株式を学ぶ (実践編)

積立投資の新しい形「バリュー平均法」とは?ドルコスト平均法との違いについても解説

最終更新:2021/07/01 18:02

資産形成に欠かすことの出来ないのが、積立投資です。積立投資といえば、多くの人は「ドルコスト平均法」による効果を挙げるでしょう。 I-O ウェルス・アドバイザーズ代表取締役社長の岡本和久さんは、ドルコスト平均法よりもさらに効率的な資産形成が可能になる「バリュー平均法」を提唱しています。そのポイントは何か、話を伺いました。

 
「自分でやさしく殖やせる確定拠出年金最良の運用術」という新しい本を出されましたが、そのなかでバリュー平均法という積立方法を提唱していらっしゃいます。まずはドルコスト平均法との違いを簡単に説明していただけますでしょうか。

I-O ウェルス・アドバイザーズ
代表取締役社長 岡本 和久氏
岡本氏

ドルコスト平均法というのは、たとえば投資信託のように値動きのある資産に投資する場合、毎回一定金額で購入し続けていくことで得られる効果です。
具体的に言うと、ドルコスト平均法の場合、一定金額で買い付けていきますから、価格が安い時にはより多くの口数が買えますし、逆に価格が高い時には買える口数が少なくなります。価格は常に変動していますから、これを繰り返していくうちに、相対的に安い価格で買える口数が多くなり、買付単価を下げることができます。
これに対してバリュー平均法というのは、毎回同じ金額で買い付けていくのではなく、マーケットの変動に合わせて買付金額を変動させていきます。たとえば、価格が下がった時は買付金額を増額し、価格が上がった時には買付金額を減額するのです。この方法で積み立てることによって、積立投資の効果をより一層高められるのです。

ドルコスト平均法とバリュー平均法の違い
 
ドルコスト平均法は万能ではないということですか。
岡本氏

ドルコスト平均法がダメだというつもりはありません。ドルコスト平均法は自動的に定額購入していくので、手軽に誰でも資産形成の第一歩を踏み出すことができます。初めて投資にチャレンジしてみようと考えている方にとっては、分かりやすいという点が魅力ですし、私もそれをお勧めします。
ただ、徐々に慣れてくると自動的に買い付けられていくことに、もうひとつ「投資をしている」という実感を持てない方もいると思います。そんな方にはバリュー平均法はお勧めです。簡単な計算を自分で行い取引額を算出し、発注する。しかも、フォーミュラ投資なので相場観はいらないのです。そして、パフォーマンスもドルコスト平均法を上回る可能性が高い。つまり、自分が付加価値を加えていることが実感できるのです。
ドルコスト平均法は非常に優れた手法ですが弱みもあります。最終的に少しでも価格が上昇しないと、十分な効果が発揮されないのです。
たとえば、日本の株式市場は1989年12月に、日経平均株価で3万8,915円という最高値を付けた後、長期にわたって低迷しました。この間、配当込の東証株価指数(TOPIX)を用いて、2014年2月まで毎月1万円を投資した場合で計算すると、平均の買付単価は実際の価格を約15%下回っています。これは2013年のアベノミクス相場の効果が大きいのですが、TOPIXの水準が、ピーク時に比べて45%も下にいることを考えれば、十分に効果を発揮したといえるでしょう。 でも、1989年末からドルコスト平均法による時価がその時の平均買付コストを上回っていたのは全体の四分の一程度です。つまり、四分の三の期間で「水面下」にあったのです。一方、バリュー平均法を実施していたとすると「水面下」にあったのは43%のみです。
相場の先行きは誰にも分からない以上、「万能」という方法はありませんが、安いときにより大きな金額を、高いときにより少ない金額を投資するバリュー平均法は、相場の水準に関係なく一定額を投資するドルコスト平均法よりも良い成果を上げる確率が高いということは言えると思います。

