年に一度は海外旅行 ライフプランニングにおけるレジャー費を考える - 退職・年金ナビ

投稿日:2022/05/09 最終更新日:2022/07/29
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【第16回】

ライフステージでかわる旅のカタチ

年に一度は海外旅行 ライフプランニングにおけるレジャー費を考える

夏場の電力不足回避に向け、多くの企業が就業日の変更や長期休暇、サマータイムの導入で節電対策を急いでいます。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、これまでの休暇の在り方や労働時間、ライフスタイルそのものを大きく変えようとしています。
欧米にみられる長期のバカンス(バケーション)や滞在手法を参考に、エコ・ロングステイを推進する向きもあります。しかし余暇が増大する分、家計におけるレジャー費の占める割合やマネープランには、従前のものに描きなおしが必要とお感じではないでしょうか。
家族が喜ぶ、旅のある暮らし。ライフプランニングにおけるレジャー費を考えます。

日本人の家計におけるレジャー費の年間平均支出は10万円
パッケージ旅行に大半を費やす

総務省が発表する日本人の「家計調査」によると、二人以上の勤労者世帯における一世帯当たりのレジャー費の年間平均支出は、2010年の統計で102,936円(図表1参照)。これは年間の消費支出額(全体平均)366.6万円の、わずか3%弱に過ぎません。
ちなみにこの数値には、マイカー利用時のガソリン代や外食代、土産物代など、遊興とおぼしき支出の一部が含まれていません。いずれも家計における別の費目に勘定されているからです。それにしても「意外と少ないな」と、感じたのではないでしょうか。
ここで特筆したいのが、平均レジャー費の約半分にあたる50,601円が、「パッケージ旅行」と呼ばれる旅行形態に費やしている点です。
パッケージ旅行に費やす額を世帯主の年齢別に覗いてみると、働き盛りの30代がもっとも少なく(23,675円)、反対に時間にゆとりがある60代は65,275円と、世代によって大きな開きがあることがわかります(図表2参照)。
少ないレジャー費のなかで、占める割合の高いパッケージ旅行。そもそもパッケージ旅行とは、どういうことをさすのかを次で紐解きます。
図表1
図表1
総務省発表「家計調査」平成22年度(2010年)より
二人以上の勤労者世帯・一世帯当たりの品目別支出金額におけるレジャー費平均支出(円)

