米国株の株式市場
米国株の取引が行われる株式市場は、ニューヨーク証券取引所とナスダックの2つです。
「ニューヨーク証券取引所」は、ロンドン取引所に次いで、世界で2番目に歴史の古い証券取引所です。新型コロナワクチン開発で注目を浴びた「ファイザー」や、クレジットカードの国際ブランドである「Visa」といった大型優良企業が上場しており、上場審査の基準が世界一厳しいとされています。
「ナスダック」は、ベンチャー企業向けの株式市場として1971年に登場しました。すべての取引をコンピューターネットワーク上で行う市場です。上場企業には、Googleを運営する「アルファベット」や、EC大手の「アマゾン」といった成長力のあるIT企業が名を連ねています。元は新興企業であった銘柄が、そのままナスダックに残っていることも多くあります。ベンチャー企業だけでなく、IT業界の動向を探る指標となる市場です。
米国株の特徴
米国株には、日本株とは異なる特徴があります。
・1株単位で取引できる |
それぞれの特徴について、具体的にご説明します。
1株単位で取引できる
日本市場の取引単位は基本的に「1単元=100株」ですが、米国株では「1株単位」で取引ができます。日本株について、国内で株価3,000円の銘柄を購入するには、「3,000円×100株」となり購入資金は30万円必要です。
米国株であれば1株から取引できるため、「3,000円×1株」といった少額から投資できる特徴があります。ただし、日本株と米国株における1株あたりの株価は銘柄によって大きく異なります。たとえば、ショッピングサイト大手のアマゾンは、1株の株価が約数十万円となっており、購入にはそれなりの資金が必要です。
iPhoneで有名なアップルは、1株2万円程度の資金で購入できます。1株あたりの株価が高い米国株に対し、1株あたり日本株は比較的に安いです。例えば、日本株の代表株といっても過言ではないトヨタの株価は2,169円、アップルとは10倍ほどの差があります。(2022年2月7日時点)なお、日本にも「単元未満株」という1株から購入できる株式もあります。
値幅制限がない
日本株と異なり、米国株には値幅制限がありません。値幅制限とは、株価が1日で変動できる範囲を制限する仕組みです。 前日の終値または気配値を「基準値段」として、基準値段から上下に定められた金額以上は、株価は変動しません。これは、株価が急激に乱高下することを防ぐ目的で設けられた制限です。
日頃のニュースで「ストップ安・ストップ高」といった言葉を耳にしたことはありませんか?ストップ安・ストップ高とは、特定の銘柄がその日の値幅制限値に達したことを意味しています。
株価の急激な変動は、投資家を不安にさせ、それによる売り注文・買い注文でさらなる株価変動を生み出します。値幅制限を設けることで、それ以上安くなる(高くなる)ことがなくなるため、投資家の不安をやわらげ、パニックになることを防げます。
しかし、米国株は個別株における値幅制限がないため、急騰・暴落するリスクがあります。そこで、設けられているのが「サーキットブレーカー」という制度です。
サーキットブレーカーとは、株価が短期的に急騰・暴落した場合に、一時的に取引を中断する措置のことです。株式市場の過熱感やパニックを抑え、投資家に冷静な判断を促すことが目的です。
サーキットブレーカーは、S&P500という米国銘柄の指数を基準にしており、3つのレベルに分かれます。
レベル1 | 現地取引時間9:30~15:30の間に、S&P500が前日終値から7%下落すると、15分間取引停止 |
レベル2 | 現地取引時間9:30~15:30の間に、S&P500が前日終値から13%下落すると、15分間取引停止 |
レベル3 | 時間に関わらず、S&P500が前日終値から20%下落すると、終日取引停止 |
配当の回数が多い
日本株と比較して、米国株は株主への還元率を重視する傾向にあります。なぜなら、日本よりも比較的に投資家の目が厳しく、厳しい競争を勝ち抜くには投資家の信頼を得ることが重要とされているためです。
日本では年2回の配当が一般的ですが、米国株は年4回の企業が多くなっています。また、日本の企業のように株主優待制度を重視する傾向はなく、増配や高配当を優先していることも特徴です。なかには、20年連続で増配を続けている企業も存在します。高配当狙いであれば、比較的に安定した経営基盤のある米国株を長期保有することが狙い目です。
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米国株を取引するメリット
