育児休業給付金は、会社などで働く社会人の育児休業中の収入減少を補うための制度です。特に初回は必要な書類が多いため、手順と必要書類を理解して、早めに準備を進めた方が良いでしょう。また、2回目以降は手続きが簡略化されることもおさえておきましょう。
給付申請は自前で行うこともできますが、所属する会社に記入・対応してもらう部分もあるため、特段の事情がなければ、自分が対応すべき箇所を完了させたら、残りの対応は会社に任せた方がスムーズです。なお、給付申請には期限があります。どのように、いつまで申請すれば良いかをしっかりおさえておき、期限内に準備を進めてください。
初回の育児休業給付金の申請の流れ
1回目の育児給付金申請の流れは次のようになります。
- 給付金の条件にあてはまるかどうか確認する
- 会社に育児休業の申請を出す
- 会社がハローワークから書類を取り寄せる
- 必要書類に記入する
- 会社が書類をハローワークに提出する
このように会社を通じて申請書類を入手する流れが一般的です。育休の取得予定が定まってきたら、育児休業給付金を申請する予定であることを会社の人事や総務などに伝えておくと、スムーズに準備が進められるでしょう。
①給付金の条件にあてはまるかどうか確認する
育児休業給付金を受け取る基本的な条件は下記の通りとなります。- 雇用保険に加入している
- 1歳未満の子どもがいる
- 産休前の2年間で、1か月の間11日以上働いた月が12か月以上ある
- 休期間中、休業開始前の1か月の賃金80%以上が支払われていないか
- 育休期間中、就業している日数が1か月あたり10日以下である
雇用保険は正社員で働いていれば通常加入しているはずです。一方で、パートや契約社員の場合は労働時間によって加入していないケースもあるので、まずは会社の担当部署に加入状況を確認してください。
また、育児休業給付金は子供が1歳未満のうちに取得できる制度なので、実質的に最長約1年間取得できます。ただし、延長事由がある場合には最長子供が2歳になるまで延長できます。
加えて、「産休前の2年間で1か月の間11日以上働いた月が12か月以上」という条件は、正社員であればほとんどの人が満たすと考えられますが、パートや契約社員の場合には過去の勤務状況をあらかじめ確認してください。
最後に、育休期間中の賃金や就業日数に注意してください。賃金が休業開始前の80%を超えたり、1ヶ月10日以上働いたりしてしまうと条件を満たさなくなってしまいます。どうしても育休中に出社する事情がある場合は、不用意に日数をふやさないように注意しましょう。
②会社に育児休業の申請を出す
要件を満たしていることがわかったら、会社に育児休業の取得と育児休業給付金を申請することを申し出ます。通常は会社がハローワークから育児休業給付金の申請書類を取り寄せ、手続きを進めていくことになります。ただし、会社が何らかの事情で書類を取り寄せられないときは、自分でハローワークに問い合わせて書類を取得することも可能です。
③会社がハローワークから書類を取り寄せる
育児休業の取得予定が定まってきたら、会社が手続きに必要な書類をハローワークから取り寄せます。育児休業を取得する従業員は、書類を企業から受け取ったら、手続きの準備を始めてください。
④必要書類に記入する
初回の育児休業給付金の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、労働者名簿、タイムカードなど
- 母子手帳や出産予定証明書など
このうち雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、育児休業給付受給資格確認票、育児休業給付金支給申請書の3つは、会社がハローワークから入手したものを受け取ってください。
賃金台帳や労働者名簿、タイムカードなどは通常会社が管理しているため、通常は会社が申請書類と、まとめてハローワークに提出してくれます。一方で、母子手帳や出産予定証明書は従業員自身もしくは妻がもらう書類なので、申請書類とともに会社に提出してください。
⑤会社が書類をハローワークに提出する
会社は従業員から3種類の申請書類や証明書、そして母子手帳を受け取ったら、会社側で用意すべき地銀台帳や労働者名簿、タイムカードなどと共にハローワークに提出します。ハローワーク側で書類をチェックして、特段不備がなければ、育児休業給付金の支給がスタートします。
ここまで紹介したのは1回目の育児休業給付金を申請する場合の流れです。続いては2回目以降の申請の流れを紹介します。
2回目以降の育児休業給付金の申請の流れ
