海外投資家の動きにより円安で日経平均が上昇
通貨と株価の関係は、通常、通貨高=株高となります。しかし、近年の日本株の場合はあてはまりません。日本株では、為替が円安方向へ動いた場合に、株価は上昇する傾向が見られます。これには、日本株への投資の約70%が海外投資家によって行われていることが大きく関係しています。
海外投資家は、ドル建てで日本株を購入します。もともと日本株は諸外国の株式とくらべて割安のため海外投資家からの人気が高いのですが、為替が円安方向の場合には特に日本株の割安感が強調されます。そのため、特に円安の場合に日本株市場へ多額の投資資金が集まりやすくなり、日経平均を押し上げる結果となります。
また、海外投資家は株を購入する際に、為替ヘッジのために円売りのポジションを取ります。そのため為替が円安方向に動きやすくなります。本来なら通貨が強い場合に株価が上がるのですが、日本ではこのような2つのメカニズムから、円安株高の流れが成立するのです。
輸出関連銘柄の株価を中心に円安で株価上昇
また、為替が円安方向に進むことで株価が上昇するのは、円安が輸出産業に好影響を与えるという理由もあります。
日本は輸出産業が強いため、円安となった場合には輸出企業を中心に多くの企業で業績が上がります。円安の状況下では、海外では日本製のものが割安と感じられるようになるため、海外での売り上げが大きく上がるからです。日本は製造業を中心に国内よりも海外の売り上げに依存しているので、業績が上がった輸出関連銘柄を中心に日本株は値上がりしていきます。
一方で円高の場合は、海外からの輸入品や原材料などの価格が下がるため、国内産業を主力とする内需関連銘柄では株価が上がる傾向が見られます。しかし、円高は輸出産業の不調を招き、景気の悪化の原因となります。その結果、株式市場全体としては株価の低迷が続くでしょう。
このように、株価の変動は、必ずしも個別の企業の業績要素だけではありません。背景にある為替の影響を想定しておくことも必要です。
業績と密接に関わる想定為替レート
また、株価の値動きと関係する要素として各企業が設定する想定為替レートがあります。想定為替レートとは、輸出入企業が事業計画を行う際に事前に決めておく為替レートです。
為替が動いた場合、企業は業績の好調如何に関わらず、収益が影響を受けます。一般に製造業を中心とした輸出企業の場合は、想定為替レートよりも円安となった場合、為替差益により収益率が上がるため株価は上昇します。ただし、原料調達などをドル建てで行っている場合は例外で、円高が有利です。また、輸入を伴う内需関連企業では円高の場合に為替差益の恩恵が受けられます。
想定為替レートは、その企業ごとによって異なり、状況により期中に見直しが行われる場合もあります。輸出入企業では想定為替レートと実レートの乖離は増益もしくは減益の要因です。そのため、株式投資を行う場合には、企業の財務状況だけでなく、想定為替レートと実レートの関係についても見ていく必要があります。
株を購入する際には個別企業の財務状況を確認する方が多いでしょう。しかし、株式市場全体を把握するためにも、為替を見ておくことは大切です。特に影響を受けやすい輸出関連銘柄の購入をお考えの場合、為替の状況は重要な指標のひとつとなります。