米国株と日本株には、取引単位や配当回数といった違いがあり、そこから生まれるメリットが存在します。 ここからは、米国株に投資するメリットをご紹介します。
少額投資ができる
米国株は1株から取引できるため、少額投資が可能です。大企業の銘柄であっても、数千円から購入できる株式もあり、投資初心者の方にも始めやすいといったメリットがあります。また、投資金額を抑えることで、株価が下落した際のリスクも少なくて済みます。
ETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)についても同様に、少ない口数での買い付けが可能です。特にNISAを利用している場合、限られた非課税枠のなかでも、米国株式・米国ETFや投資信託などさまざまな資産へ分散して投資することができ、この点も米国市場の人気の理由でしょう。
ただし、後に説明するように手数料と為替については注意が必要です。
配当利回りが良い
米国株のメリットのひとつとして、配当利回りの良さが挙げられます。配当利回りとは、購入する株の金額に対して、1年間で得られる配当金の割合です。米国株では、この配当利回りが投資家に重視されているため、日本株よりも良い傾向にあります。また、配当回数も日本株より多い傾向があり、年4回の企業も数多くあります。
このように、配当を重視したい投資家にとっては非常に魅力的な市場だといえます。
ただし、配当の分を成長投資へ回している企業もあるので、企業分析はきちんと行うようにしましょう。
世界的に有名な企業に投資できる
米国株には、アップルやマイクロソフトといった世界的に有名な企業に投資できるメリットがあります。日本株に投資する場合、耳に馴染まない銘柄が比較的に多く、情報を多く集める必要がありますが、米国株の場合は名が通っている銘柄が多く、集める必要のある情報も比較的に少なく、情報も集めやすいです。近年、IT・コミュニケーション関連企業の成長は目覚ましく、アップルのように10年で100倍近く株価を上げた企業も存在します。米国は投資家も多く、ベンチャー企業を育てる土壌が出来上がっているため、今後成長しそうな企業に投資をすれば、大きなリターンを得られるかもしれません。
米国株を取引する際の注意点
米国株取引と日本株取引は異なる点があり、デメリットや注意点についても知っておく必要があります。 ここからは、米国株を取引する際の注意点についてご紹介します。
取引時間が異なる
米国株取引を行う注意点として、時差による取引時間のずれがあります。
米国株の取引時間は、日本時間の23:30~翌朝6:00(サマータイムは22:30〜翌朝5:00)となっています。日本で生活する人にとっては、夜間から早朝にかけて取引することは大変です。「眠っている間に株価が大幅に下落していた」ということにもなりかねません。
夜間や早朝の取引が不安な方は、「指値注文・逆指値注文」を利用することも一つの方法です。指値注文とは「〇円以下になったら買う」「〇円以上になったら売る」といった注文方法です。設定した株価に達したら、自動的に売買されます。
また、逆指値注文とは「〇円以上になったら買う」「〇円以下になったら売る」といった注文方法です。「〇円以上になったら買う」ときは、その銘柄がさらに上昇すると見込んでいる場合に使用します。「〇円以下になったら売る」は、損切りに活用します。夜間に大幅な株価下落があったとしても、損切り金額に到達したら、自動的に売り注文を出すことが可能です。
手数料が高い
米国株は、日本株よりも手数料が高くなりやすいため、取引回数を減らす工夫が必要です。
このような配当に関する情報は株価に影響を与えることが多いので、この確認も欠かさないようにしましょう。
米国株の取引で必要になる手数料には、以下の3つがあります。
売買手数料 | 証券会社によって異なり、1回の約定代金(取引が成立した代金)に対して、〇%と定められる。 |
為替手数料 | 買付時、売却時に発生する、日本円と米ドルの両替コストで、1米ドルあたり、〇銭と定められる。 |
SEC Fee | 米国現地証券取引所手数料で、米国株の売却時に発生する。約定代金の1米ドルあたり、0.0000051米ドル発生する。 |
為替変動リスクがある
米国株の取引では、為替変動のリスクについて考える必要があります。為替変動とは、円と米ドルの為替相場が変動することで、保有する米国株の価値が変わることです。
たとえば、「1株100ドル」の株式を「1ドル100円」の時に購入する場合、購入に必要な日本円は10,000円です。この株が「1株110ドル」に上がったときに売ると仮定してみましょう。
