産後パパ育休制度は法改正で何が変わった?給付金の取得条件や期間について

投稿日:2023/03/03 最終更新日:2023/04/20
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2022年10月から、産後パパ育休という新しい制度が始まっています。パパの育休取得率を高めるために、ママの出産後8週間のうち、最大4週間、2回に分けて育児休暇が取得できる制度です。社会保険料が免除されるとともに、育児休業給付金が支給されます。同制度の開始に伴い、従来のパパ休暇は廃止となっています。

収入の減少を抑えて育児ができる制度ですが、休暇前の給与が100%もらえるわけではありません。ライフステージにあった生命保険に加入するなどして備えておくと、さらに安心して子育てに集中できるでしょう。

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

ファイナンシャルプランナー

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。保有資格は「2級フィナンシャル・プランニング技能士」「日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト」。資産形成に関するセミナー講師や執筆活動も積極的に行っているほか、株式投資の基礎や資産形成、ライフプランニング、資金計画などのアドバイスを得意とする。

「産後パパ育休」制度とは?

2022年からスタ―トした産後パパ育休制度により、パパとママの間でより柔軟に育休を取ることができました。このような制度ができた背景には、パパの育休取得率が低いことが理由としてあります。

法改正により2022年10月1日からスタート

産後パパ育休制度はいつから始まるの?と気にしている人も少なくありませんが、実は法改正により2022年10月1日からスタートしています。それまでのパパ休暇に変わる制度として、最長4週間の期間の休暇を2回に分割して休める制度となっています。産後まもない時期の子育ての状況に合わせて、パパ・ママで相談しながらより柔軟に休めるというメリットがあります。

男性の育休取得を加速化させるために設立

厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」によると、パパの育休取得率はわずか13.97%でした。ママの育休取得率である85.1%と比べると大きな開きがある状況です。男性にとっては、そもそも会社の育児休業に対する意識が低く休みづらい、仕事が忙しく休むに休めないといった現状もあります。また、中には収入が減ることを懸念して取得しない人もいるようです。

産後パパ育休制度は、このような現状を改善し、パパの育休取得を促進する目的で、従来のパパ休暇の制度を改善する形で、厚生労働省により設立されました。

産後パパ育休の取得条件

産後パパ育休を取得できる条件は次の通りです。

  • 対象となる子供の出生後8週間以内
  • 最長4週間
  • 原則休暇を取る2週間前までに申し出ること
  • 2回まで分割取得が可能

取得できるタイミングが子どもの出生タイミングに応じて決まっています。また、事前に申請しなければならないので、注意しましょう。

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産後パパ育休の特徴

産後パパ育休の特徴としては、育児休業を2回に分けて取得できる点や社会保険料が免除される点、そして、育児休業給付金が受け取れる点が挙げられ、大きなメリットとなっています。これらの特徴により経済的な負担を感じることなく柔軟に休みが取れる仕組みとなっています。

育児休業を2回に分割して取得可能

産後パパ育休は子の出生後8週間以内に最長で4週間、2回に分割して取得することができます。また、労使協定を結んでいる場合には、必要に応じて就業することもできるといった柔軟性の高いルールも設けられています。

  産後パパ育休 育児休暇制度
対象期間
取得可能日数
子の出生後8週間以内に4週間まで 原則子が1歳まで
申出期限 原則休業の2週間前まで 原則1か月前まで
分割取得 分割して2回取得可能(初めにまとめて申出) 分割して2回取得可能(取得時にそれぞれ申出)
休業中の就業 労使協定により、労働者が合意した範囲で休業中に就業可能 原則就業不可

しばしば混同されがちなのが育児休業制度ですが、それぞれ別の制度である点に注意してください。育児休業は子が1歳(条件付きで2歳)になるまで取得できる長期の休業制度です。一方で、休業中には原則就業できないというデメリットもあります。

別の制度であるため、産後パパ育休と育児休業は別々に取得することもできます。

社会保険料の免除

産後パパ育休の取得期間中は社会保険料の支払いが免除されます。通常、社会保険料は月給や賞与に応じて支払い義務が発生します。しかし、産後パパ育休の取得中は給与が発生しないため、社会保険料を払う必要はありません。

一方で、住民税については前年度の給与水準に応じて発生するため、産後パパ育休中も支払わなければなりません。

育児休業給付金の支給

産後パパ育休中は「出生時育児休業給付金」の条件を満たしていれば、支給を受けられます。受給資格は次の通りです。

  • 休業開始前の2年間に、賃金の支払い基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上ある
  • 休業期間中の就業日数が最大10日または月80時間以内である

支給金額は通常の出生時育児休業給付金と同条件で、次の通りです。

現在:支給金額=休業開始時の賃金日額×67%×休業日数

このように、育児休業前の賃金の67%を給付金として支給し、経済面でパパ・ママを支援するようになっています。

しかし、2023年3月17日付の内閣の発表で、この点について今後改正がなされる方針が打ち出されました。「産後の一定期間内に男女で育児休業を取得した場合、育児休業取得前の手取りの10割を補償する」ということが発表されたのです。

具体的には、給付金の額を休業前の賃金の80%分とすることで、実質的な手取りの100%を補償できるようにする、といった内容となっています。よって、支給額は以下のように計算されるようになる見通しです。

変更後の見通し:支給金額=休業開始時の賃金日額×80%×休業日数

育児休業中には社会保険料の免除がされるため、賃金の80%が補償されれば実質的に手取りの100%が受け取れる、といった仕組みとなっています。

この方針は、男性の育児参加がしやすくなる環境を整備し、出生率を上げることや、働き方改革の一環として新たに打ち出されたとみられます。厚生労働省の委託調査によれば、男性の育児休業取得率が低くなっていることの大きな理由に「収入の減少の懸念」が挙げられるため、補償によって対応していくねらいがあるといえます。

