入院給付金と手術給付金とは?支払われる対象や支払いのパターンをわかりやすく解説

投稿日:2022/04/08 最終更新日:2023/03/17
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病気や怪我で入院や手術をしたときに備えて、医療保険には入院給付金や手術給付金という保障があります。支払われる対象や支払いのパターンなど、入院給付金と手術給付金について詳しく解説していきます。
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入院給付金とは?

入院給付金とは、医療保険に加入している際、病気や怪我で入院したときに支払われる給付金です。

入院に伴って発生する出費や入院中の収入減をカバーすることができます。
給付額は加入している医療保険によっても異なりますが、入院1日あたり5000円や1万円などが一般的です。
あくまで、病気や怪我の治療を目的にした入院に対してで支払われるもので、検査のための入院では支払われないことを覚えておきましょう。

入院時にかかる費用はどのくらい?どのような項目がある?

そもそも入院時にかかる費用はどの程度かかるものでしょうか?

公的医療保険制度の医療費の自己負担分、先進医療など保険が効かない医療費、差額ベッド代、食事代、入院生活中の日用品や衣類、家族お見舞いの交通費や食事代などの一般的に費用としてかかる項目や、入院時の自己負担金額の平均、医療保険に加入して入院給付金で準備しておきたい金額の相場を見ていきましょう。

医療費の自己負担分

そもそも、国の公的医療制度があるため、医療費の自己負担分は現役世代は3割負担となっています。
加えて、公的な医療保険制度のひとつに高額医療費制度があります。
高額医療費制度は医療費がかさんだとしても1か月の医療費の自己負担額に上限を設けるものです。

所得の区分 自己負担限度額(世帯ごと)
(区分ア)標準報酬月額83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)× 1%
(区分イ)標準報酬月額53~79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)× 1%
(区分ウ)標準報酬月額28~50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)× 1%
(区分エ)標準報酬月額26万円以下 57,600円
(区分オ)低所得者 35,400円

※あくまで一例です。詳細は各医療機関にご確認ください。

所得に応じても自己負担額は変わってきますが、月収28万円以上50万円以下の方は8万円程度。月収53万円以上79万円以下の方は16万円程度となっています。

万が一の病気や怪我での入院に備えて、この自己負担分に当たる金額は準備しておくのが賢明そうです。

先進医療などの、公的医療保険でカバーできない医療費

先進医療などの公的な医療保険制度でカバーできない医療を選んだ場合、その治療費は自己負担になります。

例えば、がんの重粒子線治療や陽子線治療などが該当し、1件あたりの治療額は200万~300万円台です。
貯蓄でこの先進医療の治療費を準備しておくのも手ですが、医療保険には先進医療特約があり、特約を付けることで先進医療の治療費に対しても保障を受けることは可能です。

差額ベッド代

入院時にかかる費用、差額ベッド代もその一つです。差額ベッド代とは4床以下の部屋で、面積が6.4平方メートル以上など、一定の条件を満たした病室に入院したときにかかる費用です。

種類 平均追加費用(1日あたり)
個室 7,828円
2人部屋 3,108円
3人部屋 2,863円
4人部屋 2,414円
平均 6,155円

※厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」より
※あくまで平均値です。詳細は各医療機関にご確認ください。

公的な医療保険制度の対象外なので個室や4人部屋以下を希望した場合には自己負担になります。
この差額ベッド代も自身で準備をしておいたほうがいい項目です。

食事代

食事代も入院時にはかかってきます。入院中の食事代の標準負担額は原則全国一律で決まっており、70歳未満の方が入院した場合、1食460円が自己負担になります。
また、住民税の非課税世帯の方など、所得区分によって負担が軽減されるケースもあります。

区分 食事代(1食あたり)
一般の方 460円
住民税非課税世帯の方 210円
住民税非課税世帯の方で
過去1年間の入院日数が90日を超えている方
160円
住民税非課税世帯の方で
かつ所得が一定基準に満たない70歳以上の方
100円

※詳細は各医療機関にご確認ください。

1日3食の場合は1,080円ほどがかかることを想定しておいたほうがよいでしょう。

入院生活中の日用品・衣類

入院中の日用品や衣類も自己負担することを見越してで準備をしていたほうがよい項目です。
病院によってはテレビを見るためのテレビカード代もかかってきます。
こちらもどの程度かかるかを計算しておいたほうがよいでしょう。

