バリュー平均法とは?ドルコスト平均法との違い、シミュレーションについても解説

投稿日:2021/07/01 最終更新日:2023/03/10
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定期的に特定の金融商品(特に投資信託)を買い続け、目標金額の達成を目指す積立投資の一つ「バリュー平均法」。金融商品の価格変動に合わせて投資資金も変動するバリュー平均法は、平均取得単価を下げやすく確実に期日までに目標金額を達成できます。 積立投資にはバリュー平均法だけではなく、ドルコスト平均法という投資手法もあります。金融商品の価格変動に伴い投資資金も変動するバリュー平均法に比べ、金融商品の価格が変動しても常に一定額を投資し続けるドルコスト平均法は、自動積立も可能で運用の手間がかかりません。 今回は、バリュー平均法の概要や同じ積立投資のドルコスト平均法との違いについて、バリュー平均法のアレンジであるノーセルバリュー平均法とともに解説します。
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バリュー平均法とは?

バリュー平均法とは、「Value Averaging」の日本語訳として生まれた言葉で、定期的に特定の金融商品(特に投資信託)を買い続ける投資方法です。事前に貯めたい目標額と継続的に投資する金融商品を設定しておき、その目標額に達するまで定期的に投資し続けて資産を形成します。

金融商品の「価値」を評価するバリュー平均法

バリュー平均法は、1980年代にアメリカの学者マイケル・エデルソンが提唱した投資手法です。バリュー平均法では、価格が変動し続ける金融商品に対して買付額を変動させて投資します。保有時価が段階的に一定額増加するように、金融商品の価格が下がる局面で買付額を増やし、金融商品の価格が上がりすぎていれば買付額を減らします。

例えば、5年間で600万円を貯めるために株式投資による積立を始めたとします。この場合、1年間に120万円貯めなければならず、月額にすると10万円が積立額です。まず、初月に株を10万円分購入します。今回はこの株が1株1,000円だと仮定します。初月は100株購入しました。次に、2ヶ月目に株価が800円に下落したとします。100株保有しているので評価額は、100株×800円=8万円です。2ヶ月目の時点で20万円が目標額なので、不足分の12万円÷800円=150株を購入します。
次に、3ヶ月目に株価が1,000円に上昇したとします。250株保有しているので評価額は、250株×1,000円=25万円です。3ヶ月目の時点で30万円が目標額なので、不足分の5万円÷1000円=50株を購入します。また、バリュー平均法は、超過した分を売却するというルールもあります。 4ヶ月目に株価が1,600円に上昇したとします。300株保有しているので評価額は、300株×1,600円=48万円です。4ヶ月目の時点で40万円が目標額なので、超過した8万円分の株は売却します。バリュー平均法においては、利益が確定すれば途中で売却し、下落が続き投資金額が増えた際の待機資金として取っておきます。

このように、バリュー平均法では金融商品の価値を評価し、金融商品の価値に応じて投資額を増減しながら継続的に積み立てていきます。  

バリュー平均法のメリット

金融商品の価格変動に合わせながら毎月積み立てるバリュー平均法には、以下のようなメリットがあります。

・平均取得単価を下げやすい
・継続すれば目標額を達成できる

まず、バリュー平均法には平均取得単価を下げやすいというメリットがあります。金融商品の価格の変動に合わせて積立額も変動するため、金融商品の価格が下落しているときは積立額が多くなりますが、金融商品の価格の上昇が続けば積立額は減らし続けられ、値上がり幅によっては投資をしなくて良い場合もあります。そのため、トータルで見ると平均取得単価を下げられる確率が高くなります。平均単価を下げられた上で目標金額を達成できれば、当然投資のリターンも大きくなります。

また、継続すれば目標額を達成できるという点もバリュー平均法のメリットです。本来、投資による資産形成は不透明性が高く、確実に目標金額を達成できるものではありません。

しかし、バリュー平均法では金融商品の価格の変動に合わせて投資金額を変動しながら、毎月一定額を積み立てられるため継続し続ければ必ず目標金額を達成できます。明確な目標金額があり、資金形成に投資を利用したい場合はバリュー平均法が最適です。 

なお、後ほどご紹介するドル・コスト平均法では投資したすべての資産が価格変動リスクを負っていますが、バリュー平均法では資産の売却が行われたり、商品が購入されない月もあるので、預金など安全資産の割合が比較的高く、相場の暴落に強い傾向にあります。

バリュー平均法のデメリット

バリュー平均法には、以下のようなデメリットもあります。

・管理に手間がかかる
・複利の恩恵を受けにくい

まず、バリュー平均法は、金融商品の価格変動に伴って投資額も毎回変動するため、管理に手間がかかるというデメリットがあります。同じ積立投資として、バリュー平均法以外にドルコスト平均法という投資手法があります。ドルコスト平均法は毎回投資金額が一定のため自動積立が可能です。 しかし、バリュー平均法は金融商品の価格変動に伴って投資金額も変動するため自動積立はできず、毎回投資時の金融商品の価格から投資額を自分で計算し、購入及び売却の取引を行う必要があります。仕事や家事が忙しく、投資の管理に手が回らない場合や管理の手間が面倒と感じる方はバリュー平均法には不向きです。また、バリュー平均法を利用する場合、下落が続いた局面において追加投資を続けることになりますので資金不足に陥り、投資できなくなり目標金額を達成できないリスクがあります。

