がん保険を学ぶ

がんになった時に必要な治療費や制度、受けられる保障について解説

最終更新:2022/04/08 13:41

今や日本人の2人に1人はがんになると言われている程、がんは誰にとっても他人事ではありません。がんの治療と聞くと何を思い浮かべますか?抗がん剤治療や緩和ケアでしょうか。がんは怖い病気ですが、治らないものばかりではありません。そのため、大切なのは退院後の生活です。退院後の生活も変わりなく過ごせるよう、治療や制度、必要な費用や備えについて知っておきましょう。今回は治療や制度、受けられる保障なども含め詳しく解説していくのでぜひ参考にしてください。

手術療法

手術療法は、化学治療と放射線治療と共にがんの三大治療のひとつです。がん治療において第一に手術による切除を目指します。

がんの手術と聞くと、がんに侵されている腫瘍のみを切除するというイメージがあるかもしれません。しかし、実際は目には見えない転移をしているかもしれない周囲の細胞も切除します。そのため、切除ができればほぼ完治できることが手術療法のメリットです。しかし、白血病やリンパ腫などの血液のがんや、進行していてリンパ節転移をしているがんに手術はできません。また、外科手術であるため、身体にメスが入り、臓器や切除部位によっては機能障害になるリスクがある点はデメリットです。

手術療法にもいくつかの種類があります。食道・胃・十二指腸・大腸・膀胱などの小さな早期がんには、内視鏡手術や鏡視下手術などの低侵襲手術が可能な場合もあります。

内視鏡手術や鏡視下手術では細いカメラを挿入しモニターで術野を観察しながら、管の先端から器具を出し入れして切除する方法です。そのため、痛みなどの侵襲は少なく、回復も早い方法です。

実際にかかる費用

手術療法にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。手術方法はがんの部位や種類によって異なります。がんの治療別に必要となる費用をみてみましょう。

胃がん

「定型手術」「縮小手術」「拡大手術」といった3種類の手術方法があります。それに加えて、上記でも説明した比較的低侵襲な内視鏡や腹腔鏡手術などです。定型手術は、胃全体もしくは胃の3分の2を切除する手術です。縮小手術では、定型手術よりも小さな範囲を切除します。拡大手術では、胃とリンパ節周辺の臓器も切除します。費用は手術の種類にもよりますが、一般的に100〜150万円です。国民保険や社会保険により3割負担になったとしても30〜45万円が手術費用としてかかります。ただし、こちらは手術のみの費用であり入院費は除いた費用です。

大腸がん

「結腸がん」「直腸がん」「肛門がん」などの種類があります。できる部位によっては人口肛門(ストーマ)を造設する必要もあります。手術方法も内視鏡による切除術や開腹による手術など胃がん同様さまざまです。ステージによって、手術適応かどうかが決まり、部位によっても手術方法は変わりますが、検査などを除いた手術のみの費用で100〜160万円程です。3割負担したとしても30〜50万円かかります。

肺がん

肺は右と左に分かれており、右はさらに3つ、左は2つの部屋(肺葉)に分かれている臓器です。肺がんの場合も、早期の小さな腫瘍であれば腹腔鏡下手術という比較的低侵襲な切除術での完治を目指すことができます。しかし、進行しており腫瘍が大きい場合や、他の臓器に転移がある場合は、腫瘍のある肺葉を切除しなければなりません。また、転移している可能性のある周囲の血管や、転移のみられる臓器があれば、肺葉だけでなく臓器も切除します。たとえば、肺葉を切除する手術の場合の手術費用は約160万円です。3割負担にしても50万円以上がかかります。

肝臓がん

肝臓はエネルギーを生成する役割や有害な物質を解毒する役割、消化を助ける胆汁の生成などの役割を担う臓器です。また、肝臓がんのほとんどが肝炎や肝硬変などからがんに移行したものです。肝臓は切除してしまうと、人工肝臓などはありません。そのため、残された肝臓だけで多様な役割を担うことになり、切除すると機能が落ちるというリスクがあります。肝臓がんの特徴的な治療として、切除以外に「ラジオ波焼灼療法」という治療法があります。ラジオ波焼灼療法は切除ではなく、病変をラジオ波で焼いてしまうという治療です。切除術であれば、200万円以上、ラジオ波焼灼療法でも約150万円近くかかります。3割負担でも、60万円以上または、45万円近くかかります。

