株式投資でよく耳にするキーワードに、グロース株とバリュー株があります。株式投資を始める際に知っておきたいグロース株とバリュー株とはどんなものなのか?どちらがおすすめなのか?その代表的な銘柄や見分け方、メリット・デメリットについて解説していきます。
グロース株(成長株)とは?
グロース株とは、成長株とも呼ばれ、将来業績の伸びや成長が期待されている銘柄のことです。売上高や経常利益が年々増加傾向にあり、成長性のある企業が該当します。「テーマ株」と言われる将来性があって今後成長していく企業は、グロース株に当てはまりやすいです。近年だとAIやメタバース、自動運転、5Gなどは、テーマ株として期待されている銘柄が多い分野となっています。
グロース株を見つけるには、現在の業績だけでなく「新商品の発売」「新事業の展開」といった情報収集をして、将来の成長性を予測する必要があります。
日本における代表的なグロース株銘柄とは?
日本における代表的なグロース株の銘柄は、以下をご参照ください。
銘柄名 | 市場 | 特徴 |
ファーストリテイリング | 東証一部上場企業 | 2000年には2,000円台だった株価が、2021年には10万円を突破。圧倒的な成長力を誇る。 |
任天堂 | 東証一部上場企業 | コロナ禍でも成長を続ける。2021年10月にNintendo Switchの有機ELモデルを発表。現在も新しい技術やゲームを提供し続けている。 |
また、近年では以下の銘柄もグロース株として挙げられます。
- BASE…個人や小規模事業者向けのECサイト「BASE」の運営
- 株式会社メドレー…オンライン診療システムMEDLEYといった医療プラットフォーム事業を展開
コロナ禍において、ECやオンラインプラットフォーム関連企業の業績が大きく飛躍しています。
他には日本発メガベンチャーのエムスリー(2413)、海外に目を向ければアップル(AAPL)やテスラ(TSLA)などのいわゆる巨大IT企業もグロース銘柄に分類されます。
バリュー株(割安株)とは?
バリュー株とは、企業の業績や価値と比べて、現在の株価が割安になっている銘柄のことです。企業の売上高が好調であるにもかかわらず、投資家からの人気が低いために株価が割安になっている場合があります。
バリュー株には、すでに成長を遂げ安定期に入った成熟産業や大企業が多く該当する傾向があります。
代表的なバリュー株銘柄とは?
新型コロナウイルス感染症の影響によって、優良株の株価が軒並み下落しています。本来であれば成長を続けると予測されていた銘柄の株価が下がり、バリュー株となっているケースが多く見られています。
2022年2月時点の日本における代表的なバリュー株の銘柄については、以下をご参照ください。
銘柄名 | 市場 | 特徴 |
トヨタ自動車 | 東証一部上場企業 | コロナ禍の影響で2021年は株価が大きく下落。しかしハイブリッド車や電気自動車の開発に力を入れているため、今後は業績が回復し株価も順調に上がると推察される。そのため、2015年の水準とさほど変わらない今の株価は割安といえる。 |
三井不動産 | 東証一部上場企業 | 不動産業のほか、ホテルや商業施設など多角的に運営する総合不動産の大手企業。2021年は商業施設やホテルの稼働率が芳しくなかったため業績が悪化したが、今後は回復傾向にあることからバリュー株とされている。 |
バリュー株は、景気動向に大きく左右されやすいことが特徴です。また、業績にとくに問題がない場合でも、知名度が低い企業はバリュー株になりやすい傾向があります。
2023年2月時点、トヨタ自動車と三井不動産の株価は2022年2月と比べてもあまり大きな変化は見られません。他のバリュー株も含めて、今度どれくらいの価格で株が取引されるかが注目です。
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グロース株とバリュー株の違いとは?
グロース株は成長が期待できる業界に多く、新興企業やハイテク関連事業などが挙げられる一方で、バリュー株はすでに成熟している大企業や銀行、知名度が低い企業が多い傾向にあります。
グロース株とバリュー株の違いについて、以下の比較表にまとめました。
グロース株 | バリュー株 | |
特徴 | 将来に成長が期待される株 | 企業価値に対して株価が安い割安株 |
株価指数(PER・PBR) | 高い | 低い ※一般的にPERは15以下、PBRは1未満 |
業種 | 新興、エネルギー関連事業、AI関連 | 小売業、銀行業 |
注意点 | 株価が急落する可能性がある | さらに株価が下がる可能性がある |
- 株価が急落する可能性がある
- さらに株価が下がる可能性がある
グロース株のメリットとは?