家族のお見舞いの交通費・食事代

家族がお見舞いに来てくれたときの交通費や食事代なども、もちろん自己負担の金額になります。
家族が遠方に住んでいた場合などは新幹線代や飛行機代などもかかってきます。
こういった項目に関しても自己負担になるので貯蓄や医療保険などで備えておくのがよいでしょう。

入院時の1日あたりの自己負担額の平均は約2万円、トータルでは10~20万円程度

公的医療保険制度の医療費の自己負担分、先進医療など公的医療保険制度でカバーできない医療費、差額ベッド代、食事代、入院生活中の日用品や衣類、家族お見舞いの交通費や食事代など、入院でかかる費用を計算していくとどうなるのでしょうか?

生命保険文化センター「平成28年 生活保障に関する調査」のデータを見てみましょう。
もちろん、傷病の種類にもよりますが、入院時1日あたりの平均額はおよそ2万円となっています。

入院1日あたりの自己負担額
入院1日あたりの自己負担額

また、入院をするとその間働けなくなるので収入がなくなってしまいます。
その逸失した収入を計算すると一日あたりでは2万4000円程度になります。
入院の平均日数は短くなっていますが、1回の入院で10~20万円の金額が必要になります。

入院1日あたりの自己負担額と逸失収入の総額
入院1日あたりの自己負担額と逸失収入の総額

もちろん、入院が長期化すればするほど、自己負担額と逸失収入の総額も高くなります。
入院期間別の自己負担額と逸失収入の総額を見てみると、平均入院日数を8~14日間と考えた時に、自己負担額だけで20万円、逸出収入も総額すると30万円近くとなっています。

入院日数別の自己負担額と逸失収入の総額
入院日数別の自己負担額と逸失収入の総額

これらの金額をどのように準備しているのでしょうか?
およそ60%の方が保険で準備しており、およそ40%の方が預貯金で準備していると答えています。

入院の自己負担額と逸失収入の充当方法
入院の自己負担額と逸失収入の充当方法

また、年齢別で見ると、1日あたりの自己負担額と逸失収入がもっとも大きいのは40代です。
30代の入院時の自己負担費用は2万2000円程度なのに対して、40代では2万5000円を超えており、50代は2万1000円で60代は1万5000円程度となっています。
働き盛りの世代はもしもの病気や怪我に備えて準備をしておいた方がよいと言えるでしょう。

年齢別の入院1日あたりの自己負担額と逸失収入の総額
年齢別の入院1日あたりの自己負担額と逸失収入の総額

入院給付金の金額はいくらに設定すべき?

病気や怪我での入院時に受けとることができる入院給付金、その金額はいくらに設定すればいいのでしょうか?

医療費でかかった項目をすべて入院給付金でまかなうのはあまり現実的ではありませんし、すべての負担を加味してしまうと保険料が高くなってしまいます。
医療保険で必要な項目は入院給付金で準備して、不足する金額が貯蓄でカバーするのがよさそうです。

入院一日あたりの自己負担額の平均はおよそ2万円であることを考えると、最低1日5000円の入院給付金を設定することを考えてみてはいかがでしょうか。
そして、家計に余力がある場合には差額ベッド代や予備の費用などを加味して家計に余力がある場合には1万円や1万5000円と上乗せしてもよいかもしれません。

入院給付金の支払いは、日額タイプと一括タイプがある

入院給付金の支払いには2つのパターンがあります。
入院日数に応じて支払われる日額タイプと、入院日数に関わらず一括で支払われるパターンです。

基本的には入院日数に応じて支払われるタイプが主になっています。
特約で入院日数に関わらず一括で支払われるパターンに変更することも可能な場合がありますが、保険会社によって変わってきます。この内容はしっかりと契約前に確認しておきましょう。

入院給付金の支払いの条件・制約は?

病気や怪我で入院したときに支払われる医療保険の入院給付金ですが、入院が長引いたときには、無制限に入院日数分だけ日額の支払いがなされるわけではありません。
入院給付金には支払いの制約があるのでその点も覚えておきましょう。

入院何日目から支払われるの?免責期間とは?

医療保険によっては免責期間が設定されており、入院給付金は規定の日数以上を入院しないと支払われないケースがあります。
「継続して5日間以上の入院」などと設定している場合もありますので、免責期間の設定については、保険を契約する前にしっかり確認しておきましょう。

入院給付金の支払い限度日数とは?