育児休業給付金は通常子供の年齢が1歳になるまで、すなわち約1年間にわたって取得できます。しかし、原則として2ヶ月ごとに延長申請を行わなければなりません。2回目以降の申請は初回とは異なり、提出書類が少なくなります。
①必要書類に記入する
2回目以降の申請については必要書類が以下の書類のみとなります。初回と比較して手続きが簡略化することをおさえておきましょう。
- 育児休業給付支給申請書
- 賃金台帳、タイムカードなど
賃金台帳やタイムカードなどは会社が用意してくれるため、自分で行う手続きは、会社を通じて入手した育児休業給付支給申請書への記入と、会社への申請書の提出のみです。
②書類を会社がハローワークに提出する
2回目以降の申請についても、初回と同様に、作成した書類を会社に提出してください。あとは同時に提出が必要な賃金台帳やタイムカードを会社が用意して、ハローワークに代わりに提出してくれます。
ハローワークが書類をチェックして、問題なければ育児休業給付金の支給が継続します。この手続きは2ヶ月に1度必要なので、ほとんどの育休取得者は、繰り返し手続きをすることになります。手続きを失念して受給停止にならないように注意してください。
\ お金・保険のことならマネードクターへ /
育児休業給付金の延長は可能?
育児休業給付金を受け取れる期間は、通常は子供が1歳になるまでです。一方で、条件次第で最大2歳まで延長できるケースがあります。延長する場合には別途申請が必要で、1歳の時に1歳6ヶ月まで、1歳6ヶ月の時に2歳までといったように、6ヶ月刻みで延長申請を行います。
2歳まで延長が可能
次のような事由の時に、それぞれ延長申請が可能です。該当する状況になったときに申請を忘れないために、あらかじめ条件をおさえておきましょう。
1歳6か月まで延長するための要件
- 育児休業の申出に係る子について、保育所(無認可保育施設は除く。)等における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日の後の期間について、当面その実施が行われない場合
- 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者であって、その子が1歳に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった方が以下のいずれかに該当した場合
- 死亡したとき
- 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
- 婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業の申出に係る子と同居しないこととなったとき
- 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき(産前休業を請求できる期間又は産前休業期間及び産後休業期間)
※引用:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」
2歳まで延長するための要件
- 育児休業の申出に係る子について、保育所(無認可保育施設は除く。)等における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳6か月に達する日の後の期間について、当面その実施が行われない場合
- 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者であって、その子が1歳6か月に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった方が以下のいずれかに該当した場合
- 死亡したとき
- 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
- 婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業の申出に係る子と同居しないこととなったとき
- 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき(産前休業を請求できる期間又は産前休業期間及び産後休業期間)
※引用:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」
なお、1歳になったタイミングで1歳6ヶ月まで、1歳6ヶ月になった時に2歳まで延長する仕組みになっています。たとえ2歳まで延長できる条件を満たしたとしても、1歳の時点で一気に1年分延長することはできないため、注意してください。
