有価証券報告書とは?
有価証券報告書とは、「有報(ゆうほう)」と略され、上場企業は金融商品取引法に従って、決算終了後3カ月以内に、金融庁へ提出し、公開しなければなりません。
金融庁がサービスを提供している適時開示システム「EDINET(エディネット)」http://info.edinet-fsa.go.jpにアクセスすれば誰でも無料で取得することができます。また、各会社のホームページからも見ることができます。
EDINET(エディネット)の使い方
有報は、1年に1回、本決算の終了後に提出される最も詳細な資料ですが、その他に、上場企業は、金融商品取引法のルールに従って、半期報告書、4半期報告書、有価証券届出書等を開示しなくてはなりません。
「EDINET(エディネット)」から、オリンパスの有報をダウンロードしてみましょう。
http://info.edinet-fsa.go.jp にアクセスすると、下図の画面が出てきます。
1.画面の下のほうの、
【閲覧】→【有価証券報告書等】をクリックします。
2.名称、提出者種別などを入力して、【検索】をクリックします。
3.「E02272」をクリックします。
4.一覧の中から、提出日が「H23.06.29」の有価証券報告書 ‐ 第143期(平成22年4月1日 ‐ 平成23年3月31日)のファイル名かPDFをクリックします。
5.有報閲覧画面が現れます。
ページの左側部分に、有報の目次が現れますので、順番に閲覧することも可能ですし、各情報を個別にピックアップすることもできます。
まずは、企業の概況をチェックしてみましょう。有価証券報告書は、大変ボリュームがありますので、概要を押さえるようにしましょう。PDFの2ページに第一部【企業情報】第1【企業の概況】1【主要な経営指標等の推移】があります。
過去5年間の【主要な経営指標の推移】が記載されています。この中で、異常な数字がないか見て行きます。2008年9月(平成20年9月)にリーマンショックがありましたので、オリンパスの決算では、平成21年3月の数字から、その影響が出ているはずです。事実、平成21年3月から、3期連続して売上高が減少しています。その他の数字も当然に悪化しています。
気になるチェックすべき項目は、以下の通りです。
平成21年3月、当期純利益が△1,148億円の原因(赤字の金額が大きい)
平成23年3月、包括利益の△283億円(突然、現れている)
平成20年3月、投資活動によるキャッシュフローの△3,043億円と財務活動によるキャッシュフローの+1,644億円(他の年度と比較して、金額が大きい)
まず、平成21年3月、当期純利益が△1,148億円の原因です。オリンパスの第141期有報の第2【事業の状況】1【業績等の概要】(1)業績の説明は以下の通りです。
営業利益のところで、今回の粉飾の舞台となったジャイラス社が登場します。「ジャイラス社との経営統合やその他の連結子会社に関する償却費等の増加により、345億87百万円(前連結会計年度比69.3%減)となりました。」とあります。
また、当期純損失のところでは、「当社子会社株式について関係会社株式評価損を計上したことに伴う当該子会社に係るのれんの一括償却762億1百万円等による特別損失を1,103億82百万円計上したほか、」とのくだりもあります。
平成21年3月期の大赤字が今回露呈した粉飾決算と関係があるのでしょうか?
次に、平成23年3月、包括利益の△283億円ですが、第143期有報の第5【経理の状況う】1【連結財務諸表等】の【連結包括利益計算書】をみると、為替換算調整勘定で約338億円のマイナスがあり、為替が影響していることが分かります。
なお、包括利益とは、有価証券の評価損益、為替換算調整勘定、土地再評価などで生じた損益を、企業の最終的な儲けである純利益に増減を加え、総合的な利益指標として反映させた最終利益のことをいいます。
最後に、平成20年3月、投資活動によるキャッシュフローの△3,043億円と財務活動によるキャッシュフローの+1,644億円ですが、第140期有報の第2【事業の状況】1【事業等の概要】(2)キャッシュ・フローの状況の説明を見てみましょう。
投資活動によるキャッシュの支出の主な原因は、「連結の範囲の変更に伴う子会社株式の取得による支出の増加2,298億25百万円等である。」とあります。また、財務活動によるキャッシュフローの説明で、その資金は、短期借入金の純増加1,728億22百万円であったことがわかります。