傷病手当金の計算方法は?支給額や支給日数についてわかりやすく解説!

投稿日:2022/12/09 最終更新日:2023/08/04
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傷病手当は病気やケガで働けなくなった時に、給与の一定額を手当として補償してくれる大変助かる制度です。業務上のケガや病気に対して支給される労災とは異なり、業務外の病気やケガに対して支給されるのが傷病手当です。令和4年1月1日より傷病手当の支給期間が通算化され、私たちにとって有利に改正されました。

この記事ではルールが変わった傷病手当の通算期間の決め方や支給金額の計算方法を解説します。これから傷病手当申請を考えている方は参考にしてください。

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傷病手当金の支給日数の計算方法は?土日も含まれる?

傷病手当は病気やけがのため、連続して3日以上休み、4日目以降仕事をつけない場合に4日目から支給されます。令和4年1月1日から支給期間が「最長1年6カ月」から「通算1年6カ月」に変更(※1)されました。

※1:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます

支給日数の計算方法

支給日数を計算する場合、大きくわけると「待機期間」と「支給期間」の2つに分けられます。

待機期間は連続した3日の休み(休業期間)となります。待機期間にあたる日数は傷病手当金は支給されません。待機期間の完了が認められたのちに支給が開始されます。

2日休みで次の日に出勤した場合、待機期間は完了していません。この場合、その後3日間連続で休むまで待機は完了しません。

逆に連続して3日休んだ場合、その次に1日出勤しても待機期間は完了しています。再度休みに入った時には出勤後の休みから傷病手当が支給されます。

待機期間には土日や祝日、有給休暇なども含まれます。待機期間は給与が支払われたかどうかは関係ありません。

支給期間は待機期間完了後(つまり4日目の休み)から開始となります。支給期間が始まると傷病手当金の支給も開始されます。

これまで、支給期間は最長で1年6カ月とされていました。支給期間が開始した日以降に、ケガや病気による休業(欠勤)と復帰(出勤)を繰り返した場合、出勤している間は支給期間内であっても傷病手当金は支給されません。しかし、支給期間は、支給の行われない出勤している期間も含めて1年6カ月までとなっていました。


健康保険法等の改正により、令和4年1月1日から、支給期間は通算1年6カ月になりました。ただし、支給期間が通算できるのは令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当が対象(※2)です。それ以前に支給開始された傷病手当については最長1年6カ月であることに注意してください。

待機期間の成立条件

待機期間の成立条件

※2:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます(リーフレット)

一旦復帰して、再度休業となった場合

傷病手当支給期間中に一度復帰(出勤)して、再度療養期間(欠勤)に入った場合、待機期間なく傷病手当が支給されます。この場合、出勤した日は傷病手当が支給されませんが、1年6カ月の通算期間からは除外されます。

一旦復帰して、再度休業となった場合

一旦復帰して、再度休業となった場合

ただし、先ほど説明した通り、令和2年7月2日以前に支給開始された傷病手当については、1年6カ月の期間内に入ります。(通算ではなく最長1年6カ月で計算されるため)

支給日数の計算例

傷病手当の具体的な支給日数を以下のケースを参考に計算してみます。

例)以下の3回において傷病手当申請がされたとする

1回目:令和4年3月1日~4月10日 労務不能(支給期間:38日間)

2回目:令和4年4月11日~4月20日 労務不能(支給期間:10日間)

3回目:令和4年5月11日~6月10日 労務不能(支給期間:31日間)

この場合、1回目の令和4年3月1日〜3日の3日間が待機期間となり、4日から支給開始となります。(1年6カ月の起算日は4日からとなり、令和5年9月3日までの549日間です)

1回目の支給が終わった後、残りの支給期間は511日です。その後、支給期間を重ねるごとに残りの支給期間を減算していき、残支給日数が0になった日が支給満了日となります。

支給日数を減算するのは療養期間のみなので、上記の2回目と3回目の間の期間は支給日数は減算しません。

傷病手当金の支給額の計算方法

次に傷病手当は月いくらもらえるのか、具体的な計算方法を解説します。傷病手当は標準報酬月額(簡単に言えば平均的な給与)から支給額を決めます。およそ給与の2/3だと認識しておきましょう。

支給金額の計算方法は?

傷病手当の1日あたりの支給金額は以下のように計算します。

【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷ 30日 × 2/3

なお、標準報酬月数の決定方法についてはいくつか注意点があります。後述の「計算方法の注意点」をご確認ください。

標準報酬月額とは?

標準報酬月額は、社会保険料を計算しやすくするために、被保険者が会社から受け取る給与などのひと月分の報酬を、その額に応じ一定の範囲ごとに区分したものです。区分を「等級」と呼び、健康保険は50の等級に分けられて計算されています。

標準報酬月額は原則7月1日時点において、同日より前3か月(つまり4〜6月)の平均から算出します。これを定時決定といい、その年の9月から翌年8月まで使用します。

このほかにも資格取得時の標準報酬の決定や昇給等により固定給に変動がある場合の随時改定でも標準報酬月額が決まります。例えば、令和4年度の東京都で4〜6月の給与が以下の場合、定時決定の標準報酬月額はこのようになります。

4月の給料:34万円 5月の給料:35万円 6月の給料:36万円

3か月の平均額:(34+35+36)/ 3 =35万円

標準報酬:25等級 標準報酬月額:36万円 

※標準報酬月数の計算は手取りではなく給与から求めます。

支給金額の計算例

実際に傷病手当は月いくらもらえるか、上の場合を例にして計算してみましょう。

ここでは標準報酬月額の平均を36万円(25等級)とします。

①30日で割って平均月額の1日分を計算する

360,000 / 30 = 12,000

このタイミングで端数が出た場合、1の位を四捨五入します。(※3)

