多数の個人投資家からインターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングの一つに貸付型クラウドファンディングがあります。文字通り特定企業や団体への貸付を小口化したファンドで、融資型クラウドファンディング、ソーシャルレンディングなど複数の呼び方があります。
融資先が貸し倒れを引き起こさない限り価格損益が出ず、保有期間中に得られる分配金が投資収益の源泉となるのが特徴です。
貸付型クラウドファンディングとは?
貸付型クラウドファンディングに投資をすると、間接的に企業や団体へ資金を貸し付けるのと同じ効果があります。貸付先が支払う利息が、ファンド投資家が受け取る分配金の原資です。近年急速に市場が拡大傾向で、今後も新興企業の資金調達手段として積極的に活用されるものと期待されています。
貸付型クラウドファンディングは貸付を小口化したもの
貸付型クラウドファンディングは、ファンドを通じて集めた資金を企業や団体などに貸し付ける仕組みの投資商品です。貸付先の企業は、融資の対価として定期的に利息を支払わなければなりません。この利息からファンド事業者の報酬・事務コストなどを引いた部分が、投資家の分配金として還元される仕組みです。
基本的に融資には返済期限が決まっていて、貸付先の企業は期限までに元本を全て返済します。そのため、企業が元利金を支払えなくなる貸し倒れなどを引き起こさない限り、当初投資した元本がそのまま投資家に償還されます。平時には元本の毀損リスクや価格変動リスクがなく、定期的に受け取る分配金の分だけ投資家が収益を獲得できる仕組みです。
貸付型クラウドファンディングとソーシャルレンディング
貸付型クラウドファンディング、ソーシャルレンディングそして融資型クラウドファンディングはいずれも同義です。呼び名は異なっても、企業や団体に貸付を行い、利息収入が分配金の原資となる点に変わりはありません。
事業者によって呼び名が違う場合もあるので、貸付型クラウドファンディングへの投資を考えている方は、融資型クラウドファンディングとソーシャルレンディングも調べておくと、投資できる候補先が広がるでしょう。
ソーシャルレンディングについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
貸付型クラウドファンディングの成長性
貸付型クラウドファンディングの市場規模は近年順調に拡大傾向です。2016年には市場規模は716億円でしたが、2020年には1,841億円に達しています。この間+209%の伸び率となっていて、急速に普及しているのがわかります。
資金調達サイドで見ると、ソーシャルレンディングは銀行融資が難しい新興企業などの貴重な資金調達機会です。他方、投資商品としてみると、元本の毀損リスクが低いにもかかわらず魅力的な分配金収入が稼げる点に多くの投資家が魅力を感じて積極的に投資しています。
このように資金調達ニーズと投資需要がかみ合って、市場の急拡大をもたらしているのです。今後も、新興企業などの資金調達ニーズを取り込む形で、貸付型クラウドファンディングの市場はますます発展していくものと期待されます。
貸付型クラウドファンディングおすすめ比較
貸付型クラウドファンディングには多数の事業者がありますが、特に下記のサービスがおすすめです。
貸付型クラウドファンディングおすすめ
- オルタナバンク
-
Funds
-
クラウドバンク
-
Bankers
-
Ownersbook
事業者が多くてどれを利用すべきかわからないという方は、ぜひこちらで紹介するクラウドファンディング事業者を検討してみてください。
オルタナバンク
オルタナバンクの特徴
-
オルタナティブ投資プラットフォームNo1
-
実績豊富ながら元本償還率100%で安心
-
最低投資金額は1万円~のファンドが多い
-
国内外の多様な事業融資をファンド組成
オルタナバンク(旧サムライファンド)は「オルタナティブ投資」としてクラウドファンディングを運営しています。オルタナティブ投資とは、株や債券など伝統的な投資とは異なる資産に投資するもので、機関投資家や富裕層などが盛んに取り入れている手法です。
オルタナバンクでは、さまざまな事業への融資を小口化することで、個人投資家でも気軽に投資できるオルタナティブ投資ファンドを提供しています。ファンド組成実績が豊富で日本トレンドリサーチ社の調査によると「オルタナティブ投資プラットフォームNo1」の評価を獲得しています。確かな実績をもつ貸付型クラウドファンディングに投資するなら、オルタナバンクがおすすめです。
既に200本以上のファンドを組成していますが、これまで全てのファンドの元本が100%償還されているのが特徴です。最低投資金額は、多くのファンドで1万円~となっていて少額からチャレンジできる貸付型クラウドファンディングとなっています。
国内外の不動産やファンド投資、特定事業への貸付など多様なファンドを募集しています。一つのファンドで複数の貸付先に分散するファンドがあるのも特徴です。