また、複利の恩恵を受けにくいというデメリットもあります。本来、長期投資は複利の恩恵を受けながら資産を増やせます。しかし、バリュー平均法では、積立投資していた際に保有資産の評価額が目標金額を超えた場合、超過分は売却しなければならないため、上場相場における複利効果の恩恵は受けにくいという特徴があります。メリットとして挙げた「資産価値変動のリスクが小さい」というポイントの裏返しでリターンも少なくなる、というわけです。

バリュー平均法は運用途中に取引を行うため、iDeCoの制度を適応することが出来ず、つみたてNISAの活用にも不向きなため、税金を払う事を前提とした投資プランを立てる必要があります。

バリュー平均法をシミュレーションしてみた

バリュー平均法とはどのような投資手法なのかや、メリットとデメリットについて解説しました。では、バリュー平均法は具体的にどのように運用するのでしょうか。
ここからは、バリュー平均法のシミュレーションのやり方及び検証結果を見ていきましょう。

シミュレーションのやり方

バリュー平均法では、始めに必ず運用期間と目標金額を設定しておきます。例えば、「10年後に家を建てるための頭金として600万円貯めたい」という場合は、運用期間は10年間、目標金額は600万円です。 次に、積立回数を決めます。毎月積み立てるのであれば、12ヶ月×10年間となるため積立回数は120回です。ただし、積立回数は無理のない回数に設定することが大切です。自分の性格や現在の経済状況などなら、毎月や2ヶ月に1回、半年に1回など、継続できるペースに設定してください。 運用期間、目標金額、積立回数が決まったら、実際に金融商品の価格の変動を予想しながら、毎月の投資額をシミュレーションします。シミュレーションの一例は後ほど詳しくご紹介します。 このように、バリュー平均法でのシミュレーションは、運用期間、目標金額、積立回数を決めた上で行います。

検証結果

前述の通り、バリュー平均法ではあらかじめ運用期間と目標金額を設定しておきます。今回は、先ほども例に挙げた「5年間で600万円を貯める」というケースでシミュレーションしてみましょう。 この場合、年間120万円貯めなければならないため、月額10万円ずつ積み立てます。半年間の金融商品の値動きと、値動きに伴う投資額の変動の例は以下の通りです。

  1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 5ヶ月目 6ヶ月目
目標金額  100,000円  200,000円  300,000円  400,000円  500,000円  600,000円
金融商品の価格 1,000円 800円 1,000円 1,600円 1,250円 1,000円
保有資産の評価額 0円 80,000円 250,000円 480,000円 312,500円 400,000円
今月の投資資金 100,000円 120,000円 50,000円 0円 187,500円 20,000円
買付口数 100口 150口 50口 0口 150口 200口
途中売却 0口 0口 0口 50口
(8万円)
0口 0口
累計口数 100口 250口 300口 250口 400口 600口

このように、金融商品の価格変動に伴って毎月の投資資金や買付口数も変動します。バリュー経路(※)を基準としてその月の投資資金を算出します。 なお、買付口数とは本来は口数ベースで購入する投資方法のことです。しかし、バリュー平均法のシミュレーションにおける買付口数は口数を指定して投資することを指します。

※バリュー経路:積み立ての目標累計額のことです

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バリュー平均法とドルコスト平均法って何が違うの?

先ほどご紹介しましたが、バリュー平均法と同様の積立投資の一種として知られているのがドルコスト平均法です。どちらも特定の金融商品を一定の期間投資するため、混同されることも少なくありません。しかし、バリュー平均法とドルコスト平均法にはさまざまな違いがあり、特徴も大きく異なります。

そこでここからは、ドルコスト平均法について詳しく解説しながら、バリュー平均法とドルコスト平均法の違いをご紹介します。

ドルコスト平均法とは?

ドルコスト平均法とは、特定の金融商品に一定期間投資する積立投資のうち、毎回一定額を投資し続ける投資手法です。金融商品の価格は常に変動していますが、ドルコスト平均法では金融商品の価格が変動していても毎回一定額投資を維持し続けます。

金融商品の価格の変動に左右されずに毎回一定額を投資し続けることで、金融商品の価格が上昇した時は購入量(買付口数)を減らすことができ、逆に金融商品の価格が下落したときは購入量(買付口数)が増えます。このような仕組みから、ドルコスト平均法は平均購入単価を平準化させることができ、自動積立も可能なため管理の手間がかかりません。よって、投資の管理に使える時間が少ない方におすすめの手法です。また、投資信託等を扱うつみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)との相性の良い投資方法でもあります。
このように、毎回の投資額を一定に揃え、買付口数を変動させて積み立てる積立方式がドルコスト平均法です。  

ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法とは

【関連記事】
ドルコスト平均法とは?やり方・始め方、メリット・デメリットをわかりやすく解説

違いのまとめ

バリュー平均法とドルコスト平均法はどちらも積立投資ですが、毎回の投資資金が変動するか否かなどさまざまな違いがあります。そこでここからは、バリュー平均法とドルコスト平均法それぞれの特徴を比較しながら、違いを確認しましょう。
バリュー平均法とドルコスト平均法の特徴及び違いは以下の表の通りです。

  バリュー平均法 ドルコスト平均法
投資対象 同一銘柄 同一銘柄
買付タイミング 定時(毎月、2ヶ月に1回、半年に1回など) 定時(毎月、2ヶ月に1回、半年に1回など) 
投資額 変動あり(目標金額より株価が上昇すると減額、下落すると増額)  定額
取引内容 買い、売り 買い
取引執行 投資家本人 金融業者
投資目標 時価残高 投資総額

このように、バリュー平均法とドルコスト平均法には毎回の投資額の変動の有無や取引内容、取引を執行する人、投資目標に違いがあります。  

ノーセルバリュー平均法とは?        

ノーセルバリュー平均法は、バリュー平均法の投資期間内は株を売却せずに運用する方法です。ノーセルバリュー平均法では超過分を売らずに保有し続けるという考え方です。バリュー平均法の考案者であるマイケル・エデルソンが発表した著書「ノー・セル・バリュー平均法」にて紹介されました。           

ノーセルバリュー平均法はバリュー平均法のアレンジ

先ほどご紹介した通り、バリュー平均法では金融商品の価格の変動に伴って毎回の投資資金も変動します。特に、金融商品の価格が上昇して目標金額を超過した場合は、超過分の株を売却して調整しなければなりません。しかし、ノーセルバリュー平均法では超過分を売らずに保有し続けます。

このように、バリュー平均法のアレンジであるノーセルバリュー平均法とバリュー平均法には、金融商品の価格が目標金額を上回った場合に超過分を売却するか否かに違いがあります。  

ノーセルバリュー平均法のメリット

バリュー経路を超過しても株式を売らずに保有するノーセルバリュー平均法には、その運用方法から以下のようなメリットがあります。

・必ず期日までに目標金額を達成できる
・取引手数料が抑えられる

まず、ノーセルバリュー平均法には必ず期日までに目標金額を達成できるというメリットがあります。金融商品の価格がバリュー経路を超過しても株式を保有し続ければ、金融商品が下落して目標金額より不足しても保有していた株式で損失をカバーできます。

また、ノーセルバリュー平均法には取引手数料が抑えられるというメリットもあります。バリュー平均法では、超過分は都度売却するため売却の度に取引手数料が発生します。しかし、ノーセルバリュー平均法は売却せずに保有し続けるため取引回数が少なく、その分取引手数料が抑えられます。  

ノーセルバリュー平均法のデメリット

ノーセルバリュー平均法には、メリットだけではなくデメリットもあります。ノーセルバリュー平均法のデメリットは以下の2点です。

・管理に手間がかかる
・暴落時に資金が尽きて投資を続けられなくなる可能性がある

まず、ノーセルバリュー平均法は管理に手間がかかるというデメリットがあります。なぜなら、ノーセルバリュー平均法とバリュー平均法には株式を売却するか否かという違いはあるものの、運用方法は基本的には同じだからです。 ノーセルバリュー平均法はバリュー平均法同様、金融商品の価格変動に伴って投資資金を毎月計算しなければなりません。計算だけではなく、株式の発注も自分でしなければならないため管理に手間がかかります。

また、暴落時に資金が尽きて投資を続けられなくなる可能性があることもノーセルバリュー平均法のデメリットです。なぜなら、急激な株価暴落が起きると一気に購入額が増えて負担が大きくなるからです。特に、ノーセルバリュー平均法で積立投資を始めてすぐに暴落が起きると、余力がなく必要数の株式が購入できず、投資を続けられなくなります。 ノーセルバリュー平均法で積立投資する場合は、特に運用し始めた直後の暴落に注意が必要です。

まとめ

将来のための貯金や子供の教育費、住宅購入のための資金など、明確な投資目的と目標金額、投資期間を定めて積立投資をするバリュー平均法。金融商品の価格変動に伴い、超過分は売却、不足分は追加で投資するバリュー平均法は、確実に期日までに目標金額を達成できるおすすめな投資手法の一つです。しかし、その分管理の手間がかかったり、複利の恩恵を受けにくいというデメリットもあります。
バリュー平均法の特徴やメリットとデメリットを把握し、ドルコスト平均法やノーセルバリュー平均法等他の積立投資と比較した上で、自分の設定した目標金額やリスク許容度などを考慮して最適な方法を選択し資産形成しましょう。  

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