1ドルが変わらず100円であれば、「110ドル=11,000円」になり、1,000円の利益が出ます。 しかし、1ドルが90円と購入時より円高になっていた場合、「110ドル=9,900円」になるため、100円のマイナスが発生します。ここから手数料が差し引かれるため、さらに利益は目減りするかもしれません。反対に、購入時より円安になっていれば、利益はさらに増えます。
このように米国株の取引で利益を得るには、「円高の時に買う」「購入時より円安の時に売る」といった工夫が必要となり、為替変動に応じて売買タイミングを判断することが重要です。
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米国株の株価指数
日本の株式市場には、日経平均株価やTOPIX(トピックス)といった株価の上がり・下がりを判断する指標があり、これを「株価指数」と呼びます。
株価指数とは、取引所全体の銘柄や、ある特定の基準で選ばれた銘柄群の株価を一定の基準で計算し、数値化した指標です。平均株価や、ある時点の株価を基準とした値動き幅を示す指数になります。株価の動きを長期的に評価するときに活用できます。
ここからは、米国株の代表的な株価指数である、NYダウ・ナスダック総合指数・ナスダック100・S&P500についてご紹介します。
NYダウ
NYダウとは、米国の株式市場における代表的な株価指数です。米国株の代表的な30銘柄を株数で割った、平均株価を表します(ダウ式)。ニューヨーク証券取引所・ナスダックに上場している株式から30銘柄が選ばれ、数年に一度は銘柄の入れ替えもあります。30銘柄には、成長性があり知名度の高いアップル、ボーイング、ウォルト・ディズニー、コカ・コーラ、P&Gといった超有名企業が名を連ねています。
日本の代表的な株価指数に「日経平均株価」がありますが、NYダウは日経平均株価と比べて平均株価が上昇を続けています。アメリカ市場が、日本市場に比べて成長への期待が高いことがうかがえます。
ナスダック総合指数
ナスダック総合指数とは、ナスダックに上場する3,000を超える銘柄で構成された株価指数です。各銘柄の時価総額を基準時点の時価総額合計で割る「時価総額加重平均」で算出されています。
ナスダックは、ベンチャー企業向けの株式市場として始まり、現在では米国株のうち、IT関連の大手企業が数多く上場する市場です。主要銘柄には、ネットフリックス、ペイパル・ホールディングス、アドビといった企業が挙げられます。インターネット関連の企業が多く、ナスダック総合指数はIT業界の動向を探る指標とされています。
ナスダック総合指数とナスダック100の違い
ナスダック100とは、ナスダック上場企業における金融業以外の銘柄のうち、時価総額・流動性が高い上位100銘柄で構成された株価指数です。ナスダック総合指数同様、「時価総額加重平均」で算出されています。
構成銘柄が2000銘柄を超えるナスダック総合指数と比べて、世界でより知名度が高く代表的なIT企業の動向を把握できるようになります。主要銘柄には、アップル、マイクロソフト、アルファベット(Google)、アマゾン、テスラ、メタ・プラットフォームズ(フェイスブック)などが挙げられます。
ナスダック100は高成長の銘柄で構成されるため、ナスダック総合指数よりも高い水準で推移しています。
S&P500
S&P500とは、米国に本拠地を置く企業のうち、時価総額の高い500銘柄で構成された株価指数です。「時価総額加重平均」で算出されています。
S&P500の構成銘柄はニューヨーク証券取引所・ナスダック両方の上場企業から選ばれており、アメリカの主要500社の株価推移を把握することが可能です。また、S&P500は時価総額の大きい銘柄の値動きに影響を受けやすいという特徴があります。
まとめ
米国株は、日本株と比べて上昇幅が大きく、今後も成長が期待できる人気の株式市場です。1株単位で投資できるため、初心者の方にも始めやすいでしょう。
また、米国株のなかには高配当の銘柄が数多く存在しているため、長期投資にも向いています。加えて、魅力的な世界有数の成長企業に投資ができることもメリットです。ただし、取引手数料が日本株よりも高くなりやすく、為替変動のリスクも存在するため、取引回数や投資タイミングについては慎重な見極めが必要です。NYダウやナスダックといった株価指数を活用しつつ、リスクを抑えた投資を目指しましょう。
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