ファンダメンタルズとテクニカル、どちらを重視すればよい?
ファンダメンタルズ(※1)とテクニカル(※2)も、どちらを重視するかという問題ではなく、併用するのが正しいあり方だと思います。
基本的に、長期投資はファンダメンタルズ重視。短期売買はタイミングを図る必要がありますから、テクニカルを用いて相場のノイズを見極めることになりますが、投資家の立場で考えた場合、長期投資も短期売買もリターンを得るための手法に過ぎませんから、長期投資しかしない、あるいは短期売買しかしないといった決めつけは、しない方が良いでしょう。
長期投資も短期売買も、その時々の相場の状況に応じて両方を用いるのが正しい投資の在り方なので、ファンダメンタルズもテクニカルもどちらを重視するべきか、ではなく、相場の状況に応じて、両方を使い分けながらポジションを持つようにすることが大切です。
ただ、長期で投資している人の多くは、「将来、必ず状況が良くなって、マーケットは上昇するはずだ」という前提でエントリーしていますが、これはあまりお勧めできません。たとえば日経平均株価は、1989年12月末につけた3万8,915円の過去最高値を、それから23年が経過したのに未だに抜けていないばかりか、5分の1程度まで値下がりしています。
つまり、長期投資でエントリーしたから必ず報われるとは限らないのです。
最初から長期投資ありきで考えていると、このような失敗に追い込まれる恐れがあります。そうではなく、ファンダメンタルズが改善されてきたからそれに適した投資スタイルとして長期投資を選択するのが、正しい選択方法です。
一方、テクニカルは、相場に行き過ぎなどが生じたところをタイミングよく拾い、歪が修正されたところで利益を確定させるための判断に用いるものですから、短期売買、もしくはスイングトレードに適しています。
ちなみに、テクニカルにもさまざまな指標がありますが、絶対に押さえておくべきなのは、「移動平均線」です。基本的に、5日、25日、75日という3本の移動平均線を用いることによって、ダマシに遭うリスクを減らすことができます。あるいは、MACD(※3)なども、トレンドと売買タイミングの両方を判断するうえで有効です。
金融市場における解釈には二通りあります。1つめは、経済活動の状況を示す基礎的要因のことで「経済の基礎的条件」と訳されます。具体的には、経済成長率(国内総生産(GDP)の伸び率)、物価上昇率、失業率などの経済指標を指します。
2つ めは、個別企業の業績や資産価値など財務状況を意味します。具体的には、売上高や利益などの財務データを指し、株式投資において、これら財務データから算出した指標(PER、PBR、ROEなど)を用いる手法をファンダメンタルズ分析と言います。
(※2)テクニカル
証券や商品、外国為替などの価格や出来高のデータを図表に表し、過去のパターン(型)から先行きを予測する投資手法です。代表的なテクニカル分析は株価の推移を示す「株価チャート」や株価の平均値をグラフで表示した「移動平均線」などです。そのほか、相場の強弱を測る「騰落レシオ」や、ユニークなものとしては投資家心理を示す「サイコロジカル」などテクニカル分析で使用する指標は多数あります。
(※3)MACD(Moving Average Convergence Divergence)
MACDは、トレンドをはかるのに最もわかりやすい指標のひとつです。
MACDは以下の計算式で求められます。
・MACD=短期EMA−長期EMA
※EMA:指数平滑移動平均
EMA=α×当日の終値+(1?α)×前日のEMA(計算起点の場合は単純平均)
α=2/(n+1) ※nは計算期間(5日EMAであればn=5、10日EMAであればn=10)
・シグナル=MACDのx日移動平均
MACDとその移動平均線である「シグナル」の2つの指標から、買いサインと売りサインを判断できるようになっているチャート。
上昇トレンドであればMACDは上昇、下降トレンドの場合はMACDの値も下落します。
株式会社インベストラスト代表取締役
IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説。また最新刊「FX一目均衡表ベーシックマスターブック」が好評発売中。HP http://www.itrust.co.jp/