具体的に、バリュー平均法で積立投資をする場合は、どうすれば良いのですか。
岡本氏

バリュー平均法の場合、まず「バリュー経路」といって、時価評価した際の積立の目標累計額を決める必要があります。
たとえば毎回10万円ずつ、5回にわたってバリュー経路を増額させるとしましょう。最終的なバリュー経路の累積額は50万円となります。そして、積立は3カ月ごとに行うことをお勧めしています。
この場合の事例を一覧表にしてみました。これに沿って説明していきましょう。
1回目のバリュー経路は10万円ですから、仮に1口1万円だとしたら、10口を買い付けます。2回目の時、価格が1口1万2,500円になっていたとすると、時価評価額は12万5,000円。そして2回目のバリュー経路は20万円ですから、実際に買い付ける額は7万5,000円になります。ということは、買付口数も6口で済みます。
このように、3回目は30万円、4回目は40万円というようにバリュー経路を増額させ、それに見合うだけの口数を買い付けていきます。
そして5回目。この時点では時価残高が53万3,000円になっており、バリュー経路の額である50万円を3万3,000円分、超過しています。この場合は3万3,000円に見合う口数を売却します。バリュー平均法の特徴は、このように時価残高がバリュー経路を上回った時には、売りも組み合わせるということです。結果として45万6,667円を投資して時価が50万円のポートフォリオを保有したことになります。そして、売却代金はリザーブ資金として、価格が下落したときに買い付け代金として充当します。

バリュー投資法の事例

仮に、これを同じ積立をドルコスト平均法で行うと、平均の買付単価は9,749円。これに対して、事例に挙げたバリュー平均法だと9,140円になります。つまり、ドルコスト平均法を大きく下回る買付単価を実現できるのです。

バリュー平均法に死角はありませんか。
岡本氏

いろいろな値動きのパターンを検証したのですが、ほとんどすべての局面において、バリュー平均法の方が、ドルコスト平均法よりも高い投資効果が認められています。ただ、いくつか問題点があるのも事実です。主なものを少し紹介します。

第一に手間がかかること。ドルコスト平均法なら、自動的に銀行口座からの引き落としで、定時定額購入が出来ますが、バリュー平均法の場合だと、自分で計算して購入していかなければなりません。もちろん、買付タイミングは三月に一回をお勧めしているので年に四回だけ簡単な計算をして発注をするということなので少し慣れればそれほど負担になることはないでしょう。その分、パフォーマンスが向上する可能性が高いわけですからね。
第二に、売りに対する心理的な抵抗があること。資産形成をする場合、やはり継続的に買っていくことがベースになりますから、前述したように、時価残高がバリュー経路を上回ったからといって、超過分を売却するということについては、どうしても抵抗感があるようです。ただし、ここでの売りについては、売却によって生じたキャッシュを費消するのではなく、将来、価格が低下した時の追加資金としてリザーブ口座に貯めておくのです。将来の投資資金だと考えれば抵抗感も薄らぐのではないでしょうか。
第三は、価格が下がった時に投じる資金量が増えること。ドルコスト平均法の場合は、常に一定額で買うので資金計画が立てやすいのですが、バリュー平均法の場合、価格が下がるほど投入する資金量が増えていきます。そのため、予想外に大きな金額を投入しなければならないケースも想定されます。これは、月々のお給料の中から積立資金を出している人にとっては、厳しい状況になる恐れがあります。これに対して私は毎回の投資額にキャップを付けることなどで対処できると考えています。
その他にもまだ研究課題は多いので今後もさらにこの手法を検証していきたいと思っています。
この手法はドルコスト平均法よりは少しだけ慣れが必要ですから、ある程度、投資に習熟した方のための手法だと言えるでしょう。ですから、いきなりバリュー平均法で積立を行うのではなく、まずはドルコスト平均法で積立投資を始め、慣れたら徐々にバリュー平均法を試してみるのが良いと思います。

今後のマーケットを考えると、恐らく長期間にわたって、上下に大きくぶれる局面が出てくるはずです。景気回復期待はマーケットにとってプラスであり、価格は上昇する可能性が高まりますが、同時に流動性の縮小、金利が上昇に向かうなどすれば、株式市場にとってはマイナス要因です。株価が大きく下げることも考えられます。このように、マーケットのぶれが大きくなると想定される局面では、バリュー平均法による積立投資が極めて有効です。

ドルコスト平均法にしても、バリュー平均法にしても、結局のところ投資につきものの価格変動リスクをいかに軽減させるかという点に尽きると思うのですが、なかにはそもそもリスク資産での運用を忌避してしまう人もいます。少しでも投資に対する抵抗感を軽減するためには、どうすれば良いでしょうか。
岡本氏

