長期投資は、文字通り特定の銘柄に長期間投資し続けるものです。株式のほか投資信託やラップでも取り組むことができます。マーケットタイミングを気にせず投資できるため、初心者でも取り組みやすく、また最終損益の安定性を高めることができます。株式に関していえば、割安株や高利益率の株、増配株などがおすすめです。
長期投資がおすすめって本当?
長期投資とは長い期間投資を行う手法です。具体的な年数にきまりはありませんが、数年以上は投資するのが一般的です。運用コストが高い、すぐには儲からないなどの留意点がある一方で、期間全体のリターンの安定化や複利効果による収益性の向上などが期待できます。
長期投資とは?
長期投資は長い期間にわたって特定の銘柄や金融資産を継続的に保有し続けて収益を追求する投資手法です。年数には決まりはありませんが、すくなくとも数年、時には遺産相続なども視野に数十年単位で投資を行うケースも少なくありません。
日本株などを保有し続けることでも長期投資は可能ですが、投資信託やラップ口座など長期・分散投資がしやすい金融商品もあります。投資先を選択する上では、短期的な成長よりも、長期に渡り存続して安定的に成長すると期待される銘柄を選ぶことが大切になります。
長期投資を行うと、その期間に発生した収益を再投資することで、さらに収益性が高まる複利効果をより多く享受することができます。分配金・配当が出る商品であれば受け取った現金を再投資すれば複利効果が得られます。分配金・配当がない銘柄も、投資先のファンドや企業が利益を再投資してくれるので、間接的に複利効果を享受することができます。
長期投資メリットとデメリット
長期投資のメリットは次のとおりです。
- 最終損益が安定しやすい
- 複利効果が得られる
- 日々の値動きに左右されない
資産運用は一般的に長期で保有するほど一時の市場の動きに左右されにくくなるため、通算のリターンが安定する傾向にあります。また、複利効果により収益が増大していくため、より大きな資産を形成することができます。
また、長期投資では日々の値動きに合わせて売買をする必要がありません。日々の市場の動きを細かくウォッチする必要はなくなります。
一方でデメリットは次のとおりです。
- すぐには利益確定できない
- 将来の予測が難しい
- 年々コストがかかる
長期投資はたとえ価格が上昇したとしても、すぐに売却するわけではないため、利益が実現するまでには時間がかかり、すぐには儲からないものです。また、特に銘柄選択の難しさがある点に注意が必要です。複利効果を得ながら安定的な収益を得るためには、投資先が運用期間にわたって存続しなければならず、倒産やファンドの運用終了などが発生しない銘柄をうまく選ぶ必要があります。遠い将来を予測して、安定的な成長が期待できる銘柄を選ぶのは容易ではありません。
最後に、投資信託など一部の銘柄は保有している期間にわたってコストが発生します。長期で保有し続けていれば、それだけ金額で見た時の運用コストは膨らんで行くことになるでしょう。ただし短中期で売買するとしても、それぞれの売買コストと、各銘柄の保有期間に応じたコストがかかります。そのため長期投資の方が高いコストがかかるとは一概に言えません。
なお、長期投資や中期投資と短期投資のメリットとデメリットについてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、合わせて参考にしてください。
長期投資に向いている人の特徴
長期投資は、例えば次のような特徴を持つ人におすすめです。
- 投資初心者
- 若い人の余剰資金
- 老後資産形成のための運用
- 本業などが忙しい人
投資初心者は短期間で収益が上がる銘柄を見つけ出して利益を稼ぐのは困難なため、短期投資は向かないといえます。一方で日々の値動きを精緻に分析しなくても良い長期投資でじっくり資産を育てていくのが適しています。また、若い人の余剰資金の運用や、老後のための資産形成など、資金が必要となるタイミングが当面先である場合にも、長期投資で、着実に増やしていくのがおすすめです。
最後に一般のサラリーマンなど本業が忙しい人にも実は長期投資がおすすめです。日々忙しいと市場動向を逐一ウォッチするのは困難です。長期投資であれば、空いている時間に資産状況を確認しながら進めることもできるため、忙しい人でもチャレンジしやすい投資法と言えるでしょう。
投資スタイルの決め方については、こちらの記事でも紹介しているので、合わせて読んでみましょう。
長期投資のポートフォリオの組み方・銘柄の選び方は?
