生命保険の配当金とは?
生命保険の配当金は、保険契約者が保険料を支払うなかで設定された予定率よりも多く保険料が集まった場合に発生する「剰余金」が還元されるものです。
剰余金があった場合には、契約者にお金を還元して生命保険の「配当金」とします。したがって配当金は、必ず受け取れる訳ではなく、余剰金が発生しなかった場合には受け取れない可能性もあります。
一般に配当金といえば、株式投資などで投資した会社から株主に支払われるお金を連想すると思います。
しかし、生命保険の配当金は、その仕組み上、保険料の払い戻しに当たるケースが多く、株式投資の配当金とは異なるケースが多いので混同しないようにしましょう。
保険料は予定率によって決まる
保険契約者が支払う保険料は、毎年の決算時に「予定死亡率」、「予定利率」、「予定事業費率」によって計算されます。
実際に保険会社が保険を運用していくなかで、亡くなる方の人数や運用利回り、事業にかかる経費などの実績は変わっていく可能性があります。その結果、保険会社があらかじめ調査した情報から試算した保険料と実際に発生した金額の間に差異が生じることがあります。
予定利率と実際に発生した金額の差益を剰余金と呼び、一定額の剰余金が発生した際には契約者にお金が還元されます。これが生命保険の「配当金」になるのです。それゆえ、余剰金が少ない場合、それだけ配当金も少なくなるという側面もあります。
生命保険の配当金の有無やその額を決める予定率について見ていきましょう。
予定利率とは?
予定利率とはその保険の予定している運用利回りのことで、外貨建て保険の場合は外国為替で運用されていたり、債権などを中心に運用されている保険などが多いです。
予定利率は予め決まっている一方で、金利や為替、その他金融市場の動きに伴い、実際に予定した通りの運用利回りにならないケースも多いです。
予定死亡率とは?
予定死亡率とは保険を契約している方がどの程度亡くなる可能性があるかを試算したものです。
性別や年齢など統計データを元に、死亡率を算出し、亡くなる可能性の生命表に基づいて将来の死亡者数を予測しています。
予定事業費率とは?
予定事業費率とは保険会社の事業コストの予定率です。すなわち、事業を運営していくにあたって必要と見込まれる費用の割合を指しています。
保険会社は保険商品の加入者を募って契約を結び、保険料を集めて事案が発生したら保険金を支払います。
一連の事業活動に必要とされる人件費やオフィス賃料など諸経費に見込まれるものを予定事業費と呼びます。
配当金の3つの差益
生命保険の配当金は「死差益」、「利差益」、「費差益」の3つから成り立っています。 それぞれの差益はどのように発生するのかについて見ていきましょう。
死差益
死差益は実際に保険会社が保険を運用するなかで死亡率が予定死亡率よりも低かった場合に生まれる剰余金です。
例えば、60才の男性が年間1万人いるなかで5人亡くなる場合には予定死亡率は0.0005になります。
実際に1人しか亡くならなかった場合には、4人分が死差益として発生します。
利差益
予定していた運用利益よりも実際の運用利益が多かった場合に発生する剰余金が利差益です。
例えば、ある保険商品が年間2%の運用益を見込んでいたなかで、実際には3%の運用益が得られた場合には1%が利差益となり、保険契約者に還元がなされます。
費差益
費差益とは、保険会社が事業を展開するなかで発生する経費が予定していたものとは異なった時に発生する差益です。実際の保険会社の財務状況や営業活動の増減によっても異なってきます。
有配当と無配当の保険がある?
