについて見ていきましょう。

そもそも元本割れとは?

元本割れとは、保有している資産の金額が投資に使用した資金の額を下回ることを意味します。現在保有中の有価証券などの投資資産が元本割れすれば「含み損」となりますし、元本割れしたタイミングで有価証券など投資資産を売却すれば損失が確定します。

借金と何が違う?

元本割れは、投資資金よりも現在の資産の評価額が下回っている状態であって、資産評価額それ自体がマイナスというわけではありません。信用取引やFXなど一部のハイリスクな投資方法を除き、投資において資産の評価額は最悪のケースでもゼロです。ゼロになってしまったら保有資産はなくなるものの、お金をどこかに返済する義務は特段発生しません。

一方で、借金とはお金を借りている状態なので、将来決められた時期までに資金を返済する必要があります。このように元本割れと借金は全く状況が異なることをおさえておいてください。

元本割れする確率

元本割れの確率は投資先の資産や投資期間によって変わります。低リスクな価格変動リスクの低い資産に投資したり、複数の資産に分散投資したりすれば元本割れのリスクは下がります。また長期で運用すると投資成績は安定しやすく、やはり元本割れのリスクを下げられるのですともいわれています。

上図では国内外の株式・債券に分散投資した場合の5年後及び20年後の収益率を示しています。過去の実績に基づくと、5年間投資した場合においては、元本割れとなる確率は10〜20%程度、20年間ではゼロでした。あくまで過去の結果なので将来も同じ確率になるとは限らないものの、20年の長期にわたって運用すれば元本割れのリスクはかなり下がることがわかります。 ただし、その一方で収益率が上振れする確率も低くなっていることに注意しましょう。過去の実績から見て、長期投資は収益率を「安定させる」効果はありそうですが、あくまで「高くする」効果があるというわけではありません。

つみたてNISAで元本割れするとどうなる?

つみたてNISAの口座にて元本割れが発生すると、NISA最大のメリットである運用益が非課税になることの恩恵が受けられません。さらにつみたてNISA口座と課税口座を併用していても、損益通算や繰越控除ができないため、つみたてNISA口座を保有することでかえって所得税額が増えるケースもあるので注意が必要です。

非課税制度の恩恵を受けられない

つみたてNISAは保有する投資資産の配当・分配金による利益や売却益に対して非課税となる制度です。通常の資産運用で発生した利益に20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISA口座で投資している資産については、税金を払わずにすみます。

しかし、この税金はあくまで利益が発生した部分にかかるものです。元本割れによって損失が発生していた場合は、そもそも税金が発生しないため、非課税制度の恩恵を受けられないことになります。

損益通算・繰越控除が適用されない

つみたてNISA口座と課税口座を併用している人の場合ですが、双方の口座は損益通算や繰越控除ができない仕組みになっています。 すなわち上図の例のように、つみたてNISAで25万円の損失が発生していて、課税口座で25万円の利益が発生している場合は損益通算はされず、課税口座の25万円の利益に対して所得税がかかります。

もし、全ての資産を課税講座で運用していた場合は、両者の損益が相殺されて利益は0になるので、つみたてNISA口座と併用していたがために、所得税額が増える例と言えるでしょう。

また、繰越控除ができないのもデメリットです。例えば2022年につみたてNISA口座で25万円損失を出して、翌年に課税口座で25万円の利益を得た場合、両者は繰越控除ができないため、やはり課税口座で発生した利益25万円に課税されます。

もし両方の資産を課税口座で運用していれば、3年間のうちは繰越控除ができるため、過年度の損失と利益が相殺されて、課税額をゼロにすることができます。このように、課税口座とつみたてNISA口座を併用すると、かえって税金支払額が増えるケースがあるので注意しましょう。

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つみたてNISAの元本割れを避ける方法

つみたてNISAで元本割れのまま資産を売却すると、非課税の恩恵が受けられないため、できるだけ損け損しないように運用していくことが大切です。長期の運用や低リスクかつ運用コストが低い投資信託を選ぶことで、元本割れのリスクを抑えることができます。

10~20年間の長期間保有

1年後、2年後では損益のブレが大きく、元本割れを引き起こすリスクも小さくありませんが、10年後、20年後と長期に投資するに従って、投資成績は安定する傾向にあります。

例えば2000年代のリーマン・ショックにおける株価暴落の局面でも、10年後には資産価格が回復し、長期保有を継続することで元本割れを避けることが可能でした。長期間にわたってリスク資産の保有を継続することは、元本割れを避ける上で重要なのです。

