医療保険の通院保障とは?
通常の医療保険は入院したり、手術を受けたときに保障が受けられますが、医療保険には通院治療の際に「通院給付金」が支払われる「通院保障」という特約もあります。
医療保険の通院保障の内容や、通院保障を検討するときのポイントなどについて詳しく見ていきましょう。
通院保障の保障内容
医療保険の通院保障は、入院前後で通院治療した際への保障になります。病気や怪我で入院する前後に病院に通う際の費用について保障が受けられます。
項目 | 例 |
月額保険料(30歳男性) | 3,700円 |
入院給付金(日額) | 10,000円 |
通院給付金(日額) | 5,000円 |
通院保障内容 | 入院前60日、退院後120日の間で最高30日まで保障 (入院の原因となった病気・怪我の治療を目的として通院したとき) |
※あくまで一例です。詳細は各保険会社にお問い合わせください。
例えば、30歳男性で入院給付金の日額が1万円で、月額の保険料が4000円前後の終身払いでは、通院給付金は5000~6000円前後なのが一般的なようです。
ただし、通院保障を受けられる期間は最高30日、入院前の通院は60~180日となっていたり、退院後の通院は120~180日となっているケースが多いようです。
入院給付金の日額やその期間などの保障内容、保険料などは、保険会社の商品によって異なるので確認をしましょう。
通院給付金が支払われるタイミングは?
医療保険の通院給付金はどんな病気や怪我で通院したときにも支払われるわけではありません。
通院給付金は、基本的には入院給付金が支払われる入院をした場合に、退院後の通院に対して保障が受けられます。一部の医療保険では、入院前の通院も通院給付金の対象にしているものもあります。
「入院すること」が通院給付金の保障が受けられる条件と覚えておきましょう。
通院給付金が支払われるタイミングは、退院の翌日から120日以内または180日以内の通院で通院給付金が支払われる限度日数は30日となっているのが一般的です。
限度日数が30日と限られているので、退院後に長期間通院しなければいけない病気や怪我の場合には十分に対応できない可能性があることは認識しておきましょう。
最近は通院治療が増えている?
通院給付金の必要性を考えるとき、昨今の医療がどのように変化しているかは確認しておきましょう。
平成26年度(2014年)の厚生労働省「患者調査」によると、入院前通院の割合は、1990年代は70%台でしたが2010年代には80%を超えています。
平成8年には77.1%、平成11年には78.5%、平成14年には80.4%、平成17年には81.7%、平成20年には82.5%、平成23年には83.5%、平成26年には84.8%,平成29年には86.3%となっています。
また、退院後の通院割合は1990年代から83%前後で推移しています。
平成8年には83.5%、平成11年には83%、平成14年には83.9%、平成17年には83.1%、平成20年には83.8%、平成23年には84%、平成26年には84.9%、平成29年には85.1%となっています。
入院をする前に通院している患者の割合が増えていると言えるでしょう。
昨今、医療技術の進歩により入院日数が短くなってきていますが、これまでは入院時に行っていた一部の治療や検査などが、入院前の外来や往診で可能になってきたことが理由の一つでもあります。
つまり、入院前に通院する割合が高まっていますので、通院保障は必要性が増している保障と言えます。
医療保険の通院保障は必要?
医療保険の通院保障を検討する際には、気をつけたいポイントが2点あります。
「通院を伴う可能性のある病気に留意すること」と、「通院給付金の一般的な設定額を認識しておくこと」です。それぞれについて見ていきましょう。
通院をともなう可能性のある病気とは?
通院保障を考える際に、退院後にどの程度通院するかを確認しておきましょう。
厚生労働省の平成29年度(2017年)「患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は平均29.3日程度で、退院後に通院する割合は85.1%となっています。
傷病分類 | 退院患者の平均在院日数 | 退院後に通院する割合 |
全体 | 29.3日 | 85.1% |
がん(悪性新生物) | 16.1日 | 84.8% |
糖尿病 | 33.3日 | 87.4% |
心疾患 | 19.3日 | 86.5% |
※出典:厚生労働省「平成29年度患者調査」
疾病別に見ると、がんなどの悪性新生物の退院患者の平均在院日数は16.1日、退院後に通院する割合は84.8%、糖尿病では平均在院日数は33.3日、通院する割合は87.4%、心疾患では平均在院日数19.3日、通院する割合は86.5%となっています。
多くの病気で20~30日程度入院して、退院した後も8割強の方が通院していることを覚えておきましょう。
通院保障の給付金額はいくらくらい?
通院給付金の日額の給付金額はどうなっているのでしょうか?
一般的な医療保険では、日額3000円になっているケースが多いようです。ただし、医療保険ごとによって設定可能な日額の給付金額は変わり、3000円~1万円の範囲で設定も可能です。
通院一時給付金の保障がある医療保険では、通院での給付金以外に一時金を受け取ることも可能です。
退院後に療養給付金がある医療保険もあり、退院したときに生存していれば給付金を受け取れます。この場合、通院の有無は給付には関係ありません。
通院保障を考える際には医療保険の主契約の保障がどうなっているか。その上で、通院する可能性についてと、通院する際にどの程度費用が掛かりそうかを試算して検討しましょう。
がん保険の通院保障とは?
