産休や育休期間中は会社からの給与がなくなるため、生活に不安を覚える方も多いかもしれません。この期間には給与減の補填として様々な手当が給付されるので、どんな手当が利用でき、どれくらいもらえるのかを理解しておきましょう。
ただし、給付金は普段の給与満額を保障するものではありません。必要に応じて民間の保険なども活用したほうが安心です。
産休・育休中に会社から給与はもらえる?
基本的に産休・育休中は会社から給与はもらえません。一部企業では一定の割合支給される場合もありますが、数としては少ないことは間違いありません。
また、育休中に完全に休業せず、一定の割合働いて(時短勤務や就業日数を減らすなど)賃金が支払われた場合、育児休業給付金の受取金額に影響することは覚えておきましょう。
産休・育休中にもらえる手当はいくら?どこから?
出産や育児に関連する給付金には以下のようなものがあります。
出産・育児にかかわる給付金 | 対象の保険 | 給付金額(目安) | 給付金の目的 |
出産育児一時金 | 健康保険や国民健康保険 ※扶養者も対象 |
1児につき42万円(※1) | 出産にかかわる資金の支援 |
出産手当 | 健康保険 | 給与の67%(※2) | 出産前後の給与減に対する支援 |
出生育児休業給付金 | 雇用保険 | 給与の67%(※2) | 原則男性の育休取得による給与減に対する支援(4週間以内) |
育児休業給付金 | 雇用保険 | 給与の67%(※2) | 育児休業期間中の給与減に対する支援 |
※1.23年4月以降、50万円に引き上げ予定
※2.期間中に支払われた賃金や、支給開始からの日数によって変わる
公的保険から休業前の5-7割が支給
一時金ではなく、継続的に給付される「出産手当」と「育児休業給付金」では、休業前の給与の50~70%程度の手当が支給されます。ただし、出産手当は健康保険、育児休業給付金は雇用保険の被保険者が対象となります。つまり、専業主婦の方などは支給対象にならない点に注意してください。
これは、出産手当や育児休業給付金が出産および育児などで休業することによる給与減の補填の意味合いが強い手当ということが理由です。
出産手当金
出産手当金は健康保険から給付される手当です。女性の被保険者(つまり出産する人)が、出産前後で給与の支払いがない場合に申請できます。支給される金額は休業前のおよそ2/3(67%)で、出産前42日から出産後56日までの期間支給されます。
支給元 | 健康保険 |
支給対象 | 女性の被保険者 |
支給金額 | 休業前の約67% |
支給期間 | 出産前42日から出産日後56日 ※多胎妊娠の場合、出産前は98日 |
支給金額
1日当たりの支給金額の計算方法は以下の通りです。
「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額」÷ 30日 × (2/3)
都道府県ごとの標準報酬月額はこちらで確認できます。
参考:全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」
支給期間
原則は出産日前42日から出産日後56日間ですが、予定日よりも出産出産日が遅れた場合、出産予定日以前の42日間と産後56日間に加えて、出産予定日から出産日までの期間も支給対象になります。
【出産予定日よりも出産日が遅くなった場合】
出産予定日 | 出産日 | |
出産予定日以前の42日間 | 出産予定日~出産日の期間も対象 | 出産日以降56日間 |
【出産日が出産予定日と同日もしくはそれよりも早い場合】
出産日 | (出産予定日) | |
出産日以前の42日間 | 出産日以降56日間 | 関係なし |
参考:全国健康保険協会「出産手当金について」
育児休業給付金
育児休業給付金は、雇用保険から給付される手当です。原則として対象の子どもが1歳になるまでの間で育休取得により給与がもらえない場合に申請できます。(条件により最大2歳まで延長可能)
支給元 | 雇用保険 |
支給対象 | 雇用保険の被保険者 |
支給金額 | 休業前の約67%(育児休業181日目からは約50%) ※いずれも賃金が支払われていない場合(下記参照) |
支給期間 | 母:出生日から8週間経過後から子供が1歳に達する日の前日まで 父:出産予定日から子供が1歳に達する日の前日まで ※条件により最大2歳まで延長可能 |
育児休業給付金は育児期間中に支払われた賃金で給付割合が変わるので、育児期間中に働く場合には給付金の金額に影響します。休業開始時点の賃金の8割以上が支給される場合、育児休業給付金は支給されないので注意してください。
育児期間中に支払われた賃金 | 支給額 |
「休業開始時賃金月額」の13%以下 ※育児休業開始から181日目以降の場合は30% |
休業開始時賃金日額 × 休業日数 × 67% ※育児休業開始から181日目以降の場合は50% |