リスクが比較的低い銘柄を選ぶ

価格変動リスクが低い銘柄を選ぶと元本割れを避けやすくなります。価格変動リスクが高い銘柄は相場下落局面での元本割れの確率・元本割れの値幅がともに大きくなりがちで、その後価格を回復するのにも時間がかかる傾向があります。

債券などリスクの低い銘柄で運用するものや、さまざまな資産に分散投資してリスクを抑制している投資信託を選べば、相場下落局面における損失を抑えて、早期に含み益に戻せる可能性が高まるでしょう。

【関連記事】【初心者向け】つみたてNISAのおすすめ銘柄10選!選び方についても解説

運用コストが比較的低い銘柄を選ぶ

投資信託は保有期間中に信託報酬などの運用コストがかかります。これは投資信託を運用する会社や販売会社の収益源なのでゼロにはなりません。しかし、銘柄によって運用コストが低いもの、高いものがあります。

例えば、市場のベンチマークに連動することを目指すインデックス運用の方が、ベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用よりも運用コストが安い傾向にあります。

運用コストは投資のパフォーマンスを下げる要因になるため、できるだけ運用コストが安い銘柄を選んだ方が、元本割れのリスクを減らせます

  インデックス運用 アクティブ運用
特徴 市場のベンチマークに連動し、平均的なパフォーマンスを目指す  市場のベンチマークを上回る成績を目指す
メリット 運用コストが低い 市場のベンチマークを上回る成績が期待できる 
デメリット  市場平均に左右される 運用コストが高い

20年後につみたてNISAが元本割れした場合の対処法

20年の長期にわたって運用したにもかかわらず元本割れした場合、非課税期間が終了するからといって損失を確定するのはおすすめできません。課税口座で保有を継続したり、分割して売却したりして、損失や税負担を抑えるのが有効です。

相場が回復するまで待つ

20年間が経過しても相場回復を待つのが有効な選択の一つです。つみたてNISAはそれぞれの元本の投資を行った年から20年間非課税になるものです。

例えば毎年満額の40万円ずつ積立を行っていた場合は、20年後からは毎年40万円ずつ非課税適用が終了します。全てが一括で課税され始めるわけではないので、当面の間は税負担の軽減になります。

20年経過したからといって安易に全額売却して後悔しないようにしましょう。

分割して売却する

相場回復に時間がかかりそうなので一部を他の投資先に資金を振り分けたい場合や、どうしても現金が欲しい場合には、分割して売却するのもよいでしょう。

その場合は、その年に非課税期間が終了する部分から優先的に売却をしていくと、できるだけ税負担を軽減しながら現金化や他の投資先に振り分ける原資を作ることが可能です。

まとめ

つみたてNISAで元本割れを引き起こす可能性はゼロではありません。元本割れのまま資産を売却してしまうと、つみたてNISAの非課税の恩恵が受けられなかったり、課税口座との損益通算ができず、課税口座単体で運用している時よりも課税額が増えてしまったりするリスクがあります。

長期運用し、かつリスクが低く、運用コストも安い資産に投資することで、損しないようにすることが可能ですことは可能です。また、不運にも20年経っても元本割れとなった場合には、状況を見ながら投資を継続するか、分割して売却するなどの手法が有効です。

逆に安易に全額を売却するのはおすすめできません。元本割れのリスクや抑制方法を正しくおさえたうえで、つみたてNISAをうまく活用して自身の資産運用に役立ててください。

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よくある質問

Q

つみたてNISAのデメリットは?

A

投資できる銘柄が一部の投資信託とETFに限定されている点や、年間の投資上限額が40万円と人によっては少ないと感じる点があります。

Q

つみたてNISAの元本割れは複利効果に影響する?

A

元本割れすると、複利効果の逆の作用により、翌年の収益金額が小さくなります。例えば1万円から9,000円に元本割れしたのち、次の一年で10%のプラスとなった場合、資産額は9,900円となり900円の収益となります。もし10,000円のままで10%のプラスとなった場合は資産額は11,000円で1,000円の収益なので、元本割れをしていると複利効果の逆の要領で資産額・収益額が大きくなりにくくなるのです。

Q

つみたてNISAに向かない人の特徴は?

A

長期で一つの金融商品を持ち続けるのが嫌な人にはおすすめしません。また、年間の投資規模が大きくすぐつみたてNISAの年間の上限額満額を使い切ってしまう人も、1年の投資上限額が大きい一般NISAの方がよいでしょう。

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