乳がん

乳がんは女性だけがなるものではなく男性もなる可能性がある病気です。乳がんを治療するための手術は、乳房の部分切除と乳房をすべて切除する手術があります。乳がんにおいても、部分切除なのかすべて切除するのかは転移の有無によって決められます。手術費用だけで言えば、部分切除の場合30〜40万円、全摘出の場合20〜50万円前後です。手術を行うにあたり腫瘍を小さくするための薬物療法や希望される方には乳房再建手術などもあるため、50万円以上はかかります。

子宮がん

子宮のがんは、できる位置によって「子宮頚がん」と「子宮体がん」の2種類あります。子宮頚がんの場合は、手術やレーザーで腫瘍を切除する方法が一般的です。進行していて取りきれない場合は手術療法以外の方法で治療します。子宮体がんの場合、手術適応となると子宮を摘出しなければなりません。早期の場合、妊娠を希望される方やすべて摘出したくないという方には、なるべく子宮を温存する「円錐切除術」という方法があります。しかし、進行していると全摘出や周辺の膣や卵巣、卵管も切除しなくてはなりません。円錐切除術であれば約25万円、周辺の器官まで切除する手術療法では約120万円が手術費用としてかかります。後者は3割負担でも36万円の負担になります。

上記の費用などは手術療法に必要な費用です。手術するにあたり受けなければならない検査や定期検診の費用も含めるとさらに高額になると考えられます。国民保険や社会保険により3割負担になったとしても、とても大きな出費です。しかし、がんのように手術などの治療で医療費が高額になった場合、活用できる公的な制度があります。

活用できる制度

がんなどの治療により、医療費が高額になった場合「高額療養費制度」という公的な制度を活用できます。高額療養費制度は、3割負担でも高額な医療費の一部を払い戻しできる制度です。払い戻しと言いましたが、高額療養費制度を活用しても一度は請求額を支払う必要があるため注意してください。また、適用されるのは1ヶ月での支払い限度額を超えた場合です。支払いの限度額は年齢や所得によっても変わり、適宜見直されているため確認が必要です。
高額療養費制度は、保険適用の治療または、処方箋により処方されている薬にのみ利用できます。たとえば、美容整形などは保険適用ではないため、高額療養費制度の活用はできません。先進医療の治療費、入院中の食事や差額ベッド代、病院までの交通費などは対象外になるため注意してください。

化学療法(抗がん剤治療やホルモン剤治療)

上記で、進行しているがんや転移がある場合は手術療法が適応ではないと言いました。手術により腫瘍を切除できない場合には「抗がん剤治療」や「ホルモン剤治療」などの化学療法により根治を目指します。また、手術療法や放射線治療とあわせて行うことも多くあります。化学療法は抗がん剤などの薬を使います。症状緩和や進行を遅らせる薬による治療を「薬物治療」といい、化学療法と薬物治療は区別されています。化学療法では、ひとつの抗がん剤だけで治療するのではなく、さまざまな種類の薬物を使用することがほとんどです。また、抗がん剤の多くは毒薬や劇薬などのハイリスク薬に指定されているものです。抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまいます。副作用として吐き気や脱毛、皮膚の変化など、見た目が大きく変わってしまうこともあります。

実際にかかる費用

化学療法では、副作用が現れる時期なども予想しながら投与スケジュールを決めて抗がん剤を投与していきます。一度の投与で治療が完了することはなく、投与期間と休薬期間があり治療は長期戦です。使う薬の量や種類は患者ごとに違うため、一概には言えませんが数万円から場合によっては100万円以上になる場合もあります。また、期間が伸びることや再発の可能性もゼロではありません。

医療保険での不足分をカバーできる

病気やケガをしてしまった際は医療保険により保障されますが、あくまで入院や通院時の治療費といった一時的な費用における保障であり、それ以外に継続して必要になる生活費や各種ローンには対応できません。また、医療保険の内容によってどれだけ保障されるかも異なるため、自己負担分が発生する可能性もあります。療養期間中に大幅に減ってしまう毎月の収入を補うための臨時収入として、就業不能保険が必要です。

