がん保険とは?
がん保険とはがんの治療に備えるための保険です。現代医療の進歩により、抗がん剤治療や放射線治療などがん治療は高額になることも。そんな治療費に備えるための保険ががん保険です。
がんにかかる治療費や手術方法、がん保険の主な保障内容、必要性を理解した上であなたにぴったりながん保険を見つけましょう。
がんにかかる割合と必要な費用
現代において、がんは身近な生活習慣病と言われています。がんにかかる可能性はどの程度あるのか。
もし、がんになってしまった場合に必要な治療について解説していきます。
2人に1人ががんにかかる
現代は2人に1人はがんにかかると言われている時代です。実際に、日本人の病気による死亡原因で最も多いのががんとなっています。
国立がん研究センターのがん情報サービス「がん登録・統計」の年齢階級別のがんにかかる割合は、女性の場合は40代から人口10万人に対して500人以上と年齢が上がるにつれて増えていきます。
男性は50代以降で急激に増えていき、60代では人口10万人対して2000人超え、70代では4000人近い人数になっています。
様々な種類のがんがありますが、男女によって亡くなる確率の高いがんは異なります。
男性の死亡者数が多いがんは肺がんが1位、続いて胃がん、大腸がん、肝臓がんと続きます。
女性の死亡者数が多いがんは大腸がんが1位、続いて肺がん、膵臓がん、胃がん、乳がんと続きます。
がんと診断されたとしても、命に関わるかどうかはがんになった部位や進行具合にもよります。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」によると、2006年から2008年にがんと診断された人の5年後に生存している人の割合は、全部位では62.1%でした。
部位別に見ると前立腺がん、皮膚がん、甲状腺がん、乳がんなどの生存率は9割以上でしたが、膵臓がん、胆嚢・胆管がんなどの生存率は3割以下でした。
がんの治療にかかる費用
がんの治療にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
がんの種類 | 平均在院日数 | 入院費用 | 自己負担額(3割) |
胃がん | 19.2日 | 985,154円 | 295,546円 |
腸がん・直腸がん | 15.7日 | 964,653円 | 289,395円 |
気管支がん・肺がん | 16.3日 | 843,677円 | 253,103円 |
乳がん | 11.5日 | 759,737円 | 227,921円 |
※出典:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査」
※出典:公益社団法人全日本病院協会「医療費(2019年度)」
どの部位のがんを治療するかによっても変わりますが、例えば、患者数が多い胃がんの場合、平均的な在院日数は20日程度で目安の支払総額は健康保険に加入していて3割負担の場合およそ30万円前後です。
公的な医療保険の制度で高度医療費制度を利用した場合、目安の自己負担費用は9万円前後になります。
がんができた部位の大きさ、手術の難易度によっても違いますが、平均的に入院日数は15日から20日前後、病院の窓口で支払う医療費は20万〜30万円前後が多いようです。
仮にがんにかかり働けなくなってしまった場合、会社員には公的な医療保険に「傷病手当金」があります。
これは病気や怪我で働けなくなった場合に最長1年6か月の間、給与の3分2を公的な医療保険から受け取ることができる制度です。
がんで働けなくなっても傷病手当金で一定期間は収入の保障はされますが、これに加えて保障を準備しておいた方がより安心です。
なお、自営業の方は公的な医療保険が国民年金になるので傷病手当金の制度はありませんので、がんにかかったときの生活費は自身で準備しておいた方が良いでしょう。
がん保険・がん特約の加入率
「がん保険への備えは気になるものの、みんながん保険に入っているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
がん保険や医療保険のがん特約の加入率は、男性全体は38.7%、女性全体は37.1%となっています。
20代の加入率は20%台と低いですが、30代以降は40%台で推移しています。また、40代では41.9%、50代では41.8%、60代では35.9%となっています。
40代や50代の加入率が40%台なのは、やはりライフステージの変化が大きいでしょう。結婚して子どもが生まれた場合、自然と40代以降は家族を養う存在になります。
そんな中、万が一のことがあると生活に不安がつきまとうもの。がんになったときに手術費や入院費を保障してくれるがん保険は心強い存在です。
60代で少し加入率が下がるのは、子どもが独立して手厚い保障がそこまで必要なくなったからと言えるでしょう。
とはいえ、35%の方が加入しているのを考えると「がんになったときの備え」としてがん保険が支持されていることが窺えます。
