NISAの口座がいかに税制上優遇されているか、確認をしてみます。また、NISA口座を開設する手続きについても紹介します。
通常、株式や投資信託の売買で利益が出た場合、売却益にかかる部分については「譲渡所得」と呼ばれ課税されます。会社員の給与所得についても一定のルールで課税されるのと同じです。
譲渡所得については20%の課税が基本となっており(復興特別所得税を加算すると20.315%)、これはどのようなリスクを取ったか、どれくらいの期間投資を行ったかに関係なく売買の差額(利益)に対して課税されます。銀行預金と同じように、わずかな利益であっても20%課税される仕組みです。
株式や株式投資信託などの証券投資については2013年末まで10%の軽減税率(復興特別所得税を加えて10.147%)が認められているため、他の譲渡所得課税より優遇された取り扱いとなっていました。しかし、2013年末に証券優遇税制の期限が切れることとなり、本則の20%課税に戻ります。
NISAは2014年1月からスタートしますが、証券優遇税制が終了することと密接な関係があります。国民のリスク資産投資を通じた資産形成を支援することが、制度創設の大きなきっかけとなっているからです。
何度か説明していますが、NISA口座内での売却益については譲渡所得が一切かかりません。どれだけ売却益が発生したとしても非課税です。国にとっては税金を取れないということですが、資産形成を行う人たちに大きなメリットとなってくるわけです。
しかし、損失が生じた場合、通常の証券投資においては他の譲渡益と通算を行う(損益通算という)が認められていますが、NISA口座における投資は損益通算の対象となりません。もともとNISA口座内で得られた売却益は非課税ですから、NISA口座内で生じた売却損を通算させて課税額を軽減させる意味がないからです。
また、NISA口座内で生じた売却損は、手元の証券投資によって生じた売却益(課税対象)と通算することもできません。NISAにおいては損失が出た場合に、その軽減措置はないことに注意が必要です。NISAの資産運用戦略において、意識したいところです。
ところで、この税制メリットですが、税務署にいって書類を提出するような手続きは不要です。NISA口座開設時に本人確認が行えば、あとは証券会社が必要な手続きを行います。譲渡所得について、証券口座が特定口座(源泉徴収あり)となっている場合、自動的に納税の手続きが行われるのと近い仕組みとなっており、個人投資家にとっては便利になっています。
NISA口座のメリット(証券口座(特定口座、一般口座)との課税の違い)
NISA口座の税制メリットは制度がスタートする2014年1月1日現在「20歳以上」で日本に居住している人が1口座開設できるようになっています。これは「夫と妻がそれぞれ1口座」持つことも認められます。子どもが20歳以上の成人であれば、「夫婦と子がそれぞれ1口座(合計家族で3口座)」持つこともできるわけです。他人の証券口座を代わって売買することはできませんが、家庭内で、夫婦や子がそれぞれのNISA口座を用いて資産形成にチャレンジすることは可能なわけです。1口座あたり1年間100万円の非課税投資について、家族で開設してはじめてみるのもいいでしょう。
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執筆:フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャル・プランナー/山崎俊輔