今は量的金融緩和で低水準が続いている日本の長期金利。でも、財政赤字がどんどん膨らむなか、いつか長期金利が上昇に転じる日が来ることを懸念する声も増えてきています。
J−REITにとって、長期金利の上昇はどういう影響があるのでしょうか。
「J−REITの分配金利回りって確かに魅力的だけど、金利が上がったらどうなるの?」
と不動さん。J−REITにとって金利の上昇がどういう影響をもたらすのか。簡単に整理しておきましょう。
まず、長期金利が上昇しても、J−REITの収益性はアップしないという点に留意してください。MMFなどは、短期金利が上昇すれば実績分配率も上昇しますが、J−REITは不動産物件を組み入れて運用する商品なので、長期金利の動向が直接、ファンドの収益を左右することはありません。つまり、長期金利が上昇しても、J−REITの収益性がアップすることはないのです。
「でも、確かJ−REITって外部からの借入で物件を買っているでしょう。借入をしているということは、それだけ金利の動向から受ける影響も無視できないんじゃないの?」
なかなか鋭い指摘です。J−REITは、投資証券を投資家に購入してもらい、調達した資金で不動産物件を購入していますが、それだけですべての物件を買い付けているわけではありません。投資法人債という社債や、銀行からの借入によって調達した資金も合わせて、ファンドに組み入れる物件を取得しています。この手の、外部から調達した資金には金利を支払う義務がありますから、長期金利が上昇すれば、J−REITにとっては金利の支払い負担が増えます。これは、J−REITのリターン、特に分配金にとってはマイナス要因です。
「それに、長期国債の利回りが3%、4%になったら、J−REITの分配金利回りの魅力も低下するわね」
そうなのです。今、J−REITが盛り上がっている理由のひとつが、高い分配金利回りにあります。何しろ上場43銘柄の分配金利回りが平均で3.8%程度。これに対して長期金利は0.7%程度ですから、両者の差は明らかです。J−REITは多少、価格が下落するリスクはありますが、この金利差ならOKということで、J−REITに投資する投資家も増えています。
「もし、分配金利回りの魅力が後退したら、J−REITは売られることになるのかしら」
そのリスクは否定できません。長期金利の上昇でJ−REITの借入コストが高まり、分配金の額が目減りする恐れがあることに加え、相対的にJ−REITの分配金利回りの魅力が後退すれば、マーケットで売られることになるでしょう。今は順調に値上がりを続けているJ−REITですが、これからの日本経済を考えた時、長期金利の上昇による売り圧力が強まるリスクは、想定しておく必要があります。
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