延長には追加の書類提出が必要
1歳6ヶ月、もしくは2歳への延長手続きには追加で書類を提出しなければなりません。会社を通じてハローワークに提出するか、自分で提出した方がいいかあらかじめ会社に確認しておきましょう。
なお、提出が必要な書類は延長となる事由によって異なりますので注意しましょう。それぞれ次の通りです。
- 保育所に入れないとき:入所申出書、市町村が発行した保育所等の入所保留通知書など保育所に入れなかったことを証明するものと母子手帳
- 配偶者が死亡したとき:死亡した事実がわかる状態となっている住民票と母子手帳
- 負傷、病気、精神障害で養育困難なとき:病院の診断書と母子手帳
- 離婚等で子どもと別居したとき:離婚した事実が反映されている住民票と母子手帳
- 6週間以内に出産する予定、または産後8週間を経過しないとき:母子手帳
いずれのケースにおいても、これらの書類に加えて育児休業給付支給申請書が必要です。
育児休業給付金を申請する際の注意点
育児休業給付金の申請には期限があります。期限を過ぎてしまうと給付金を受け取れなくなるので注意してください。また申請は自分でもできますが、会社が対応する部分が多々あるので、基本的に自分で申請するのはおすすめしません。
最後に申請から振り込みには数ヶ月の時間がかかります。すぐに受け取れるわけではないので、給付金を過信して家計がひっ迫することのないよう注意してください。
申請期限を確認する
育児休業給付金は、初回の場合は育児休業開始日から4ヶ月目の末日が期限となります。例えば1月20日に育児休業を取った場合、初回の育児休業給付金は5月31日までに申請しなければなりません。また延長申請も同様で、延長した場合に給付金が受け取れる初日を起算日として4ヶ月目の末日に申請が必要です。
初回・延長申請ともに、いつまでに申請しなければならないかあらかじめおさえておきましょう。
自分で申請するのはおすすめしない
育児休業給付金の申請は自分でハローワークに問い合わせて申請書類を入手することも可能です。しかしながら、会社が対応しなければならない部分や、会社が提出する書類があるため、たとえ自分で申請を開始したとしても、結局は会社に対応を依頼しなければなりません。
自分で対応しようとすると二度手間になってしまうため、会社を通じてハローワークに問い合わせてもらうのがおすすめです。
申請から振込までには時間がかかる
育児休業給付金の申請後はハローワークが書類をチェックしたり、振り込みの手続きを進めたりするために時間がかかります。支給タイミングは厳密に決められていませんが概ね3〜5ヶ月程度はかかるとみておいた方が良いでしょう。
給付金を当てにして家計管理をしていると、想定より支給が遅れて家計がひっ迫するリスクもあります。あらかじめライフプランニングを進めておくとともに、必要に応じて生命保険なども活用しながら、所得の減少に備えておきましょう。
まとめ:期限前に給付金の申請を忘れずに
育休中は収入の減少などを心配する人も少なくありませんが、そんな人に育児休業給付金は心強い味方となります。いつまでに申請すれば良いのか、どのように申請すれば良いのかこの記事を参考におさえておき、育休取得が決まったらスムーズに手続きを進めていきましょう。
なお、スムーズに手続きが完了したとしても、給付金を受け取るまでには一定の時間がかかります。その間の家計が心配な人は、あらかじめライフプランニングへ相談するとともに、必要に応じて生命保険を見直して、育休期間に備えておきましょう。
\ お金・保険のことならマネードクターへ /
よくある質問
Q | 育児休業給付金の申請手続きをうっかり忘れていました。もう申請はできないのでしょうか? |
A | 期限は原則として育児休業開始日から4ヶ月目の末日ですが、厚生労働省によると支給単位期間の末日の翌日から起算して2年を経るまでは受給可能としています。ハローワークに問い合わせて適切に対応してください。 |
Q | 退職しても、育児休業給付金はもらえますか? |
A | 育児休業取得の当初から退職を前提としている場合はもらえません。一方で育休中に退職する方針に変わった場合には、退職を決めるまでは受給できます。なおこの場合、退職を決める前に受け取った給付金は返還する必要はありません。 |
Q | 育児休業を分割してとったら、育児休業給付金も分割して受け取れますか? |
A | まず、2回までは分割して、給付金を受け取れます。3回目以降は通常は支給対象外となりますが、以下の事由においては例外的に受給可能です。 詳しくは「2回目以降の育児休業給付金の申請の流れ」を参照。 |