アナリスト 馬渕治好氏が語る「今のマーケットを襲っている混乱は逆バブルの典型例」 東証ETF

投稿日:2013/06/27 最終更新日:2022/08/03
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【第23回】

アナリスト 馬渕治好氏が語る

「今のマーケットを襲っている混乱は逆バブルの典型例」

連日のように国内外の株価が急落し、円高が急伸。そして金利は急低下。ユーロ問題や米国債の格下げ問題によって、先進国のマーケットは混乱に陥っています。この混乱はいつまで続くのでしょうか。またこの混乱に引きずられる形で、主要国の景気は再び後退局面へと入っていくのでしょうか。グローバルなマーケットの動向について、オフィス セントポーリア代表で、アナリストの馬渕治好氏に伺いました。
世界各国でマーケットが大混乱に陥っています。米国、ユーロ圏、そして新興国の何が問題なのかについて、整理していただけますか?
馬渕氏
馬渕氏オフィス セントポーリア代表
馬渕治好氏
結論から言うと、今の世界経済は、決して実体面は悪くないのですが、ある種の「懸念」に支配されており、それが実体よりも、マーケットを大きく下押ししている面があります。決して悪いわけではないのに、わざわざ悪い材料を見つけ出しては大騒ぎをし、マーケットを崩してしまっているのです。その意味では、「逆バブル」的な状態に陥っているといえるでしょう。
では、各国別に何が懸念材料になっているのかということを考えてみましょう。
まず米国は財政問題です。8月2日よりも前は、債務上限の引き上げ問題がマーケットの混乱要因になっていました。
それが、8月2日に上下両院の承認が得られ、ようやく前に向かって動き出すと思ったら、今度は米国国債の格下げ問題がクローズアップされました。実際に米国国債の格付けは一段階引き下げられましたが、これが引き金になって米国の株価が大幅下落。これが米国経済の不安心理を高めており、景気後退懸念につながっています。
景気指標を見ても、住宅関連統計は回復力が弱く、雇用情勢も決して堅調とは言えません。米国は景気後退に陥っているとは考えませんが、ソフトパッチと言われる景気の一休み状態で、米国経済に対する信頼感が後退しています。
次に欧州経済ですが、これはもう多くを語る必要はないと思うのですが、ギリシャ問題に端を発した財政危機問題です。ギリシャのみならず、イタリア、ポルトガルなどにも財政不安が波及しました。
そして新興国については、やはりインフレ問題が大きな懸念材料と考えられています。インフレの芽を摘み取るために利上げが行われ、その結果、景気が失速状態に陥るのではないかという点が、懸念されています。中国、インド、ブラジルなど、いずれの国でも、それが最大の懸念材料です。
このように、各国がめいめいの経済問題を抱えるなかで、日本も震災の影響、財政赤字という大きな問題を抱えてはいますが、米国や欧州のように、財政問題が目先に差し迫って騒がれてはいないため、米ドル売り、ユーロ売りのなかで円が大きく買われてしまいました。いわば今の円高は、消去法的な中での円高ということになります。
国内外の株式、米ドルやユーロといった主要国通貨が売られる一方、買われたのは日、米、独の国債と金(GOLD)という状況が続いています。
これだけ株価や主要国通貨が下げても、実体経済は悪くないということですか?
馬渕氏
たとえば外貨の水準ですが、もう随分と良いところまで売り込まれています。ここから先、さらに大きく売り込まれる可能性がどのくらいあるのかということですが、恐らく、その可能性は限りなく小さくなっていると思います。対円での米ドル安、ユーロ安というのは、この辺が潮時ではないかということです。
景気に目を向けても、世界各国、そんなに大きく落ち込んでいるわけではありません。それでも、なかなか世界的な景気回復を実感できないのは、ひとえに米国の問題が大きいからということですが、その米国経済が本当に今、最悪の状態にあるのかというと、それも疑問です。確かに、米国国債の格付けは引き下げられましたが、雇用が大幅なマイナスに落ち込んでいるわけではありません。毎月発表される雇用統計の数字を見ても、非農業者部門雇用者数は多少の上下はあっても、プラスを維持しています。つまり、少しずつではありますが、毎月、雇用は増えているのです。
馬渕氏
そのうえ、米国雇用者の週当たり総賃金を見ると、すでにリーマンショック前の水準を超えて、過去最高の状態にあります。つまり米国の労働者は今、過去最高水準の賃金をもらって働いていることになります。
恐らく、このように言うと、多くの方は違和感を持つでしょう。ここでひとつ言えるのは、過去最高水準の賃金を得ている人というのは、働き口がある人であるということです。今、米国企業は雇用を抑えており、少ない社員数でより多くの仕事をこなすため、残業を行っています。働き口のある人は、残業代がプラスオンされるため、賃金が大きく伸びているのです。ある意味、二極化が進んでいるということですが、見かけ以上に、米国景気はしっかりしていると見ることができるでしょう。
次に欧州経済ですが、現状、ユーロ安、金利低下というなかで漁夫の利を得ているのはドイツです。ドイツにとって、今のユーロ経済圏の金利水準は実力以上に低く、ユーロは実力以上に安い水準にあります。つまり、資金調達が容易になり、かつ輸出ドライブもかけやすくなっています。確かにギリシャ問題は懸念材料ですが、それも今すぐに爆弾が破裂するほどのものではありません。
