退職前後の健康保険の選び方とは?
退職前後では、健康保険も重要な手続きの一つです。どの健康保険に加入するか、保険料等を比べながら、よく検討する必要があります。ただし、どの健康保険の場合でも、決められた期日までに手続きをしなければいけませんので、必要書類などは、退職前から準備しておき、空白期間を作らないように心がけましょう。
万が一、空白期間の時に病気やケガをすると、全額自己負担ということもありますので注意が必要です。
健康保険証
健康保険証は通常、退職日まで有効で、最後の出社日に会社に返却します。残っている有給休暇を取得して退職をする場合には、コピーで診察を受けるケースや、一旦全額自己負担で支払ってその後精算してもらうケース等、会社によって様々です。退職前後の健康保険証の扱いは、加入している制度や会社によって異なる場合があるので、退職前には確認をしておきましょう。
選択肢(1) 在職中の健康保険に引き続き加入(任意継続被保険者)
退職前に加入していた健康保険組合や協会けんぽの健康保険に引き続いて加入します。手続きは退職後20日以内で、加入後保険料を滞納すると被保険者の資格を失ってしまうので、注意してください。健康保険に加入できる期間は2年間です。その後は国民健康保険などに加入することになります。
保険料は、在職中の会社負担分(約半分)がなくなり全額自己負担となりますが、本人の賃金よりも加入員の賃金の平均が低い場合は、加入員の平均賃金をもとに計算されます。したがって、賃金が高い場合は、結果的に在職中とあまり変わらない場合もあるかもしれません。扶養している妻等がいる場合は、引き続き扶養に入れることができるので、家族の分の保険料はかかりません。
選択肢(2) 国民健康保険に加入
市区町村ごとに運営されている国民健康保険に加入します。手続きは、退職後14日以内です。保険料は、市区町村ごとの基準にもとづいて決められますが、前年の収入などが基準になるため、退職前の賃金等が高いと保険料が高くなることがあります。また、扶養している家族がいる場合は、家族の人数に応じた保険料を負担します。そのため、「退職後国民健康保険に加入したら、夫婦二人で最高額の保険料(81万円)になって困った」という話をよく聞きます。その場合は、市区町村の窓口で保険料の分割の相談をしてください。
選択肢(3) 被扶養者として家族の健康保険に加入
健康保険組合や協会けんぽに加入している配偶者や子どもの扶養家族になる方法です。保険料の負担はありませんが、扶養家族になるには収入の条件があります。年収が60歳未満は130万円未満、60歳以上は180万円未満であることと、扶養される家族の年収の2分の1であることです。収入には雇用保険の失業給付や年金なども含まれるため、退職した年に扶養の条件を満たすことは難しいでしょう(※1)。
保険者 | 期限 | 保険料 | 保険料を計算する際の基準 | 加入の条件など | |
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任意継続被保険者 | 健康保険組合または協会けんぽ | 退職日の翌日から20日以内 | 全額自己負担(本人分のみ) | 本人の退職前賃金か加入員の平均賃金の低い方 | 退職前の加入期間が2ヶ月以上 |
国民健康保険 | 市区町村 | 退職日の翌日から14日以内 | 全額自己負担(扶養家族の分も) | 前年の収入など | ほかの健康保険に加入していないこと |
家族の被扶養者 | 家族が加入する健康保険制度 | 退職日の翌日から5日以内 | なし | 60歳未満は年収130万円未満 60歳以上は年収 180万円未満等 |
健康保険の上手な切り替え
上記3つの選択肢のいずれを選んでも、医療費の自己負担割合は3割と同じです。そのため、支払う保険料こそが判断のポイントになるでしょう。任意継続被保険者の保険料は、単純に倍額になるわけではなく、通常は加入員の平均保険料の倍額となります。国民健康保険の保険料は、前年の所得を基準とするので、高額(最高額)になりがちです。保険料だけを比較すれば、家族が加入する健康保険の被扶養者となるのが1番ですが、収入基準になかなかあてはまりません。実際には、退職後はまず任意継続被保険者を選び、前年所得が少なくなった時点で国民健康保険に切りかえる人が多いようです。