増担保規制が発動・解除されるとどうなる?

投稿日:2023/02/24 最終更新日:2023/04/20
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信用取引を行っている投資家の方には、信用取引の規制措置銘柄(増担保規制)の発表に注目している人もいると思います。とはいえ、信用取引に詳しくない方だと「取引規制ってどうなるの」と不安に思うかもしれません。 増担保規制が行われるのは上場廃止になってしまうような場合ではないので安心してください。信用取引に関する規制の1つである「増担保規制」がどのようなものなのかを簡単に解説します。 増担保規制は株価に影響することが多いので、信用取引を利用していない投資家も注目すべき内容です。  

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

証券アナリスト

Finatext サービスディレクター・アナリスト。日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当する傍ら、アナリストとしても活動。グループで展開するコミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターなども務め、国内メディアへの寄稿も行う。

増担保規制とは?

信用取引は、現金(保証金)や株などを担保として証券会社に預けることで、その担保以上の購入資金を融資してもらい、多くの株式を購入できる仕組みです。預ける担保は最低でも30%、最低保証金額は30万円であることが法令で決まっており、この担保の比率を委託保証金率といいます。(レバレッジ型・インバース型ETFなどは最低委託保証金率が異なります)

参考:金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令

信用取引の規制銘柄に指定されると一定の割合で担保を増やす(=増担保)必要があり、これが増担保規制と呼ばれる理由です。

増担保規制はその企業の経営に問題があるというわけではなく、信用取引の割合が多くなっている(信用取引が過熱している)時などに行われます。取引を落ち着かせることが目的としていますが、その背景には信用取引による株価の下落で大きな損失がをでないようにする投資家保護の観点もあります。

増担保規制はJPX(日本取引所グループ)が実施する場合と、証券会社が独自に規制する場合もあります。(この記事はJPX(日本取引所グループ)が実施する増担保規制をベースにしています)

増担保規制の目的は?

増担保規制は信用取引の取引量を減らすことで株価の値動きを落ち着かせることが目的です。取引量が少ない銘柄では、信用取引によって取引量が大きくなれば株価が乱高下します。このような投機的な値動きは本来好ましいものではありません。

これを防ぐために、具体的には委託保証金率を段階的にあげることで信用取引の量を制限します。委託保証金率が高いほど信用取引がしにくくなる(つまり取引に資金が必要になる)からです。

措置段階 委託保証金率
第1次措置 委託保証金率50%(うち、現金保証金分20%)
第2次措置 委託保証金率70%(うち、現金保証金分40%)
第3次措置 委託保証金率90%(うち、現金保証金分60%)
第4次措置 新規の信用取引禁止

一定の条件に該当すると増担保規制が発動しますが、逆に信用取引の過熱感が収まれば発動が解除されます。多くの場合、第1次および第2次措置までの規制までしか行われず、第3次以降の規制が適用されることはほとんどありません。

増担保規制の発動条件

増担保規制は信用取引が過熱して割合が増えている場合に行われますが、具体的には以下の4つの基準のいずれかに該当すると増担保規制が発動します。

基準 条件
残高基準 信用売り株式数÷上場株式数=15%以上、
かつ信用売り株式数÷信用買い株式数=70%以上
信用買い株式数÷上場株式数=30%以上、
かつ3営業日連続して「各営業日の株価÷25日移動平均株価=±30%以上」
「信用取引残高が継続的に増加している銘柄」として公表した日の翌月の応当日以降、信用売り株式数÷上場株式数=15%以上、または信用買い株式数÷上場株式数=30%以上
信用取引売買比率基準 3営業日連続して「各営業日の株価÷25日移動平均株価=±30%以上」、
かつ3営業日連続して信用取引の新規売付比率が20%以上
3営業日連続して「各営業日の株価÷25日移動平均株価=±30%以上」、
かつ3営業日連続して信用取引の新規買付比率が40%以上
売買回転率基準 「1営業日の株価÷25日移動平均株価=±20%以上」、
かつ売買高が上場株式数以上であり、かつ、営業日の信用取引の新規売付比率が30%以上
「1営業日の株価÷25日移動平均株価=±20%以上」、
かつ売買高が上場株式数以上であり、かつ、営業日の信用取引の新規買付比率が60%以上
特例基準 証券取引所が信用取引の利用状況や、銘柄の特性を考慮し、必要と判断した場合

4つ目の特例基準を除き、信用取引が多くなった時に発動されると覚えておけば問題ありません。各基準の詳しい内容を知りたい方はこちらの記事で解説しています。
関連記事:増担保規制とは?解除条件や株価への影響について解説

増担保規制の対象になっている銘柄はJPXグループから公表されています。
参考:JPXグループ「信用取引に関する規制を行っている銘柄」

増担保規制の解除条件

増担保規制は信用取引の取引量が抑制されれば解除されます。解除ラインは以下の通りで5営業日連続で基準を下回ることが条件となります。

基準 条件
残高基準 5営業日連続して「信用売り株式数÷上場株式数=12%未満」
5営業日連続して「信用買い株式数÷上場株式数=24%未満」
株価基準 5営業日連続して「各営業日の株価÷25日移動平均株価=±15%未満」

増担保規制が発動するとどうなる?    