がん治療に備えるがん保険
がん保険はがんと診断されたら保障を受けられる保険です。支払対象はがんのみですが、入院や手術だけなく、診断や通院に対しても保障を受けられます。
先進医療や抗がん剤治療、放射線治療などもその対象に入っており、技術の進歩とともにその保障内容も幅広くなっています。また、入院や通院に対しての支払限度日数は無制限です。
がん保険はがんの治療に特化した保険です。再発すると治療期間が思っていたよりも長くなる可能性も。
また、通院で抗がん剤治療や放射線治療を行う場合は国の医療保険制度や民間の医療保険だけでは対応しきれなくなっている側面もあります。
したがって、がんが心配という方の検討に挙がるのではないでしょうか。
がんの三大治療
もしもがんと診断された場合、どのように治療が進んでいくのでしょうか。
がんの部位や進行具合によっても異なりますが、「手術療法」と「化学療法(抗がん剤治療やホルモン剤治療)」、そして「放射線療法」が主な治療法と言われています。
がんにおける三大治療法を解説していきます。
◆ 手術療法
手術療法とはがんの病巣や転移した箇所を手術によって切除する治療法です。
がん細胞を余すことなく取りきることができれば完治する可能性が高いですが、部位によっては臓器や体の機能が失われるというデメリットもあります。
◆ 化学療法(抗がん剤治療やホルモン剤治療)
抗がん剤やホルモン剤などの薬物によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えて再発を防ぐのが化学療法です。血液を通じて全身に薬が効くので、小さながん細胞にも効果のある治療法です。
◆ 放射線療法
放射線治療法とはがんの病巣に放射線を当ててがん細胞を死滅させる方法です。治療がうまく行けば、臓器の機能を温存させる可能性があるのがメリットです。
手術療法や化学療法と合わせて行われることもあります。
先進医療
がんの治療法は日進月歩で進化していますが、有効性や安全性で基準を満たした高度な医療技術を用いた治療法のうち、公的な医療保険の対象になっていない治療法を「先進医療」と呼びます。
がんの先進医療では、「陽子線治療」や「重粒子線治療」などが挙げられます。厚生労働省の発表資料によれば、陽子線治療は平均約270万円、重粒子線治療は平均約310万円程度になっています。
先進医療と公的な医療保険が適応される治療の併用は認められていますが、公的な医療保険の対象外なので先進医療による医療費は患者が負担することになります。
がん保険では「がん先進医療特約」をつけると、先進医療による治療費も保障を受けることができます。
保険会社にもよりますが、先進医療を受けるための交通費や宿泊費も保障に入っているケースもあります。
自由診療
そのほかがんの治療には自由診療があり、自由診療とは公的医療制度が適応されない治療を指しています。
先進医療は日本で有効性や安全性の基準を満たしていて、公的な医療保険の対象になっていない治療法を指していますが、「海外では効果が認められている抗がん剤や治療法」であっても日本の公的な医療保険の対象になっていなければ自由診療の対象となります。
自由診療も治療の選択肢に入れば、体質や希望に沿った治療法を選べますが、治療費は全額自己負担なので高額になってしまします。
海外で治療を受ける場合には渡航費や宿泊費なども加味しなければいけません。
加えて、自由診療を受ける場合、公的な医療保険が適応される治療の併用は禁止されています。
自由診療の治療費にがん保険で備えるならば、実際にかかる治療費の自己負担額を厚く保障するタイプのがん保険を選び、自由診療にかかる治療費も含めた治療費全体をカバーする方法や、自由診療が保障対象外になるがん保険の場合には診断給付金の給付額を高く設定することでカバーするなどの方法が考えられます。
がん保険の主な保障内容
それでは、がん保険を契約すると、どのような保障内容が受けられるのでしょうか。
給付金には「診断給付金(治療給付金・診断一時金)」「入院給付金」「通院給付金」「手術給付金」「放射線治療給付金」「抗がん剤・ホルモン剤治療給付金」「先進医療給付金」などがあります。それぞれ詳しく解説していきます。
診断給付金(治療給付金・診断一時金)
がん保険の診断給付金(治療給付金・診断一時金)は、がんと診断されたときに受け取れる給付金です。
医師からがんと診断された時点で保障が受けられます。
給付金の条件に「2年に1回」等の複数回に渡って保障が受けられるがん保険もあります。
複数回もらえるタイプであればがんの再発や転移にも備えることが可能です。
入院給付金
がんの入院給付金はがんで入院したときに入院日数に応じて受け取れる給付金です。
医療保険の入院保険は入院日数に制限があるのが一般的ですが、がん保険の入院給付金は1入院当たりの支払い日数や通算支払い日数に制限がないので、長期間に渡る入院にも備えられます。
通院給付金
がんの通院給付金は、治療のために通院したときその通院日数に応じて受け取れる給付金です。