たとえば確定拠出年金でも、株式などのリスク資産には一切投資せず、専ら定期預金のみで運用している人も多いものです。恐らく将来に対する不安感は強いものの、一方でリスク資産による運用も不安で、どうしたら良いのか分からないというケースです。
その場合は、何も大きな金額で投資する必要はありません。でも、とにかくほんの少しだけでも、投資に資金を振り向けてみると良いでしょう。たとえば、金額を定期預金で運用しているならその1割程度を株式に投資するのです。そうすれば、仮に株式部分の評価額が半分になったとしても、ポートフォリオ全体で見た場合の損失は5%程度で済みます。この程度の損失なら、十分にリカバリーが効きます。
なお、この場合、どのような株式を持てば良いのかという点も重要になると思いますが、特定の国、特定の産業、特定の企業に投資するのではなく、グローバルな株式インデックス運用のファンドなど、世界中の主要な産業・企業に分散投資している投資信託を選ぶのが良いでしょう。それならば、世界の市場の一部分だけに投資するのに比べて、価格変動リスクは比較的小さく抑えることができるはずです。
ちなみに私は、物価連動国債とグローバル株式インデックス・ファンドの2つの資産の組み合わせだけで人生を通じての資産運用はほとんど用が足りると思っています。

物価連動国債とは、消費者物価指数の動向に応じて債券価格が変動するタイプの国債です。現時点ではまだ個人向けは出ていませんが、来年には個人向けも登場する予定です。また、投資信託の中には、物価連動国債を組み入れて運用するタイプがあります。これを保有しておけば、インフレリスクは基本的にヘッジできますし、これにグローバル株式型の投資信託を組み合わせれば、インフレ・ヘッジに加えて、世界経済の実質成長によるプラス・アルファのリターンも期待できます。世界経済は年3〜4%で成長しているのですから、全世界の株式に投資をしておけば、その前後のインフレ率を上回るリターンは、期待できるはずです。

リスク資産と安定資産の組み合わせは、年齢によっても異なると思いますが、具体的に、年齢別でどのような投資配分比率を考えれば良いですか。
岡本氏

これもあまり難しく考える必要はないと思います。たとえば20代、30代の若いうちはリスクが取れるので、グローバル株式投信に8割、物価連動国債に2割という配分でも良いでしょう。これが、40代、50代になったら、それぞれを半々にして、60歳以降70歳までは物価連動国債を8割、グローバル株式投信を2割というように、ある程度、安全性を重視した比率にします。
そして、70歳を超えたら、ボケ防止も兼ねて、脳トレ投資をすることをお勧めします。異なる業種で5銘柄程度を保有しておき、株主総会に出席したり、あるいは業績などをチェックしたりすれば、老後の楽しみにもなります。最低単位の買付でもいいのです。配当金で温泉旅行に行くのも良いですし、孫に株主優待をあげるというのも良いでしょう。70歳以降は、楽しさというリターンを得る株式投資をテーマにしたいですね。

岡本 和久(おかもと かずひさ)氏

ファイナンシャル・ヒーラー R
CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長

岡本 和久氏

慶應義塾大学経済学部卒。大手証券会社のニューヨーク現地法人、情報部などで証券アナリスト・ストラテジスト業務に従事、1990年に、バークレイズ・グローバル・インベスターズを設立、、2005年まで 15年間代表取締役社長として年金運用業務に携わる。2005年5月、個人投資家向け投資セミナーを行うI-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社を設立、代表取締役社長に就任。現在、同社でマンスリー・セミナー、DIY 資産運用教室などを開催する傍ら、長期投資家仲間によるクラブ・インベストライフを主宰。

著書に『瞑想でつかむ投資の成功法』(総合法令)、『100歳までの長期投資*コア・サテライト戦略のすすめ』(日本経済新聞出版社)、『長期投資道』(パンローリング)、『老荘に学ぶリラックス投資』(パンローリング)、『親子で学ぶマネーレッスン』(創成社)など多数。

日本証券投資顧問業協会理事、同協会副会長兼自主規制委員会委員長、投資信託協会理事、日本CFA(Chartered Financial Analyst)協会会長(現在、名誉会長)などを歴任。米国カリフォルニア大学バークレー校、ハース・ビジネス・スクール、アジアビジネスセンター・アドバイザー。経済同友会会員。

 

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