産後うつは出産直後にみられる女性の精神疾患で、うつ病に近い心身の不調が現れるのが特徴です。精神的な不安・不満と子育ての疲労が折り重なって生じるもので、自力だけで改善させるのは容易ではありません。早めに周囲にサポートを頼み、医療機関での適切な治療を取り入れて、重症化させずに乗り越えていきましょう。
産後うつとは?
産後うつは子供が生後1か月前後の時期に現れるうつ病のような症状のことで、産後の三大精神疾患の一つに数えられます。妊娠に対する葛藤や子育てのストレス、夫をはじめ家族間の問題など、さまざまな要因が複合的に合わさって引き起こされる症状です。
2015年~2016年の2年間では92人が産後うつが原因で自殺しています。産後1年未満の女性の最多の死因となっているなど、時に深刻な結果を引き起こすリスクもある症状です。産後うつの症状や原因を理解して、適切にケアしていく必要があります。
産後うつの症状
産後うつは次のように、いわゆるうつ病のような症状を引き起こします。
- 食欲不振、吐き気・涙もろい
- 不眠
- 強い不安を感じる
- 倦怠感
- 日常生活をこなせない
- 子どもをかわいいと思えない
- 笑顔が少なくなった
- 突然泣くなどの情緒不安定
- 自傷・自殺願望を持つ
下図の通り産後の三大精神疾患の中では中程度に含まれ、1年以上続く事例も見られます。また、重症化すると自殺願望を持ち、実際に自殺に至ってしまう事例もあります。
また、不眠や食欲不振など日常生活に支障がでる症状も多く、子育てが嫌になり、ネグレクトなどを引き起こす原因にもなります。その他、家族との不和が進んで離婚問題などに発展する可能性もあります。子育てのつらい時期を健やかに乗り越えていくためにも、症状がエスカレートしないよう自他ともに適切にケアしていくことが大切です。
産後うつの原因
産後うつの原因は一つに特定できるものではなく、出産前後の環境変化、体調の急変、子育てや家族間の不和などによるストレスなど、さまざまな要因が重なって生じます。
一例をあげると、次のような要因がしばしば産後うつの原因となります。
- マタニティーブルーの重症化
- もともとうつ病気味だった
- 月経周期に伴う精神変化がエスカレート
- 夫婦間の不和や経済的問題
- 育児のサポート不足
- 育児のストレス
産後うつを防ぐためには、上のような発症原因となる要因に気を配り、予防していくことが大切です。女性一人だけで防げるものではないので、夫をはじめ周囲の家族も積極的にサポートし、発症を予防し、発症しても重症化しないように気を配っていかなければいけません。
産後うつの予防法・治療法
続いては産後うつの予防法や治療法を紹介していきます。これから出産を控えている人や、既に出産を迎えて気分が落ち込みがちの人などは、ぜひ参考にしてください。
産後うつを予防するためには次のような方法が効果的です。
- 休息をとる
- 家族とのコミュニケーションを増やす
- 自分の母親や女性とコミュニケーションを取る
- 意識的に気分を変えるようにする
まず、意識的に休息を多くとることをおすすめします。そもそも子育ての初めは授乳の頻度が多かったり、夜泣きがあったりして休息をとるタイミングを見つけるのが困難です。意識的に休息をとって気持ちを休めるようにしましょう。
また、家族、特に夫・パートナーとのコミュニケーションを増やすようにします。会話を頻繁にするようにする、夫・パートナーと二人で過ごす時間を意識的に作るなどの工夫をしてください。
子育ての経験がある母親や他の女性などと交流する機会をつくるのも重要です。子育ての先輩の経験をシェアしたり、共に同じ辛さを知る女性同士でコミュニケーションを取ることで、気持ちが楽になり産後うつを防ぐことができます。
その他、着替える、お風呂に入る、外出するようにするなど、意識的に気分転換をするのも有効です。子供が幼いうちは、つい子育てだけに時間を使い、気が滅入ってしまいがちです。気分転換をうまく行うことで、うつ症状の発症を防げるでしょう。
一方で、もし産後うつになってしまった場合の治療法もおさえておきましょう。治療法を考えるうえでまず大切なのは、何より自分が産後うつの精神状態になっていることに気づくことです。どのような治療法も、精神科や心療内科にかからなければ始められません。自分で精神状態が不調に陥っていることに気づいて専門家にかかることが、治療を進めるための最初のステップです。
医療機関での産後うつの治療には次のようなものがあります。
- 心理療法
- 薬物療法
まず基本的な治療法は心理療法となります。これは一般的なこころの不調と同様で、カウンセリングの中で母親が抱える不安・不満をヒアリングするものです。そのうえで共感したり、必要に応じて助言をしたり、時には家族を交えてサポート体制を整えたりしながら、母親の不調の原因を取り除いていきます。
もう一つはいわゆる「抗うつ剤」や「漢方」を取り入れた薬物療法になります。子育て間もない時期ということを念頭に、授乳や育児に影響の出ない薬をうまく取り入れながら、産後うつの症状の緩和を目指します。
ただし、授乳時期ということもあり、薬物を取り入れることがかえって母親の不安のもととなることも。母親の希望や症状の重さをふまえて、通常よりも慎重に薬物療法の導入の是非を判断します。
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産後うつはいつまで続く?乗り越え方は?
