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投信フォーカス 「コツコツ投資」の本質は投資タイミングによる損益差の縮小 - 注目の投信 - 投資信託

最終更新:2013/06/27 16:36

投資信託 [ 注目の投信 ]

投信フォーカス

「コツコツ投資」の本質は投資タイミングによる損益差の縮小

時間分散のドルコスト平均法を用いると、投資タイミングの違いによる損益のブレが一括投資に比べて低減。金融商品への投資では「長期保有でリスクは縮小せず拡大する」ことに基づく。日本版ISAでも有力な投資手法

「コツコツ投資」と呼ぶ投資スタイルが若い世代の投資家に広がりつつある。コツコツ投資とは、投資信託を主とする金融商品に対してドルコスト平均法による投資を継続実践することを指す。ネット上で投資スタイルについて情報交換しながら、つながり合う“投信ブロガー”の間で合言葉のように使われ始めたようだ。

ドルコスト平均法とは金融商品への投資を一時期に一括して行うのではなく、毎月など定期的に同じ金額の投資を継続する形の投資手法を指し、積立投資、定時定額投資や時間分散投資という別名もある。英語のDollar Cost Averagingの直訳であり、英国ではPound Cost Averagingとも呼ぶ。

ドルコスト平均法による収益率は投資金額の累計に対する現在保有時価の割合で求まるが、これは平均購入単価に対する現在の投信基準価額に等しい。平均購入単価は投資累計額を投信の保有口数(その都度購入した口数を現在まで合計)で割った値として計算する。

現在の基準価額が平均購入単価を上抜くと、ドルコスト平均法の収益はプラスで含み益状態にあり、反対に基準価額の方が平均購入単価を下回るとマイナスの含み損になる。ドルコスト平均法では、平均購入単価は移動平均のように緩やかに動くので、基準価額が大きく変動しても平均購入単価の上下は抑えられる。このため、基準価額がVの字(またはN、U、W)のように変動すると、低く推移してきた平均購入単価を基準価額が一気に上抜くことになる。反対にM字のような動きをとると、基準価額は高止まりしてきた平均購入単価を割り込み、含み損が発生する。

アベノミクスをきっかけとした急速な円安・株高による基準価額のV字・U字回復により、多くの「コツコツ投資家」が含み損状態から脱し含み益に変わったとみられ、ドルコスト平均法の効用を改めて再認識する格好になっている。

若い世代が「コツコツ投資」に共感するのは、もともと一括投資するほどの余裕資金や、投資判断に割くことのできる時間的余裕が高齢者ほどにはなく、給与の一部を一種、機械的・自動的な投資に回しながらコツコツと投資金額を積み上げていくドルコスト平均法が現実的なアプローチであるという側面も強い。


日経平均一括投資による損益の差はドルコスト平均法の5倍(過去37年間)

グラフは1976年4月末からの約37年の間、投資開始時期を1ヵ月ずつずらして日経平均に一括投資した場合と、ドルコスト平均法を継続した場合の現時点(2013年2月末時点)の収益率を比較したもの。


グラフからは、一括投資では投資タイミングにより収益率が上下に大きくぶれるのに対し、ドルコスト平均法の収益率は投資タイミングによる違いが比較的小さく、緩やかに推移してきたことが一目瞭然だ。

数字で収益率の最高と最低を確認しておくと、1976年4月は日経平均がまだ4600円台だったので、この時点で一括投資した収益率が最高で現在約2.5倍。最低収益率はバブル崩壊直前の1989年末の3万9000円弱で購入した場合で、マイナス70%。最高と最低の損益率差は約227%に達する。

これに対し、ドルコスト平均法での最高収益率は2011年8月末から投資を開始した場合のプラス25%。最低はバブル崩壊前の1986年3月末から投資継続した場合で、マイナス21%。損益率差は約46%。

日経平均長期投資での損益率の差は、一括投資がドルコスト平均法の5倍まで膨らみ、ドルコスト平均法が投資タイミングの違いによる損益差を縮小する手法であることが分かる。投資タイミングによる損益差が低減するということは、価格変動リスクが小さくなることと同義だ。

なお、この37年間の計測期間では、バブル崩壊以降に行った一括投資の収益率の大半がマイナスであることもあり、投資開始月全体の6割でドルコスト平均法の収益率が一括投資を上回った。

このように、ドルコスト平均法のキャッチフレーズでもある「時間を味方につける」の本質的意味合いは価格変動リスクの低減にあり、この点を検証する。その前に、関係する投資期間とリスクの大小について再確認しておく。