昨今の医療技術の進歩により、入院を必要としないがんも増えています。入院が必要ないがん治療に備えることができる保障です。
手術給付金
手術給付金とは、がん治療のために手術を受けたときに受け取れる給付金です。
放射線治療給付金
放射線治療給付金とは、がんで放射線治療を受けたときに受け取れる給付金です。
抗がん剤・ホルモン剤治療給付金
抗がん剤・ホルモン剤治療給付金とは、抗がん剤・ホルモン剤治療を受けたときに受けられる給付金です。
先進医療給付金
先進医療給付金とは、がんで先進医療を受けたときにかかる費用の保障が受けられる給付金です。
がん保険と医療保険の違い
がん保険と医療保険の違い。それは医療保険が様々な病気やケガによる入院や手術への保障が受けられる保険に対して、がん保険はがんに特化した保険であることです。
対象ががんに限定されているがん保険は、がんと診断された際にがん診断給付金を受け取ることができ、また高度な医療に関しても保障が受けられます。
項目 | がん保険 | 医療保険 |
保障対象 | がん(悪性新生物・上皮内新生物) ※一部例外もあり |
病気(がんを含む)、怪我 |
主な保障内容 | 入院給付金 手術給付金 通院給付金 診断給付金(一時金) |
入院給付金 手術給付金 通院給付金 |
その他の保障内容(特約等) | 先進医療給付金 治療給付金 放射線治療給付金 女性特約 |
先進医療給付金 |
免責期間 | ほとんどの場合、90日間 | ほとんどの場合、なし |
1入院あたりの支払限度日数 | 30日・60日・90日等、制限あり | ほとんどの場合、無制限 |
通算入院支払限度日数 | 1000日・1095日等、制限あり | ほとんどの場合、無制限 |
加入制限 | 既往症に対して比較的容易 | 既往症に対して比較的難しい |
※詳細は各保険会社にお問い合わせください
また、最大の違いは医療保険の入院給付金が入院1回に対して「60日まで」や「120日まで」等の制限があるのに対して、がん保険には入院給付金の限度日数はありません。
もう一つ覚えておきたいのは免責期間の違いです。医療保険には免責期間がないことが多いですが、がん保険にはほどんどの場合「90日間」ないしは「3か月間」の免責期間が定められています。
がん保険で免責期間が定められているのは、保険の公平さを保つため。がんと診断される前に痛みやしこりなど自覚症状が出ていながらがん保険に入れば、保険会社は支払金の支払いリスクが高まってしまいます。
がん保険の保障期間は3か月の定めがあることを覚えておいて、「保障を受けたい期間よりも早めに加入すること」と理解しておきましょう。
がん保険の注意点
がん保険の大きな注意点は医療保険との違いにも出てきた「免責期間」です。
医療保険には免責期間が定められてない一方でがん保険には90日ないしは3か月という免責期間が定められています。申込日から3か月たたなければ保障を受けることはできません。
仮に免責期間中にがんと診断されてしまっても、支払金は払われないのです。
がん保険は公平性を保つために免責期間が定められていることを認識した上で、保障を受けたい時期を明確にして早めに加入することに留意しましょう。
また、がん保険を切り替える際なども申込日ではなく、保障期間がいつから開始なのかの確認が大事です。
公的医療制度との併用でより手厚く
がん保険の考え方ですが、まずは公的な医療保険制度を利用するのが最初のステップです。
公的医療保険制度を利用することで、がんになってしまった場合の経済的負担はある程度カバーが可能です。
公的な医療保険制度には「高額医療費制度」があります。
健康保険など公的な医療保険の対象となる医療費、自己負担分が高額になった場合には高額医療費制度により後で払い戻されます。
一般的なサラリーマンで月収28万円~50万円の場合、一月の医療費の自己負担限度額は9万円程度になります。
また、病気やケガで働けなくなった会社員には健康保険から支給される「傷病手当金」の制度もあります。
傷病手当金を受けるには、いくつかの条件があり、「仕事に就くことができなくなって連続する3日以上経つこと」などがありますが、最長1年6か月の間、受け取っていた給与額のおよそ3分の2の金額が支給されます。
これらの公的医療制度をベースとしつつ、がんへ備えるのがオーソドックスな考え方ではないでしょうか。
公的な医療保険制度だけではがんによる経済的な負担や不安を完全には払拭できませんから、治療費の自己負担額を減らしたり、収入が減ることに備えるためにがん保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
特に自営業などの国民健康保険に加入している人は傷病手当金の制度を受けられないのでがんへの備えが必要です。
がん保険の種類
がん保険には様々なタイプがあります。
定期型や終身型、掛け捨て型や貯蓄型。入院給付や実損保障など保障内容によっても種類が異なります。
それぞれのがん保険についてタイプ別に見ていきましょう。
保険期間での分類(定期型?終身型?)
