個人再生のデメリットとは?メリットやデメリット、おすすめな人の特徴を紹介
「個人再生は借金問題の有効な手段なの?」
「借金は減るけどデメリットはないの?」
個人再生を考えている方で、このような心配ごともあるはずです。
結論、個人再生は借金を大幅に減額できる方法の1つです。具体的には裁判所を通じて借金問題を解決する法的手続きで、自宅などの資産も守れます。しかし、デメリットも少なくないため、利用には慎重な判断が必要です。
この記事では、個人再生とは何か、メリットやデメリット、個人再生がおすすめな人やおすすめでない人について詳しく解説しています。ぜひ、個人再生を利用するかどうかの判断材料としてください。
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個人再生とは?
個人再生で借金問題を解決できますが、具体的にはどのような手続きでしょうか。
借金解決の手段にはほかにも債務整理があり、それぞれの違いを見ていきましょう。
借金を減額できる法的手続き
個人再生とは裁判所を通じて、借金の減額を行なう法的手続きです。減額される金額は借金の総額にもよりますが、最大で10分の1まで減額されます。個人再生手続きには小規模個人再生と、給与所得者再生がありそれぞれの要件は下記の通りです。
個人再生で借金が減額された後は、原則3年で返済をしていくことになります。減額される幅は借金の総額によって決まり、下記のように最低返済額が決められています。
参照:裁判所
上記の金額は目安のため、財産の状況などによっても変わります。またサラリーマンの場合は上記の金額と、2年分の可処分所得を比較して、多いほうの金額が最低返済金額となります。
個人再生と任意整理の違い
個人再生と同様に借金問題を解決する方法として、債務整理があります。債務整理とは広く借金問題を解決する手法の総称で、債務整理の中に任意整理・個人再生・自己破産があります。任意整理は個人再生や自己破産と違い、法的な手続きではありません。それぞれの違いを確認しておきましょう。
個人再生のデメリット
個人再生のデメリットには、次のようなものがあります。
手続きが煩雑で手間がかかる
個人再生は裁判所を通じて行なうため、手続きが煩雑で時間がかかります。口座の履歴や給与証明、家計簿など収入や支出・資産に関する資料を多く準備しなければなりません。また手続き完了までには半年~1年と時間もかかります。
手続きが煩雑なことから自分で行なうことは難しく、弁護士などに依頼する場合が多いでしょう。手間だけでなく、弁護士報酬などの費用がかかってしまう点も個人再生のデメリットです。
借金が無くなるわけではない
個人再生では、借金が全額無くなるわけではありません。借金が完全に無くなる自己破産と違い、手続き完了後も返済を継続する必要があります。安定収入がなく減額しても返済が難しい場合は、自己破産を検討しましょう。
家族や職場にばれる可能性がある
個人再生を行なうと、官報に名前と住所が記載されます。官報は国が発行している機関紙で誰でも見られるため、家族や職場にばれてしまう可能性があります。しかし官報を見ているのは税務署や金融機関が多く、一般の方で見ている方は多くありません。
そのため官報に名前が掲載されても、すぐに家族や職場にばれてしまうわけではありません。ただし、官報に名前が掲載されると闇金などから勧誘が来る場合もあるため、注意が必要です。どうしても官報に記載されたくない場合は、裁判所を通さない任意整理を検討しましょう。
ブラックリストに登録される
個人再生を行なうと、ブラックリストに登録されます。そのため新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることはできません。またすでに持っているクレジットカードも、利用できなくなります。
ブラックリストとは実際に帳簿のようなものがあるのではなく、個人信用情報機関に登録されることを言います。個人信用情報機関への登録は5~10年で抹消されますが、その間は新たな借入はできません。
保証人に迷惑がかかる
保証人がついている借入がある場合、個人再生を行なうと保証人に迷惑がかかります。個人債再生が行なわれると債権者は保証人に返済の請求を行なうため、保証人が返済しなければなりません。
もし保証人に迷惑をかけたくない場合は、個人再生ではなく任意整理を選ぶとよいでしょう。個人再生と違って任意整理は対象借入を選んで手続きできるため、保証人つきの借入を対象から外せます
自宅を手放す可能性がある
個人再生では自宅を手放してしまう可能性がある点も、デメリットです。個人再生には住宅資金特別条項という制度があり、手続き対象から住宅ローンを外せます。この制度を利用すれば自宅を残して個人再生できますが、利用するには下記の要件を満たしている必要があります。
- 住宅ローンとしての借入であること