Funds
Fundsの特徴
-
上場企業や上場企業子会社の案件が多く健全性が高い
-
信用力が高い貸付が多いため予定利回りは低め
-
Funds優待という独自の仕組みがある
-
最低投資金額が1円から1円単位で投資できるファンドも
Fundsは、他の貸付型クラウドファンディングとくらべると大手企業に多くの貸し付けを行っているのが特徴です。過去の融資実行企業を見ると、GA Technology、霞が関キャピタル、ユーグレナ、イオン銀行などの上場企業および子会社の融資を元にファンド組成したものも少なくありません。
その裏返しとして、予定利回りが2%前後と低めのファンドが多くなっています。ローリスクローリターンでの投資を考えている方におすすめのファンドといえるでしょう。
Fundsでは、Funds優待という独自の優待制度があります。ファンドによっては抽選で商品が当たったり、貸付先の関連サービスを利用できたりといった特典がしばしば用意されています。最低投資金額が1円とクラウドファンディングのなかでもとりわけ低いのが特徴で、少額から少しずつ投資可能です。
クラウドバンク
クラウドバンクの特徴
-
ファンド組成実績が豊富で、これまでのファンド数は5,000本超
-
応募総額2,500億円突破と豊富な実績を持つ
-
最低投資金額は基本的に1万円
-
ドル建てファンドを頻繁に組成
クラウドバンクは、ファンド組成のペースが早く、ときには数日おきに新ファンドをリリースしています。その結果、これまでのファンド組成実績は5,000本超で、応募総額も2,500億円以上と豊富な実績を持っているのが特徴です。ほとんどのファンドは1万円から投資できるので、ほかの貸付型クラウドファンディング同様に少額投資に適しています。ファンド組成実績が豊富な分、融資先の企業も多岐にわたっています。
高利回りだがリスクが高めの新興企業向けの融資、上場企業向けで相対的に安全性が高いが利回りが低いファンドの双方を取り扱っているのが特徴です。また、カリフォルニアの不動産取得資金の貸し付け金をもとに組成したファンドでは、運用通貨が米ドル建てとなっています。
米ドル円の為替変動のリスクを負うため、実質的に米ドル資産を保有しているのと同じ効果が生じます。通貨の観点で分散投資したい方には、おすすめのクラウドファンディングサービスといえるでしょう。
Bankers
Bankersの特徴
-
200本以上のファンド組成実績・300億円以上の運用実績
-
FinTech向け融資や不動産ローンのほかエステサロンやフリーランス支援などの特徴的な案件も
-
最低投資金額は1万円~ 正常償還率100%なので安心して投資できる
-
正常償還率100%なので安心して投資できる
Bankersも実績豊富な貸付型クラウドファンディング事業者です。すでに200本以上のファンドを組成し、300億円以上の運用を行っています。初期はFinTechや不動産ローンなどの案件が多く見られましたが、足もとはクレジットカード、マイカーローン、フリーランス事業支援、エステサロン決済事業への融資など多様で特徴的な投資案件が多く見られます。
これら独自の案件への投資に興味がある方は、Bankersを利用するのがよいでしょう。最低投資金額は、他の多くの貸付型クラウドファンディングと同様に1万円ですが、一部複数口・数万円を最低金額としているファンドもあります。
200本以上の組成実績があるにもかかわらず、2023年10月25日時点では償還率100%で、貸倒れなどにより投資家に損失をもたらしたファンドは一つもありません。安定した実績を持つ貸付型クラウドファンディング事業者を利用したい方には、Bankersがおすすめです。
Ownersbook
Ownersbookの特徴
-
不動産に特化した貸付型クラウドファンディング
-
東証プライム上場会社の子会社が運営しているので信頼できる
-
最低投資金額は1万円~
-
全案件不動産担保付きなので損失リスクが更に低減されている
Ownersbookは不動産事業向けの融資に特化したクラウドファンディングです。貸付先で不動産事業に資金が使われるものの、不動産投資型クラウドファンディングとは異なりあくまで融資なので、償還時に価格損益が出ることはありません。ファンドはそれぞれ不動産の投資先が明示されていて、元本の保全性を保ちながら不動産投資に近い感覚で運用ができるのが特徴といえます。
なお、人気事業者の一つでファンドがすぐ完売となるケースも少なくありませんが、運営事業者であるロードスターキャピタルの株主になれば、優先的にファンドに投資可能です。東証プライム(従来の東証一部と同等)上場企業が運営しているため、事業者の倒産リスクも低いといえます。
最低投資金額は1万円で、少額で投資しながら定期的に分配金を受け取れるのが魅力です。全ての案件が不動産の担保付となっているため、もしも貸付先が貸倒れになった場合には、担保を現金化して支払いに充てて投資家の損失抑制ができます。