長期投資を見据えたポートフォリオは次のような日本株などの銘柄から投資先を選ぶのが良いでしょう。
- 割安な銘柄
- 利益率が高い銘柄
- 連続増配の銘柄
それぞれのポイントについて詳しく紹介していきます。
株価が割安な銘柄
株価の割安さはPERで見ると良いでしょう。これは株価収益率と呼ばれ、株価を一株あたり利益で割ったものです。適正値は15〜20倍程度と言われ、これより低い銘柄はその企業の利益を出す力と比較して割安であると考えられます。
株価が割安な銘柄は、順調に利益を出せば中長期的に割安さが修正されて、株価が緩やかに上昇していくと期待されます。万が一業績が不調な時でも、そもそも株価が従来の利益水準対比で低かったわけなので、割高な株と比較すると、株価の下落が抑制されると期待されます。
そのため、長期で保有している間において、大きな含み損が発生するリスクが低く、逆に緩やかに上向いていくと期待できるため、割安株は長期投資に適した投資先の一つです。
利益率が高い銘柄
利益率にもいろいろありますが、長期投資においては本業の収益力をよく表す営業利益率=(営業利益÷売上高)を見るのがおすすめです。商品が他社と差別化されているなど、付加価値の高いビジネスを営んでいたり、規制業種で新規参入が難しい場合などには、利益率が高くなる傾向にあります。
利益率が高いことは、他社と比較して競争力があるということを意味します。さらに少ない売上でも充分な利益を出しやすいことを意味するため、景気悪化など売上が落ち込んでも深刻なダメージを受けにくいということでもあります。
長期で投資すれば、時には景気が悪い局面も経験するでしょう。利益率の高く耐久力のある銘柄に投資していた方が、厳しい局面を耐え抜いて、投資を継続していけると期待されます。
連続増配の銘柄
増配とは配当が前年より増えることを意味します。そして、連続増配とは数年にわたって継続的に配当が増えていくことです。長期投資においては、マイナスになることがない配当を毎年積み上げていくことで期間全体の利益を安定化させることができます。増配傾向の銘柄は年々配当が増えていくため、さらに収益の安定化と収益率の改善が期待できます。そのため、増配に積極的な企業も、長期投資に適した企業なのですl。
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長期投資におすすめ銘柄
長期投資を行う場合は、PERを参考に割安株を選んだり、連続増配の株を探したりするのが重要です。なぜなら、割安株は長期投資で今後の値上がり益が期待でき、また連続増配株は安定した利益が出ていることから、長期投資に向いている銘柄だからです。
割安株のおすすめ銘柄
代表的な割安株は次のとおりです(2023/2/22時点)。
銘柄 | PER |
川崎汽船 | 1.47倍 |
INPEX | 4.51倍 |
スクロール | 4.96倍 |
住友金属鉱山 | 5.01倍 |
新日本電工 | 6.81倍 |
ディー・エヌ・エー | 6.89倍 |
日本ガイシ | 7.91倍 |
クラレ | 7.55倍 |
旭化成 | 8.10倍 |
ケーズホールディングス | 8.38倍 |
この中でも群を抜いているのは、川崎汽船は海運業界3位の大手企業です。PERが1.47倍と言うことは、2年間の一株あたり利益を合計すると株価を上回るということになります。海運の輸送需要や船賃は景気の動向を受けやすいため、利益変動が大きい点には注意が必要です。しかし、川崎汽船ほどの大手が経営危機に陥るリスクは低いため、一時の業績変動を過度に気にせず、長期投資する先として適した銘柄の一つと言えます。
連続増配株のおすすめ銘柄
続いて連続増配のおすすめな銘柄は次のとおりです。数字は2022年度までの連続増配年数です。
銘柄 | 連続増配年数 |
花王 | 32年 |
SPK | 24年 |
三菱HCキャピタル | 23年 |
小林製薬 | 22年 |
ユー・エス・エス | 22年 |
リコーリース | 22年 |
トランコム | 21年 |
ユニ・チャーム | 20年 |
リンナイ | 20年 |
KDDI | 20年 |
沖縄セルラー電話 | 20年 |