入院給付金には支払いの限度日数が定められているケースもあります。

入院給付金の支払限度日数
入院給付金の支払限度日数

支払限度日数は60日や120日などと設定されているケースが多いです。
同じ病気で再度入院した場合には180日以上の間隔が空いていないと1回の入院とみなされてしまうケースもありますので、入院給付金の支払い限度日数に関しても保険契約前にしっかりと確認しておきましょう。

手術給付金とは?

病気や怪我で手術を受けた際に医療保険に加入している方に支払われるのが手術給付金です。
どのような手術を受けたときに手術給付金が支払われるのか、支払対象や支払金額を見ていきましょう。

手術給付金の支払い対象になる手術とは?

手術給付金で支払いの対象になる手術は、公的医療保険に連動する約1000種類の手術と、保険会社が指定する88種類(89種類)の手術です。それぞれについて解説していきます。

公的医療保険に連動する約1000種類の手術

公的医療保険に連動する約1000種類の手術は、ほぼそのまま手術給付金の支払対象になっています。

個別の手術に応じて支払いの倍率は決まっているわけではなく、入院を伴う手術は20倍、外来手術は10倍など入院の有無によって決まっています。
例えば、開頭手術、四肢切断、脊髄腫瘍、心臓・肺・肝臓等の移植、がんの開胸・開腹手術、心臓手術等は40倍の倍率、といった形で決まっています。

保険会社が指定する88種類(89種類)の手術

保険会社が指定する88種類(89種類)の手術は、保険会社が手術給付金の対象となる手術を決めて、その手術ごとに支払いの倍率を決めているものです。
例えば、胃切手術は40倍、ヘルニア根本治療は10倍など、病気と手術の種類に応じて決まっています。

手術給付金の支払い対象にならない手術とは?

医療保険の手術給付金の対象にならない手術もあります。
治療を目的とした手術ではない場合と約款に記載されていない手術の場合です。

治療を目的としていない手術

治療を目的とした手術ではない場合には手術給付金は支払われません。
例えば、レーシックなどの視力回復を目的とした手術、美容整形上の手術、正常分娩をともなう手術、創傷処理、抜歯、異物除去術、魚の目、タコ手術後縫合などでは手術給付金の対象外です。

保険商品の約款に記載されていない手術

保険会社の約款に記載されていない手術も手術給付金の対象外です。
例えば、先進医療に含まれる手術などは手術給付金の対象にはなりません。
先進医療に含まれる手術を受けて保障を受けたい場合は、先進医療特約に加入することが必要です。

手術給付金の支払金額はどうやって決まるの?

手術給付金の支払金額には、手術ごとに給付倍率が10倍・20倍と決まるタイプと、入院ごとに給付倍率が決まるタイプなどがあります。手術給付金の支払い額について解説していきます。

手術ごとに給付倍率が決まるタイプ

手術ごとに手術給付金が決まっているタイプでは、胃切手術では40倍、ヘルニア根本手術では20倍、虫垂切除術で10倍等手術ごとに決まっています。以前の医療保険に多く見られるタイプです。

入院ごとに給付倍率が決まるタイプ

入院ごとに給付倍率が決まっているタイプは、1回の手術に応じて10万円など入院に応じて決まっています。
例えば、倍率が20倍の手術を受けた場合、入院日額5,000円で加入している方は、手術給付金は5000円×20倍で10万円です。
入院日額1万円円で加入している人は、手術給付金は1万円×20倍で20万円です。

支払い金額が上乗せされるタイプ

手術給付金では支払金額が上乗せされるタイプもあり、医療保険の特約をつけることによって、手術給付金の支払い額が上乗せされます。
例えば、高額ながんの治療費に備えて、上乗せする特約に加入しておくといった使い方も可能です。

手術給付金は何度でももらえる

基本的には、手術給付金は該当する手術をすれば何度でももらえるものです。
ある手術をして数年後に違う手術で入院したときにも、その都度、手術給付金はもらえます。
しかし、複数回もらえないケースもあるので注意が必要です。

手術給付金が複数回もらえない例外とは?