なお、Ownersbookあくまで不動産向け融資を小口化したものなので、不動産投資とは異なります。より不動産投資に近い形で資産運用したい方は、不動産投資型クラウドファンディングを選択しましょう。不動産投資型クラウドファンディングについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
貸付型クラウドファンディングのメリット
貸付型クラウドファンディングへ投資するうえでのメリットは次の通りです。
貸付型クラウドファンディングのメリット
-
少額から始めることができる
-
元本の価格が変動しない
- 運用の手間がかからない
これらのポイントに魅力を感じる方は、ぜひ貸付型クラウドファンディングにチャレンジしてみてください。
少額から始めることができる
貸付型クラウドファンディングは、多くが1万円程度から投資可能です。中にはFundsのように1円から投資できる事業者もあります。たとえば株式投資では通常100株単位で投資する必要があるので、数十万円程度の資金が必要です。
不動産に直接投資するとなると、数百万円~数千万円を用意しなければならないでしょう。他の投資方法の最低投資金額をふまえると、貸付型クラウドファンディングは小口投資に適した金融商品の一つといえます。
元本の価格が変動しない
正常に運用されている場合、貸付型クラウドファンディングではファンドの償還日までに貸付先企業から元本がそのまま返済されます。そのため、元本の価格が変動することがありません。株式や不動産投資型クラウドファンディングなどとくらべて、価格変動リスクが小さいのが特徴です。
投資家の収益の源泉は、貸付先が支払う利息を原資とした分配金となります。そのため、途中償還の可能性があるファンドを除くと、平時には当初記載された予定利回りの実現可能性が高いのもメリットです。
運用の手間がかからない
価格変動の心配がないため、貸付型クラウドファンディングでは投資を開始した後はとくに投資家がすべきことはありません。正常に元利金の返済が進んでいる限り、当初予定通り分配金による収益が発生し、満期日までに元本が返済されます。投資の手間がほとんどかからないため、仕事などで忙しい方にも適した投資手法といえるでしょう。
貸付型クラウドファンディングの注意点
貸付型クラウドファンディングには次のような注意点があります。
貸付型クラウドファンディングの注意点
-
貸倒れや事業者の倒産リスクがある
-
キャピタルゲインは発生しない
-
ファンド募集のタイミングしか投資できない
以上のポイントを理解したうえで、貸付型クラウドファンディングにチャレンジしてください。
貸倒れや事業者の倒産リスクがある
元本を毀損するリスクがないのはあくまで平時の話で、融資先の貸倒れや事業者の倒産が、主要な貸付型クラウドファンディングのリスクです。ファンドの分配金や元本償還の原資は、貸付先の返済金や支払利息であるため、倒産するなどして貸倒れが発生した場合には投資家の損失につながる恐れがあります。
多くのファンドが担保や保証を付与しているものの100%カバーされるとは限らず、最終的に損失を被るリスクはゼロにはなりません。また、クラウドファンディングの事業者が倒産するリスクにも留意が必要です。
投資家は、スキーム上はクラウドファンディング事業者が運用するファンドに資金を投じています。事業者が倒産すると、融資先に問題がなくとも元利金返済を受けられないリスクがあるのです。
多くの事業者ではファンドの資産と事業者のバランスシートを分別管理しているので、事業者の倒産リスクと切り離されてはいます。しかし、事業者の倒産事案がまだ少ないため、本当に全額保護されるのかどうかは不確実性が残るといえます。
キャピタルゲインは発生しない
元本の価格が変化しないということはキャピタルゲインも発生しないということになります。たとえば不動産投資型クラウドファンディングでは、償還時に運用不動産を売却し、価格差益を投資家に還元するケースがしばしばあります。うまくいけば当初予定利回りを上回る収益を実現可能です。
貸付型クラウドファンディングではこのようなチャンスはないので、変動金利である、為替リスクを取っているなど特殊なスキームのファンドでない限り、当初予定利回りを上回ることはありません。
まとめ
貸付型クラウドファンディングは、企業や団体などへの貸付金を小口化したクラウドファンディングの一種で、価格変動リスクを気にせずに定期的に分配金収入を受け取れるのが魅力的です。多くの事業者がさまざまなファンドを募集しているため、上場企業向けのローリスクなファンドから、新興企業や海外融資などを活用した相対的にハイリスクな商品まで、さまざまな投資が可能です。
今回の記事を参考に、自分の投資スタンスやリスク許容度に合ったファンドを選んで投資してみてください。なお、価格変動リスクがなくとも、貸倒れや事業者の倒産を通じて損失を被るリスクはゼロではありません。信頼できる運営事業者・融資先のファンドを選んで投資しましょう。