- 本人が所有し、本人が住むための建物であること
- 住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
- 建物の床面積の2分の1以上が居住用であること
- 保証会社の代位弁済から6カ月以上経過していないこと
上記以外にも、住宅ローンに車の購入費用が含まれていたり、税金を滞納していたりすると、住宅資金特別条項が利用できません。また住宅ローンを借り換えして、借入目的が住宅ローンでなくなってしまっている場合も、住宅資金特別条項が使えない可能性があるため注意しましょう。
手続きする借入先を選べない
個人再生では、手続きする借入を選べません。すべての借入が対象となるため、車のローンなどがある場合は、車を手元に残せない可能性があります。また保証人がいる場合は、保証人に迷惑がかかります。手続きから外したい借入がある場合は、任意整理を利用しましょう。
安定収入がなければ利用できない
個人再生は手続き完了後も返済が継続するため、安定収入があることを前提としています。安定収入がない場合は、個人再生を利用できません。安定収入がない場合は自己破産を検討する必要がありますが、自己破産は個人再生以上にデメリットが多いです。
自宅を含め財産が残せないだけでなく、一定の職業にも就労できません。判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談しましょう。
個人再生のメリット
借金を大幅に減らせる
個人再生の一番のメリットは、最大で10分の1と大幅に借金が減らせることです。手続き完了後も返済を継続する必要がありますが、借金問題を解決できます。ブラックリストにのるなどのデメリットもありますが、一定期間経過すれば抹消されます。個人再生によって借金問題を解決すれば、お金に悩む生活から抜け出せるでしょう。
マイホームを残せる
個人再生では、一定の要件を満たせばマイホームを残せます。借入の中に住宅ローンがある場合には、個人再生がおすすめです。
マイホームだけでなく車のローンがある場合でも、車を手元に残せる場合があります。オートローンでは所有権留保と言って、車の所有権をクレジット会社名義にしている場合が多いです。しかし銀行のマイカーローンなど一部の借入では、所有権留保していません。借入先によっては自宅だけでなく、車も手元に残せます。
返済中の利息を払わなくてよい
個人再生では手続き完了後に分割で返済を継続しますが、利息は発生しません。元本だけの返済でよいため、返済総額を抑えられます。
職業の制限がない
自己破産と違って、個人再生では職業の制限がありません。収入が途絶える心配はありませんし、勤務先にばれてしまう可能性も少なくてすむでしょう。自己破産の場合は、一定期間の下記の職業にはつけません。
- 警備員
- 保険の外交員
- 税理士や弁護士などの士業
- 貸金業や質屋等
借金の理由が問われない
借金の理由が問われない点も、個人再生のメリットです。自己破産の場合はギャンブルや浪費などで借金をした場合は、利用できない場合があります。その点個人再生の場合では、借金の理由によって手続きの可否に影響がでることはありません。ギャンブルなどで借金をしてしまった人は、個人再生がよいでしょう。
個人再生がおすすめな人
債務整理にはいくつか種類がありますが、次のような人は個人再生がおすすめです。
住宅ローンは払える人
安定収入があり、借金すべての返済は難しくても住宅ローンの返済だけは払える人は個人再生がおすすめです。個人再生で住宅資金特別条項を適用すれば、住宅ローンを対象債権から外せます。自宅を手放すことなく、借金問題を解決できます。
職業上の制限で自己破産できない人
自己破産の職業制限に該当する人は、個人再生がおすすめです。仕事を失うことなく、借金問題を解決できるでしょう。
借入が5,000万円を超えない人
個人再生を行なうための要件として、借入総額が5,000万円以下であることがあります。借入総額が5,000万円を超える場合は、自己破産を検討するとよいでしょう。
資産を残したい人
資産を残したい人も、個人再生がおすすめです。自己破産と違い、個人再生では財産を強制的に処分されることはありません。そのため手続き後も資産を保有できますが、「清算価値保障の原則」というルールがあります。
清算価値保障の原則では、保有資産以上の弁済を行なわなければいけない、と定められています。資産を残すためには、資産以上の金額を返済をしないといけない点には注意しましょう。
個人再生がおすすめでない人
次のような人は、個人再生には向いていません。
税金を延滞している人
個人再生はすべての債務が対象になりますが、税金の延滞などは減額されません。具体的には次のような債務は対象となりません。
- 税金
- 社会保険料
- 罰金
- 交通事故の人身損害賠償
- 犯罪被害者への弁償