「長期投資でリスクは縮小」は誤り。長期保有でリスクは拡大する

専門的になるが投資理論では、ある金融商品に投資した場合、その保有期間の価格変動リスクは「保有期間の平方根に比例して拡大する」という考え方が基本になっている(注1)。「長期投資はリスクを縮小させる」という解釈があったとしたら、それは少なくとも投資理論上は誤りだ。リスクは時間の経過とともに拡大する。

小難しい投資理論を持ち出さなくても、金融商品を長期に保有するとそれだけ「不確実性」にさらされる機会が増えるので、保有期間が長くなり不確実性が増すと、それだけ価格変動リスクが大きくなると考えるのが自然だ。

長期投資で「年率換算」したリスクが縮小するのは価格変動リスクの平均回帰が影響

紛らわしいのはこれに関連して、株式や投資信託に長期投資した場合、1年当たりの収益率の最大と最低が、投資期間が長くなるほど縮小するという解説を見かけることがある。通常、この場合の収益率は年換算した数値が使われている。

解説の主眼は、短期の株式投資では収益率がマイナスに振れても、長期投資すると最低でもマイナスではなくプラスとなった、という点に置かれているように見受けられるが、この場合、年平均した最大収益率と最小収益率の差は年率換算した価格変動リスクに対応する。長期保有するほど年率換算した差が縮小するのは、価格変動リスクは時間とともに変動することが関係しているとみられる。

VIX指数が恐怖指数として投資家心理を反映するように、実は価格変動リスクは一定ではなく時間とともに上下変動する。ところが、価格変動リスクは時間の経過と共に平均的水準に回帰する傾向がある。リーマン・ショック時に跳ね上がったVIX指数はその後急低下し、長期にならすと平均的水準(20%)に落ち着くように変動している。長期投資における収益率の最大・最小の差を年平均で表示すると、価格変動リスクが時間と共に平均的水準に収れんするのと似た傾向を示す。

このため、年率で表示する価格変動リスクが時間の経過とともに平均的水準に向かって縮小しても、投資期間が長くなるほど保有期間リスクは拡大することになる。保有期間の間に実際に生じた価格変動リスクを1年の平均値に戻すことはできないのと同じだ。

例えば、1年目に50%下落し、続く2年目に10%下落した場合、2年間で0.5倍×0.9倍=0.45倍で55%下落したことになるが、2年間を通じた55%の損失が1年間の平均下落率=30%に縮小するということはない。


ドルコスト平均法は一括投資に比べ価格変動リスクが縮小

話をドルコスト平均法に戻す。「長期保有でリスクは拡大」を踏まえると、「ドルコスト平均法は一括投資に比べたリスクを縮小する」ことの説明がつく。

仮に、ドルコスト平均法で毎月1万円ずつ、ある金融商品への積立投資を継続する。その場合、各当初1万円の投資期間は1ヵ月ずつ短くなっている。つまり、ドルコスト平均法による投資資産全体は、最初に一括投資する時と比べ、当初1万円について投資期間が1ヵ月ずつ短い投資の集合体になる。投資期間が短いとその分、価格変動リスクは縮小していくので、結果的にドルコスト平均法による投資は投資期間の長い一括投資に比べ、価格変動リスクを縮小するように作用することになる。

このイメージを示すと下の図のようになる。


「TOPIX(配当込み)」の価格変動リスク、ドルコスト平均法は一括投資の5〜6割程度

実際に、ドルコスト平均法での価格変動リスクを定量的に算出し、一括投資と比べてみる。やっかいなのは、ドルコスト平均法は1ヵ月おきなど投資期間が異なる投資の集まりなので、一括投資とは投資期間の整合性がとれない。価格変動リスクを同じ土俵で比較するには一工夫する必要がある。

投資期間を揃えるため、ドルコスト平均法による投資を次のように見立てる。将来投資する合計投資額の現金を最初に用意しておき、投資までの金利収入無しにその都度投資に充てるのと、実質的には変わらないとみなす。

仮に、毎月1万円ずつドルコスト平均法で、最初の月を含め10ヵ月にわたり積立投資を行うとする。この場合、最終的投資金額は10万円になる。この10万円を最初に準備し、そのうち毎月1万円ずつ投資に回す。そうすると、当初の投資額10万円の毎月の時価変動がドルコスト平均法の価格変動リスクに相当することになる。この場合、10ヵ月目の最終月の保有時価と当初10万円を比較した収益率は、ドルコスト平均法による現在の基準価額と平均購入単価を比較した収益率に等しくなる。