パッケージ旅行の歴史的変遷 もとは富裕層が利用した

図表1
旅行会社の店頭に並ぶパッケージ旅行のパンフレット。方面別のほか「世界遺産」に代表されるテーマ別パンフレットも興味を惹く
そもそもパッケージ旅行とは、航空運賃や鉄道運賃・料金、ホテルなどの宿泊費、さらには送迎費用などをひとまとめに、旅行会社などがパック化した旅行形態をさします。個人がそれぞれ個別に手配するよりも割安で、予約もとりやすく、消費者保護の観点から補償もついて安心感があります。
こうした旅行は、正しくは「募集型企画旅行」と呼ばれ、新聞などの媒体や旅行会社の店頭で参加者を募るしくみです。また、食事や見学などが全て盛り込まれたフルパッケージの旅行から自由時間が多いフリープランのタイプまで、さまざまな商品が開発されています。
パッケージ旅行の歴史は浅く、1965(昭和40)年、日本航空が我が国で初めて、海外パッケージツアー商品「ジャルパック」を発売したのが始まりです。添乗員が同行する手軽なパッケージ旅行は、旅慣れない日本人の心を惹きつけました。
ちょうどその前年、日本では海外旅行がついに自由化されました。東京五輪の開催にあわせ東海道新幹線が開通するなど、日本人の暮らしのなかに旅が浸透を始めたときです。
そうはいっても当時のパッケージ旅行は、一人当たりの代金がサラリーマンの年収に匹敵するものも珍しくありませんでした。また、1米ドル360円という固定相場の時代にあったため、旅先での小遣い負担も相当なものでした。
今の時代、パッケージ旅行は安さの代名詞といっても過言ではありません。しかし誕生した当初は、富裕層でなくては利用できない高嶺にあったのです。やがてジャンボジェット機が就航し大量輸送の時代を迎えると、パッケージ旅行は低廉化を遂げます。日本は高度経済成長の波に乗り、変動する為替相場においても強みを発揮したことで、海外旅行は庶民のものとなりました。
旅のある暮らしには年収におけるレジャー費の割合を決めてマネープランニングするとよい
旅のある暮らしには年収におけるレジャー費の割合を決めてマネープランニングするとよい
これは近年、中間層にも海外旅行自由化の波が訪れた中国の人々の姿に似ています。多くのものを見聞し吸収しようとする、キャッチアップのパワー。それは物見遊山に始まって当然のことといえましょう。
経済が発展するに伴い、旅は暮らしのなかに定着するようになりました。日常的な営みが見直され、物質よりも、心の豊かさが求められるようになるということを、すでに私たちは幾多の歴史のなか経験しました。
欧米先進国の人たちが長期滞在を楽しむ光景を、頭のなかに思い描いてください。震災後は、長期滞在のパッケージ商品もさまざま開発されるようになりました。海外では10日間〜2週間程度、国内では4〜9連泊程度のものが主流です。
滞在が長くなるほど、これまでの概念ではくくりきれない食費などの生活費目からの出費が必要になります。予算を立てるにも、日常生活を日割りするなどの工夫が求められているのです。

パッケージ旅行の歴史的変遷 もとは富裕層が利用した

家族の絆を深めたいファミリー層にはアジアのビーチリゾートでのロングバカンスがおすすめ
家族の絆を深めたいファミリー層にはアジアのビーチリゾートでのロングバカンスがおすすめ
ライフプランニングにおいて、ステージ(世代)ごとに旅のスタイルも変化することを想定してマネープランを立てる必要があります。
例えばスーツケースを開けたり閉めたりの移動型の旅は、小さなお子さん連れのファミリー層には、あまり向きません。好奇心旺盛な20代の若者や、独身者、ないしはリタイアしたばかりのアクティブシニアの旅スタイルで、特権です。値段の安さに惑わされず、時間効率のよい行程で組まれたツアー、季節性を重視して選ぶようにしましょう。
またファミリー層であっても、子供の成長にあわせて訪問地や滞在施設を選ぶ必要があります。パッケージ旅行を選ぶときには、(1)フリープランのものを選ぶ、(2)リゾート滞在型のコースを選ぶ、(3)小学校高学年以上の場合は訪問先に都市型も加える、(4)ティーンエイジャーであればテーマ(スキーやネイチャーアクティビティ等)で選ぶとよいでしょう。
世代の異なるファミリーで旅を楽しむには、先述した滞在型がおすすめです。ハワイやグアム、アジアなどのビーチリゾートのコンドミニアム(キッチン付きの滞在施設)に連泊して、暮らすように過ごす家族が増えています。こうしたキッチン付きの滞在施設は、京都や沖縄をはじめ国内にも、多数、誕生しています。おもに外国人観光客や、リピーター派に人気です。家族の絆を大切に、世代ごとに無理のない旅ができる点が、滞在型の利点です。
旅のマネープラン(見積もり)には、パッケージ旅行は予算化しやすく便利です。ただし家族の人数分の保険代や小遣い、外食費、土産物代、宅配便などの雑費、国内移動の交通費、毎年の物価スライド、為替の変動等々をにらんで、多めに見込んでおく必要があります。「年に一度は海外旅行をしたい」という家族のニーズに応えるために、旅行積立を活用するのもよいでしょう。
年収や将来の待遇、その他キャッシュフローに不安があれば、レジャー支出の年収における割合を予め定めるなど、ある程度のボーダーを引いておくとよいでしょう。

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