株価はどんな要因で形成されるのか
株価の変動要因のおさらいです。株価は、上記のように、大きく分けて3つの要因で変動します。
それぞれに、かなり密接にリンクしているのですが、1つ目は、外部要因です。国内外の景気、金利、為替の動向に左右されます。最近では、為替相場の影響が大きいようです。
2つ目は、有力な投資家の動向、投資家心理などの内部要因で、株式の需給に直接に関わる要因です。最近では、海外投資家の動向が注目を集めています。
最後は、個別要因です。個別企業の業績、資産、将来性などの、銘柄が持つ価値(バリュー)によって株価が形成されます。第1回でご紹介したユニチャームなどは、外部要因が悪い中でも、好調な株価を形成している例になります。
今回は、3つ目の個別要因による株価の変動についてご説明したいと思います。
まず、業績の与える影響がどのように株価に反映されるのかを見て行きます。よく遭遇する場面が、「業績の上方修正、下方修正」です。会社の業績は、株価に大きな影響を与える為に、業績の予想に変更が生じた場合、上場企業は「業績予想の修正」を発表しなければなりません。
この業績予想の修正発表が行われる条件には、一定の基準があります。
(1)売上高:10%以上の増減があった場合
(2)営業利益・経常利益・当期純利益:いずれかに30%以上の増減があった場合
例えば、売上高100億円、営業利益30億、経常利益30億円、当期純利益20億円、という業績予想を発表した会社があったとします。この会社が数か月後に、業績予想を売上高108億円、営業利益38億円、経常利益35億円、当期純利益30億円と予想したとします。
このケースの場合、売上高は8%なので、修正の必要はなく、利益の項目は、当期純利益が基準を超えていますので、業績予想の修正の対象となります。
ここで、日経会社情報の「業績予想」の利用方法をご紹介します。日経会社情報の【業績】欄の予想は、日本経済新聞社の担当記者が当該企業に取材し、独自に判断したものです。なので、会社が発表する業績予想と異なる場合があります。
このケースでは、オリンパスではなく、7741 HOYAを例にとります。
前号の「秋号」の予想では、売上420,000、経常利益73,000、純利益58,000となっていました。純利益の予想が55,000に減少してますので、
【前号予想との比較】欄に、営業利益 - 純利益↓ となっています。同様に、【QUICKコンセンサス】でも、全体的に下方修正されています。
よく、日経会社情報の発売日に、企業の株価が変動しやすいといわれるのは、発表された予想の数字に変化があった場合、それを調整するように株価が形成されるからなのでしょう。
次に、株価が会社の資産の評価を反映する例をオリンパスでご紹介します。
オリンパスが決算を訂正した翌日の、2011年12月15日付の日本経済新聞の朝刊に『オリンパスは14日、過去の決算を訂正した有価証券報告書と2011年4〜9月期の四半期報告書を関東財務局に提出した。財テク損失を反映した結果、財務内容が悪化。11年4〜9月期の連結最終損益が323億円の赤字(前年同期は38億円の黒字)となり、9月末の自己資本は428億円に減少した。』との記事があります。
ここで、【財務】欄をみてみましょう。
自己資本とは、「日経会社情報の掲載データの定義」によりますと、『資本金、資本剰余金、利益剰余金など他社に返済する必要のない企業の正味の財産を示す。総資産から負債、少数株主持分、新株予約権を除いたものでもある。旧来の純資産や株主資本とほぼ同じ金額を指す』と記載されています。
前述の日本経済新聞記事には、『自己資本は428億円に減少した』とあります。上記の【財務】欄では、自己資本が、「1,637億円」となっておりますので、訂正後の自己資本「428億円」は、訂正前の約26%の水準です。問題発生前のオリンパスの株価は約2,500円でしたので、
2,500円 × 26% = 650円 となります。
以上より、決算訂正後の自己資本の毀損分だけで考えてみると、訂正後株価水準は650円、ということになります。実際には、500円を割り込み、5分の1以下になりました。「のれん」を過大評価していた為に、大きく自己資本を減らすこととなったのですが、株式の価値を評価する際に、会社が保有する「資産の質」を見て行くことが重要であるかとの教訓であります。
次回の、「株価の推移の確認の仕方と株価の分析指標の本当の意味」でも、「資産の質」の重要性についてご説明します。
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監修者:菅原 良介
編集者:K-ZONE money編集部