がん保険の保障を受けられる期間によって定期型のがん保険と終身型のがん保険に分かれます。
終身型のがん保険は加入すれば保障は一生涯続きます。保険料も一定です。
定期型のがん保険は保障を受けられる期間が定められています。更新した場合には年齢が上がりがんへのリスクも上がるので、保険料も上がります。
加えて、定期型は60歳や70歳など一定年齢になると更新ができなくなる商品もあります。その年齢を超えてしまうと保障が受けられなくなるデメリットもあります。
定期型のがん保険は一定期間を保障するので将来の予測が立てにくい場合に見直しをしながら契約するタイプの保険と言えるでしょう。
終身型のがん保険の場合、保障は一生涯続くので若い内からがんに備えるための保険と言えます。
掛け捨て型?貯蓄型?
がん保険の多くは支払った保険料は掛け捨てとなり、給付金を受けるにはがんと診断されることが必要です。
がん保険の特約をつけたり、保険会社によっては貯蓄型でがん保険を契約することもできます。
例えば、「無事故給付金」や「健康祝い金」などの制度があるがん保険。がん保険の申請をすることなく一定期間を経過すれば給付金が受け取れるというもの。がんの保障も得ながら貯蓄ができる側面もあります。
保険料と給付金のバランスを見た上で検討をしてみてはいかがでしょうか。
単体型?統合型?
医療保険は入院や手術に対する保障が主です。がん保険はがんにかかった際の入院や治療への保障だけでなく、様々な保障が準備されています。
それらの保障を特約事項として単体で用意するのか。それとも、まとめることによって総合型のがん保険にするのかは、保険会社の商品にもよります。
単体型は特化した保障を受けられる一方でそれ以外の保障が受けられなくなります。総合型にすると自由診療などの治療に対応できない可能性もあります。
どちらのタイプにもメリット・デメリットが存在するのでニーズに合わせてよく吟味することが必要です。
保障内容による分類
がん保険はその保障内容によっても種類が変わってきます。
「入院給付型」「実績補填型」「診断給付型」「収入補償型」など様々なタイプがあります。
それそれのタイプについて見ていきましょう。
入院給付金型
入院給付型のがん保険は最も一般的ながん保険です。
がんで入院した際の入院給付金をベースに診断給付金や手術給付金で保障額が決まります。様々な特約が準備されているので商品数が多く保険期間や保険料払込期間をどう設定するかは慎重な検討が必要です。
入院給付型のがん保険は「どのようながんにかかるか分からないから、とにかくがんに備えたい」や「一生涯に渡ってがん保険による保障を受けたい」と考える方におすすめです。
実損補填型
健康保険の自己負担分の医療費や家族による介添え必要を補償するのが実損補填型のがん保険です。
自由診療の費用を補償する保険もあるので、「お金がかかっても最新の治療を受けて治したい」と考える方や「医療費だけでなく、治療にかかる諸経費の自己負担費を減らしたい」と考えている方に合った保険です。
診断給付金型
診断給付型のがん保険は入院給付金や手術給付金がなく、診断給付金のみを保障するがん保険です。
「まとまった貯蓄がないので、がんにかかったら入院や手術のためにお金が必要」と考える方や「がんにかかってもできる限り入院せずに治したい」と考える方に向いています。
収入保障型
がんにかかったとき、働くことができず収入が減ることに備えるのが収入補償型のがん保険です。
がんにかかると毎月年金の形式で保険期間が終了するまで給付金が支払われます。「がんの治療中に働けず収入が心配」という方におすすめです。
まとめ
様々な種類と保障内容が準備させているがん保険。現代人の多くがかかる可能性があると言われているがんですが、民間の医療保険制度とがん保険をうまく組みわせることによってそのリスクに備えることは可能です。
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