このケースで、投資対象が毎月2%の上昇と2%の下落を繰り返したと仮定して、一括投資とドルコスト平均法の収益率および価格変動リスクを計算する。収益率は各1.8%と0.9%で、一括投資の方がやや上回った。一方、価格変動リスク(月間の標準偏差)はそれぞれ2.1%と1.2%となり、ドルコスト平均法が小さくなった。

この方法を適用して、株価指数への長期一括投資とドルコスト平均法での価格変動リスクを具体的に定量計算してみる。冒頭では日経平均の損益差を示したが、長期の株式投資では配当金の積み上げ効果が無視できないので、ここでは「TOPIX(配当込み)」を採用した。

グラフにその結果を示す。2013年2月時点まで保有した場合、投資開始時期によらず、ドルコスト平均法の価格変動リスクは一括投資のおおむね5割〜6割程度の水準で推移。株式相場が低迷した2012年5月時点まで保有した場合の価格変動リスクを計測しても同程度の水準だった。


投資タイミングの違いによる損益差が一括投資に比べ縮小した点も、日経平均の場合と同じように確認できる。昨年2012年5月末時点では、ドルコスト平均法は1998年以降どの時点から投資を継続しても含み損となっていた。含み損の程度は一括投資に比べ小さかった場合が目立つものの、最大3割程度の含み損を抱えていた。それがこの2月末時点ではどの時点から投資を開始しても含み益へと鮮やかに切り替わった。

日本版ISAではドルコスト平均法が有力な投資手法の一つに

日本版ISA(少額投資非課税制度)が2014年から開始予定となっており、投資手法としてのドルコスト平均法への関心が一層高まってきそうだ。日本版ISAでは非課税枠が年間100万円に制限されている。そのうえで、一旦投資するとその分の非課税枠を使うことになり、解約しても消化した非課税枠は戻ってこない。上限のある非課税枠を有効活用することを考えると、投信の選定はもとよりその投資タイミングが重要になる。このため、投資タイミングに損益が左右されやすい一括投資に対し、損益のブレが比較的小さくなるドルコスト平均法に焦点が当たる可能性がある。

ドルコスト平均法では一括投資の場合と同様に、同じような商品性であれば販売手数料や運用コストが安い投信を選択する方が、投資効率は高くなる。長期投資継続を前提とする以上、課税対象となる投信の分配金は少ない方が効果的になる。非課税の日本版ISAでは、元々非課税の元本払戻金(特別分配金)が分配金として支払われても、分配金再投資の際にはその分の非課税枠を新たに使うことになるようだ。

ただ、ドルコスト平均法は一本調子の上げ相場を期待する場合には適さないなど、万能の投資手法ではない。価格変動リスクが低減すると言っても、元本割れリスクが消える訳ではない。「TOPIX(配当込み)」の例でも、1年くらい前には3割の含み損を抱えていた場合もある。損切り、積立中止、積立継続、スイッチングなどの判断を迫られる局面になるが、継続する際は気長に基準価額が平均購入単価を上回るのを待つしかない。確定拠出年金のように年金受給開始時点で含み損を抱えている場合は、事実上の損切りを余儀なくされる。

他にも注意点がある。「るいとう」のような仕組みで、個別株にドルコスト平均法で投資する場合にも価格変動リスクは一括投資に比べ縮小するが、それでも、投資企業の経営破たんや上場廃止による株価急落リスクは無くならない。価格変動リスクの縮小という観点では、株価指数連動型投信などハイリスクの金融商品がより効果的な投資先であり、国内債券ファンドなど元々価格変動リスクが小さめの投信ではリスク縮小効果は限定的になる。


(注1)価格変動リスクは保有期間の平方根に比例して増大
・理論的には、分散(価格変動リスクに相当する標準偏差を2乗した値)が保有時間の長さに比例して拡大する。保有期間の分散=単位時間の分散×(保有期間÷単位時間)。価格変動リスクは一定ではなく時間の経過とともに変動するが、投資時間との関連性を示す点では、一定として一般化しても差し支えない。
・価格変動リスクを定量的に示す場合、一般には年率換算した数値を用いるが、月間騰落率から求めた標準偏差を年率換算する際に、「1年=12ヵ月」の12の平方根を掛け合わせるのはその一例。1年間の価格変動リスクは、月次騰落率から計算する1ヵ月間の価格変動リスクの12倍ではなく、12の平方根倍となる。
・その他、「価格変動リスクが保有期間の平方根に比例して拡大する」考え方は、金融工学でのほとんどのモデル(指標)類の基盤を成している。オプションの理論価格を求めるブラック=ショールズの公式や、恐怖指数として知られるVIX(ボラティリティ・インデックス)もこの考え方に基づいている。



執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2013年03月15日)

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