生命保険の配当金には「有配当」と「無配当」のものがあり、さらに有配当のものには「3利益源配当タイプ」と「利差配当タイプ」があります。
有配当の保険
有配当の保険の場合、予定率と実際に保険を運用した際と比べて利益を生む差がでた場合には配当金が支払われます。有配当の生命保険には3利源配当タイプと利差配当タイプの2種類があります。
3利源配当タイプ
「3利源配当タイプ」は死差率、利差率、費費率によって生じた差益を用いて配当金を支払うものです。
毎年分配型の支払いパターンが主で、通常では契約から3年目の契約応当日から分配がなされます。
毎年分配型以外では「3年ごと配当」など期間を区切ったタイプもあります。
利差配当タイプ
利差が生じた際に、その利差を用いて配当金を支払うのが「利差配当タイプ」です。
「5年ごと利差配当型」が多く、通常では契約して6年目の応当日から5年ごとに配当金が支払われます。
ほかにも3年ごとに配当金が出るものや、毎年配当金が支払われるものもあります。
無配当の保険
配当がない無配当の保険もあります。保険会社が当初から死差や利差、費差の発生を少なくなるように設計した保険であり、保険料も有配当のものと比べて下げているので配当金は支払われません。
したがって、無配当保険は、配当金が得られない代わりに、あらかじめ保険料が安くなっている保険商品だと考えることができます。
有配当保険でも注意が必要
有配当保険でもそれぞれの予定利率通りに運用が出来た場合には配当金は支払われません。
有配当の保険でも必ずしも配当金が支払われるわけではないこと、つまり有配当保険でも成果によって実質的に無配当になり得ることはしっかりと覚えておきましょう。
有配当保険は無配当保険よりも保険料が割高なことは認識する必要があります。
有配当保険と無配当保険のどちらを利用するかは、事前に保険会社の案内や情報を確認した上で決定しましょう。FPや保険の専門家に相談するのもおすすめです。
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配当金の受け取り方法
配当金の受取方法には「積立方式」「買い増し方式」「相殺方式」「現金支払い方式」の4つの種類があります。
配当金の受け取りは積立方式が一般的です。それぞれの受け取り(引き出し)方法について見ていきましょう。
4種類の受け取り方式
受け取り方法 | 詳細 | メリット・デメリット |
積立方式 | 保険会社が配当金を預かり、契約者の口座に積み立てておく | ・まとまった金額にして受け取ることができる ・配当金に一定の利息が付く ・積立途中であっても、契約者が一部の金額を自由に引き出すことができる |
買い増し方式 | 配当金を一時払いの保険料にあてて、保険を買い増す | 保険金が増額となり保障が手厚くなる |
相殺方式 | 配当金をこれから払い込む保険料と相殺する | 保険料から配当金分の金額を差し引くことで、保険料負担が減る |
現金支払い方式 | 配当金を現金で受け取る | 配当金が少額だった場合には家計の足しにもならない可能性がある |
※詳細は各保険会社にお問い合わせください
生命保険の配当金は、配当金を保険会社に積み立てる「積立方式」が一般的です。
予定利率から差益が発生した配当金を積み立てて、まとまった金額になった数年後に受け取るものです。
積み立てることで利息が付くのがメリットで、積立途中でも一部の金額は引き出すことが可能です。個人の申込では主に、この方式が用いられています。
積み立て配当金とは、このような形で受け取る配当金を指します。
「買い増し方式」は配当金を保険料に回して、保険の保障を買い増す方式です。
支払う保険金が増えるので得られる保障が手厚くなるのがメリットです。
「相殺方式」は保険料から配当金分の金額を差し引く方法です。
保障内容は変わらず、保険料の負担額を軽減させることが出来ます。
「現金支払い方式」は配当金を現金で受け取る方法です。配当金がでたら都度受け取ります。
ただし、配当金が少額だった場合には受け取った金額が微々たるものなので、特に家計の足しにもならない可能性があります。
配当金の受け取り時期
配当金の支払い時期には「毎年」と「3年ごと」や「5年ごと」などがあります。
それぞれの期間を迎えたら配当金が支払われます。毎年配当型は毎年配当金が支払われますが、通常は契約から3年後の契約応当日から支払いがなされます。
受け取りタイプ | 詳細 |
毎年配当型 | 毎年配当金が支払われる |
3年ごと配当型 | 3年ごとに配当金が支払われる |
5年ごと配当型 | 5年ごとに配当金が支払われる |
※詳細は各保険会社にお問い合わせください
長期間の継続契約に対して特別配当が得られるタイプもあります。
特別配当には10年以上など長期間の継続した保険契約に対して支払われるものと、消滅時特別配当という死亡した際や満期に達したことで契約がなくなった際に支払われるものとあります。
配当金に税金はかかる?