活用できる制度

化学療法による副作用で見た目に変化がでる場合もあると説明しました。脱毛や皮膚状態の変化、目に見える変化はとても辛いものです。また、化学療法の副作用だけでなく、がんにより乳房を摘出された方やストーマを造設された方は、見た目の変化が大きく、自身を受け入れることができない方もたくさんいます。「見た目の変化はがんがよくなるためだから仕方ない」と言われても折り合いをつけることは難しいものです。そこで「アピアランス支援」というものがあります。多くの病院に見た目の変化を受け入れられるよう寄り添ってくれる支援スタッフがいます。単にウィッグなどをすすめるだけでなく、自身を受け入れられるように支援してくれる制度です。

放射線療法

がんの治療法として「放射線療法」というものもあります。放射線療法には2種類あります。身体の外部から、がん細胞に対し放射線を当てる「外部照射」と、身体の内部に放射線が出る物質を入れて照射する「小線源療法(内部照射)」です。外部照射は身体への影響も少なく外来で治療を受けることもあります。放射線治療の副作用は個人差が大きく、とても辛いと感じる人も入れば、まったく辛さを感じない人もいます。たとえば、吐き気やだるさ、食欲不振などは個人差が大きいでしょう。また、化学療法と同様に、脱毛などの皮膚症状も現れます。

実際にかかる費用

放射線療法の場合、実際にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。たとえば、肺がんで外部照射を30回行うという治療方針だった場合、外部照射にかかる費用は60万円以上です。照射の位置を決めるCTや検査なども含めると、80万円を超えます。3割負担で、24万円以上が必要です。

活用できる制度

放射線療法は、一般的には保険診療です。そのため、3割負担での支払いが可能です。高額な場合、高額療養費制度も活用できます。しかし、一部の放射線療法は先進医療として扱われ、保険適用外になる可能性があります。たとえば、内部照射の場合はがんの種類によっては保険適用外です。外部照射でも「強度変調放射線治療(IMRT)」という治療法やガンマナイフによる治療、粒子線を照射しての治療は保険適用外になる可能性があります。
上記での照射が最も有効だと確立されているがんには、保険適用である可能性が高いでしょう。また、費用や方針は病院によっても異なる可能性があるため医師に確認してみましょう。

先進医療

先進医療とは、効果が期待されている段階のまだ新しい医療技術による治療です。先進医療による治療の費用は公的医療保険の対象外となり、全額自己負担になります。治療についてはすべて自己負担になりますが、治療以外の検査や入院費などは保険適用です。治療に用いる医療機器や薬品が承認されている、もしくは、承認されていなくても人体への影響が少ないものは「第2項先進医療(先進医療A)」です。一方、承認されていないものを使用する場合でも条件によっては、保険診療との併用が可能な治療があります。また、承認を受けていても安全性や効果について観察や評価が必要なものもあります。これらは「第3項先進医療(先進医療B)」と分類されています。第2項先進医療(先進医療A)は子宮腺筋症や悪性脳腫瘍など24種類です。上皮性卵巣がんや卵管がん、原発性腹膜がんや肺がんなどは第3項先進医療(先進医療B)に含まれ、そのほかにも61種類あります。
先進医療による治療が必要な疾患は多く、先進医療を受ける確率もゼロでは無いことがわかります。

負担額はどのくらい?

上記でも触れましたが、先進医療による治療が全額負担になり、その他の検査や投薬、入院費などは公的医療保険が適用されます。医療機関によってもどの治療が先進医療となるのかは異なります。先進医療であることが認められていなかった場合は治療以外の費用も全額自己負担となってしまうため、注意が必要です。必ず説明を受け医師に確認した上で治療に同意しましょう。

保険診療との併用

保険適用外の先進医療と、保険適用の治療を組み合わせることは「混合診療」と呼びます。保険適用の治療は、安全性や効果が科学的根拠で裏付けされているものです。しかし、根拠に乏しいものを保険診療と併用できてしまうと、エビデンスが無いままの治療が一般的になってしまう危険があります。そのため、基本的には保険外診療と保険診療は併用できません。しかし、先進医療は効果が期待できるものであるため、厚生労働省が実施を認めていれば、保険診療との併用が可能です。