将来の成長が期待されるグロース株は、長期で保有することで株価上昇が10倍100倍と大きな利益を狙えるメリットがあります。将来性を期待して購入するため、短期的な株価の変動を注視する必要はありません。
また、すぐに株価の上昇が期待できる銘柄であれば、短期間でも売買差益(キャピタルゲイン)を得られる可能性もあります。
- 株価の上昇によって大きな利益を狙える
- 短期投資・長期投資の双方に向いている
グロース株のデメリットとは?
グロース株は投資家からの人気が高いため、現在の企業価値より株価が割高になりやすいデメリットがあります。投資家が抱く企業の成長への高い期待感が実際の業績に対して割高な株価としてあらわれることがあります。
加えて、一般的にボラティリティ(変動幅)の大きい銘柄が多く、高い値上がり益を狙える反面、ダウンサイドリスク(値下がりする可能性)が大きいのもグロース銘柄の特徴です。グロース株の購入を検討する際は、金利上昇による株価下落も視野に入れないといけません。
また、利益成長を目的として配当を抑えて投資に回す企業が多いため、配当が少ない、もしくは支払われないケースもあります。
- 株価が乱高下しやすい
- 配当が少ない
- 割高な場合がある
バリュー株のメリットとは?
バリュー株は、企業価値に対して株価が割安になっているため、グロース株と比べて値動きが小さく、株価が急落するリスクが低い傾向があります。また、配当金や株主優待が充実している企業も多く、長期間の保有で安定した利益(インカムゲイン)を得やすいといったメリットがあります。
長期的に資産形成したい場合、配当金や株主優待を狙って、バリュー株に投資するのがおすすめです。
- グロース株と比較してリスクが低い
- 安定した配当が期待できる
バリュー株のデメリットとは?
バリュー株はグロース株と比べて株価下落のリスクは低いですが、大きなリターンも期待できません。特に、バリュー株は長期的な投資を前提にしており、短期投資では大きな利益を得られない傾向があります。前期と比較し決算の数値が良くないと株価上昇どころかさらに値下がりする可能性もあります。バリュー株(割安株)かどうかを判断するには、様々な情報を参照して企業価値を適切に見極める必要があります。
企業価値を判断するには一定の知識と経験が必要になるため、初心者の方には難しく感じることがあります。割安の評価の仕方については、企業情報を基に慎重に判断しましょう。
- 値動きが小さい
- 短期投資ではリターンを得られず、時間を要する
- 銘柄選定が難しい
グロース株とバリュー株の見分け方は?
バリュー株において、株価の割安・割高を判断するために主に「PER」(株価収益率)と「PBR」(株価純資産倍率)という2つの指標を用います。グロース株においては、企業の四季報や投資情報サイトなどで売上高や業績を確認するとともに、新事業や新商品の情報についても確認することが必要です。
- PER…株価収益率=株価÷1株あたりの純利益(EPS)
- PBR…株価純資産倍率=株価÷1株あたりの純資産 (BPS)
この2つの指標は、企業の四季報や投資信託会社のホームページなどで確認できます。
一般的に、PERの平均は15倍程度となっており、15倍を下回っていればその銘柄は割安株と判断できます。また、PBRが1倍以下の場合は割安株と判断できます。
ただし、PERやPBRは業種によって水準に差があるため、同業種間で比較することも大切です。また、新興企業は純資産が少ないためにPBRが高くなる傾向があるため注意が必要です。
また、株価指標に加えて財務指標も用いると良いでしょう。例えば、ROE(自己資本利益率)や売上高成長率などです。
ROEとは当期純利益を自己資本で割った指標で、投資家から集めたお金(自己資本)に対してどの程度利益をあげられているのかを表しています。ROEの数値が高いことは自己資本の比率が高いことを表し、経営効率の高さを象徴すると言われています。
売上高成長率は文字通り売上高の伸び率を示したもので、シェア拡大局面の成長企業などは高いことが多いです。売上高成長率は企業の成長性や規模拡大などについて分析する時に用いられます。
株価指標や財務指標といった指標を正しく用いて銘柄を選定しましょう。
バリュー株とグロース株はどっちがよい?