例)月額35万円の場合

350,000 / 30 ≒ 11,666.666 ⇒ 11,670とする。

②2/3をかけて1日の支給額を算出する

12,000  × 2/3 = 8,000

このタイミングで端数がでた場合、0.1の位を四捨五入します。(※3)

例)①の結果が11,000の場合

11,000 × 2/3 ≒ 7,333.333 ⇒ 7,333とする。

③申請に応じた支給日数をかける(仮に15日とします)

8,000 × 15 = 120,000

よって25等級の場合、15日間分の傷病手当は12万円支給されます。

※3:健康保険法第99条第2項

計算における注意点

標準報酬月額の計算では、対象となる金額に注意しましょう。一般的な賞与は含まれません。また、支給開始前の期間が12カ月に満たない場合には通常とは別の計算が必要です。

賞与は含まれない

標準報酬月額の対象に含まれるものは、基本給のほか、通勤手当や役職手当、残業代などです。一般的に毎月の給与として支給されるものが対象になると考えてください。
賞与など、労働の対償として受けるもので年3回以下しか支給されないものは標準報酬月額に含まれません。そのため、賞与という名目の報酬でも年4回以上支給されるものは標準報酬月数に含まれます。

少々話がそれますが、傷病手当は休業期間中の給与の支給がないことが条件であるため、通勤手当や住宅手当など、固定的な賃金が支払われている場合は減額されてしまいます。

支給開始前の勤務期間が12ヶ月に満たない場合は?

支給開始日以前の期間が12カ月に満たない場合は以下のいずれかの低い額を基準にします。

  • 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 会社が属している健康保険組合の全被保険者の平均額

後者の場合、組合によって額が異なります。全国健康保険組合(協会けんぽ)の場合、30万円です。

傷病手当金支給日額早見表

難しい計算ではありませんが、標準報酬月額から傷病手当金の支給額を計算するのは少々面倒です。以下の早見表を使えば比較的簡単におおよその支給額を計算できます。

月額給与 傷病手当金
支給日額(円)
月額給与 傷病手当金
支給日額(円)
円以上~円未満 円以上~円未満
             ~63,000 1,287    370,000~395,000 8,447
 63,000~73,000 1,513 395,000~425,000  9,113
 73,000~83,000 1,733 425,000~455,000  9,780
 83,000~93,000 1,953 455,000~485,000  10,447
 93,000~101,000 2,180 485,000~515,000  11,113
  101,000~107,000  2,313 515,000~545,000  11,780
 107,000~114,000 2,447 545,000~575,000  12,447
 114,000~122,000 2,620 575,000~605,000  13,113
 122,000~130,000 2,800 605,000~635,000  13,780
 130,000~138,000 2,980 635,000~665,000  14,447
 138,000~146,000 3,153 665,000~695,000  15,113
 146,000~155,000 3,333 695,000~730,000  15,780
 155,000~165,000 3,553 730,000~770,000  16,667
 165,000~175,000 3,780 770,000~810,000  17,553
 175,000~185,000 4,000 810,000~855,000  18,447
 185,000~195,000 4,220 855,000~905,000  19,553
 195,000~210,000 4,447 905,000~955,000  20,667
 210,000~230,000 4,887  955,000~1,005,000  21,780
 230,000~250,000 5,333  1,005,000~1,055,000  22,887
 250,000~270,000 5,780  1,055,000~1,115,000  24,220
 270,000~290,000 6,220  1,115,000~1,175,000  25,553
 290,000~310,000 6,667  1,175,000~1,235,000  26,887
 310,000~330,000 7,113  1,235,000~1,295,000  28,220
 330,000~350,000 7,553  1,295,000~1,355,000  29,553
 350,000~370,000 8,000  1,355,000~ 30,887

利用方法は以下の通りです。

  1. 毎月のおよその平均給与から1日の支給額を確認します。
  2. 療養期間から3日を引いた日数が支給日数となります。        ※待機期間は土日祝日や有給休暇なども含むのでご自身で調整してください。
  3. 1でチェックした1日の支給額に②で計算した支給日数をかけて総額を出します。

※厳密にはお住まいや給与などで変わってくるので、概算を確認するのに利用してください。

まとめ

傷病手当金はルールが変わったこともあり、給与のおよそ2/3を通算で1年6か月分もらうことができる非常に助かる制度です。ただし、傷病手当の支給期間中も社会保険料や税金の支払いはあるため、手取りはかなり減ってしまうことになります。

そのため、傷病手当金だけを頼りにするのではなく、医療保険のような第3分野の保険などを利用して万が一に備えておくことが大切です

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よくある質問

Q

傷病手当金と有給休暇どちらが得?

A

単純な金額だけで考えれば有給休暇のほうが支給金額は大きくなります。ただし、療養の期間などに応じて状況が変わるので、どちらが得かの正解はありません。

Q

傷病手当金を受給中に退職したらどうなる?

A

退職で被保険者でなくなった(資格喪失)後も、一定の条件を満たせば傷病手当金を受給できます。これを継続給付といいます。継続給付には条件があるので、詳細は健康保険組合でご確認ください。

Q

傷病手当金はいつ振り込まれる?

A

傷病手当金は、申請の審査確認後おおよそ1ヶ月程で振り込まれます。もしも時間がかかっている場合は確認したほうがよいでしょう。 詳しくは以下の記事をご確認ください。

【関連記事】傷病手当金とは?いくらもらえるの?支払条件や支払期間、申請方法を徹底解説

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