生命保険の配当金には税金はかかるのでしょうか?
原則的には、株式の配当金とは異なり事後生産によって生じるので課税の対象にはなりませんが、受け取った金額の多寡や保険期間中なのか否かによって変わってきます。具体的に見ていきましょう。
契約期間中に受け取る場合
保険契約期間中に配当金を受け取った場合には課税にはなりませんが、確定申告の生命保険料控除を申請する際には、支払保険料から配当金額を控除した金額で生命保険料控除の申請をする必要があります。
支払った保険料から配当金が戻ってきたので、実際に支払った保険料が変わるためです。
保険金の支払い開始日以後に受け取る場合
保険金の支払開始日以降に配当金を受け取った場合には課税対象になります。
年金受取の場合では「雑所得」として、一括受け取りでは「一時所得」として所得税が課税されます。
そのほかの「雑所得」や「一時所得」と合算して課税金額を計算しましょう。
保険金とあわせて受け取る場合
配当金を保険金とともに受け取る場合にも合わせて課税対象になります。
配当金額を保険金額に含めて確定申告を申告しなければなりませんが、生命保険の保険金の受け取りは契約者本人が受け取るのか、遺族が受け取るかなどによって相続税や所得税、贈与税の対象など変わってきます。
支払事由によって税の処理が異なるのでしっかりと確認をしましょう。
満期保険金と受け取る場合
配当金を満期保険料とともに受け取る場合にも課税対象になります。一時所得として所得税、住民税の対象となり、個人年金保険で配当方法が保険金買増方式の場合、雑所得として所得税、住民税の対象となります。
また、確定申告が必要ではない会社員の人が満期保険金で20万円を超える場合と、満期保険金+配当金の所得税が20万円を超えた場合、確定申告する必要があります。
確定申告を自らしている自営業の人は満期保険金+配当金の額が課税対象となります。
源泉徴収税がかかる場合とは?
前で説明した通り課税対象となります。
有配当の保険では保険金と一緒に受け取ると課税対象となるため注意が必要となります。
特別配当金の場合
生命保険の配当金には特別配当もあります。
10年以上など長期間に渡って契約をした場合に支払われる「長期継続特別配当」と、亡くなった際や満期に達したなど契約が消滅する際に支払われる「消滅時特別配当」があります。
これらの特別配当も課税は通常の生命保険の配当金と同じ方式になるので、特別配当金が支払われた際には保険会社からの案内をしっかりと確認しましょう。
税金に関しては、少々複雑なところもあるので、不安に思われる方は、税理士やファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう。
まとめ
この記事では、生命保険の配当金の概要・利用方法や、税金の仕組みについて解説しました。保険のタイプ(3利源配当、利差配当)や、分配の方法や用語、税務計算など配当にかかる税金の仕組み・概要についても学ぶことができたと思います。
生命保険の配当金、有配当の保険でも配当がもらえないケースもあります。配当金や契約について、保険会社へ相談する機会も定期的に持つと良いかもしれません。もしくは、FPや保険の専門家に相談してサポートを受けるのも良いでしょう。
重要なことですが保険は、出来るだけ収益を狙うことを目的とする金融商品ではありません。配当金はあくまで予定利率から差益がでた際に支払われるものであり、保険を運用するなかで派生的に得られるものなので、配当金を目当てに保険を検討するのはあまり得策ではありません。あくまで、配当金は一つの知識・判断基準にとどめ、得たい保障内容をしっかり確認した上で、自身に合った保障から保険商品を選ぶようにしましょう。
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よくある質問
Q | 有配当と無配当の保険ではどちらがおすすめですか? |
A | 無配当の保険は配当がない分、有配当に比べて保険料が安くなります。そのため、自分が払える保険料を考えて、どちらに加入するか決めましょう。 |
Q | 有配当の保険を選ぶ際の注意点は何ですか? |
A | 注意点として、あくまで配当が受け取れるのは運用が好調な場合です。そのため、有配当の保険に加入しても、必ずしも配当金を受け取れるわけではないので注意しましょう。 |
Q | 保険の転換とは何ですか? |
A | 保険の転換とは、現在契約している保険の積立部分を次の保険商品の保険料にあてることです。 |