がん保険にも通院保障の特約があります。がん保険の通院保障について詳しく見ていきましょう。
がん保険の通院保障は大きく3種類
がん保険の通院保障には、大きく分けて「通院給付金」「治療給付金」「退院療養給付金」の3種類があります。それぞれについて見ていきましょう。
通院給付金
がん保険の通院給付金はがんの治療で通院したときに、その通院日数に連動して支払われる給付金です。
一般的な医療保険の通院給付金よりも支払対象日数は多いですが、支払条件は保険会社によって異なります。
また、がんの治療費は高額で通院が長期化することも多いため、通院保障が手厚くなっています。
治療給付金
がん保険の治療給付金はがんにかかったときに、入院の有無に関わらずがんの治療を行ったときに支払われるのが治療給付金です。
がんの治療は、放射線治療や抗がん剤治療、ホルモン剤治療などがありますが、それぞれの治療を行ったときに1か月~2か月ごとに治療給付金が支払われます。
しかし、先進医療による治療な場合、先進医療にかかる費用は全額患者自身が負担することになります。先進医療の費用を保険でカバーするにはがん保険や医療保険に「先進医療特約」を付加する必要があります。保証範囲は保険会社によって異なりますが、基本的に先進医療にかかる治療費における一定の金額まで支払われます。
がん保険に既に加入しており、「先進医療特約」を付加したい方は契約の見直しをしましょう。
退院療養給付金
がんの治療で入院して退院するときに給付を受けられるのが、退院療養給付金です。
一時金としてまとまった金額を受け取れるので、退院後の治療や生活費に備えることができます。
がん治療も、入院より通院治療が増えている
昨今のがん治療の流れについても抑えておきましょう。
以前のがん治療は、「病巣を外科手術で除去するために入院して手術をする」治療が主でした。現在でもその流れ自体は変わっていませんが、どの部位ががんに疾患したのか、また病巣の状況などに応じて、放射線治療や抗がん剤治療、ホルモン剤治療なども合わせて治療することも増えています。
放射線治療や抗がん剤治療のみで治療するケースや、かつては入院して放射線治療や抗がん剤治療を行っていたのが、昨今の医療の進歩により通院による治療が増えています。
2016年の厚生労働省の「我が国の保険統計」によると、外来治療と入治療を比べたとき90年代は入院治療が多いですが、2000年代後半に逆転し、2010年代ではがん治療は外来の方が多くなっています。
がん保険の通院保障は必要?
がんの治療は入院を伴うケースから通院への治療が主になりつつあります。
がんの種類や状況に応じて治療法は異なってきますが、放射線治療や抗がん剤治療は一定期間内に通院して複数回の治療を行う治療です。
治療回数が増えればその分、通院日数も増えて、医療費の自己負担分も重くのしかかってきます。
がんの治療は一般的な病気や怪我での入院と比べて、費用がかかるものなので、通院保障を付けておくと、がん治療中の医療費の負担や生活費の負担も軽減されるでしょう。
特にがん保険の通院保障は、がんの治療を受けていると給付を受け取られる治療給付金が重要になるでしょう。治療給付金は「治療を受けている」ときに保障が受けれるのがポイントです。
がん保険の通院保障のポイント
では、がん保険の通院保障を検討する際に注意するポイントはどこにあるでしょうか?
最も大きいポイントは、どの治療法まで対応しているのか、という点でしょう。がん治療は、「手術療法」「放射線治療」「化学療法」の三大療法が主流となります。前述のように、その中でも近年は放射線治療や、抗がん剤を使った化学療法が重要性を増しています。その場合は通院のみで治療することもあるでしょう。そのため、通院給付金や抗がん剤治療給付金、放射線治療給付金など、それぞれの支払い条件や頻度を確認し、三大療法に対応できるようしておくと良いでしょう。
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通院保障以外で対策する場合
通院保障の要件は「入院を伴った治療で退院したあとの通院」となっているケースも多いです。
入院を伴わないと給付がされないのが通院保障のデメリットですが、がんの治療のために通院しているときの医療費を抑えるためにはいくつか方策があります。
傷害保険や傷病手当金、就業不能保険・所得補償保険など、それぞれについて見ていきましょう。
傷害保険
入院を伴わない通院にも保障が受けられる保険として、傷害保険があります。
怪我に対して保障がなされますが、多くの傷害保険は外来事故などにより怪我をして通院した場合に通院保障金額を支払うものとなっています。
ただし傷害保険は、「急激性」「偶然性」「外来性」の3条件を満たした「ケガ」のみを対象とする保険です。例えば、自分に瑕疵のない(飲酒運転や無免許運転でない)交通事故によるケガは対象になりますが、運動のしすぎによる疲労骨折や、がんなどの病気は対象外になります。医療保険による通院保障とは、その点で決定的に違うため注意が必要です。
傷病手当金
サラリーマンの方が加入する健康保険組合には、傷病手当金があります。
傷病手当金は、業務外の事由による傷病かつ療養中で3日以上に渡って働けない場合に手当が受けられます。傷病手当金の注意点としては、条件がいくつかあることや、公的制度のため保障が不十分である可能性があることなどが挙げられます。
がんに疾患して働けなくなり通院した場合には傷病手当金の支給条件になっているかどうかを自身が加入している健康保険組合に確認をしたり、傷病手当金でどのくらい収入の不足分をまかなえるか考えておきましょう。
就業不能保険・所得補償保険
がんの治療のために、働けなくなったときには就業不能保険や所得補償保険で保障を受けることもできます。
就業不能保険は病気や怪我で就業不能になったときに給付金を受け取れます。所得補償保険も、働けない状態になったときにその収入源を補う保険です。ただその一方で、免責期間があるためその期間は保険金がおりない、などといった注意点もあります。
がんでの通院に備える際には、これらの保険も検討するとよいでしょう。
まとめ
通院保障は病気や怪我で入院し、退院したあとの通院に備える保障です。
ただし、入院を伴わない通院は保障の対象外であるケースが多いので、あくまで入院が必要でその後も定期的に通院する病気への保障として位置づけた方が良いでしょう。
公的な医療保険やその他の保険も検討しながら、自身に合った保険を選びましょう。
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