そして新興国ですが、たとえば中国の場合、昨年の消費者物価指数は3%の伸びに抑えることを目標にしていたのに、実際には5%の伸びになりました。本来、5%もの伸び率を見せている物価を、3%という目標値に押さえようとすると、これは金利を思い切り引き上げる必要があります。その行き着く先は景気の大幅後退です。
ところが、中国政府はインフレ目標を4%に引き上げました。これは、中国政府がインフレ退治よりも、経済成長を重視している証と受け止めることができます。
このように、マーケットが消化しようとしている不安材料と、実体経済の間には、大きなギャップがあります。まさに、このギャップこそが逆バブルなのです。
仮に世界の景気が回復に向かうとしたら、そのきっかけは何ですか?
馬渕氏
やはり米国の経済が回復へと向かうかどうかという点が、重要だと考えています。
なぜ米国なのか、ということですが、これは、米国が世界のお客様だからです。日本製品、中国製品、その他、さまざまな国からモノを購入しているのは、米国なのです。当然、米国の景気が回復へと向かえば、米国に住んでいる人たちは個人消費意欲を高めますから、日本製品や中国製品が売れるようになります。
つまり、米国の景気が回復することによって、米国へモノを輸出している国の景気も良くなっていくのです。それを考えると、世界経済が回復へと向かうきっかけは、第一に米国の景気回復ということになります。
では、12億人とも言われる人口を抱える中国が、米国に代わる世界の消費マーケットになる可能性はあるのかということですが、これは仮にそうなるとしても、まだ相当の時間が必要です。
これまで中国は、低コストで労働力を提供することにより、世界の工場として君臨してきたわけですが、一人っ子政策が成功し過ぎてしまい、中国の労働生産人口は、2014年以降、減少傾向をたどっていきます。そうなると、労働者の数が減ってしまうため、労働コストが上昇傾向をたどってしまいます。結果、低コストを売りにして、積極的に輸出を行い、外貨を稼ぐということが、これからは徐々に難しくなっていきます。
したがって、中国が世界経済の成長エンジンになるためには、いかにして内需主導型の経済に転換できるかという点が問題になってきます。これが成功するかどうかは、今の段階では何ともいえませんが、個人的な感想を言えば、何とかなるのではないでしょうか。
ただ、中国が世界の消費マーケットとしてお客様になるためには、まだかなりの時間がかかりますから、目先の景気回復を考えると、やはり米国の動向が注目されることになるのです。
こうした世界経済の流れのなかで、日本経済の行方はどうなるでしょうか。
馬渕氏
尾河氏
震災の影響で、サプライチェーンが乱れ、それによって生産が落ち込んだわけですが、それもかなりの程度まで回復してきました。8月は節電の問題がありますので、どうしても操業面は抑制気味にならざるを得ませんが、涼しくなる9月以降、節電の問題がクリアされたところから、徐々に日本経済も回復に向かうと考えています。生産さえ回復すれば、米国、そして中国を中心とするアジア諸国が、日本製の部品などを積極的に購入すると思われるからです。
問題は円高です。やはり1ドル=77円台というのは、いかにも円が過大評価されていると判断せざるを得ないでしょう。基本的には、理不尽な円高だと考えています。ですから、この水準はいずれ、どこかの段階で修正されるはずです。購買力平価を、卸売物価指数で計算すると、1ドル=100円になりますから、少なくとも1ドル=90円くらいまでの戻りは、十分、視野に入っているのではないでしょうか。そうなれば、日本の輸出企業の採算も回復してきますから、それを反映して、株価も上昇する可能性が高まってきます。そして年末にかけて、かなりの水準まで回復すると見ています。
来年以降、世界経済はどういう動きになるのでしょうか。
馬渕氏
来年以降は明るい方向に進むと見ています。米国では来年11月に大統領選挙が行われますが、大統領選挙の年は、景気に悪い政策は打ち出さないのが普通です。したがって、米国の景気は、思ったよりも早く立ち直るのではないでしょうか。
もちろん、全く懸念材料がないというわけではありません。中国は2012年の共産党全国大会で指導者が交代しますから、その影響がどう出てくるのかが、多少心配されます。また、ギリシャの債務リストラはなかなか進まず、2年後くらいには、デフォルト問題が再びクローズアップされてくるでしょう。
ただ、これらの問題点は、今すぐ実体経済に大きなダメージを及ぼす類のものではありませんから、来年の世界経済は、米国経済の回復に乗じる形で多少の回復が期待できると思います。
馬渕治好(まぶち はるよし)氏プロフィール
オフィス セントポーリア 代表
馬渕治好氏
1977年 東京教育大学(現:筑波大学)附属高等学校卒業
1981年 東京大学理学部数学科卒業
1988年 米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程終了
主な職歴:1981年に(旧)日興証券入社。1986〜88年は2年間休職し、米国留学。他の期間は、ほとんど調査関連諸部門を歴任。2004年8月〜2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月より、オフィス セントポーリア代表として、独立した形で経済・市場分析業務を行なっている。

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監修者:菅原 良介
編集者:K-ZONE money編集部

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