おしえて!和泉先生 「ねんきん定期便」をきっかけに定年退職後の生活に備えよう−おしえて!年金見込額の計算方法- 退職・年金ナビ - 退職・年金ナビ
退職・年金ナビ [ おしえて!和泉先生 ]
【第2回】「ねんきん定期便」をきっかけに定年退職後の生活に備えよう
おしえて!年金見込額の計算方法
ねんきん定期便がやってきた
2009年4月から公的年金の加入者の手元にねんきん定期便が届くようになりました。40代や50代の方々の多くは、定年退職後の生活資金はいくら必要なのか漠然とした不安をお持ちでしょう。
ファイナンシャル・プランナーの和泉昭子さんが、公的年金の見込額が把握できるねんきん定期便をもとに、定年退職後の必要資金や生活設計をわかりやすくアドバイスします。
「年金見込額」を見る際のポイントについて教えてください。
まず、50歳未満と50歳以上で、中身が異なるのでご注意ください。
50歳未満の方は、現在までの加入実績に応じた年金額が記載されています。これは、今後の加入を考慮していないため、老後に受け取る年金額とは大きくかけ離れていますので誤解しないでください。
たとえば、20歳で国民年金に加入し現在30歳であれば、まだ加入期間が10年しかないので、記載されているのは、ごく僅かな金額のはず。しかし、今後保険料を納め続ければ、年々見込額は増えていくでしょう。40代も同じく、これまでの加入実績を反映した見込額が記されています。
では、50歳以上はどう違うのでしょうか。こちらは、この先、60歳まで現在の収入で働いた場合の見込額が計算されているのです。つまり、50歳未満は「過去の実績だけ」を反映していますが、50歳以上は「60歳までの未来を想定」した金額となっています。
50代以上の場合、途中で給与が減ったり早期退職したら、年金見込額は減るということですね。
その通りです。あくまで60歳まで現在の収入が続くと仮定しているため、給与の減少や早期退職をすれば実際の年金は見込額より少なくなります。早期退職制度は、企業によって退職金の積み増しを受けられるため、魅力的に映るかもしれません。しかし、その後収入がなくなったり、減ったりすると、老後の定期収入となる年金の受取額も減ってしまうため、早期退職と定年退職いずれを選択するかは、トータルで検討する必要があるでしょう。
50代未満の場合、将来の見込額のイメージはどうやって持てばいいのでしょうか。
50歳未満の方のねんきん定期便には、老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれの見込額を試算するシートがついています。図がそのシートの見本ですが、黄色い部分には予め数字が入っています。薄緑色は自分の将来を想定して記入する部分。これから退職するまでの期間等を入れて計算することで、おおよその年金額が試算できます。
それでは、自分のねんきん定期便を手元に置いて、試算をはじめましょう。
まずは基礎年金からです(図1)。黄色の箇所に金額が印字されていることを確認してください。見込額は、A、B、Cの3カ所に記入するだけで計算できます。Aは、60歳まで加入した場合の期間を月数で記入。Bは、共済組合に加入していた方が対象です。Cは、農業や自営業などの方で付加保険料を納めているならば、今後の加入期間を記入してください。加入実績に応じた年金額�@と今後の予定額�Aを足し合せれば、基礎年金の見込額がわかります。
厚生年金は、給与額により受け取る年金見込額が変わるのがポイントです(図2)。基礎年金と同じく、黄色の箇所に金額が印字されていることを確認します。アは、退職までの平均標準報酬額です。毎月の給与(賞与や各種手当て含む)に置き換えるとわかりやすいでしょう。受け取っている給与が60歳に近づくにつれ減っていくと予想するなら、平均標準報酬額を多少少なく見積もることでより現実的なシミュレーションができます。
ここで計算された年金の見込額(基礎年金+厚生年金)が、みなさんの老後資金計画の基礎となるのです。モデルケースで試算した一般論の数字ではなく、自分にとって必要な老後資金を把握することで具体的な生活プランを描けるのです。
公的年金の仕組み
公的年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金(公務員の場合は共済年金)から成り立っています。基礎年金は、原則としてどんな職業・立場の人も受け取れるもので、加入期間によって受給額が変わりますが、40年(480カ月)の加入で満額(平成21年度792,100円)支給されます。ただし、原則的に25年(300カ月)に満たない場合は年金を受け取ることができないので、注意が必要です。
厚生年金は会社員が受け取れるもので、加入期間のみならず、納めた保険料によっても受給額が異なります。保険料は給与額に比例するため、上限はあるものの収入が高いほど、受給額が増えることになるのです。5年、10年後の収入を予想するのは難しいですが、基本的な考え方を理解しておくことで、大まかな年金額を予想することができるでしょう。
監修:ファイナンシャル・プランナー/和泉昭子
掲載日:2009年月11月13日