いずれも20年以上の増配実績があり、長期投資には特に適した銘柄といえます。特に花王は32年とこの中でも群を抜いて長期に渡り増配を実現してきたおすすめ銘柄です。花王は衛生用品や化粧品、住宅用洗剤などを扱う消費財メーカーです。
花王の商品は生活必需なものが多く、景気動向に左右されずに安定的に利益を生み出す力を持っています。花王の連続増配には、長きにわたって生活必需品を安定的に販売してきた実績が反映されていると言えるでしょう。
長期投資でやりがちな失敗3選
長期投資にはメリットが多いのですが、いざ実践しようとするとうまくできないという人も少なくありません。ここからは長期投資でやりがちな失敗について3つ紹介します。これから長期投資にチャレンジする人は、これらの失敗をしないように注意してください。
投資する銘柄をよく調べない
世の中には長期投資に適した商品と適さない商品があります。それらの違いを理解せずに闇雲に銘柄を選んだ結果、長期にわたって株価が低迷したり、さらに悪いことに運用中に倒産して無価値になるリスクもあります。投資信託の場合も運用残高が小さい銘柄を選んだ結果、突如運用を終了するなどのリスクが考えられます。
事前の調査と投資に関する勉強をしっかり行い、長期にわたって安心して保有できる銘柄をうまく選んで投資することが大切です。
多少の値上がりで売却
長期投資を行うと決めてかかっても、含み益が出ていると、つい売ってしまいたくなる人は少なくありません。しかし、小さい利益で売ってしまっても、運用期間はまだまだあるので、その後はまた別の資産に再投資しなければいけません。再投資先で仮に失敗してしまうと、確定したわずかな利益も無くなってしまう可能性もあります。
長期で運用する以上、少々の値動きを気にせずに保有を継続し、充分な収益の獲得を目指すことが大切です。売却のタイミングは気にせずに、あくまで当初定めた期間にわたり長期保有を継続しましょう。
値下がりで慌てる
逆に値下がりによって慌てて売却してしまう人も少なくありません。短期投資の時は適切なタイミングでの「損切り」が重視されます。しかし、長期投資の場合は、回復が絶対に見込めないほど状況が悪化したのでなければ、一時的な市場環境による値動きは気にせずに、じっくりと保有を継続する必要があります。
長期投資に適した銘柄を選んでいるなら、下落は一時的なものにとどまり、長期で見れば上昇に転じると期待できます。
まとめ
長期投資は数年〜数十年単位で保有を継続する投資方法で、日本株や投資信託、ラップなどで行うのがよいでしょう。すぐに利益が欲しい人には向かないですが、長期で運用を継続したい人や初心者などにはおすすめの投資方法です。また、割安株や増配株、利益率が高い企業の株などが長期投資におけるおすすめ銘柄となります。
短期投資とは異なり、長期投資では少々の含み損で損切りするのはおすすめできません。長期で安定成長が期待できる銘柄をうまく選んで、じっくり投資を継続していきましょう。
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よくある質問
Q | 長期投資の重要性は? |
A | 安定的に資産形成していきたい人にとっては重要な投資方法です。長期で保有を継続することにより期間を通じてみた時の損益が安定し、また配当や分配金の積み上げにより着実にプラス収益を狙えるようになります。 詳しくは「長期投資とは」を参照 |
Q | 長期投資は最低何年? |
A | 厳格な決まりはありませんが、最低でも数年、できれば10年単位で投資を継続するのがおすすめです。配当金や分配金などは長期で保有し続ければ蓄積していくため、基本的には長期間保有し続けるほど有利です。 詳しくは「長期投資とは」を参照 |
Q | 長期投資はなぜ儲かる? |
A | 投資先が長期で見たときに成長が見込める銘柄であれば、一時的な価格下落があったとしても、長期で保有していればいずれ上向くと期待できます。さらに配当や分配金が積み上がれば、それも収益を下支えする役割を果たします。これらの作用が、長期投資の収益を安定化させる役割を果たすのです。 詳しくは「長期投資メリットとデメリット」を参照 |