つみたてNISAは資産づくりのために国が準備している投資優遇制度の1つです。同じNISA制度の「一般NISA」と比較すると長期投資に適していています。金融庁が発表している「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」(※1)では、20代と30代では、一般NISAよりもつみたてNISAの口座数のほうが多く、若い世代ほど積極的につみたてNISAを利用しています。
この記事では、同じく長期投資(私的年金制度)として国が整備している「iDeCo(イデコ)」と比較しながら、つみたてNISAの節税効果について解説します。
つみたてNISAの税金事情
つみたてNISAは最長20年間の運用益が非課税となる仕組みです。ただし、iDeCoと違い拠出金(掛金)の所得控除はできないため、所得税や住民税の節税効果はありません。つみたてNISAの概要について知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
最長20年間の非課税期間
つみたてNISAは毎年40万円までの新規投資枠を利用できます。毎年40万円分を積み立てると1月あたり33,333円となります。証券会社のつみたてNISA設定では毎月の投資額を設定できるので、つみたてNISA投資でこの金額になっている人が多いのではないでしょうか。
通常、運用益には20.315%の税金(※1)がかかりますが、毎年40万円ごとの非課税投資枠で投資した部分は、20年の間に売却した場合、運用益がかかりません。
※1 所得税15.315%(復興特別所得税0.315%)+住民税5%=20.315%
注意が必要なのは、つみたてNISAは「ロールオーバー不可」であることと、「20年後に取得価格が更新される」ことです。ロールオーバーについてはこちらの記事で解説しています。
取得価格が更新されるというのは、こういうことです。
仮に基準価額1万円で購入した投資信託が20年後に8,000円になったとします。通常であれば仮にこのまま保持し続けて1万円まで基準価額が戻ってもなにもありません。
ただし、つみたてNISA口座で20年が経過し、課税口座に移管するタイミングで8,000円になっていた場合、取得単価も8,000円となります。つまり、ここから再度1万円に上昇すると2,000円分に対して課税されます。
つみたてNISAは基本的に節税効果がありますが、非課税期間終了タイミングの状態では節税観点だとマイナスの効果になる可能性があることは理解しておきましょう。(一般NISAでロールオーバーしない場合は同じ考え方になります)
つみたてNISAで控除を受けたい場合
つみたてNISAは運用益が非課税になる制度ですが、拠出金の所得控除はできません。
所得控除がある場合、所得税などを計算する課税対象の金額が変わるため、確定申告が必要になりますが、つみたてNISAの拠出金は控除対象ではないため、確定申告も不要です。
つみたてNISA・NISA・iDeCoを比較
つみたてNISAと(一般)NISAは少額投資非課税制度という名の通り、「投資の優遇」の側面が強い制度です。つみたてNISAの方が(一般)NISAよりも長期・積立・分散に適した制度になっています。
一方、iDeCoは60歳以降に受け取ることができる「私的年金」の側面が強い制度です。お勤めの会社で確定拠出年金(企業型DC)の制度を利用されている方も多いと思います。iDeCoは確定拠出年金の個人版の仕組みです。
NISAの管轄は金融庁、iDeCoは厚生労働省が管轄していることからも「投資」と「年金」の違いがイメージできるのではないでしょうか。
つみたてNISA・一般NISA・iDeCoとはどんな制度?
一般NISA |
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つみたて NISA |
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iDeCo |
|
※2 2階部分は高レバレッジ投資信託など安定した資産形成に不向きな一部の商品が現NISAから除かれました。
※3 DB:確定給付企業年金 企業型DC:企業型確定拠出年金
投資制度の概要比較
つみたてNISA、一般NISA、iDeCoがどのような投資制度で、どのような節税効果があるのかさらに詳しく比較してみます。
つみたてNISA | 一般NISA | iDeCo | |
主な目的 | 投資優遇 | 投資優遇 | 私的年金 |
節税効果 | 運用益が非課税 | 運用益が非課税 |
年間新規投資枠 |
年間新規投資枠 | 40万円 | 120万円 | ※2024年から最大122万円(1階部分20万円、2階部分102万円) 加入条件により異なる。月額1.2万円(年間14.4万円)~月額6.8万円(年間81.6万円)(※4) |
非課税期間 | 最大20年間 | 最大5年間 | 75歳までの間 |
お金の受け取り | いつでも可能 | いつでも可能 | 原則60歳以降、60歳~75歳の間で受給開始を選択可能。 ※加入期間に応じて受給開始タイミングが異なる(※4) |
※4 加入条件、受取条件等の詳細は「iDeCo公式サイト」でご確認ください。
(つみたて)NISA、iDeCoともに運用益が非課税になることに違いはありません。運用益にはリターンの上限がないため、節税上限もありません。ただし、つみたてNISAやiDeCoの投資商品は分散・積立・長期投資を目指しているため、大きなリターンを期待するものではありません。
拠出金が所得控除されるのはiDeCoの大きな特徴です。拠出金の上限は加入条件により異なります。大きく言えば、自営業者は月6.8万円、会社員・公務員は月1.2万円~2.3万円、専業主婦の方は月2.3万円まで拠出できます。(拠出金の変更は年に1回のみ可能ですが、所定の変更手続きが必要です)
所得控除されると、所得税などの計算対象になる課税標準が小さくなるため節税効果があります。もちろん拠出金が大きいほど、長期間にわたるほど節税効果が大きくなります。
iDeCoは60歳以降(加入期間により受給開始時期は異なります)、年金もしくは一時金として受給可能です。受取時にも控除を受けることができます。
※受取時の控除はiDeCoが年金(もしくは退職金)として扱われるからなので、NISA制度にはありません。
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つみたてNISAはどれだけ節税できる? iDeCoとどっちがいい?