上記のような債務の負担が重い人は、個人再生しても返済負担が軽くなりません。そのため手続きしても結局延滞することになってしまう可能性があります。税金であれば分納や延納が使えないかなど、別の対策を考えましょう。
住宅ローンの返済が難しい人
住宅ローンの返済が難しい人も、個人再生には向いていません。個人再生では自宅を残すこともできますが、その場合住宅ローンの返済は従来通り継続する必要があります。そもそも住宅ローンの返済が苦しいのであれば、問題解決できず個人再生をする意味がありません。住宅ローンの返済が難しい人は、自己破産や自宅の売却なども検討しましょう。
個人からの借入が多い人
個人再生では付議決定により、全債権者に再生計画に対する意見を聴取します。そこで過半数の反対がなければ、認可される流れになります。銀行や信販会社などの金融機関は、基本的には反対意見を出しません。
しかし個人の債権者などが多いと、反対が過半数を占める可能性があります。親族からの援助など、個人からの借入が多い場合は事前に説明を行ない、理解を得ておくようにしましょう。
個人再生の手続きの流れ
個人再生を行なう流れは、おおむね下記の通りです。
- 弁護士や司法書士に依頼
- 個人再生の申立て
- 個人再生手続開始決定
- 再生計画案の提出
- 債権者への議決
- 認可決定の確定
- 再生計画にもとづく返済の開始
個人再生を行なうためには、依頼する弁護士・司法書士を決めることが第一歩です。依頼を受けた専門家は、債権者に通知を出して、資産や収入などの確認を行ないます。裁判所に申立てをすると、個人再生委員会が選出され面談などを実施。面談などの結果をもとに、裁判所が個人再生手続きの決定を下します。
個人再生手続きが始まると、各債権者の借金額の調査を行ない、再生計画案を裁判所に提出。再生計画案にもとづいて各債権者の決議が行なわれ、過半数の反対がなければ認可されます。認可された後は再生計画にもとづき、毎月返済を行なっていきます。
まとめ
個人再生は裁判所を通して行なう法的手続きで、借金を大幅に減らせる可能性があります。また自宅や車などの資産も残せる場合もあるため、資産を手放したくない人にはおすすめです。
しかし手続き完了後も返済が継続するため、安定した収入がなければ利用できません。
個人再生の手続きは裁判所への申立てなど専門的な知識が必要で、煩雑な事務などの手間がかかります。自分で行なうこともできますが、弁護士などに依頼するほうがよいでしょう。
以下に「債務整理のおすすめ弁護士・司法書士事務所ランキング」を纏めました。
個人再生を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
よくある質問
-
家族や会社に内緒で個人再生できますか?
解答官報に記載されるため、完全に内緒にはできません。ただし官報を見ている人は少ないため、ばれない可能性はあります。
-
個人再生したら賃貸住宅を追い出されますか?
個人再生を理由に、アパ―トやマンションを追い出されることはありません。ただし家賃の支払いにクレジットカードを利用している場合はカードが利用できなくなるため、注意しましょう。家賃の滞納がある場合は、退去を通告される可能性があります。
また個人再生しても、新しくアパートやマンションを借りることもできます。ただしクレジット会社系の家賃保証がついている物件は、審査に通りません。
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個人再生をした場合、どれくらいの期間ブラックリストに登録されますか?
個人信用情報機関への登録が抹消されるまでの時間は、登録された個人信用情報機関によって違います。消費者金融系のJICC、信販会社系のCICでは5年、銀行系のKSCでは10年と言われています。
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債権者を選んで個人再生できますか?
個人再生では債権者を選べません。債権者を選んで手続きをしたい場合は、任意整理を利用しましょう。ただし任意整理でカットできるのは利息や遅延損害金のみで、元本は減らせません。
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個人再生は弁護士や法律事務所に相談しなければできませんか?
自分でできないわけではありませんが、専門的な知識と煩雑な事務が発生します。また裁判所からの指示や裁判官からの呼び出しなどもあるため、弁護士などの専門家に依頼するほうがよいでしょう。
-
個人再生に必要な費用を教えてください。
個人再生の費用相場は、50~80万円程度が一般的です。費用の内訳は、「弁護士への報酬」と「裁判所費用」の2種類です。依頼する事務所や資産状況などによっても金額は違いますが、弁護士報酬が30~50万円、裁判所費用が15~30万円程度が一般的な相場でしょう。