増担保規制の対象銘柄になった場合、一般的には株価が下落しやすいといわれています。ただし、必ず下落するわけではなく、引き続き株価が上昇する場合もあるので、増担保規制が発動したからという理由だけで今後の株価の動きを判断するのは危険です。

既存の株主が売り出す

増担保規制が発動すると、新規の信用買いが抑制されるので株価の上値は重くなります。一般的に株価が下落するといわれているので、それを嫌ってこのタイミングで株式を売却する既存株主が現れます。

既存株主の売却によって株価が下がった場合、次はさらに株価が下がるリスクを回避するために損切りで損失確定する投資家が出てきます。また、委託保証金維持率を維持できず強制決済されるような投資家が増えればさらに下落圧力が強まります。

機関投資家による空売り

また、増担保規制対象となった銘柄を狙った空売りを外資系ディーラーが仕掛けてくる場合があります。機関投資家は個人投資家とは異なり、空売りに規制がありません。
機関投資家は資金力も豊富なため、機関投資家による空売りは強い下落圧力になる可能性があります。

ストップ高になったケースも

ただし、増担保規制対象銘柄になったとしてもかならず下落するわけではありません。増担保規制されたということは、信用取引が多く利用されるほど魅力のある銘柄という見方もできます。
そのため、今後に期待できる見込みが高ければ、増担保規制対象になってもなお買いの勢いが衰えないこともあります。最近の例をあげると、キャンバス<4575>は2023/2/10に舞担保規制対象銘柄(第1次措置)となりました。2月10日時点の終値が約2,000円でしたが、その後も上昇を続け2月17日に株価が約3,000円まで上がりました。(その後は下落)

参考:JPX日本取引所グループ「信用取引に関する規制を子なっている銘柄」

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増担保規制が解除されるとどうなる?

逆に、増担保規制が解除されると一般的には株価が上昇するといわれています。

新規の買いが増える

増担保規制が解除されれば信用取引に関するコストが下がるので、信用取引の新規の買いが増え株価が上がるケースが多いといわれています。

株価の乱高下が起こるケースも

もともと増担保規制の対象となる銘柄は信用取引の割合が高くなっています。そのため、実態の経営状況だけでなく増担保の規制や解除といったイベントで取引されているケースも少なくありません。
そのような場合、投機的な動きが高まり一気に高騰したり下落したりといった乱高下が起こる可能性もあります。

増担保規制(発動・解除)を用いた投資法は有効?

結論からいえば、増担保規制を狙った投資方法は投機的な側面が高くかなり難しいため、気軽に狙うものではありません。もし利用するのであれば、できるだけ小さい金額で想定の動きと異なった時でもすぐに対応できるようにしておきましょう。

一般的には以下の戦略が有効だと考えられます。

  • 発動後の空売り
  • 解除後の買い

発動後の空売り

増担保規制発動後は信用取引の買い取引量が抑制されます。一般的に株価が下落しやすいといわれているため、増担保規制の発動をきっかけに株式を売却する株主が増える(つまり株価が下落する)可能性も高くなります。
ただし、必ずしも下落するわけではなく、今後も業績が好調とみられる場合は増担保規制対象となっても買いの勢いが衰えない銘柄もあります。

解除後の買い

増担保規制解除後は資金が流入してくる可能性があります。特に増担保規制によって株価が下落している場合には、規制解除によって株価が再度上昇する可能性があります。
ただし、こちらも必ず上昇するわけではなく、株価が乱高下することもあるので注意が必要です。

まとめ

増担保規制が発動したり、解除されたりすると株価が大きく動くことがあります。一般的に動きやすい方向はありますが、確実ではないので増担保規制を利用した投資をするなら十分注意して行いましょう。
また、増担保規制は株価の値動きに大きく影響するため、信用取引を行う投資家だけでなく、現物取引しか行わない投資家も注目するようにしましょう。

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よくある質問

Q

増担保規制が発動した銘柄はどこで見るの?

A

JPX日本取引所グループで日々公表されています。

参考:JPX日本取引所グループ「信用取引に関する規制等」

こちらの記事でも紹介しています。

【関連記事】増担保規制とは?解除条件や株価への影響について解説

Q

増担保規制が発動すると通常と比べていくら必要?

A

第1次措置(委託保証金率50%)から保証金率が段階的に上がっていき、第3次措置で委託保証金率90%まで上がります。

【関連記事】:増担保規制とは?解除条件や株価への影響について解説

Q

投資家にとって増担保規制のメリットは?

A

信用取引が多くなることによって株価の乱高下が起こることは望ましくありません。増担保規制は株価の大きな下落が起きないための投資家保護の観点もあります。

【関連記事】:増担保規制とは?解除条件や株価への影響について解説

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