退職・年金ナビ【第1回】 [ 備えよ!老後のお金 20〜30代の公的年金入門 ]
公的年金が破綻しない簡単な理由
若い世代の人に公的年金の話をすると、必ず出る言葉に「国の年金制度は破綻するから信じられない」というものがあります。
特に20〜30歳代の世代にもわかりやすく年金知識を学んでもらうシリーズの最初は「国の年金制度は破綻するか」というポイントからスタートしてみたいと思います。
先に結論を言ってしまえば、「公的年金は破綻しない」でしょう。仮に公的年金が破綻するとしたら、そのときは日本という国家が破綻して無政府状態となった場合です。国の信用不安程度では公的年金はびくともせずに存続し続けます。本当に年金制度が破綻するのは、漫画「北斗の拳」のような状態で国家が完全になくなった場合に限られます。要するにほとんどありえない、ということです。
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では、なぜそう言い切れるのでしょうか。大きく3つの理由があげられます。
(理由1)破綻させると国は損をするから
公的年金制度は国にとって重い負担です。年金給付だけでも50兆円に達する状況ですが、これは10年前の2倍です。巨額と指摘されてきた防衛費は実は5兆円前後を数十年ほど推移しており、年金給付費だけが伸び続けています。負担の巨大さが分かります。
しかし公的年金制度を維持しないほうが国は損をします。というのも、年金制度を破綻させて国は存続すると、国は国民の最低限度の生活を保障するため、生活保護を3,700万人に支給しなければならないからです。生活保護は全額税財源ですから、丸ごと国の負担になります。
生活保護を受けるまで、個人の財産を優先的に取り崩してもらうとしても、早晩3,700万人にざっくり20兆円は負担しなければならなくなるでしょう(国民年金の給付額程度は払うとして)。現在の年金制度への国庫負担は11兆円強です。実は、国は年金制度を破綻させるほうが損をするのです。
(理由2)年金改正をしているから
年金受給開始年齢を引き上げたほうが破綻リスクは下がります。現状でも平均余命を考えれば20年近く年金給付を行っています。このまま平均寿命が延びれば25年給付する仕組みになります。受給開始年齢を平均寿命の延びと同じくらい引き上げればむしろ破綻しない可能性が高まる、ということになります。
年金改正は、むしろ破綻リスクをなくす重要な取り組みです。財政破綻の状態にあるギリシャでは過去数十年年金改正をサボってきました。年金を減らしたり受給開始年齢を引き上げることは国民の受けが悪いからです。ツケを先送りしたギリシャの結果は明らかです。
つまり、もし年金で安心をしたいのであれば、むしろもっと年金改正を行うほうがいい、ということです。
年金改正をする国は、年金破綻の可能性が低くなるのです。
(理由3)年金積立金があるから
目の前の給付がストップするようなリスクも、日本の年金制度にはありません。日本では年金の積立金を用意し、将来の給付増や支払が行えないリスクに備えてきたからです。
日本の公的年金積立金は110兆円です(2011年末)。これはつまり、保険料収入や税金からの負担が2年間ゼロであっても、年金を払い続けられるほどの金額です。
こうした金額を積み上げている国はほとんど皆無です。ドイツやイギリスではその年度の税収からその年度の年金給付をまかなっており、仮に不景気になり税収が激減すれば年金給付に影響を与えないほどの状態で制度を運営しています。
実はわが国では昨年の3.11の大震災後、公的年金に回すべき財源の一部を震災復興費用に優先する対策をとりました。金額は2.5兆円にもなりますが、年金給付に一度も支障は出ていません。これも積立金があるからです。
高齢社会の進展に備えて年金積立金を積み上げてきたわけですから、これをこれから取り崩していくことは制度の不安でも何でもありません。むしろ取り崩すことで制度の短期的な破綻は回避されるわけです。(取り崩し方と運用方法について議論があることは確かですが、本質的な破綻リスクとは関係ありません)
破綻はしない!しかし安心はできない?
……他に、いくつもキーワードを挙げることはできますが、年金破綻をもっともらしく述べる人は年金制度の実態を知らない人といってもいいでしょう。特に年金改正議論の内容を吟味せずに「やっぱり破綻する」と声高に叫ぶ人ほど要注意です。
しかし、破綻しないのと安心ができることとはイコールではありません。次回は「破綻はしないが、安心はできない」という話をします。
【第2回】公的年金が破綻しない理由と破綻しなくても安心できない理由(後編) - 退職・年金ナビ
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執筆:フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャル・プランナー/山崎俊輔