また、育児休暇中の女性についても同じように、給付額を引き上げられないかも合わせて検討されています。

ただ、この改正については詳細はまだ発表されておらず、「一定期間に男女で育休を取得」といった条件もつけられているため、現状は未確定な部分が多いと言えます。今後の内閣や政府の発表を注視し、制度の有効利用を検討していくべきでしょう。

単に休めるだけでなく、出産時育児休業給付金の対象にもなる点が、産後パパ育休の大きなメリットです。育児休業給付金についてはこちらの2つの記事でも詳しく紹介しているので、合わせて参考にしてください。

なお、現状では育児休業給付金は通常、それまでの収入よりも減ってしまう点がデメリットです。必ずしも経済面で盤石とは言えないため、収入面で不安を感じる人は生命保険の加入なども検討して見ましょう。

産後パパ育休の期間は?

産後パパ育休は最長4週間取得可能です。いつから取得できるかが、出産予定日より早産だったか、予定日を過ぎたかで変わってくるので注意しましょう。

最長で4週間取得可能

産後パパ育休の取得対象期間は、子どもが産まれて8週間以内というのが基本です。またそのうち最大4週間まで取ることができます。一度に4週間まとめて取ることもできますが、2回に分割取得もできます(ただし、はじめにまとめて申し出ることが必要です)。

出生日と出産予定日がズレたとき

産後パパ育休の対象となる期間は、原則として子どもの出生日から8週間後までとなっています。しかし、出生日と出産予定日がズレた時には、いつからが産後パパ育休の取得可能日になるのか注意が必要です。

まず、予定日より早い早産となった場合には、誕生日から起算して8週間となります。取得できるタイミングも、取得可能な最終日も早まることになります。

また、予定日を過ぎた場合ですが、この時は予定日から起算して8週間となります。子どもが産まれた日から起算すると取得できる期間は8週間より短いことになるので、注意しなければなりません。

  • 出産予定日前に子が生まれた場合:「出生日」から「出産予定日の8週間後」まで
  • 出産予定日後に子が生まれた場合:「出産予定日」から「出生日の8週間後」まで

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「パパ休暇」と「パパ・ママ育休プラス」との違いは?

パパの子育て関連の休暇制度としては、従来のパパ休暇とパパ・ママ育休プラスがありました。パパ休暇は廃止となり、パパ・ママ育休プラスは継続されています。パパ・ママ育休プラスは子どもが1年2ヶ月になるまで育休を取得できる制度ですが、あくまで休暇取得可能期間の最終タイミングを遅くできるだけで、休暇取得できる最大日数が増えるわけではない点には注意しましょう。

パパ休暇は廃止

パパ休暇は産後パパ育休が創設されたことで廃止となりました。パパ休暇は妻の産後8週間以内に育児休暇を取得した場合、その後もう一度育児休暇が取れるようになる制度です。父親の育休取得を奨励するために厚生労働省が制定していました。

しかし、育休取得はあまり広がらなかったため、産後パパ育休制度に改められました。

パパ・ママ育休プラスは継続

一方でパパ・ママ育休プラスは継続しています。パパ・ママ育休プラスは、両親ともに育児休業を子供が1歳の誕生日になるまでに取得していれば利用できる制度です。

原則、育児休業の休業可能期間は原則子どもが1歳になるまでとなっています。しかし、パパ・ママ育休プラスの制度を利用すれば、育休を1歳2ヶ月になる前日まで取得することができます。

ここで、注意しなければならないのは「子ども1人当たりの育休を取得できる日数は変わらず、最大で1年間」ということです。つまり、パパが一時的に復職して、ママとずらして育休を取得できる、などというようにパパとママの育児休業の期間の調整を図れる制度となっています。

パパ・ママ育休プラスの制度の取得率は令和3年度時点でたった2.3%の使用率となっています。今回は継続はされましたが、有効活用されているとは言いがたい制度です。しかし、この制度の利用によって子育てがしやすくなることも考えられるため、状況にあわせて検討してみるのもよいでしょう。

まとめ

産後パパ育休制度は2回に分割して取得できる、社会保険料が免除される、育児休業給付金を受け取れるという3つの特徴を持つ制度です。経済的な負担を抑えながら、パパでも育休が取得できます。

子育てに時間をかけたい世代の男性・女性双方にメリットがある内容といえます。この記事を参考に、自分の場合は何日から何日まで取得できるのか確認して効率よく活用してください。

ただし、現状では育児休業給付金は休暇取得前の月給よりも支給額が通常少なくなるため、経済的な不安が完全に払拭できる訳ではありません。育児期間を安心して過ごすために、ライフステージに合わせた生命保険の見直し・新規加入も検討しましょう。

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よくある質問

Q

産後パパ育休の申出期限はいつまでですか?

A

原則として育休を取得する2週間前となっています。予定日と実際の出産日によって取得できる期間が異なるため、早めに準備を進めて柔軟に申請ができるようにしておきましょう。

詳しくは「産後パパ育休の特徴」を参照。

Q

産後パパ育休と廃止されたパパ休暇の違いは何ですか?

A

産後の育休を8週間のうちに、最大2回に分割して取れるようになったことが最大の違いです。お互いの予定を踏まえてママと連携して取得できるように制度変更が行われました。

詳しくは「法改正により2022年10月1日からスタート」を参照。

Q

産後パパ育休を取得することのデメリットはありますか?

A
育児休業給付金があるとはいえ、月収が多くの家庭において減ってしまうのが最大のデメリットです。また、パパが育児や家事に積極的に参加しないことにより、トラブルや不和を生む家庭もあります。

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