株式分割が発表された場合、株価に好影響を与えて株価が上昇するというのが定説になっていました。株式分割が行われて株数が増えてしまった後の株価推移は、分割前と比べて実際はどうでしょうか。
この記事では、株式分割の意味や投資家に与えるメリット・デメリット、事例などを紹介します。
株式分割とは?
株式分割とは、発行済みの株式を細分化することにより、株数を増やすことです。株式分割する事で株主が損することはなく、自身が持っている株数に応じて分割処理が自動で行われます。また、投資家自身が行なう手続きなどは一切ありません。
例を挙げると、100株5000円だったものを、100株2500円にする事です。この際、100株5000円で保有していたものは、200株保有することになり、株1つあたり株の数が2株に増えることになります。
株式分割を行うには株主総会での決議や登録申請等、法律で定められた手続きに従う必要があります。
株式分割の比率は?
株式分割の比率は特に決まっていません。各々の会社によって異なります。
<株式分割を行なった会社 (2022年3月29日時点)>
- コアコンセプト・テクノロジー 東証マザーズ 1 : 2
- CIJ 東証1部 1 : 1.2
- コタ 東証1部 1 : 1.1
- バリューHR 東証1部 1 : 2
- シグマクシス・ホールディングス 東証1部 1 : 2
- アイ・パートナーズフィナンシャル 東証マザーズ 1 : 4
株式分割すると株価は上がる?
株式分割しても株価が上がるとは限りません。分割することで株自体は買いやすく売りやすくなるからです。結果として、買い売りを判断することは難しいです。
中長期的な目で見た場合、好業績な企業が行う場合が多いため、株価が上昇する可能性があると言われています。以前は「株式分割バブル」という言葉があり、株式分割を好材料とみる投資家が多く、株式分割が行われる度に株価が急上昇するという現象がおきました。
株式分割をする会社側のメリット
株価の価値は変わらないのに一体なぜ株式分割を行うのでしょうか。まずはメリットについて説明します。
株価の安定性が高まる(流動性が高くなる)
株式分割をすると、株主が持つ株の全体の価値は変わらないまま株数だけが増えます(先ほど示した図を参照してください)。すると1株あたりの値段も安くなるため、最低投資金額は下がり、今まで以上に様々な投資家にとって売買が可能になります。
例えば1株1万円の銘柄で、1:10の株式分割が行われたとしましょう。基本的に売買は100株単位ですから、1人の投資家の最低投資金額は100万円から10万円へと下がります。
つまり、株式分割によって1回の取引にかかる金額が下がり、既存株主・新規株主の両方にとって取引がしやすくなるのです。取引がしやすいことを「流動性が高い」とか「流動性がある」のように言いますが、これは一度に売買したい株の数の多い・少ないに関わらず、買いたい時・売りたい時に常時売買をすることができることを表します。
このように株の全体価値を変更せずに、株式会社が発行する株をより流動的なものにすることで、株主の取引を増加させるのがメリットです。
株が買いやすくなることで時価総額が上がりやすくなる
なぜ時価総額が上がりやすくなるのか理由は2つあります。1つ目は上記で説明した「流動性の向上」です。2つ目は「新規株主からの需要増」です。「魅力的な銘柄だけど株価が高くて手が出せなかった...」と思っている個人投資家にとって、株式分割で流通している株の数が増えて1株あたりの値段が下がれば、少し高いお金を払ってでも手に入れたいと思うはずです。こうした需要の積み重ねで、「株式全体の価値」すなわち時価総額が上がりやすくなるのです。
時価総額が高い企業は就活・転職活動をしている人たちから、魅力的な会社だと判断され有望な人材も集まりやすくなることで、信用性の高い企業と見なされれば資金調達も容易になります。ただし、株式分割による時価総額の上昇は企業の財務戦略によるものであるため、企業の本業での業績アップによる時価総額の上昇とは別なので注意が必要です。
上場基準を目指すため
それぞれの市場に条件として流通株式数や売買高というものが存在します。その基準を満たすために株式分割を選択する会社もあります。このように上場基準を目的として、株式分割を行うのも会社にとってメリットとなります。
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株式分割をする投資家側のメリット
ここからは投資家目線で私達が株式分割することでどんなメリットがあるのかを紹介していきます。
配当金や株主優待を受けやすくなる
配当金は1株あたりにいくらと設定されるので保有株式数が増える分、配当金も増える傾向にあります。また、株主優待の面では、優待を受けるための最低必要金額が少なくなります。株式分割が行われると理論上の株価が安くなるため、株主優待に必要な最低投資金額が少なく済む場合があります。もちろん、配当金などが調整されてしまって配当利回りが変化しない銘柄も存在します。
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100株単位の単価が下がるので購入しやすくなる
先ほど説明したように、100株単位の単価が下がるので株式が購入しやすくなります。余った投資資金を他の銘柄に回すこともできます。このように投資家側は、資産運用の裾野を広げられるのが特徴です。
株式分割をするデメリット
では、株式分割するデメリットは一体何でしょうか?
株価の変動が大きくなる可能性がある
その企業に対しての期待感から投機的な売買が活発になります。中には相当な金額・数量が短期的な売買益目的で取引される銘柄もあるため、企業の業績に関係なく大きな値動きとなる場合もあります。短期的な視点だけではなく、中長期的な視点で今後の値動きや業績等の動向に注視することが大切です。
株主が増えることにより管理が大変になる
流動性が高くなる分、株主数も必然的に増えます。その為、会社として株主を管理することが非常に難しくなってしまいます。このように流動性を高めたことで、会社の経営事業にも影響を与えてしまうのが株式分割のデメリットです。
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株式分割の事例
最後に実際に株式分割をした企業について紹介します。
Zホールディングス
Zホールディングスは上場以来過去15回の株式分割を行なっています。保有株数は分割前の819,200倍(株式分割のみで考慮した場合)になり上場来株価よりも株価は約170倍と当時に比べると規模の大きい会社になっていることが分かります。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は2021年9月28日時点で、株式分割を行いました。株式分割により、保有株数は分割前の5倍になり、株価は株式分割前の5分の1になりました。2022年4月4日時点で株価は2,211円で株式分割前よりも200円以上株価が上がっています。
まとめ
今回は株式分割について解説してきました。株式分割自体は本来、株価に対して影響を与えないため、投資家には影響を与える要因とはなり得ません。
しかしながら、株式分割を行う企業の多くは流動性を高めるため、すなわち好業績がであることを表していることになります。過去には「株式分割バブル」という言葉があったように、株式分割すると価格変動が激しくなる傾向があるので、よく確認しておくことが大切です。
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