「休業開始時賃金月額」の13%(30%)超~80%未満 | 休業開始時賃金日額 × 休業日数 × 80% - 賃金額 |
「休業開始時賃金月額」の80%以上 | 支給されない |
育児休業給付金の支給期限は原則子供が1歳になるまでですが、保育所などの利用を希望して申し込みを行っているにもかかわらず、利用ができない場合などは支給期間が延長できます。子供が1歳6カ月と2歳になるタイミングがポイントです。
参考:厚生労働省「育児休業給付について 育児休業給付についてのパンフレット(令和4年10月1日以降の取扱い)」
出産にかかる費用も補償
出産育児一時金は入院費や分娩費用など出産にかかわる費用をカバーできます。健康保険の被保険者やその扶養者(つまり専業主婦の方でも夫が被保険者であれば受け取れる)が対象となります。
出産育児一時金は1児につき42万円が支給されていましたが、23年4月より50万円に増額される予定です。
支給元 | 雇用保険 |
支給対象 | 健康保険の被保険者または扶養者 ※扶養者も対象となるため、専業主婦でも支給される |
支給金額 | 1児につき42万円 ※産科医療補償制度に加入してない病院等で出産した場合40.8万円 |
出産育児一時金は受取方法がいくつかありますが、健康保険組合と医療機関が直接やり取りする「直接支払制度」の場合、医療機関の窓口へ支払う金額は出産育児一時金を超過した分だけになります。出産育児一時金よりも実際の金額が下回った場合には、健康保険組合へ差額を申請することで支給されます。
出産育児一時金について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しています。
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産休・育休中の保険料はどうなる?
産休・育休期間中は社会保険料の支払いは免除されます。免除期間は以下の通りです。
・産前6週間から産後8週間の産前産後休業期間中で働いていない期間
・育児休業等を開始した月から、終了した日の翌日が属する月の前月までの期間
社会保険料は日割りがないため、免除も月単位となります。上記の通り、育児休業等が終了した日の月は支払い対象です。
公務員の場合はどうなる?
公務員の場合、産休や育休が民間企業に比べてかなり優遇されています。産休期間は産前休業・産後休業どちらも8週間です。産休期間中でも満額支給されます。育休期間は産後から子どもが3歳の誕生日を迎える前日までとなっています。ただし、育休期間中については給与は支払われません。
社会保険について公務員の方は、健康保険組合ではなく共済組合に加入しますが、原則として出産手当は給付されません。これは、上で説明した通り、産休期間中も給与が支給されるからです。出産手当金は出産期間中の給与減の補填を目的とするため、給与が支払われている場合はこれに該当しないためです。さらに、産休期間中は給与は支払われますが、共済組合の掛金は免除されます。(免除には別途手続きが必要です)
公務員の育休手当は会社員の育児休業給付金と同様です。原則として子どもが1歳になるまでの期間、給与の67%が支給されます。育休手当の延長に関しても育児休業給付金と同様です。
まとめ:産休・育休中の主な手当は出産手当と育児休業給付金
産休や育休中は給与がなくなる(少なくなる)ため、不安に思うかもしれませんが、会社員や公務員で健康保険や雇用保険の被保険者であれば、出産手当と育児休業給付金で一定の割合は保障されます。出産時にはこれとは別に出産育児一時金の給付されます。(23年4月からは1児につき50万円に増額)
ただし、これらの手当だけで十分な補償になるというわけではありません。休業中の給付金がどの程度支給されるか確認した上で、自分でも民間の保険に加入するなどの検討を進めておくことが重要です。
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よくある質問
Q | 産休・育休中の手当は手取りの何割もらえますか? |
A | 手取りではなく額面の67%が基本です。育児休業給付金は開始からの日数や会社から支払われた賃金で給付割合が変わります。 詳しくは「公的保険から休業前の5-7割が支給」を参照。 |
Q | 育児休業給付金がもらえないのはなぜ? |
A | 支給単位期間中に給与が8割以上支払われている場合や、就業日数が11日以上もしくは就業時間が80時間以上の場合などは育児休業給付金は支払われません。 |
Q | 育児休業給付金はいつ振り込まれる? |
A | 育児休業給付金は原則2か月単位で申請されます。初回振込は出産から約5か月後です。育児休業給付が振り込まれるタイミングはこちらの記事で解説しています。 詳しくは「育児休業給付金」を参照。 |