産後うつがいつから始まるのかは人によって異なりますが、子供が生後1か月ほどから始まる人が多くみられます。その後、子供が1歳になるまでには60%ほどの人が緩和しますが、一部は1年以上治療にかかる人もいます。
うつが治るきっかけを掴む乗り越え方は、まず予防法に共通する部分があります。
- 休息をとる
- 家族とのコミュニケーションを増やす
- 自分の母親や女性とコミュニケーションを取る
- 意識的に気分を変えるようにする
この中でできることから実践してみることで、治るきっかけを掴めるかもしれません。
また、自分だけでこころの不調を抱え込まないのも大切です。産後うつの解消には周りの協力も欠かせません。まずは夫やパートナーにきちんと不調に陥っていることを伝えて一緒に乗り越える方法を模索しましょう。
また、医療機関に早めにかかるようにしてください。先に紹介した心理療法や薬物療法は、医療機関に相談しなければ導入できません。産後うつの早期解消には、専門家の手を借りるのが一番です。
家族との接し方や周囲のサポートについても専門家のアドバイスを取り入れることでより効果を発揮すると期待されます。これまで精神科に罹ったことがない人も、躊躇せずに医療機関に相談してください。
産後うつの重症化を防ぎ、また早期に回復するためには家族や医療機関など周りのサポートが重要です。不調を感じたら、早めに周りの人に気づいてもらえるよう、きちんと状態を伝えましょう。
なお、産後うつは再発率も比較的高く、3人~4人に1人は再発して、再度治療を受けることになるとの統計もあります。一度改善しても油断せず、夫やパートナーと協力しながら、精神的な負担を軽減する予防策を継続してください。
また、自分では意識していなくとも、経済的な不安やリスクが産後うつの原因の一つとなっていることもめずらしくありません。生命保険や医療保険を子育てに合わせて見直しておき、経済や将来の不安を取り除くことも、産後うつの予防や治療には大切です。現在では女性特有の悩みの備えとなる保険も増えてきているので、こうした保険への加入も検討しましょう。
まとめ:産後うつは予防が大事
産後うつは子供が生後1か月のころから見られる母親の精神的な不調からくるうつ症状です。周囲のサポートや気分転換などで予防ができますが、万が一発症した場合は積極的に夫・パートナーの協力を仰ぎ、また医療機関に罹って心理療法や薬物療法を導入しましょう。再発率も比較的高いので、症状が改善した後も油断せず、不安や不満を抱え込まないよう工夫することが大切です。
現代では子育てや産後うつを含めた母親の心身の健康リスクに備える生命保険も多数出ています。こうした保険にあらかじめ加入して、経済や将来の不安を取り除いておくことも、産後うつの予防には有効です。
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よくある質問
Q | 産後うつはいつから始まるケースが多いですか? |
A | 個人差がありますが子供が生後1か月前後から、マタニティーブルーがエスカレートする形で発症する人が多いです。1年以内に改善する人が多いですが、子供が1歳を超えても続く人もいます。 詳しくは「産後うつとは?」を参照。 |
Q | 産後うつになりやすい人の特徴はありますか? |
A | 次のような人がなりやすい人といえます。自分が当てはまるかどうかチェックしておきましょう。 出産後の生活に不安を抱えている 月経前症候群(PMS)である 夫やパートナーの不和・非協力 詳しくは「産後うつの原因」を参照。 |
Q | 産後うつになる人の割合を教えてください |
A | 目に見えづらい精神の不調であり、医療機関にかからずに耐える母親も一定数いると考えられることから、正確な割合を把握するのは困難です。一説には10%程度と言われる一方で、最も多いケースでは30%程度が産後うつ状態になっているのではないかとの意見もあります。 |