混合診療とは保険診療と保険外診療を組み合わせる治療のこと。
混合診療とは保険診療と保険外診療を組み合わせる治療のこと。

保険診療との併用

保険適用外の先進医療と、保険適用の治療を組み合わせることは「混合診療」と呼びます。保険適用の治療は、安全性や効果が科学的根拠で裏付けされているものです。しかし、根拠に乏しいものを保険診療と併用できてしまうと、エビデンスが無いままの治療が一般的になってしまう危険があります。そのため、基本的には保険外診療と保険診療は併用できません。しかし、先進医療は効果が期待できるものであるため、厚生労働省が実施を認めていれば、保険診療との併用が可能です。

自由診療

自由診療は公的医療保険の対象外であるため、全額自己負担になる診療です。たとえば、人間ドックや不妊治療、歯列矯正などは自由診療にあたります。身近なところでいうとインフルエンザの予防接種も自由診療のひとつです。自由診療の費用や内容は医療機関によってさまざまです。がんの治療にも自由診療によるものがあります。未承認の抗がん剤や、適応外の抗がん剤、薬剤の適用外投与、検査にも保険適用外の自由診療によるものがあります。医療機関や医師に直接確認しましょう。

負担額はどのくらい?

自由診療による治療を受けて、多額の治療費を全額自己負担することは大きな負担でしょう。そこで、実損填補型保険があります。実損填補型保険は損害保険で、火災保険も実損填補型保険のひとつです。実損填補型保険では、自由診療の費用も保障が可能です。また、限度額が決まっていることもありますが、治療内容によっては治療費すべてに保障がある場合もあります。

保険診療との違い

自由診療は、厚生労働省で承認されていない治療や薬を使う治療です。がんの治療は次々に新薬や新しい治療法が発見されています。そのため、最先端の抗がん剤治療などは未承認のものもあり、未承認の治療は自由診療にあたります。よって、治療の一部に自由診療による治療が組み込まれた場合、本来なら保険適用である治療費もあわせて全額自己負担となってしまうため、注意が必要です。

自由診療の場合(健康保険が適用される治療と適用されない治療)
自由診療の場合(健康保険が適用される治療と適用されない治療)

がん保険に未加入の際に必要な費用は?

がん保険に未加入で、3割負担で実際に払わなければならない費用の一例をみてみましょう。
たとえば、胃がんであれば、平均19.3日の入院が必要になります。入院費用は3割負担で平均28.9万円が必要です。その他のがんであっても20日近い入院で、20〜25万円程を負担しなければなりません。加えて、着替えなどのレンタル代や差額ベッド代も必要になるため、3割負担だとしても高額な医療費を支払う必要があります。

がんの種類 平均在院日数 入院費用(3割負担の場合)
胃がん 19.3日 約 28.9万円
結腸がん・直腸がん 18.0日 約 25.2万円
気管支・肺がん 20.9日 約 20.8万円
乳がん 12.5日 約 23.1万円

[出典]平均在院日数:「平成26年患者調査の概況」(厚生労働省)

もし、がん保険未加入でがんになってしまったらどうすればいいのか?

がん保険に入っていなければ、高額な治療は受けられないのかと心配になった方も多いかもしれません。実際は未加入でも大丈夫なケースもあり、公的な経済的支援を受けられる制度があります。しかし、例えば家族がいらっしゃる方や貯蓄が十分でない方の場合、治療・療養それ自体は公的制度でまかなえるかもしれませんが、その後の生活や家族のことを考えると、公的保険だけでは不十分である可能性が高いでしょう。
「もしも」の際のがん保険の保障と公的保険の保障、そしてがん保険の保険料の日々の支払いなどを考慮しながら、がん保険の加入について日頃から考えておくようにしましょう。
また万が一保険未加入でがんになってしまったり、「もしも」の際に諸々のお金が足りないなど費用が心配になった場合には、地域のソーシャルワーカーや病院のメディカルソーシャルワーカーに相談してみてください。

まとめ

がんの治療にはさまざまなものがあり、なかには高額なものもあります。もし自分や家族ががんになった時にどれぐらいの費用が必要になるかイメージできたでしょうか。公的制度を活用しつつも、それだけでは足りない場合は多いでしょうから、がん保険の加入もきちんと検討し、シミュレーション含めて一度専門家に相談してみると良いでしょう。

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