単純に比較することは難しいですが、つみたてNISAとiDeCoで同じ商品を運用した場合、節税効果が高くなるのはiDeCo(※5)です。その理由は、iDeCoは運用益の非課税に加えて拠出金が所得控除されるからです。
ただし、つみたてNISAとiDeCoでは運用できる商品も変わります。さらに一般NISAであれば、よりリターンの大きい(リスクの大きい)商品へ投資することもできます。運用益が大きくなれば、それだけ節税効果も大きくなることは認識しておきましょう。
※5 iDeCoの運用コストを除外して考えた場合。金融機関ごとの運用コストはiDeCoナビでご確認ください。
つみたてNISAの節税効果
実際につみたてNISAでどれだけ節税効果があるか見てみましょう。(※5)
毎月の積立金額、運用期間、年利を変えて確認します。3.33万円はつみたてNISA満額(年間40万円)をイメージしています。
積立金額 | 運用期間 | 年利 | 元本 | 運用収益 | 手取り | 節税効果 | |
つみたてNISA | 通常投資 | ||||||
1万円 | 10年 | 3% | 120万円 | 19.7万円 | 139.7万円 | 135.7万円 | 4万円 |
3.33万円 | 10年 | 3% | 399.6万円 | 65.7万円 | 465.3万円 | 452万円 | 13.3万円 |
1万円 | 10年 | 5% | 120万円 | 35.3万円 | 155.3万円 | 148.1万円 | 7.2万円 |
3.33万円 | 10年 | 5% | 399.6万円 | 117.5万円 | 517.1万円 | 493.1万円 | 23.9万円 |
1万円 | 20年 | 3% | 240万円 | 88.3万円 | 328.3万円 | 310.4万円 | 17.9万円 |
3.33万円 | 20年 | 3% | 799.2万円 | 294.0万円 | 1093.2万円 | 1033.5万円 | 59.7万円 |
1万円 | 20年 | 5% | 240万円 | 171.0万円 | 411万円 | 376.3万円 | 34.7万円 |
3.33万円 | 20年 | 5% | 799.2万円 | 569.5万円 | 1368.7万円 | 1253万円 | 115.7万円 |
上の表を見ると、運用期間が長く投資元本が大きいほうが節税効果も高いことがわかります。つみたてNISA満額を20年間毎年5%で積み立てた場合、約115万円の節税効果があります。(上表最下部)
※5 金融庁 NISA特別ウェブサイト「資産運用シミュレーション」を元にシミュレーション
iDeCoの方が節税効果が高い
iDeCoでは拠出金が所得控除されることを説明しましたが、所得控除のメリットは運用の結果にかかわらず確実に節税効果が得られるところです。仮に年収500万円の会社員の方が毎月1.2万円(年間14.4万円)の積立をしているとします。
14.4万円 × 20%(税率)= 2.88万円(※8)
※8 税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」を元に計算
毎年約3万円の節税効果があるということです。20年間積み立てを続けたら約60万円の節税効果があります。これは上の表でいうと、つみたてNISAを満額で20年間年利3%で運用した場合とほぼ同じ節税効果です。
所得控除に加えて運用益が非課税になるため、iDeCoのほうが節税効果は優れているといえます。
つみたてNISAの節税シミュレーション
毎年一定金額を積み立てていくと、どのようなイメージとなるかシミュレーション(※9)で確認してみます。毎月1万円、年利3%で20年間運用すると節税効果は約18万円です。同じ条件で毎月2万円では約35万円、毎月3万円では53万円となります。
※9 りそなアセットマネジメント「節税シミュレーション結果」でシミュレーション(金融庁のシミュレーション結果とは若干数字が異なりますが、計算方法の前提の違いなどによるものです)
毎月10,000円積み立てる場合
毎月1万円、20年間、年利3%の場合、結果は以下のようになります。
20年間の運用益が「868,381円」なので、本来の課税分である「176,412円」が節税できます。
毎月20,000円積み立てる場合
毎月2万円、20年間、年利3%の場合、運用益は「1,736,916円」、節税効果は「352,854円」となります。
毎月30,000円積み立てる場合
毎月3万円、20年間、年利3%の場合、運用益は「2,605,464円」、節税効果は「529,300円」となります。
まとめ
つみたてNISAとiDeCoを比較すると、所得控除がある分iDeCoのほうが安定した節税効果を発揮できるといえます。ただし、記事内でも説明した通り、NISAは「投資」、iDeCoは「年金」の制度です。
iDeCoよりも(つみたて)NISAのほうが投資商品の幅が広く、高いリターンを得ることも可能です。所得控除の節税効果には上限がありますが、運用益は上限がない(つまり節税上限がない)ため、大きな節税効果が期待できます。
つみたてNISAとiDeCoは併用できるため、老後資金のため及び現在からの資産形成をしたい方でもバランスよく活用できます。
拠出可能な金額や資金を引き出せるタイミングも異なりますので、それぞれの特性を理解した上で制度を利用しましょう。
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よくある質問
Q | つみたてNISAで損した場合でも節税できる?(損益通算できるか?) |
A | つみたてNISAでは損益通算できません。この点に関しては通常の投資よりも節税観点ではマイナスです。損益通算できない点は一般NISAやiDeCoも同様です。 |
Q | つみたてNISAは確定申告をする必要ある? |
A | つみたてNISAは確定申告の必要はありません。運用益は自動で非課税となります。また拠出金の控除はできないため、所得控除のための確定申告も不要です。 |
Q | つみたてNISAは年末調整をする必要ある? |
A | つみたてNISAは年末調整も不要です。 |