割安なバリュー株と企業の成長が見込めるグロース株、どちらにもメリット・デメリットがあります。投資期間や資金に応じて、自分に適した銘柄を選ぶことが重要です。
短期投資で大きなリターンを狙う場合は、将来にわたって株価が上昇すると予想されるグロース株を選ぶことがおすすめです。長期投資で安定した配当金や株主優待などのインカムゲインを得たいという場合は、株価の変動が小さく株価急落のリスクが低いバリュー株がおすすめといえるでしょう。
リターンとリスクのバランスを取り、両方の銘柄に投資することもひとつの方法です。
投資する銘柄を決める際は様々な情報を調べて分析することが重要ですが、東証一部上場の企業だけでも約2,100社あります。企業を全て調べて、その中から銘柄を選び、運用するのは熟練の投資家でも難しいことです。そのため、資産形成の際は「バリュー株とグロース株ならどちらに投資したいか」「利回りと配当や株主優待ならどっちを重視したいか」等、株式投資で自分が注目する点を予め絞っておきましょう。
また、米国株等の外国株への投資や債券、投資信託といった株式市場以外の金融商品について検討するのも資産形成において重要です。
日本におけるグロース株の現状と今後、2022年おすすめな銘柄も
日本におけるグロース株の現状と今後についてまとめ、2022年おすすめなグロース株についてもご紹介します。現状と今後について
今まで株価上昇を期待するグロース株について紹介してきましたが、残念ながら2021年以降はバリュー株がグロース株より優位な状況が続いていました。グロース株は2016年から2020年にかけて大きく上昇しすぎたため、割高なグロース株は調整の動きに入り、割安なバリュー株が上昇しました。
この流れは今後しばらく続くと考えられます。6月10日に発表された米5月消費者物価指数の結果は前年同月比8.6%の上昇となり、記録的なインフレによりFRBの金融引き締めがさらに強化され、約30年ぶりに政策金利を0.75%引き上げる(利上げ)ことを発表しました。
日米金利差の拡大を背景にした急激な円安、世界的な金融引き締め(利上げ)懸念、2022年以降米株の下落などの要素を鑑みて、グロース株の買い手が控えムードになってバリュー株に資金が流入することが考えられます。
2022年おすすめなグロース株
上述のように、インフレの加速により世界的な金融引き締めに対する懸念が高まっている現在、グロース株の株価がさらに下落する可能性がありますのであまりおすすめしません。株価がリバウンドする可能性もありますが、底入れのタイミングを予測するのは難しいです。
リバウンドを狙ってリスクの高いグロース株を取引するより、配当利回りの高い割安株(バリュー株)に投資するのが無難でしょう。株価が底入れの兆しを示し、リバウンドする可能性が高まると、グロース株の注目が高まります。
こちらの記事は、最新のグロース株に関する情報を掲載しているので参考にしてください。
また、2022年4月からは国内株式である東証の区分が変わり、新たにグロース市場が形成されました。グロース市場では、新興企業が集まっており、グロース株をマーケットから探すことが容易にできます。
まとめ
今後成長が期待できるグロース株と、企業価値に対して割安なバリュー株は、どちらにもメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴を知り、投資期間や資金に応じて銘柄を選定しましょう。自分の資産額や運用方法に合った投資を行うことが成功につながります。
また、株式投資を成功に導くためには、会社四季報や業界動向といった経済情報を常にチェックし、現相場状況を理解することが大切です。
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よくある質問
Q | グロース株の見分け方とは? |
A | グロース株は「成長性」の高い銘柄を指すので、売上高成長率やEPS(Earnings Per Share:1株あたり純利益)成長率、TSR(Total Shareholder Return:株主総利回り)の伸びなど、まずは成長性指標を確認しましょう。 |
Q | グロース株の具体例は? |
A | 国内でグロース銘柄の筆頭といえば、ユニクロやGUを運営する「ファーストリテイリング(9983)」でしょう。良素材・良デザインの衣服を安価に手に入れられるファッションブランドとして国内で確固たる地位を築き、ここ数年では東アジア・東南アジアへの進出および販路拡大で、高い利益成長を遂げてきました。株価は現在28,735円(3/10(金)終値)と上場時から4倍の値をつけています。 |
Q | バリュー株の代表銘柄は? |
A | バリュー株の代表は、銀行株筆頭の「三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)」でしょうか。時価総額はおよそ12兆円(東証プライム5-6位)の大型株、かつ配当利回り3%台後半から4%と高配当銘柄としても知られています。PBRは2023年3月現在で0.6から0.7、昨年下半期より日銀の金融政策の修正観測から値をあげていますが、依然として割安な水準が続いており、典型的な高配当・大型のバリュー銘柄といえるでしょう。 詳しくは「代表的なバリュー銘柄とは?」を参照 |