基本的に該当する手術を受ければ複数回もらえる手術給付金。複数回もらえない例外があります。
同一の日に複数回分の手術を受けた場合や、放射線治療などを複数回受けた際などが該当します。
どのような際にいくら手術給付金が給付されるかはしっかりと保険契約時の約款をみて確認しましょう。

どのタイプの手術給付金がある保険に加入すれば良いか?

医療保険の手術給付金、どのようなタイプに加入をしておけば安心でしょうか?
どちらの医療保険に加入するかについての考えを見ていきましょう。

88種類(89種類)のほうが該当手術の数は少ないものの、公的医療保険適用の手術に含まれない手術が含まれていたり、40倍の手術も含まれています。
適用範囲が狭くても倍率が高い手術が多めに含まれる医療保険にするか。高倍率の手術が少なくても適用範囲が広い医療保険にするかがカギと言えそうです。

ただし、現在の医療保険の主流は、公的医療保険制度の適用で手術給付金を払うものです。
88種類(89種類)に加入したい場合は商品は限られますので注意しましょう。

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入院給付金、手術給付金で注意点すべきポイントは?

入院給付金や手術給付金を請求するときに確認すべきことを見ていきましょう。

入院給付金、手術給付金の手続き・請求方法

入院給付金や手術給付金を請求するためには一連のステップがあります。
請求漏れをなくすためにも、手続きの流れとチェック項目について確認していきましょう。

手続き・請求の流れ

入院給付金や手術給付金を請求するには契約の内容を確認して、保険会社に連絡し、必要書類を提出して行きます。流れを確認しましょう。

まずは保険会社に連絡をします。その際には保険証券の番号と、保険対象者の指名、入院日などがあるとスムーズに行えます。そのあと、保険会社から請求に必要な診断書などの書類の案内が届きます。
それに記入して保険会社に送り返すと、保険会社の方で支払いの可否が判断され、支払いの対象となった場合には給付金を受け取ることができます。

入院給付金、手術給付金が支払われるタイミングは?

入院給付金や手術給付金はいつ支払われるのでしょうか。
請求は郵送で行う場合とオンライン上で行う方法とありますが、一般的には保険会社が受領してから5営業日以内に指定の請求口座に振り込まれるのが一般的なようです。
振り込みまでの日数については保険会社によっても異なるので、必要であれば契約をしている保険会社に問い合わせをするのが賢明です。

入院給付金、手術給付金に税金はかかるのか?

入院給付金や手術給付金に税金はかかるのでしょうか?
基本的に、個人がケガや病気を原因として生命保険から受け取る給付金は金額によらず非課税になります。課税さらない主な給付金としては、入院給付金・手術給付金をはじめ、通院給付金、障害保険金(給付金)、介護保険金(年金、一時金)、高度障害保険金(給付金)などがあります。

ただし、入院や手術で万が一亡くなってしまった場合には異なります。

亡くなってしまった場合の相続税

保険契約者が亡くなってしまってから、入院給付金を受け取った場合、保険契約者の相続財産になるので相続税の対象になります。
しかし、配偶者などの生計を共にする親族を給付受取人に指定している場合は相続財産とはみなされないので相続税の対象にはなりません。

亡くなってしまった場合の所得税

亡くなったあとに受け取った入院給付金は、所得税では非課税になります。
これは「保険契約に基づき支給を受ける給付金で身体の障害に起因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」(所得税法第30条より要約)として扱われているからです。

医療費控除の際の入院給付金、手術給付金の扱い

もう一点、注意しなければならないのは医療費控除を受ける際です。

そもそも医療費控除とは、1年間に10万円以上医療費を支払った場合に、確定申告をすることでその費用を所得から差し引くことできる、という所得控除の制度のひとつです。これを活用することで課税所得を小さくし、節税することが可能なのです。

医療費控除の計算式(所得が200万円以上)は以下のようになります。

  • 医療費控除額=その年払った医療費の総額ー「保険金などで補填される金額」ー10万円

(所得が200万円以下の人は、差し引く10万円の部分が「所得金額×5%」)

ここで見てわかるように、医療費控除を受ける際、「保険金などで補填される金額」を差し引く必要があります。これには入院給付金や手術給付金も含まれますので、給付金が一定額以上になると医療費控除を受けることはできなくなります。この点は注意が必要です。

まとめ

病気や怪我で入院したり手術をした際に支払われる医療保険の入院給付金と手術給付金。
これらの内容についてしっかりと理解した上で、自身に合ったピッタリの医療保険に加入しましょう。

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